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虚空の天使【完結】  作者: 木口なん
魔王の真臓編

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EP433 正座


 朝日が照らす浮遊島。そこにある一軒屋の中で、ユナは正座していた。正面にはクウが立っており、その側でリアがオロオロとしている。



「で、言い訳は?」


「ごめん、我を忘れちゃった。てへ?」


「反省しろ」


「痛いっ!?」



 クウは《神象眼》でタライを出し、ユナの上に落とす。鈍い音が響き、ユナは頭を抑えて蹲った。

 しかし、クウは容赦なく問い詰める。



「あれだけ練習だと言ったよな? それがどうしてこんなことになったんだ」


「き、気付いたら……い、いつの間にか?」


「それが理由になるとでも?」


「ご、ごめんなさい」



 珍しくユナは小さくなっていた。

 だが、これには理由がある。

 超越化したリアの練習相手としてユナが戦ったのだが、その際にやり過ぎたのだ。権能【聖装潔陽光アポロン】で好きなように暴れまわり、周囲の環境を完全破壊しそうになったのである。

 そして気づいた時には、山脈が消滅していた。

 勿論、クウが《幻葬眼》で元に戻したが。



「まぁ、環境についてはまだいい。だが、これはどうするつもりだ?」



 溜息を吐くクウは、すぐそばにある机の上へと目を向ける。

 そこには、真っ二つになったリアの錫杖が置かれていた。勿論、これも調子に乗り過ぎたユナが思わずやってしまったのである。

 ちなみに、誤って錫杖を真っ二つにしてしまったところでユナも我に返り、周囲の惨状に気付いた。そして今はクウに怒られている。



「兄様? お姉様の反省していらっしゃるようですし……」


「ん? リアがそういうなら別に構わないが」


「はい。そろそろ可哀想ですから。ユナ姉様もわざとではありませんし」



 確かにそれも事実であり、そもそもユナの錫杖は準神装ですらなかったことが問題だ。高性能ではあったが、強度はそこそこ程度。どちらにせよアップグレードは必要である。今回の件はその機会になったと考えれば、多少は赦せるというもの。

 ユナはリアの優しさに目を輝かせた。



「リアちゃん流石だよ! 愛してる!」


「だから調子に乗るな」


「痛い!?」



 もう一度タライを落としてユナを黙らせる。

 そして少しだけ考えてから、クウはポンと手を叩いた。



「そうだ。これで手打ちにするか」



 早速、クウは《神象眼》を発動してユナに術をかける。そしてすぐに魔眼を解き、ユナに告げた。



「じゃあ、もういいぞ」


「ホント?」


「ああ」



 これで説教が終わったと思ったのか、開放的な表情で立ち上がろうとする。だが、正座を解こうとしたユナは、その場でバランスを崩して倒れた。

 足がジンジンと痺れて動けないのである。



「あ、あれ?」



 足の痺れなど、超越者には無縁だ。しかし、クウはそれを《神象眼》によって再現した。意思力へと干渉し、疑似的な脚の痺れを感じさせたのである。

 これでも道場の娘。

 正座には慣れており、足の痺れなど十年以上も経験していなかった。



「あ、あの……くーちゃん? どうして私の足に手を伸ばしているの?」


「こうするためだ」



 クウはしゃがんでユナの足へと手を伸ばし、指でつついた。



「ふにゃあああああああああああ!?」



 全身の力が抜けるような刺激を感じ、ユナは情けない声を上げる。クウが《神象眼》で再現した足の痺れは伊達ではない。気持ち良いような気持ち悪いような、微妙な感覚が全身を駆け抜ける。

 しかし、そんなユナに対してクウは容赦なく足を刺激した。



「あう!? ひゃあああ……んああああっ! く、くーちゃん……そこはぁ……」


「ほら、リアもやってみろ」


「えっと……こうですか?」


「にゃあああああああああああああ!?」



 ユナは悲鳴を漏らしつつピクピクと震えている。どうやら相当らしい。頬を赤らめ、息を荒くしているせいで妙に艶めかしかった。

 そして一通り遊んだところで、クウとリアは立ちあがる。



「それにしても……見事に真っ二つだよな」


「はい。どうしましょうか?」


「俺が《幻葬眼》で直してもいいけど……いっそリグレットに作り直して貰った方がいいな。超越者が使ってもいいように、神魔杖を用意して貰うのが一番だ」


「では一度【レム・クリフィト】に?」



 その問いに対して、クウは首を横に振る。



「いや、【レム・クリフィト】に戻るのはリアだけだ。リアは空間転移が使えるし、それで帰還してリグレットに新しい装備を作って貰ってくれ。俺とユナはミレイナと一緒にカースド・デーモンを倒す」


「分かりました。では、ミレイナさんが起きてきたら挨拶しなければなりませんね」


「ああ。さっき眠ったところだから暫く起きないだろうけど」



 キングダム・スケルトン・ロードとの戦いは深夜のことであり、更にその後ユナとリアの戦いを観戦していたのだ。ミレイナはさっき寝たところであり、起きてくるとすれば昼頃になるだろう。



「今の内にアリアとリグレットには連絡入れておかないとな。まだリアが超越化したことも話してない」


「分かりました」


「くーちゃーん……早く足を治してぇー」


「ユナは暫くそのままな」


「うぅ……そんなぁー」



 切なげな視線を無視して、クウは虚空リングから通信魔道具を取り出す。宝石の付いたペンダントの形をしており、魔力で動く仕組みだ。

 早速、それをリグレットに繋げた。



『こちらリグレットだよ。どうかしたかな?』


「アリアは近くにいるか?」


『ああ。丁度いるね』


「それなら都合がいい。リアが超越化したからその報告だ」


『それは本当かい?』



 声の調子から驚愕しているのが予想できた。リアは少し前に運命迷宮を攻略し、天使化したばかりだ。それにもかかわらず、もう超越化を果たしたのである。驚かないはずがない。

 この世界で初めての超越天使であり、誰からも教わることが出来なかったリグレットは超越化に何十年もかかっている。そう言った理由を加味しても、数か月で超越化というのは驚くべきことだった。

 近くで話を聞いていたアリアも驚く。



『まさかリアが先だったとはな。私はミレイナが先に超越化すると思っていたが』


「まぁ、色々あってな。それでリアが超越化したから、そろそろ武器もちゃんとしたのを用意した方がいいと思って」


「お願いします」


『そういうことなら仕方ないね。僕の方で用意しよう。専用装備にするから調整も必要になる。リア君には一度戻ってきて欲しいのだけど』


『おい、リグレット。あの件はどうするつもりだ?』


『それは後でもいいさ。それに戦力が増えるなら、そちらを優先した方が効率的だよ』


「ちょっと待て。あの件ってなんだ?」



 アリアとリグレットが知らない話を始めたので、クウが遮って尋ねる。

 隠すことでもないと思ったのだろう、リグレットが説明を始めた。



『魔王オメガの無敵状態については知っているだろう? その仕組みについて目途が立ったから、検証しようと思ってね。けど、何が起こるか分からないし、こちらでも色々と準備をしていたのさ。僕たちが二人とも【レム・クリフィト】を離れる予定だったから、政務も急いで終わらせたりね』


「それで念のために戦力を?」


『その通り。リア君には一度戻って来て貰って、専用の武装を渡そう。リア君にピッタリの能力を持った武器を開発してあるからね。後は形にして微調整するだけさ』


『リグレットがそう思うなら私も構わない。それに、リアの力を把握するためにも一度戻ってきて欲しい。新しい武器の練習も兼ねて私が相手をしよう。クウたちはどうするんだ?』


「俺たちは残る六王を討伐する。まぁ、残っているのは大悪魔カースド・デーモン一体のみだけど」


『驚いたな。リアとミレイナだけで討伐させたのだろう? 中々に早い』



 アリアも驚いているようだ。

 そして討伐速度を鑑みて都合がいいと判断したのだろう。更に言葉を続ける。



『それならカースド・デーモン討伐後にもう一度連絡を入れてくれ。そこで私たちもお前たちと合流する。そのまま魔王オメガを倒す予定だ』


「あいつの居場所が分かったのか?」


『可能性の話だ。詳しいことはその時に話そう』


「そこまで言われると気になるんだけど……まぁ、いいや。取りあえずリアをそちらに向かわせる」


『分かった。待っているぞリア。リグレットが普段使っている研究室に来てくれ』


「はい。昼頃には向かいますね」



 そこでクウは通信を切る。そして通信魔道具を虚空リングへと収納した。



「リア、転移で戻れるな?」


「大丈夫です。今ならこの距離でも全く問題ありません」



 超越化前ならばそれなりの演算時間が必要だった。しかし、今は超越化に伴って思考速度の物理的制約が取り払われ、意思力がそのまま思考速度になった。複雑な空間転移の演算も一瞬であり、何不自由なく移動できる。



「それなら大丈夫だな。じゃあ、リアは一度【レム・クリフィト】に戻るってことで決定だな」


「分かりました。ミレイナさんに挨拶した後、帰ることにします」


「ああ。後はユナの処遇だけど……」



 そこでクウはようやくユナの方に目を向ける。《神象眼》で再現された足の痺れはまだ鳴りを潜めないらしく、ユナは既に涙目だ。

 クウとリアに足をツンツンされたこともあり、捨てられた子犬のような表情をしている。



「……流石に可哀想になってきたな」


「……はい」


「うぅ……くーちゃん、リアちゃん」



 罪悪感を感じるので、クウは《幻葬眼》を使い、足の痺れを幻覚に変える。そして幻覚を解除するというプロセスを利用し、足の痺れを取り去った。

 ようやく解放されたユナは、その場で座り込みつつ呟く。



「なんだかまだ痺れの感覚が残っている気がするー……」


「罰だと思って受け入れろ」


「ごめんなさーい」



 ユナも深く反省したのか、声の調子が低い。

 陽属性付与の神魔装を大量展開して戦うという鬼畜の所業を行ったのだ。しかも超越化したばかりで武器も充分ではないリアに対してである。ユナも悪いことをしたとは思っているらしい。



「リアちゃん赦してくれる?」


「はい。いいですよ姉様」


「ありがとう! リアちゃん大好き!」



 ユナはカバっと顔を上げてリアに抱き着く。

 やはりユナはユナだったようだ。

 呆れたクウは、ヤレヤレと言った様子で二人に告げた。



「リアは超越化したと言っても疲れているハズだ。ミレイナが起きてくるまでは休んでおけ。リアと戦ったユナも念のためにな。俺は浮遊島を操って、悪魔系の領域まで移動させる」


「わかったよー」


「では休ませて頂きます。兄様も休んでくださいね」


「ああ、適度に休むつもりだ」



 ユナとリアの二人は、軽く手を振りながらそれぞれの自室に戻っていくのだった。













今更ですが区分けです。


神装:神が権能を込めて制作した武装。不壊の特性を持つ。

神魔装:天使クラスの超越者が権能を込めて作る最高の武装。

魔装:世界の魔法的法則内で造れる武装(魔法武器などのこと)

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