表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚空の天使【完結】  作者: 木口なん
魔王の真臓編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

433/566

EP432 リアの権能


 白き聖なる炎によってキングダム・スケルトン・ロードは滅びた。だが、そんなことはどうでもいい。一番の成果はリアの超越化だった。

 クウ、ユナ、ミレイナは天使翼を広げながら降り立ち、リアを祝福する。



「やったなリア」


「おめでとうリアちゃん!」


「羨ましいぞリア!」


「はい。ありがとうございます」



 嬉しそうに笑みを浮かべるリアは錫杖を胸に抱えて頷く。

 今回の作戦はリア発案のものであり、意図的に超越化できるかどうかを試す実験でもあった。時間の移動を操り、特定の未来や過去に転移できる。それを利用し、超越化した未来へと転移できるかが今回の要だった。

 勿論、僅かにでも可能性がなければ時間転移は発動できない。

 リアの力は可能性の存在する時間へと移動する力なのだから。



「それにしてもリア……あのキングダム・スケルトン・ロードに一人で立ち向かうなんてよくやったな」


「大丈夫です。わたくしもやるときはやりますよ!」


「さっすがリアちゃん!」



 そして超越化の未来を作るために必要だったのかキングダム・スケルトン・ロードとの一騎打ちである。意思力を高め、壁を乗り越えるきっかけに利用した。

 それで僅かな可能性を生み出し、時間転移で強制覚醒へと至る。

 これによって、リアは超越天人になった。



「権能【位相律因果フォルトゥナ】。それが私の手に入れた能力です。主な力は時間転移で変わりません。ですが、並行世界に引きずり込むことも可能かと」


「試してみた方がいいな」


「はい。わたくしも試してみたいです」


「能力実験は俺かユナでやるか。それに超越者の戦いを教えなければならないし」



 超越者の戦いは通常と少し異なる。リアがその領域に至ったからには、それを教えなければならない。これからは超越者と戦うこともあるだろう。

 だが、その前にクウは周囲を見渡した。

 キングダム・スケルトン・ロードが《傲慢大罪ルシファー》で格上げした《覇気》で崩壊させた山脈が広がっている。



「丁度、この辺りは荒れている。ここで暴れても問題ないだろ」


「あ、それなら私がやりたーい!」



 ユナが手を上げて主張する。

 それに対し、クウも少し考えてから口を開いた。



「確かに、特殊な能力者の俺よりユナみたいなシンプルな能力者の方がいいかもな」


「えー……それって私が単純ってこと?」


「……違うのか?」


「う……」



 クウ一筋という点からすれば単純というのは正しい。

 それにユナの【聖装潔陽光アポロン】は武器を生成して操る力。シンプルと言って過言ではない。クウの魔眼はかなり特殊なため、初戦で相手にするには厄介すぎる。



「ま、俺とミレイナは上空に逃げておく。ユナはリアの能力を確かめるために相手を頼んだ。くれぐれも、テストってことを忘れるなよ」


「はーい」


「わかりました。お願いしますお姉様」


「俺たちは下がるぞミレイナ」


「うむ」



 クウとミレイナはそのまま上空へと上がり、見えなくなる。二人がいなくなったところで、ユナはリアの方へと向きつつレクチャーを始めた。

 流石のユナも、いきなり実戦などという無茶は言わない。



「まずは魔素とオーラだけど、これを当たり前に使えるようになってね」


「はい」



 そう言われたリアは、魔素とオーラを同時に纏う。白いオーラがリアの周囲で揺れ、神聖な雰囲気を見せた。

 いや、事実として神聖な力を纏っている。



「あれ? それってオーラじゃないよね」


「……どうやら「聖炎」の性質も同時に出ているようです」


「制御できる?」


「やってみます」



 リアは集中して自身の能力を制御する。リアの「聖炎」は色々と細かい制御が可能らしく、炎のように熱を持ったり、ただの光として扱ったりも可能なようだ。

 スキルで言えば《光魔法》と《炎魔法》を組み合わせたような力らしい。しかし、これは属性というよりもリア自身の性質に近い。リアの心優しさを表す特性だった。



「こう……でしょうか?」



 リアの纏う神聖な雰囲気が途切れ、純粋なオーラとなる。同時に魔素も纏い、安定させていく。それを見たユナは流石だと感じた。

 元から魔素やオーラの扱いに心得があるとはいえ、超越者は出力がまるで違う。その魔素とオーラを充分に扱えているのだ。かなりの才能である。



「その調子だよ。そのまま能力を使える?」


「やってみます」



 リアは足元の石を拾い上げ、軽く放る。そして「時間支配」をかけた。時間が停止した小石は、法則内部の変化を止められる。つまり重力による作用が停止した。

 小石は空中で動きを止め、微動だにしない。



「こうですか?」


「うん。能力は自由に扱えそう?」


「可能だと思います。時間転移も並行転移も可能です」



 能力の調整は大丈夫そうだ。後は慣らしつつ、能力を確かめるのがいいだろう。ユナは右手をサッと振って神魔刀・緋那汰を顕現させた。リアは錫杖から手を離し、操る。



「まずは魔素とオーラを使った戦闘だよ」


「わかりました」



 リアは魔素と気を錫杖に纏わせ、周囲に浮かべつつ高速回転させる。ユナは左手に神魔刀・緋那汰を持ち替え、居合の構えをした。

 待ちのユナに対し、まずはリアが仕掛ける。羽毛のような三対六枚の天使翼を広げて距離を取った。元から近接戦闘が得意とは言えないので、これは正しい。

 魔素で自分と錫杖にパスを繋ぎ、オーラを纏わせてユナを攻撃した。



「甘いよ」



 左手に持った神魔刀・緋那汰を操り、回転する錫杖を弾く。錫杖は軽く飛ばされるも、すぐにリアの方へと戻った。超越者となった今、リアに杖は必要ない。これは単にリアを守るための武器として扱うべきだ。



(元から錫杖は強度が高いわけではありません。オーラがなければユナ姉様の武器で破壊されてますね)



 錫杖はリアがステータスに縛られていることを前提としている。完全にスペック不足だ。最低でも準神装クラスにまでアップグレードしておかないと、直接の打ち合いでは耐え切れなくなるだろう。

 それを補うためにも魔素とオーラの技術は必須だ。

 この力を如何に上手く高純度で扱うかが重要となる。



「次は私から行くよリアちゃん!」



 ユナも三対六枚の天使翼を広げ、リアへと迫る。その手は居合の構えをしており、その武術を見極めることは難しい。だからこそ、リアは魔素結界を広げた。

 しかし、ユナは軽く切り裂いた。



「もっと純度を上げて!」


「はい」



 目の前までやってきたユナに錫杖を叩き付けようとする。高速回転しながら迫る錫杖は脅威だが、ユナからすれば大した速度に思えない。武術を以て戦うユナは戦闘時思考加速力が極端に高い。リアがユナを止めたければ、単純な速度ではなく裏を掻く柔軟性や能力強度が求められる。

 ユナは錫杖を軽く弾き、そのまま突きでリアを突き刺した。



「くぅ……」


「遅いよ」



 ユナは武装の顕現で大量の武器を召喚し、リアの背後から射出した。前からはユナが神魔刀・緋那汰を突き刺すことで止めており、リアは回避できない。

 しかし、リアは時空間の支配者。

 空間の連続性を無視した回避が出来る。

 射出された大量の武器がリアの背中に触れる寸前、その姿は消えた。



「わわ!?」



 危うく自分の武器が刺さりそうになり、ユナは慌てて武器を制止させる。そしてすぐに武器を消し、リアの居場所を感知した。



「そこです」


「気付いているよ!」



 右上に転移していたリアによる錫杖の射出攻撃。しかし、ユナは紙一重で避けた。そして神速の突きを放つ。それは再びリアの腹部を貫こうとした。

 しかし、その寸前でユナが肩に激しい衝撃を受ける。



「痛っ!」



 視線だけ向けると、そこには避けたはずの錫杖が貫通していた。深々と突き刺さり、赤い液体が流れているのも見える。



「え?」


「《並行転移パラレル・シフト》……可能性さえあれば、私の攻撃は当たります」


「ずるっ!?」


「実力です」



 リアは錫杖を操り、ユナの肩から引き抜く。だが、その傷は一瞬で修復された。超越者なので、この程度の傷は傷にならない。実際、リアの腹部にあった刺し傷も消えている。

 超越者は意思力こそが力の源であり、霊力で身体を構成している。魂から湧き出る無限の霊力を意思力で制御する。傷も意思力が続く限り無限に修復できる。



「《時間操作タイム・オペレーター》」


「っ!?」



 リアは周囲の時間を極限まで遅くしてユナに攻撃を仕掛けた。意識はあっても、情報次元の変化速度が制限される。ユナは体がついていかず、錫杖による攻撃を受けた。

 魔素とオーラによってユナにも攻撃が通り、痛みで表情を歪めた。

 しかし、この程度で終わるユナではない。



「近寄らせない。《緋の羽衣》」



 ユナは太陽を纏い、何者も近寄らせない。強力な熱と電磁波が放たれる。これを防ぐには対抗能力を使うか、魔素とオーラで防御しなければならない。

 リアは聖なる炎を纏い、ユナの《緋の羽衣》へと対抗した。



「いくよリアちゃん」


「はい。こちらも行きます!」



 ユナは神魔刀・緋那汰を消して二本の槍を両手に出す。更に手から槍を離し、空中に浮かべた。ユナは「武装創造」で作成した武器を自由に操ることが出来る。浮遊した槍を高速で回転させ、更に周囲を自由自在に移動させた。

 それがリアへと襲いかかる。



「く……」



 自在に動いて襲いかかる二本の槍を防ぐのにリアは必死だ。錫杖を回転させつつ槍の猛攻を防ごうとするが、明らかに武装のスペックが違う。

 準神装クラスの武装を作成できるユナの攻撃だ。

 かなり激しい。

 しかし、リアには関係なかった。超越化による影響で加速化した思考力で演算を実行し、未来予測から可能性を導き出し、その時間へと転移する。



(0番から24番に、345-55を有効化。82番を廃棄して44-9番を実行)



 リアの思考内部では時間状態に番号が割り振られている。そして必要な世界線を割り出し、「意思誘導」で世界全体を特定の世界線へと引きずり込む。この誘導はまさに運命を操る力だ。

 槍による攻撃を回避する運命をリアは獲得する。



「それそれそれそれ!」



 ユナの過激な攻撃に対し、リアは余裕の表情で回避を続ける。二方向から来る槍の突きを躱したかと思うと、次は回転して切り裂こうとしてくる。それでもリアは体を捻って避け、死角からやってきた三本目の槍を錫杖で防ぐ。

 更に一本の槍が追加されたことで、合計三本の槍がリアを襲う。

 だが、リアも常に未来予測演算を実行し続けており、有利な未来を常時選択していた。普通は回避できないような連続攻撃も、まるで偶然が重なっているかのように回避が成功する。



(4番と6番を破棄。75-20番を有効化。8番で隙を見つけましたよ)



 槍の一本がリアの頬を掠め、次の槍が回転して腕を飛ばそうとする。しかし、それは錫杖で止め、最後の一本による背後からの攻撃は天使翼で弾いた。

 最初に頬を掠めた槍が再びリアの方を向いたので、時間停止で止める。

 これで隙が出来た。



「《次元裂爪ディメンジョン・スラッシュ》」



 空間が割れ、大量の空間斬撃がユナへと襲いかかろうとする。しかし、ユナの知覚能力と反応速度はリアの予想を上回った。

 殆ど反射的に神魔刀・緋那汰を顕現し、瞬間居合を放つ。



「《天照之アマテラスの太刀たち》」



 ユナの攻撃は魔素とオーラ、そして陽属性が乗せられている。「力場」の特性を持つ陽属性を含んだ究極の一撃だ。熱、電磁波、そして重力が空間ごと切り裂く。

 いや、正確には空間の捩じれを激しいエネルギーで捻じ伏せた。



「この程度?」


「まだわたくしの攻撃は終わっていません」



 そう言ったリアは錫杖を手に戻し、その先で天を指した。

 ユナが見上げると同時に、暗い影が落ちる。

 そこには、赤熱した巨大隕石が迫っていた。



「《並行転移パラレル・シフト》で隕石を呼びました」


「いいね! 面白いよ」



 しかし、ユナは動じない。

 「武装創造」で右手に大型の拳銃を取り出し、トリガーに指を掛けて構える。銃口は隕石の方を向いており、ユナはこれに霊力を込めた。



「神魔銃・緋雨星ひめぼし……フルバースト」



 銃口からエネルギーが迸り、黄金のビーム砲撃が放たれる。それは一撃で隕石を消し飛ばし、余波で周囲の木々を薙ぎ倒した。

 巨大な隕石を塵一つ残さず消し飛ばす威力には驚かされる。



「なるほど。お姉様に隕石をぶつけられる可能性はゼロ……でしたか。これでは《時間転移タイム・シーフ》も通用しませんね」


「こんなものかな?」


「いえ。まだお願いします」


「うんうん。かかっておいでー」



 ユナは再び槍を浮かべ、更に剣、斧、鎖、大鎌なども「顕現」させる。その全てが陽属性に染まった準神装クラスの武器であり、ユナの背後で凄まじい力の波動を放っている。

 それに対し、リアは空間遮断結界を纏い、魔素とオーラによる防御も強めた。

 二人は夜が明けるまで戦いを止めることはなかった。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「ずるっ!?」 「実力です」  のやり取りが再会当初のクウとユナのやり取りみたいで兄妹(義兄妹だけれど)だなぁって感じするな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ