表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚空の天使【完結】  作者: 木口なん
再会編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

314/566

EP313 忘却された歴史①

今日からしばらくは毎日更新します。

夏休み中に次章まで移りたいですね。


 映像として流れている都市は、地上数百メートルの高層ビルが立ち並ぶ近未来的なものだった。街中を幾つもの高架が絡み合い、そこを車のようなものが走っている。外を歩く人々は携帯電話のようなものを片手にしていた。現代の日本よりも少しだけ技術が進んでいるように見える。

 映像が切り替わると、今度は別の都市が映し出された。こちらは木造の家をメインとした自然豊かな街並みとなっており、エルフたちが道を行き来している。エルフの中には肌が黒い個体もいたが、特に差別的意識はないように見えた。泉を中心とした水路が張り巡らされており、そこには睡蓮のような花が咲いている。自然と調和する非常に美しい都市だった。

 次に映像が切り替わると、砂漠の中にあるオアシス都市が映された。ここには獣人が住んでおり、交易によって栄えているようだった。ラクダにも似た動物を乗りこなし、隊商を組んで商品を運んでいるのを見ると、シルクロードを思い出させる。獣人の中には犬、熊、鼠、兎、狸などの見たことない種族までいた。また、彼らの街には六体の像が祀られているのだが、その内の三つにはクウにも見覚えがあった。天竜ファルバッサ、天九狐ネメア、天妖猫メロである。

 その次の映像では、ドワーフが工場で働いていた。どうやら要塞のような都市らしく、さまざまな工業製品がここで生産されている。ドワーフと言えば鍛冶を思い浮かべるが、ここでは多くのドワーフが白衣を纏い、パソコンのような機械に何かを打ち込んでいた。この都市にはドワーフ以外にも多くの種族がいるようで、人、エルフ、獣人、更には鳥人間のような者までいる。

 また映像が切り替わると、巨大なドームが見えた。周囲にある木が針よりも小さく見えるので、相当の大きさなのだろう。中にはヴァンパイア族が住んでいた。ドームの内側には常に夜空があり、種族特性で昼間はステータスダウンしてしまうヴァンパイア族でも過ごしやすい環境となっている。都市は芸術的な造形となっており、特に中心部にある宮殿は見事なものだった。

 次の映像では、水中都市が映された。ここには人魚のような生物が生活しているらしく、街の中を優雅に泳ぎ回っている。球状の結界が街を包んでいるらしく、海の危険な魔獣はそれに阻まれていた。水中に沈んでいる人魚たちの都市は立体的で、かなり面白い構造をしていた。

 そして一通りの映像が流れると、ゼノネイアが話し始める。



「これらの映像は千五百年前のエヴァンなのじゃ。各地に大小数十の国家があり、科学や魔法を利用した都市を築いていたものじゃよ。驚いたか?」


「千五百年前って……今よりも技術が進んでいるみたいだけど?」


「驚くのも無理はない。しかしこれが事実じゃ」



 クウだけでなく、勿論リアやミレイナやレーヴォルフも驚いている。日本にいたクウならば辛うじて理解できても、リアたちには全く理解不能なものまであった。故に声すら出せなかったのである。

 既に一度話を聞いているアリア、リグレット、ユナもクウたちを見て、自分たちが初めてこの映像を見た時の心情を思い出していた。

 そんな様子のクウたちに対して、ゼノネイアは更に言葉を続ける。



「当時は現代では滅びてしまった種族もいた。ダークエルフ、人魚族、翼人族、それに獣人種もかなりの種類がいたものじゃ。映像には映らなかったが、原始竜、霊尾狐、化猫、翼蛇、金獅子、空狼などの伝説級種族も繁栄していたのじゃよ。現代ではそれぞれ一体ずつが神獣として残っているだけなのじゃが……」



 そう言えば、とクウも思い出す。

 ファルバッサは元の種族が原始竜だと語っていたことがあった。そして巨人種に滅ぼされたことも。



「巨人……?」


「よく知っているのクウ。そうじゃ。この繁栄は、全て邪悪な巨人種によって滅ぼされた。ファルバッサにでも聞いたかの?」


「ああ、あいつがポロっと言っていたのを覚えている」



 クウの言葉にゼノネイアが頷き、再び指を鳴らした。

 すると映像が切り替わり、これまでとは比較にならない文明を持つ都市が映し出される。謎の機械が縦横無尽に飛び回り、天まで届くようなビルが立ち並ぶ。更に宇宙空間にまで進出し、巨大コロニーを形成していた。太陽光発電による電力供給がされているらしく、環境にも優しい。UFOを思わせる巨大宇宙船に乗った人が近隣の惑星まで旅行している光景すらあった。

 科学、魔法技術が桁違いである。



「分かりにくいかもしれんが、これが巨人種なのじゃ。奴らは図体がデカいからの。都市もそれに準じて巨大になっておる。まぁ、我らからすれば奴らが巨人というだけで合って、この世界・・・・では奴ら程度の大きさなら動物にもいるがの」


「凄いな……」


わたくしはもう理解できません」


「何が凄いのかも分からんな!」


「自慢げに言わないのミレイナ。まぁ、僕も全く理解できないけどね」



 流石にリアたちでは宇宙進出を理解できなかったらしい。真っ黒な空間、宇宙船、外から見た惑星を知らず見せられても、そういう反応をするしかないだろう。クウは流石に巨人種たちの文明がどれほど凄いのか理解できた。しかし、これまでとは桁違いの技術力を見せられ、驚いているのも確かだった。

 ただ、ここでクウだけはゼノネイアが先ほど言ったセリフに違和感を感じる。

 少し余裕のあったクウだけが気付けた違和感だった。



「ゼノネイア、さっき『この世界では』といったよな? この光景はエヴァンじゃないのか?」


「その通りじゃよクウ。巨人種たちが住んでいたのは異世界フラクタス。文明神アカシックが管理していた、妾たちの世界とは別の世界なのじゃ」


「その巨人種がなぜエヴァンの生物を滅ぼした? 異世界に住んでいるのに」


「簡単な話じゃよ。巨人種は科学と魔術を極め、遂に異世界へと渡る手段を見つけてしまった。虚数次元から余剰エネルギーを引き出し、一時的に超越者にも匹敵する出力を実現する。それによって本来なら有り得ぬ異世界間移動を成し遂げたのじゃ。勿論、異世界へと渡る理由はある。資源奪取、新技術の探索、単なる領土的野心などじゃな。そして、巨人種共に最初の標的とされたのが―――」


「この世界エヴァンだったわけか」


「そういうことじゃ」



 ゼノネイアが指を鳴らすと、地獄絵図のような光景がうつされる。

 空中を飛ぶ巨大な浮遊物体がエヴァンの各地を次々と制圧していた。抵抗すれば高出力粒子砲が大地を焼き尽くし、反撃すら許されない。原始竜も撃ち落とされ、巨人種に研究対象として解剖実験されていた。他にも様々な種族が捉えられ、解剖などの実験が繰り返される。相手は巨人種故に、エヴァン基準で巨大な体躯を持つ生物ですら、その体躯を生かせなかった。

 これらの凄惨な光景を見て、クウたちは息をのむ。



「妾たちエヴァンの神々は文明神アカシックに抗議した。異世界間の侵略は神域協定に反するとな。まぁ、ここで神同士の決め事は置いておくが、ともかく許可のない異世界侵略は禁止されているのじゃ。巨人種はそれを破り、異世界へと侵略してきた。まぁ、如何に巨人と言えど、神々の協定を知っているわけではない。つまり、責任の所存は奴らの世界フラクタスを管理する文明神アカシックにあるのじゃ。管理不足ということじゃな」



 想像以上にスケールの大きな話となり、クウは頭の中で整理を始める。

 エヴァンも過去には今よりも進んだ文明を持っており、多くの種族がいた。だが、そこに文明神アカシックの管理する世界から巨人種が攻めて来たということだ。

 とりあえず、ここまでは理解している。



「それで、文明神アカシックと巨人種はどうなったんだ?」


「慌てるなクウよ。ちゃんと説明する故にな。その前に、まず妾が神々の中でどのような立場にあるのかを説明しておく」


「ゼノネイアの立場?」


「そうじゃ。妾はこれでも最高位の神格を持つ存在じゃ。神々の中には位階があって、最高位、高位、中位、低位、最下位の五段階に分けることが出来るのじゃ。そして妾は裁きを司る最高位の神格。つまり、神々すらも裁く権限を持っておるのじゃよ。神域協定と呼ばれる神々の決まり事を破れば、妾が裁くことになっているのじゃ」


「つまり、アカシックは神域協定ってやつを破ったからゼノネイアが直接裁いたってことか?」


「察しが良いの。アカシックは中位神格なのじゃ。妾にかかれば処分など容易い。妾は権能【虚数領域ゼノネイア】で奴の神銘と権能を封印し、邪神へと変えた。補足知識じゃが、神は名を失うと邪神となる。つまるところ、犯罪を犯した神じゃな。力を奪われ、本来なら反省期間が過ぎるまで幽閉されるのじゃ。その際に邪神となった神の管理する世界も妾が封印することになっておる。世界フラクタスはアカシックの邪神化と同時に妾が封印した」


「じゃあ解決だろ?」


「ところがじゃ。奴は想像以上に強かじゃった」



 ゼノネイアがそう言って指を鳴らすと、再びエヴァンで暴れまわる巨人が映し出される。心なしか、目が赤く染まり、凶暴化しているように見えた。更に、身体からオーラの触手に近いものを伸ばし、触れた存在を破壊している異常な個体までいる。その個体は背中に三対六枚の翼があったので、まるで熾天使のようでもあった。

 この映像を見せつつ、ゼノネイアは説明を続ける。

 


「アカシックは自らの種族に細工を施していた。それは、自分が力を奪われ、加護の力を失ったときに発動するトラップのようなもの。巨人種は、文明神の加護を失うと同時に凶暴化する細工をされていたのじゃ。さらにアカシックの天使として働いていた熾天使もエヴァンで暴れまわり、そのせいでアカシックの逃亡を許してしまったのじゃ。逃亡先は、もちろんエヴァンの中。邪神に格落ちしたおかげで保有霊力も下がり、世界崩壊は避けられたが、厄介な場所に逃げられてしまったのじゃ。当時はファルバッサたちも超越化しておらんかったゆえに、抵抗など不可能。まぁ、この戦いの中でファルバッサたちは超越化を果たしたのじゃがな。それはもっと後の話となる。ともかく、ただでさえ肉体能力の高い巨人種が、邪神を後ろ盾にして、更に魔導科学技術の結晶を武器としてエヴァンで暴れまわった。どうなるかは予想できるじゃろう?」



 映像には深紅に染まった街があった。

 炎、血によって美しかった都市も一色に彩られ、凄惨なものとなっている。巨人対抗するべく挑むも、多くの種族が滅んでいった。

 正面戦闘を挑んだ獣人種は多くが滅ぼされ、エルフより力の強いダークエルフは前衛を務めていたので真っ先に滅びた。人魚たちも海に毒を流されて絶滅。

 百億近かった人口も数百万人にまで低下していた。

 核兵器などの汚染が激しい武装すら容赦なく使用され、もはや住む場所すらままならない。

 加護を失い、狂った巨人たちによってエヴァンの民は追い詰められていた。



「邪神を討伐したくても、妾たち神々は地上へと顕現することが出来ぬ。もしも地上へと現れれば、多大な負荷によって世界が崩壊してしまうことじゃろうの。そのために天使がいるのじゃが、当時は一人もいなかった。せめてファルバッサたちが超越化していればよかったのじゃがな……」



 舞い上がった塵によって空は暗くなり、化学汚染が森林を破壊する。魔導兵器によって地殻運動にすら影響を与えられ、各地で火山が爆発を起こしていた。川には毒が流れ、泉には死体が浮き、海は真っ赤に染まっていく。放射能で大地は汚染され、動植物は姿を消した。

 初めの映像から一変した地獄のような光景。

 同じ世界とは思えない。



「絶望的だな。超越者も無しにどうやってこれを解決したんだ? この状況から今みたいな自然豊かな土地まで回復させるなんて、超越者の力が関わっているようにしか思えないんだけど?」


「うむ。妾たちの中でも、一度世界を滅ぼして再生するという案すら持ち上がった。勿論、それは最終手段という奴じゃがの。何度も話し合いを重ね、妾たちは一つの手段を実行することになったのじゃ」



 ゼノネイアが指を鳴らすと映像が切り替わって一つの画像が映される。

 それは、六柱の神々に囲まれた一人の人間だった。



「妾たちは異世界から魂を呼び寄せ、そこに加護を与えて天使を創ることにした。魂のまま呼び寄せることで記憶を保持させ、さらに妾たちの力で封印を解除して超越化させた後、滅びかけのエヴァンへと送り出したのじゃ。相手が邪神なら、超越天使でも充分に倒せるからの」



 







評価、感想をお待ちしております

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ