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虚空の天使【完結】  作者: 木口なん
再会編

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306/566

EP305 闘技大会本選四日目③


 居合の一撃と共に莫大なオーラが飛ぶ。それは濃密に圧縮された斬撃であり、直線状のものを全て切り裂いてしまうほどの威力を持っていた。魔素とオーラによる斬撃であるため、同様の防御を取らなければ問答無用でダメージを受けてしまう。

 だが、ユナは身体に回転を掛けつつギリギリで躱し、そのまま反撃を仕掛けた。自身の回転をそのまま居合に乗せて、今度は黄金の斬撃が飛ぶ。

 そしてクウはそれを鞘で受け流した。

 逸らされた黄金の斬撃が結界に当たり、弾けて空気が震える。



「ふぅぅ……」


「すぅぅ……はぁぁ……」



 クウとユナはゆっくりと呼吸しつつ次の一手を探り合う。今の応酬で斬撃を飛ばし合うだけではいつまでも勝負がつかないと悟ったので、次は本気のぶつかり合いになる。

 まず、先程と同様にクウが動いた。

 足元で魔力とオーラを爆発させ、それによる高速移動でユナの背後に回り込む。そして容赦なく本気で神刀・虚月を振り下ろした。勿論、能力を発動させてはいけないので、魔力は流さず、纏わせるだけにしている。

 規格外の速度を生み出すこの移動法も慣れたもので、クウは瞬動法と名付けていた。

 しかし、ユナはこの速度ですら反応して見せる。

 エクストラスキル《気力支配》を習得しているので、ユナの思考速度はかなりのものだ。また気配も充分以上に感知できるので、この程度の動きならついていけるのである。更に、《明鏡止水》で発動できる自動反応のお陰で、見えない攻撃に対しても体が勝手に反応してくれる。亜音速程度なら、ユナにとっては問題のない範囲だった。



ぬるいよ! その程度じゃ私には届かない!」



 ユナはクウの攻撃を鞘で受け流し、カウンターとして蹴りを放つ。ここで敢えて刀を振らなかったのは、カウンターの初撃はクウに防がれると理解していたからである。

 そしてユナの予想通り、クウは局所展開した魔力障壁で受け止めたのだった。クウはそのまま左手に持った鞘を振るい、ユナの首筋を狙う。ユナは首を傾けてそれを回避し、今度は魔素とオーラを纏わせた魔刀・緋那汰で横に薙いだ。

 これは飛ぶ斬撃ではなく、高密度に纏わせて攻撃力を上げる纏いだ。そのため、クウは一度飛び下がって回避した。ユナは敢えて追撃せず、魔刀・緋那汰を鞘に納めながら口を開く。



「戦いはここからが本番だよ。私の全力を見せてあげる」



 そう言うと、ユナは体内で膨大な魔力を練り上げる。黄金のオーラがチリチリと音を立てて舞い、まるで炎のように揺らめき始めた。魔法にオーラを混ぜ込む高等技術であり、これをすると《気纏オーラ》による耐性強化を貫くことが出来るようになる。勿論《気纏オーラ》だけでなく各種耐性スキルも同様に貫けるのだ。

 スキルの同時使用であるため難易度は高いが、高位能力者の中では必須技能である。



「『《臨界恒星炉スターリアクター》』」



 《陽魔法》の特性「恒星」「神聖」を利用した魔法であり、異常な肉体活性と無尽蔵な体力を生み出すという効果を持つ。「恒星」による無限のエネルギーを体内で循環させると、その膨大な熱量で肉体を傷つけてしまう。そこを「神聖」による回復効果で補い、少量の魔力から莫大な体力を生み出すことが出来るようになったのだ。

 強化率は脅威の数十倍である。

 ただ、全魔力を注ぎ込めば百倍近くまで強化可能だ。

 そしてユナが最大強化をしないのは理由がある。それが次に使用した魔法だった。



「『《緋の羽衣》』」



 特性「恒星」による超高温プラズマを「重力」で操り、羽衣の形にして纏う魔法である。これも「神聖」によって自身へのダメージを無効化している。

 この状態のユナは太陽を纏っていると言っても過言ではなく、魔素やオーラで強化していない武器で攻撃すれば、ユナへと届く前に蒸発してしまうことだろう。勿論、生物も近づけない。

 無尽蔵の体力、凄まじい肉体強化を《臨界恒星炉スターリアクター》で行い、《緋の羽衣》であらゆる攻撃を無効化する。これがユナの全力だった。



「……わぁ。凄い」


「とっても棒読みだね。でもそんなくーちゃんも大好きだよ!」


「それはどーも。しかし本気で拙いな」



 負けはしない。

 だが勝つ方法も思いつかない。

 制限された能力内でユナの本気を打ち破るのは骨が折れそうである。尤も、《神象眼》や《幻葬眼》のような反則級の能力を使えば一瞬で勝負がついてしまい、面白くも何ともないのだが。



「これを防げるかな?」



 ユナは魔刀・緋那汰を抜きながら六千度の熱を纏わせる。普通ならばあらゆる物質が蒸発してしまう温度だが、この魔刀・緋那汰は補助効果によって熱に対する絶対耐性を持っている。《天賜武アンノウン》は創造した武器に一つだけ魔法効果を込めることが出来るので、ユナは自分の《陽魔法》と組み合わせるために熱に対する補助効果を組み込んだのだった。

 そして凄まじい熱で赤く発光している魔刀・緋那汰が軽く振り下ろされた。

 本当にただ振り下ろしただけの軽い一撃である。

 攻撃の意思も殆ど乗っておらず、重力に任せて上から下へと刀を降ろしただけだ。

 だが、それだけで全てが裂けた。



「危な……っ!」



 気の抜けた攻撃とも呼べない攻撃で直線状の全てが熱で引き裂かれた。不壊効果のある闘技場の地面には赤熱した一直線の斬撃跡が刻まれ、観客を守る結界にも同様の跡が付いている。何となくの勘で直線状から逃れたクウも流石に肝を冷やした。



「避けるんだ? まぁどう見ても怪しいもんね。それ!」


「くっ……なんつー理不尽な攻撃」



 《緋の羽衣》のせいでユナにと近寄ることが出来ず、更に《臨界恒星炉スターリアクター》で超活性状態にあるユナの肉体能力は凄まじい。魔力やオーラによる強化の比ではないのだ。流石のクウでも今の状態では荷が重い。

 そこで、クウは能力を少し見せることにしたのだった。



「まさかこれを使わされるとはな! 《銀焔シロガネホムラ》!」



 魔素とオーラを固めた銀霊珠に燃やし尽くす意思を込めることで発動する銀魔術しろがねまじゅつ。理不尽な白銀の炎がユナの《緋の羽衣》を消し去った。炎が炎を飲み込むという摩訶不思議な現象だったが、それよりも不思議なのはユナの体には全くダメージが無いことだろう。

 炎だけを燃やし尽くす炎という、物理法則に真っ向から喧嘩を売るような意味の分からない意思を込めたのだから当然だが。

 そして《緋の羽衣》が消失したユナに瞬動法で接近したクウは、神刀・虚月で神速の突きを放つ。白銀の炎で《緋の羽衣》が消されるという異常事態で呆気に取られていたユナは回避が遅れてしまった。それでも鞘で突きを逸らし、左腕が少々切り裂かれるだけで済んだのだからユナも大概である。

 クウ以上に武術の才能があるのは確かな事実なのだ。



「今の技は何かな? 銀色の炎なんて初めて見たよ」


「魔素、オーラ制御能力の賜物だな。まぁ、他にも能力を混ぜているけど」


「それがくーちゃんの能力?」


「いや、遊びで作ったサブだな」


「その威力で遊びなんだね……」



 クウが超越者であることはユナも知っている。魔王アリアや錬金術師リグレットのお陰で超越者の規格外さは理解しているつもりだったが、改めてその凄さを思い知らされた気分だった。

 だが、クウとしても少し驚きである。

 本当は「意思干渉」を使うつもりもなかったのだが、ここで使わされることになったのだから。ユナの能力がそれだけ完成されているということである。



「じゃあ、ここからは少しだけ俺の力を見せてやるよ」


「頑張って防いでみせるよ!」


「まずはこれだな。《神殺銀槍かみころすしろがねのやり》」



 クウは両手の間に銀霊珠を作り、引き延ばして槍の形にする。そして大きく空中に飛び上がり、腰の回転を利用して投げつけた。手加減して音速程度の速度にしているため、ユナでも見切ることは出来るだろう。

 そしてクウの予想通り、ユナは《臨界恒星炉スターリアクター》による超活性の肉体で遠くまで逃げていた。

 地面に直撃した《神殺銀槍かみころすしろがねのやり》が炸裂し、その場で巨大な白銀の柱になる。生身で巻き込まれたら体をズタボロにされる威力であるため、かなり恐ろしい。それでいて広範囲技なのだから笑えない。

 ユナも効果のほどを見て顔を引き攣らせていた。



「距離を取るのは下策だぞユナ?」



 クウは重力に従って落ちながら《崩閃シヴァ》を連発し、ユナはそれを超人的な回避力で全て避け続ける。並みの選手なら一撃で退場になる《崩閃シヴァ》を次々と放つのだから、観客も若干引いているほどである。



「ちょっとー! くーちゃんズルい!」


「戦いとは常に不平等なんだよ」


「だったら私だって手加減しないもん! 『《灼熱聖域ヘル・サンクチュアリ》』」



 ユナは広範囲型の魔法を発動させる。

 自分の周囲数十メートルで活発に核融合を引き起こし、灼熱地獄を出現させる領域型の魔法だ。普通ならば発動した時点で相手は死ぬ。魔力とオーラによる防御があればどうにか耐えきれるぐらいだろう。

 空気中に含まれている原子が核融合を引き起こし、激しい発熱と発光を引き起こす。太陽フレアと同等の現象が闘技場内部で発生しているのだ。エネルギー量こそ本物の太陽には及ばないが、性質としては殆ど同じである。到底人が耐えきれる温度ではない。

 勿論、ユナの持つ黄金のオーラが織り込まれているため、気防御オーラガードによる耐性強化を貫くことが出来るだろう。

 クウは仕方なく、超越者としての力を使った。

 世界から独立した情報次元を持つ超越者は、概念攻撃でしかダメージを与えることが出来ない。『世界の情報レコード』に組み込まれている魔法システムでは意味がないのだ。超越者が外界からの情報流入を遮断すれば、灼熱のマグマの中ですら生きていられるのである。

 クウは熱や痛みなどを全て遮断し、《灼熱聖域ヘル・サンクチュアリ》を無効化したのである。



「効かないな」



 自分の見た目、特性を構築している情報次元体が世界を押し退ける。核融合によって弾けた空気はクウを避けるようにして爆発を起こし、放射熱すらもクウを避ける。

 固有の情報次元と意思次元を持つ超越者自体が一つの世界にも等しいので、世界エヴァンはクウへと干渉することが出来ないのである。『世界の意思プログラム』がクウの意思力を凌駕すれば無理やり干渉できるのだが、『世界の意思プログラム』はそれほど強くない。『世界の意思プログラム』はあくまでも、運命と言う世界全体の方向性でしかないのだから。



「炎と熱を全て喰らい尽せ。《銀焔シロガネホムラ》」



 クウは右手に銀霊珠を作り出し、「意思干渉」で性質変化を与える。「意思干渉」によって魔素とオーラの塊は変質し、炎と熱だけを燃やし尽くす効果をもたらした。

 白銀の炎が闘技場内部を蹂躙し、《灼熱聖域ヘル・サンクチュアリ》の超高温プラズマを焼き尽くす。炎が炎を飲み込むという摩訶不思議な光景だが、これこそが「意思干渉」の力なのだ。ユナや結界には僅かなダメージをも与えず、《灼熱聖域ヘル・サンクチュアリ》だけを喰らい尽くしたのである。

 その異様さは観客ですら言葉を失うほどだった。

 炎と熱を喰らうように意思を込められた《銀焔シロガネホムラ》は、ユナが発動している《臨界恒星炉スターリアクター》すらも消してしまう。ユナ自身は傷付けず、魔法効果だけを焼き尽くしたのだ。



「え? ……え?」


「これが俺の能力の一部だ。どうだ?」


「凄くチートだね」


「失礼な。ちゃんと努力して手に入れた能力だぞ?」



 能力では絶対に勝てない。

 ユナは超越者の凄まじさを知っていたつもりだったが、改めて思い知らされたのだった。このまま魔刀・緋那汰に《陽魔法》を加え、《無双》《魔力支配》《気力支配》《明鏡止水》を駆使しつつ戦っても良いのだが、どう考えても敵わない。



(能力なしで抜刀術の勝負ならどうにかなるかな……? でも今更だね)



 これだけ派手に能力を使っておきながら、ここからは刀だけで勝負とは言いにくい。それに、どうせこの後は魔王アリアとのエキシビションマッチも残っているのだ。無理して自分が勝つより、クウに優勝して貰って魔王アリアとクウの勝負を見た方が実力も測りやすい。

 ユナはそう判断を下し、魔刀・緋那汰を鞘に納めて宣言した。



「降参。私の負けだよ」



 手合わせをしたければ、これからはいつだって出来るだろう。

 折角再会したのだから、わざわざ本気で戦う必要もない。それに観客に対する『魅せ』も充分だ。これ以上は必要ないだろう。決勝戦としての体は保たれたはずである。クウは全力を出す必要もないし、ユナ自身もクウを倒せる自信がない。

 この場はどちらかが引く方が良いのだ。

 現段階でユナの攻撃を全て無効化しているクウは優勢に見える。

 ユナが降参してもブーイングは起こらないだろう。

 そう考えてユナは降参したのだった。







設定について質問がありましたので、後書きにて答えます。

今回はステータス値についてですね。これはレベルによって基本値をつけています。


Lv200 :10000

Lv180 :9000

Lv160 :8000

Lv140 :7000

Lv120 :6000

Lv100 :5000

Lv90  :3500

Lv80  :3000

Lv70  :2500

Lv60  :2000

Lv50  :1500

Lv40  :1000

Lv30  :800

Lv20  :500

Lv10  :200


これは基本値ですので、もちろん変動します。種族、スキル構成などによって80%~120%ほどですね。あとは天使や、最高位の魔物などは最大400%の補正が付いています。他にも加護を受けるとステータス値に補正があったりしますね。補正の度合いは適当ですけど。



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