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虚空の天使【完結】  作者: 木口なん
再会編

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304/566

EP303 闘技大会本選四日目①


 闘技大会四日目となる決勝戦は一番の盛り上がりを見せていた。今日は一番に決勝戦を行い、次に三位決定戦をする。そしてその後、魔王アリアと優勝者によるエキシビションマッチがあるのだ。

 誰もが見逃せない試合だと考えている。

 仕事などの関係でテレビですら観戦できない者は、せめて録画で見ようとしているほどである。国民全員が楽しみにしているのは明らかだった。

 盛り上がりと同時に緊張は高まり、観客は闘技場の中央部へと注目する。

 そこで対峙しているのは二人の人物。

 一人は丈の長い上着を羽織り、フードで顔を隠した初参加のソラ。武術面も目を見張るものがある中、魔力やオーラの制御も達人級を遥かに超えている。まだ力を隠している様子すら見られることから、注目度も高かった。

 そしてもう一人はユナ・アカツキ。この国では誰もが知っている魔王軍第一部隊の隊長だ。艶のある黒髪を揺らし、繊細な技量で無数の武器を使いこなす人族の少女。【レム・クリフィト】では魔人以外にも多くの種族が暮らしているのだが、人族で重要なポストに就いているのは珍しい。しかし明るく振る舞う彼女は人気者であり、憧れの対象となっていた。



(遂に……)



 ソラは感慨深く呟く。その言葉が口から出ることはなかったが、その内に込められた思いは一言で語りつくせるものではない。

 全てはユナと再び会うため。

 そのために、世界エヴァンについて調べ、迷宮を踏破し、力を得て、死線すらくぐり、超越者にまで辿り着いた。世界という枠から外れても尚、探し求めた最愛の人。

 正直、今すぐにでもフードを外して自分だと伝えたい。

 ユナの様子を探るために正体を隠していたが、こうして直に相対すれば理解できる。彼女ユナもまた自分クウを待ち望んでいるのだと。

 そしてユナは昨日のことを思い出し、目の前に立つ少年に思いを馳せていた。



(くーちゃん……だよね)


『あれは妾の天使クウ・アカツキ。お主の血の繋がらない弟であり、お主が最も愛する男。そしてお主を最も愛している男じゃ』



 虚空神ゼノネイアの声が蘇る。



『あなたと彼の相性は素晴らしいわ。二人ともが運命に愛されているようね。運命神の私が言うのだから間違いないわ。だってあれ程の試練を乗り越えたのですから』



 運命神アデラートの微笑みが頭に浮かぶ。



『この世界に召喚されて、たったの一年で超越者か……やるではないか』


『ああ……それだけ才能に恵まれているか、想いが強かったのか……』


『きっと両方だよ』



 武装神アステラル、破壊神デウセクセス、魔法神アルファウもクウを褒めていた。そしてそれだけの想いが自分に向けられていると知り、ユナも嬉しくなった。



『羨ましいわねぇ。私もそんな相手が欲しいわ。そうだ、リグレットは私も妻にする気ない?』


『だ、ダメだ! リグレットのは私のものだ!』


『ははは。そうだね。僕もアリア以外に目を向けたりしないさ』


『つれないわねぇ』



 魔王アリアをからかって遊ぶ創造神レイクレリアも、クウの偉業には驚いていた。自分の天使であるリグレットは、超越化するまでに数十年と時間を掛けている。彼が研究者気質で戦闘を得意としないことを鑑みても、クウの超越化は異常なほど早い。

 逆に言えば、それだけの死線と、それを越えるだけの強い意思を見せつけたということになる。

 一応、砂漠での出来事や多頭龍オロチとの戦いは、虚空神ゼノネイアが半分ほど仕込んだことである。運命神アデラートの力も借りて未来の因果関係を辿り、道を示すことで試練を与えた。クウが持つ意志の強さを見込んでの無茶な試練だったが、見事に乗り越えてみせたのである。



『誇るのじゃぞユナ・アカツキよ。クウはお主のために力を手に入れたのじゃ』



 最後に虚空神ゼノネイアから掛けられた言葉が麻薬のようにユナの精神を高ぶらせる。

 ならば試そう。

 クウが辿り着いた一つの極致を、是非とも見せて欲しい。

 そんな思いを抱きつつ、ユナは……今にも爆発しそうな感情を押さえつける。



(あは……我慢できそうにない)



 もういいだろう。

 試合が始まるまで待つ必要などない。

 目の前に最愛がいるのだから、昔のように感情を露わにすればよいのだ。



「ふふ……うふふふふ……」


「……?」



 いきなり怪しい笑い声を漏らし始めたユナを見て、ソラ……いや、クウは不審に思う。だが、それと同時にこの笑い方に心当たりを感じたのだった。

 地球で一緒に暮らしていた頃、何度も見たことがある。

 クウはそれの思考に一瞬だけ意識を奪われ、大きな隙を晒してしまった。まだ試合前であり、相手がユナだということもあったのだろう。普段のクウではあり得ないほどの隙だった。

 ユナはその隙を突き、一瞬で間合いを詰めて手を伸ばす。

 これには観客も驚いていた。

 まだ試合が始まっていないにもかかわらず、ユナ・アカツキが不意打ちをしようとしているように見えたからである。見ていた者は息をのみ、目を見開く。

 だが、次の瞬間に彼らは別の意味で驚くことになった。



「くーちゃーん! 会いたかったよー!」


「うおっ!? なんでバレたむぐっ!?」



 ユナは一瞬でクウの被っていたフードを外し、慣れた手つきで唇を奪う。およそ二年ぶりになるが、ユナの手腕は劣っていなかった。逆にクウはユナの襲撃がない微温湯の日常に浸かっていたせいか、反応も回避も大きく遅れる。

 そこに敵意があれば初見でも回避は容易いが、ユナが向けているのは好意だ。

 よほど慣れていなければ回避は難しい。



「くーちゃんだぁ……この感触はくーちゃんだよ!」


「ちょっ……おま……待てこの!」



 力はクウの方が上なハズだが、どうしてか引き剥がすことが出来ない。

 そもそも超越者であるクウの力の根源は意志力であり、本当にユナを跳ね除けようと思わなければ相応の力は発揮されない。結局のところ、クウもこの状況を甘んじて受け入れているのである。

 ただ、クウを押し倒し、ユナがキスを連発するという事態に観客は付いていけていなかった。

 人間、叫び声を上げられるうちはまだ余裕があるものだ。本当に驚いてしまったとき、人は声も出すことが出来なくなる。

 観客たちの今の状況がまさにそれだった。




((((何が起こった!?))))



 それが偽らざる全員の思いである。

 普段の凛々しい姿しか知らない彼らからすると、今のユナの姿は衝撃的なのだろう。唖然としてその光景を見つめていた。

 隠されていたクウの素顔が明らかになったということもそうだが、それよりもユナの暴挙に気を取られてしまうのは仕方のないことだろう。



『え、えーと。決勝戦を始めますよ? 始めても良いんですよね……?』



 観客たちが我に返ったのは、どことなく遠慮気味なアナウンスを聞いてすぐだった。この予想だにしなかった事態を前に、今が闘技大会の決勝戦であることを忘れかけていたのである。

 そしてアナウンスを聞いたユナは、ようやくクウから離れたのだった。



「試合かぁ。残念」


「まったく……変わらないな。警戒して損した」


「私が変わらないのは当たり前だよ」


「ああ、よーく分かったよキス魔め」


「えへへ。大丈夫、くーちゃんにしかしないから」



 まるで大丈夫な気がしないクウだが、地球に居た頃からこれなので慣れたものだ。それにユナの好意は素直に受け取ることにしている。

 かつて自分は彼女に救われたのだから、その彼女から向けられる好意を無下にするのは非道というものだろう。それに、それを抜きにしてもクウはユナを愛している。

 友愛、家族愛、恋愛、全ての感情を含めてユナが好きなのだ。

 そしてその執念と願いの末に、こうして再開も出来た。顔には出さないが、クウはユナ同様に嬉しさで気分が高揚している。正直な話、決勝戦など別にどうでも良くなるほどだった。



「とはいえ、試合はしないといけないか……」


「そうだねぇ。まぁ、折角だからくーちゃんの力を見せてもらうかな?」


「……全力は出さないぞ?」


「えー」



 クウが全力を出した場合、それは情報攻撃や意志攻撃となる。つまり、この闘技場に張られている結界が意味をなさなくなる可能性が高いということだ。更に、この闘技場内で負った傷は精神ダメージへと変化されることになっているのだが、このシステムも機能しないかもしれない。

 このシステムはリグレット・セイレムによる神具の一つによって齎されているのだが、強い概念攻撃を受ければ流石に機能しないだろう。なので、クウが使うのは必然的に剣技、魔力、オーラとなる。ギリギリで弱めの幻術と言ったところだろう。



(まぁ、少なくとも……手は抜けないけどな)



 《真理の瞳》でユナのステータスが見えているため、クウは油断していない。実際、クウは超越化する前にも超越者オロチに傷を負わせ、《幻夜眼ニュクス・マティ》で出し抜くことに成功している。それで超越者が負けることはないが、絶対的に傷すら負わない程の差がある訳ではないのだ。

 全力ではなくとも、本気で相手するべきである。






―――――――――――――――――――

ユナ・アカツキ    17歳

種族 天人 ♀

Lv189


HP:38,291/38,291

MP:36,882/36,882


力 :39,728

体力 :45,928

魔力 :35,839

精神 :37,628

俊敏 :38,473

器用 :35,599

運 :38


【魂源能力】

天賜武アンノウン

《陽魔法》


【通常能力】

《武具鑑定 Lv6》

《無双》

《魔力支配》

《気力支配》

《明鏡止水》

《統率 Lv7》


【加護】

《武装神の加護》


【称号】

《異世界人》《武装の天使》《戦女神》《到達者》

《極めし者》《武の頂点》《魔王軍隊長》

――――――――――――――――――――




天賜武アンノウン

イメージした武器を創造できる。本人以外に

は使えないデメリットがある。魔法的効果を

一つだけ込めることが可能で、材質には特に

制限が無い。

ただし、性能に応じて魔力を消費する。




《陽魔法》

ユニーク属性魔法、陽属性。

昼を司る太陽の力。万物を照らし、灰すらも

燃やし尽くす劫火でありながら、母なる癒し

の力すらも兼ね備えている。

「恒星」「神聖」「重力」の特性を持つ。



《無双》(エクストラスキル)

武術系最上位スキル。

全武術系スキルの上位融合スキル。

あらゆる武器を自在に使いこなす事が可能で

あり、魔力、気力付与すらも容易く出来るよ

うになる。

千の武具を操り、あらゆる敵をその手で屠る。




《明鏡止水》(エクストラスキル)

心身強化系最上位スキル。

《剛力》《硬化》《極魔》《恒心》《神速》

の上位融合スキルであり、肉体能力と精神性

を極限まで極めた境地へと至った者の証でも

ある。

意識が澄み渡り、完全なる無駄のない肉体能

力を得ることになり、同時に、危機に対する

鋭敏な感覚を得る。

魔力を使用してアクティブ状態にすることで、

破砕、金剛硬化、魔力濃密化、精神攻撃無効、

自動反応の追加効果が現れる。






(【魂源能力】か……すでに天使化していたとはな)



 魔法武器マジックウェポンすら自在に作り出す《天賜武アンノウン》と、それで作り出した武器を自在に操るスキル《無双》。この組み合わせが凶悪である。

 更に心身強化系の最上位である《明鏡止水》すら保持しているのだ。魔王軍最強部隊とも呼ばれる第一部隊で隊長を務めるだけはある。

 クウは腰に付けた鋼の長剣を意識し、目の前のユナへと集中する。

 そしてユナもニコニコとした笑顔を崩すことなく、力を抜いて構えていた。

 ようやく試合を始める雰囲気となったことで、再びアナウンスが会場内に響く。



『決勝戦、ソラ選手とユナ・アカツキ選手の試合を開始します!』



 その瞬間、舞台の上で火花が散り、金属音が激しく木霊し始めるのだった。










遂に再会しました。

リアちゃんはどうしましょうかねぇ

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I'm all for a threesome... I think it would be adorable.
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