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虚空の天使【完結】  作者: 木口なん
ルメリオス王国編
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EP2 異世界エヴァン

4/5 大幅修正


「勇者……ですか?」


 清二が聞き返す。

 予想外過ぎる国王の言葉に清二だけでなく、クウも怪訝そうな顔をした。ただ理子と絵梨香だけは少しワクワクとしているような顔をしていたのだが……

 勇者と言えばその相方はお姫様。

 女の子の2人が憧れるのは当然だった。

 一方でいきなり突拍子もないことを言い出した国王ルクセントは4人の召喚者を落ち着けるような、宥めるような口調で話しかけた。



「ふむ、いきなり勇者と言われても理解できぬだろうからな。そのような反応は当然だろう」



 クウだけでなく、他の3人もコクコクと頷く。それを見たルクセントも深く頷いて話を続けた。



「先ほども言ったがここはルメリオス王国。君達からすれば異世界になるこの世界エヴァンにある人の国だ。まずはそこを理解してもらおう」


「異世界……エヴァン……? 地球ですらない?」


「……嘘でしょ」


「なんで日本語が通じるんでしょう?」



 ここで絵梨香が素朴な疑問を投げかける。

 国王含め、姫や両サイドに並ぶキラキラした派手な服を着た男たちの顔つきは外人風だ。髪色も茶髪や金髪だけでなく、赤や紫の人までいる。地球上ではありえない髪色も多く、少なくとも日本語が通じるとは思えない。

 だがルクセントは落ち着いた様子でその疑問に答えた。



「ふむ、言語が何故通じるか……それはよくは分かってはいないのだが、君たちを召喚した魔法陣に言語を強制的に理解させる機構が付いていると考えられているな。そもそもあの魔法陣は光神シン様より賜ったものだ。とても我らには理解できない代物なのだよ」



 神……

 その単語にクウはピクリと反応する。

 地球ならば、神から賜ったなどと言えば新手のカルト宗教か何かだと思われてしまうことだろう。だが目の前の国王はごく自然体でそれを口にした。

 クウは眉を顰めながら口を開く。

 


「質問いいですか?」


「なんだね?」


「はい、神から賜ったと言われましたが、それはどのように? まさか神が直接魔法陣を描きに来たなんてことはないですよね?」



 クウの質問に周囲の煌びやかな服を着た男たち――貴族たち――はザワザワと驚いたような表情を浮かべながら騒ぎ出す。クウの言葉を信じられないといった様子の目を向けていた。

 この世界では神の存在は当然とされている。ふざけたような物言いのクウに多少の反感を持つのは無理もなかった。

 ルクセントも眉を顰めながら口を開く。



「何を言っておる? 光神教の教会に神託があり、この城の地下に勇者の召喚魔法陣を3つ・・与えるから有意義に使えと言われたのだ。その神託通り、地下には3つの魔法陣があった」


「3つですか?」


「うむ、すでに1度使っている。君達の召喚は2つ目の魔法陣を使ったのだ」


「ちなみに1度目はいつ使ったのですか?」


「ふむ……。確か1年ほど前だったか……?」



 ルクセントの答えにクウの頭の中には1年前から存在自体が消えていた幼馴染の姿が浮かぶ。だが首を振ってその考えを振り払った。



「そうですか。それで俺たちをわざわざ召喚したってことは何か頼みたいことがあるんですよね? 俺たちの世界では勇者といえば魔王を倒す人物と相場が決まっているのですが……まさかそういうことですか?」


「なるほど。君達の世界にも魔王がいるのかな?」


「いえ、俺たちの世界では童話の中の存在ですね」


「そうか……では一からすべて説明しようか」


 

 ルクセントはたっぷり1時間ほどかけてじっくりこの世界についての説明を始めた。たまに姫や宰相らしき男が補足説明しながらこの世界の状況とクウたち4人が呼ばれた理由を知ることになった





 まずこの世界は人族と魔族の2種類の人種がいる。

 人族は人、エルフ、ドワーフ

 魔族は魔人、ヴァンパイア、竜人、獣人

  

 と言うように細かく分けれる。


 そして人族につく4柱の【善神】

 光神シン    

 運神アデル   

 武神テラ    

 造神クラリア 


 魔族につく3柱の【悪神】

 虚神ゼノン   

 魔神ファウスト 

 壊神エクセス  


 の7柱の神々が世界に存在しているのだ。


 だが、この3柱の悪神が運神アデル、武神テラ、造神クラリアを迷宮の奥底に封印した。それによって【善神】の力が弱まり、魔族の動きが活発化し始めた。実際に、魔族の国で魔王に次ぐような強者が生まれている節があるという。ちなみに、これらの情報も遥か昔に知らされた光神シンからの神託によるものだった。

 人口では人族が圧倒的に上だが。基礎能力が魔族に劣るので戦争ともなれば負けは必至。それを憂いた光神シンが召喚魔法陣を3つ用意したという。

 この魔法陣は、勇者の資質を持つ者を1人から5人呼び出すという。


 そして前回呼び出した3人の勇者は魔族の砦を一つ落としたものの、その内の2人が死に、そしてどういう訳か1人が裏切って魔族側についたのだそうだ。勇者の死亡は完全に事故だが、もう1人が裏切ったのは予想外で国中が大慌てになったのだという。

 そして砦を落として以来、人族の国に魔物がやって来るようになった。魔物というのは魔力によって変質化した異形の生物で凶暴であり、魔族たちが操って人族を襲っていると言われている。

 さらなる危機に立たされたルメリオス王国はもう一つの魔法陣を使うことを決定し、結果クウたち4人が召喚された。


 そして状況によっては最後の魔法陣も起動させるつもりだという。



(要するに俺たちを誘拐して戦力にして【悪神】から3柱の神を取り戻し、願わくば魔族を撃退するってことだろ。なんて他人任せな……普通の日本人が戦えるわけないのにな。俺みたいに武術を修めてる奴なんてそうそういないだろうし)



 クウはルクセントの話を聞き終わって、国王ルクセントを初めとした謁見の間にいる全員に不信の目を向ける。その目は清二たちにも例外なく向けられ、クウはいざとなればクラスメイトの3人も見捨てるつもりだった。

 そんなクウの内心には気づかない清二は不安そうな表情をしながらルクセントに質問する。



「つまり僕たちはこれから戦わされるんですか?」



 ルクセントの話によればこれから戦争で戦わされるという。平和の国だった日本で育った学生がいきなり戦争と言われればそういった反応をしても仕方がないというものだろう。

 まして、戦い方すらも知らない素人には無理な話だった。

 だが、ルクセントは承知しているとばかりに頷いて頭を下げながら口を開いた。



「そうだ。できれば我らを助けてほしい」



 王が頭を下げて頼み込む。

 王や貴族がいない国で育ったクウたち4人には理解できないことであったが、普通はそのようなことは有り得ない行動だった。

 無暗に頭を下げれば様々な者たちに舐められかねないのだ。



「王よ、頭を上げてください。我らがいくらでも頭を下げます。ですからあなたは……」


「そうです。如何に勇者と言えど示しがつきませぬ!」


「黙れ! この者たちが協力してくれなければ我らは滅ぼされるのだぞ! 黙って私と共に頭を下げぬか!」



 声を荒げる王様に両サイドに控える貴族たちも目を伏せる。そして王の言葉に思うところがあったのか、少し不満そうな顔をしつつも頭を下げ始めた。

 王だけに頭を下げさせるわけにはいかないのだろう。

 少しの沈黙の中、清二が口を開いた。



「あの……捕まえられた神様? を救出するんですよね? 僕たちは戦いからは遠く離れた地で平和に暮らしていた学生です。戦う力なんてありません。まして戦争なんて……」


「そうです! 戦いなんてしたことないです」


「わたしたちには無理です! 日本に帰してください!」


 

 清二、青山、城崎の反応に姫や貴族たちは困った顔をする。

 ルクセントも慌てた様子で待ったをかけた。



「待ってくれ。光神シン様は資質ある者を召喚すると仰せられた。君達はまだ気づいてないだろうが、強力なスキルが与えられているはずだ。事実1度目の勇者たちがそうだった。試しにステータスと心の中で唱えてみてくれ!」



 スキル? ステータス? と首を傾げるクウたち4人の召喚者。

 怪訝そうな顔をしつつも言われた通りに唱えた。



(……行くぞ! ステータス!)



 目の前に半透明の板のようなものが現れた。



―――――――――――――――――――

クウ・アカツキ 16歳

種族 人 ♂


Lv1

HP:30/30

MP:20/20


力 :20

体力 :15

魔力 :10

精神 :200

俊敏 :90

器用 :200

運 :40


【固有能力】

《虚の瞳》


【通常能力】

《剣術Lv2》

《抜刀術 Lv6》

《偽装Lv3》

《看破Lv3》


【加護】

《虚神の加護》


【称号】

《異世界人》《虚神の使徒》

―――――――――――――――――――




(…………)



 衝撃的な内容にクウは思わず二度見する。

 いや、二度見どころか三度、四度と見直すが、ステータスに記された内容に見間違いはなかった。



(待て! 虚神の加護とか見えたぞ!? 虚神ってさっきの【善神】とやらを封印した【悪神】の1柱だったはずだ。【称号】も《虚神の使徒》とかになってるし、バレたら即殺されるんじゃないのか!?)



 半分パニックになりそうになったクウだが、それを表面には出さない。常人ならば声の一つでも上げてしまうだろうが、心を鍛える武術を嗜んでいるクウは何とかそれを飲み込むことが出来た。

 何とか落ち着いたところにルクセントが声を掛ける。



「スキルとステータスは確認できたか? スキルは詳しく見たいと思えば詳細を表示してくれる。試してみてくれ」



 ビクッと体が反射的に反応するクウ。挙動不審になっていないか? と心配するが、ルクセントも周囲の貴族たちも気にした様子は無かった。




(取りあえずスキルとやらの確認だな)




《虚の瞳》

虚を見せ、虚を破る魔眼。

目を合わせただけで幻覚を見せることが出来る。自分と対象の精神値の差によって効果が補正される。

また自身は幻覚無効になる。


《剣術Lv2》

剣を扱う動作に補正がかかる。


《抜刀術Lv6》

スキル《刀術》《居合い》の上位複合スキル。

納刀状態からの攻撃速度と攻撃力がスキルLv×1.5倍になる。


《偽装Lv3》

スキル《隠蔽》《改竄かいざん》の上位複合スキル

自分のステータスを偽装できる。これを見破るにはより上位のスキルが必要。



《看破Lv3》

スキル《鑑定》《解析》の上位複合スキル。

人物や物の情報を得ることが出来るスキル。偽装や嘘、罠などを見破ることができる。これを欺くには同等以上のスキルが必要。





(次は問題の加護だ……)





《虚神の加護》

虚神ゼノンの加護。

光、闇魔法、幻覚系スキルや偽装、看破のスキルに補正。




(最後に称号の確認だな)




《異世界人》

異世界から呼び出された者。


《虚神の使徒》

虚神ゼノンの使いである証明。




(なるほど……なんとかなりそうだな)



 クウはこの場を切り抜ける方法を計画し始めた。



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[良い点] 文がキツキツじゃないから読みやすい [気になる点] こんばんわはじめまして 突然質問なのですか 1「光神により魔方陣を賜った」と王様は発言していましたが、基本神によっては得意分野に差は…
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