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虚空の天使【完結】  作者: 木口なん
虚空の迷宮編
24/566

EP23 魔法の習得

2/22

魔法属性に召喚を追加

「…………朝か」




 ベッドから上半身だけ起こして背伸びするクウ。

 昨日はインフェルノ・ボアを倒してギルドで一悶着あった後、ふらふらと宿に帰って倒れるようにベッドに入ってそのまま寝てしまったのだ。腕時計を見ると今は既に10時で、夕食も食べていないのでかなりお腹が空いている。



 共同のシャワー室を借りて汗を流し、朝食を食べてギルドへと向かった。











「あ、クウさん。おはようございます」


 ギルドに到着したクウは昨日対応してくれた受付嬢に声をかけられた。恐らく報酬の件だろうと考えてつま先を向ける。



「おはよう。マリーだっけ? 昨日の報酬の話だよな?」


「はい、精算が終わったので報告しますね。

 まず、ユニークボスの情報で大銀貨5枚。インフェルノ・ボアの魔石が小金貨2枚。牙が小金貨1枚ですが2本あるので小金貨2枚。毛皮は強力な火耐性が付いた高価なものですので全部で大金貨2枚。肉はそんなに高価ではありませんが、かなりの量がありましたので全部で大銀貨8枚になりました。

 合計して大金貨2枚、小金貨5枚、大銀貨3枚の253,000Lです」


「そんなに多いのか……」


「危険度Aランクの中でも上位ですからこれぐらい貰って当然ですよ?」



 日本円だと253万円という大金を一気に稼いだことになる。

 だがこれほどの魔物となると、通常は10人ほどの合同パーティで討伐するので山分けして一人当たり25万円ほどだ。ポーション類の消費アイテムなどで10万は使うので、実質15万円分が収入になる。ソロでインフェルノ・ボアを倒したクウが異常なのである。




「まぁいいや。それより魔法に関する書物がある場所とか知らないか?」




 インフェルノ・ボア討伐で近づけない敵に遭遇する可能性にぶつかったクウは、新たに魔法を覚えて遠距離攻撃を出来るようになりたいと考えたのだ。




「魔法ですか? それならギルドが基本的なものだけ貸出していますよ。ギルド内で読むのならば無料ですが持ち帰る場合は1泊大銀貨1枚になります。また無くしたり大きく損傷した場合は罰金として小金貨1枚を支払ってもらうことになっています」


「ここで読むよ」


「でしたら書物管理庫まで案内いたします。書士が滞在していますので詳しいことは彼に聞いてください」


「ああ」



 報酬の入った袋を受け取ってマリーについて行く。

 どうやら書物管理庫はギルドの2階にあるらしく、階段を昇って古びた扉の前まで連れていかれた。マリーが扉を開けると、それなりに広い空間の壁一面に本棚があり、部屋の中心部には読書用と思われる机と椅子がいくつか置いてあった。冒険者が2人ほど座って何かを調べている様子だったが、もう一人だけ冒険者とは思えない白髭を結えた老人がいた。



「クウさん。ここが書物管理庫です。あそこにおられるご老人が書士のウエントさんです。困ったことがあれば彼に聞いてください。では私はこれで」



 それだけ説明してマリーは持ち場に戻っていった。

 クウはさっそく書士のウエントに近づいて話しかける。



「探したい本があるんだけど?」


「どんな本だ少年?」


「魔法を勉強したくて基礎の本を探してるんだけど」


「そこの棚が魔法に関する書物になっている。好きに読むといい」



 優し気な声で丁寧に教えてくれたウエントに礼を言って、言われた棚に向かう。


 『基礎魔法のすゝめ』『応用! 炎魔法』『魔法陣学』『新説、カッコイイ呪文集』……


 様々な本の中で、クウは『基礎魔法のすゝめ』を手に取って机に向かう。パラパラとページをめくりながら情報収集を始めた。








 魔法を使うには、大きく分けて2つの方法がある。


 一つは先天的にスキルを保持している場合、または努力して後天的に魔法スキルを入手した場合だ。この場合は自分のMPを消費して呪文詠唱をすることで魔法を使うことができる。世の先人たちがまとめた扱いやすい魔法はもちろん、自分でイメージ通りの魔法を作ることもできる。基本的に呪文は好きなように言って良く、一度唱えた呪文は魂に刻まれて忘れることがない。

 魔法に対するイメージが明確ならば呪文を省略して魔法を使うこともできるようになるが、呪文を唱えたほうが魔法も安定しやすく安全である。決していきなり詠唱省略して魔法を使うことはお勧めしない。


 もう一つの方法は魔法陣を使う場合だ。こちらはスキルに関係なく、魔法陣に魔力を流すことで誰でも発動できるのが利点だ。ただし、陣を描くのに使用した素材によって許容魔力量が決まっており、例えば高ランクな魔物や強力な魔力を持つ人の血を使うと、許容量はかなり大きくなる。陣の紋様や組み合わせも膨大であり、一朝一夕で使いこなすことは難しい。

 また、魔道具は道具に魔法陣を付与したものであり、これも魔法陣魔法に属する。


 

 魔法にはいくつか種類があり、炎、水、土、風、雷、光、闇、回復、結界、時空間、付与、召喚その他にもユニーク魔法と呼ばれるその人だけの魔法スキルも持つ者もいる。中でも炎、水、土、風、雷、光、闇は基本7属性とも呼ばれて1週間を炎の日から闇の日まで割り振られているのでよく知っていると思う。



 この本では基本7属性の魔法スキルの才能がある、または既にその魔法スキルを持っているという前提の下で読まれることを想定しているので、それ以外の人はすぐにこの本を閉じることをお勧めする。







(なるほどね。俺は《虚神の加護》のおかげで闇と光魔法の補正がかかるらしいから、この二つならば習得できる可能性が高い。まずは闇魔法からだ)







 闇魔法

 闇という響きから邪悪なイメージを持つ者もいるが、非常に使い勝手のいい魔法である。

 基本性質は「闇」「汚染」「滅び」の3つで、暗闇を創りだしたり、精神干渉で幻覚をみせたり、影を操るなどもできる。魔族に得意なものが多く、人族では使い手が少ないため師事を仰ぐことは難しい。

 才能はあるがスキルを持っていないという者は、試しに自分の影に魔力を馴染ませて、闇と触れあってみるといいだろう。






(闇にも幻覚系魔法があるのか。どうやら俺はそっち方面にスキルが固まっているみたいだな。ということは光魔法にも幻覚魔法があるのかな?)






 光魔法

 光魔法の素質を持つ者は多いが、スキルとして先天的に持っている者は少ない。習得は難しいものの努力次第でほとんどの人が習得できるのだが、この事実を知る者はほとんどいない。

 基本性質は「光」「浄化」「再生」の3つで、闇を払ったり、広範囲に幻覚を見せたり、アンデッドの浄化でも活躍する。回復系の魔法も使えるが、回復魔法スキルに比べると消費魔力が膨大で使い勝手が悪い。

 才能はあるが、スキルを持っていない者は試しに日の光を自分の魔力に取り込むイメージをしてみるといいだろう。







「なるほどね……」


 クウは本をパタンと閉じて呟く。

 要するに魔法とは発動に明確なイメージが必要。才能があれば、実際にその属性に触れながら魔力を馴染ませることで、その才能が花開く。

 そう理解したクウは、本を元の場所に戻して書物管理庫をでた。もちろん書士のウエントに挨拶することは忘れない。




 書物庫をでたクウは今度はギルドの修練場に行き、さっそく魔法の練習をすることにした。



「まずは闇かな。自分の影に魔力を馴染ませるんだったよな」



 クウは魔力操作をして手に魔力を集めながら自分の影に手を当ててみる。馴染ませると言っても正直どうすればいいかは分からない。そこで影を魔力で覆うようにイメージしてみたり、影を引っ張るイメージをしてみたが、どうにもしっくりこない。



「待てよ……闇の特性は「闇」「汚染」「滅び」だったよな。「汚染」のイメージで影に魔力を染み込ませたらどうだ?」



 試しに魔力を染み込ませるイメージで影に馴染ませようとすると、何か自分の中に電流が走ったような感覚が起こった。「来た!」と言ってステータスを開くと確かに《闇魔法Lv1》が新しく追加されていた。



「そうか。やはり属性の特性を理解していた方がイメージがしやすいみたいだな」



 魔法におけるイメージの大切さを理解したクウはさらに光魔法の習得を実験する。



「光は……取り込んで自分の魔力に溶け込ませるんだっけか? 光はたしか粒子と波の性質を持つってのを学校で習ったな。俺の魔力でそれを受け止めて馴染ませるイメージでいいか。「浄化」とか「再生」ではイメージし難いしな」




 科学の力で光の性質を解く現代日本で育ったクウの適当な知識でも、この世界においては画期的なイメージの持ち方だった。光魔法の習得の難しさは光に対するイメージが足りないことが起因しているのだが、クウはそれを簡単に覆してあっさりと《光魔法Lv1》を習得する。




「なんだ。魔法って簡単だな」




 普通ならばその属性を使う魔法使いを師事して数か月かけて習得するのだが、現代知識と《虚神の加護》を持つクウにはそれが当てはまらない。そんなことは露知らず、聞く人が聞けば激怒するようなことを口にするクウであった。





「じゃあ、試しに魔法を使ってみるか。とりあえず闇……はイメージしにくいな。光魔法で明かりでも出してみるか」



 クウは右手に魔力を集めてイメージする。

 日本にあった電球を。



「『灯れ、《光灯ライト》』」



 すると白い電球のような球体状の明かりが現れた。光の強さはクウのイメージ通り白熱灯とほぼ同じであり、近くで直視するにはすこし眩しい。《光灯ライト》はクウの思うがままに周囲を飛び回り、少しの魔力消費で持続できるみたいだった。ちなみに魔力を止めると一瞬で消失した。



「かなりイメージ通りになるな。これならレーザーとかもできるんじゃないか? まぁこんなところで試すつもりはないが」



 実際に光という現象を利用していた現代日本の知識はかなり強みになる。『基礎魔法のすゝめ』の著者もイメージを明確にすることを口酸っぱく言及していたが、魔法というものはイメージ次第でかなりなんでもできる。さらに物理現象を理解しているとより効率よく魔法の運用ができるのだ。


 空気中に水が漂っていることを知っていれば、空中から水を集めることができる。物質の三態を知っていれば、氷、水、水蒸気も自由自在……とまではいかずともかなり有利になることは間違いない。


 土魔法ならば、金属元素の存在を理解していることで合金や金属の抽出もできる。


 気圧や空気粒子を知っていれば風魔法の使い勝手もよくなるだろう。



 クウもこの日は新たに習得した《闇魔法Lv1》《光魔法Lv1》を有効活用するために、使いやすい魔法を考えたり、闇や光についてイメージを膨らませたりするのだった。





―――――――――――――――――――

クウ・アカツキ 16歳

種族 人 ♂

Lv51


HP:1,627/1,627

MP:1,589/1,589


力 :1,478

体力 :1,494

魔力 :1,521

精神 :5,700

俊敏 :1,569

器用 :1,614

運 :40


【固有能力】

《虚の瞳》


【通常能力】

《剣術Lv5》

《抜刀術 Lv7》

《偽装Lv7》

《看破Lv7》

《魔纏Lv4》

《闇魔法Lv1》 new

《光魔法Lv1》 new


【加護】

《虚神の加護》


【称号】

《異世界人》《虚神の使徒》《精神を砕く者》

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