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虚空の天使【完結】  作者: 木口なん
虚空の迷宮編
22/566

EP21 魔剣ベリアルの能力

今日は2つめ

もう一つ投稿します

 魔剣ベリアルを手に入れ、レベルアップして装備条件を整えた翌日、さっそくクウは魔剣の能力を試すために迷宮ダンジョンへと向かうことにした。


 だが剣の腕前については《剣術Lv2》しかなく、日本でも剣道を部活でやった程度でしかなかったので、いきなり実戦をする気にはなれなかったクウはギルドの修練場を使って素振りをすることにした。



 多くの冒険者で賑わうギルドの掲示板をスルーして奥にある扉を抜け、修練場へと向かう。ギルドの裏手にある修練場は普段は一般公開されており、依頼を受けない冒険者たちが軽く運動するのに用いられることが多い。また、早朝の場合は迷宮に向かう冒険者が体を温めるために準備運動をしていることもある。

 現に今も修練場で多くの冒険者が剣や槍といった各々の武器を振るっていた。




「ここに来たのはギルマスのブランとの模擬戦以来だな。まだ数日しか経ってないのに懐かしく感じるのは何故なんだろうな」



 だがあの時とは違って今日のクウは腰に1本の長剣をさしている。シンプルな黒の外観とは裏腹に、重苦しい不気味な気配を放つ魔剣ベリアル。もちろん売られていた時にされていた鎖の封印は外されており、魔剣自体が抜き放たれるのを今か今かと待ち望んでいるかのようでもあった。



「さてと……初めましてだ、魔剣ベリアル」



 クウは右手を柄にかけ、ゆっくりと剣を抜く。

 滑らかに抜き放たれた魔剣は鈍色の刀身に赤いラインが血管のように張り巡らされた、いかにも呪われていますよとでも言いたげな見た目だ。周囲で素振りをしていた冒険者たちもギョッとした目で魔剣ベリアルを見つめる。



 だがクウは気にした様子もなく片手で2、3回素振りする。その後両手に持ち直して、振り下ろし、切り上げ、横なぎ、袈裟切り、突きなどを剣道の型を参考にしながら振っていく。途中で今までに出会った魔物の動きを参考にしながらステップを交えてひたすらに剣を振った。


 何度か片手持ちと両手持ちの場合を検証して、より実践的に使いやすく修正していく。最終的には片手持ちで体を半身にして構えるスタイルに落ち着いた。やはりクウの根底には朱月流抜刀術があるので、片手で剣を振るうことの方が得意だった。



「結局剣道の型ってのは実践向きじゃないんだな。ということは朱月流は実践を想定した所謂古武術とかいうやつなんだろうな。親父には聞いたことないけど」



 ここでふと抜刀術を長剣で出来ないかと思って試してみることにした。


 禍々しい刀身を鞘へと納めていつものように居合の構えをとる。刀のように湾曲した形ではないので、抜きやすいように向きを調整する。



「…………『閃』!」



 集中したまま一気に剣を加速させて斬撃を放つ。

 いつもと変わらず、とまではいかなかったが形にはなっていたようだ。



「おお。まさか出来るとは思わなかった。まぁ、スキルアシストもあるし器用値もかなり高い方だから出来る可能性は十分だったけどな。とは言っても刀でやるときに比べれば速度は遅いし攻撃力も落ちてる。せいぜい不意打ちぐらいにしか使えないだろうな」



 実践でも通用するように何度か居合の練習をしながら最適の身体の動きを染み込ませていく。地味な作業ではあるが、これをキッチリするしないで最終的に生死の分かれ目となるのだ。


 その後たっぷり2時間ほど剣を振った後、ステータスを確認するとこうなっていた。




―――――――――――――――――――

クウ・アカツキ 16歳

種族 人 ♂

Lv45


HP:1,420/1,420

MP:1,340/1,340


力 :1,231    7UP

体力 :1,220   2UP

魔力 :1,261

精神 :5,000

俊敏 :1,372

器用 :1,452

運 :40


【固有能力】

《虚の瞳》


【通常能力】

《剣術Lv5》 Lv3UP

《抜刀術 Lv7》

《偽装Lv7》

《看破Lv7》

《魔纏Lv4》


【加護】

《虚神の加護》


【称号】

《異世界人》《虚神の使徒》《精神を砕く者》

―――――――――――――――――――




 何故か力と体力が上がって、《剣術Lv2》が大幅にレベルアップして《剣術Lv5》になっていた。



「ステータスはレベルアップでしか上がらないと思ってたけどそういうわけでもないんだな。鍛錬でも多少の変化はあるみたいだ。ということは怠るとステータスダウンも有り得るな。《剣術》のレベルアップもただの剣道だったものが、俺の実戦経験を組み合わせたことで一気に技量が上がったことが原因だろう。だんだん動きが良くなっているとは思ったがこれは嬉しい誤算だな」



 腕時計を見るとまだ11時を過ぎたばかり。

 クウは少し早めのお昼を食べて迷宮に潜ることにした。
















~19階層~


 昼食はギルドを出てすぐにあった食堂でオーク定食なるものを食べた。オークと言えば不潔な豚人のイメージがあったが、要は豚肉だった。この世界エヴァンでは割と主流な食料の一つらしい。


 そんなこんなで満足したクウは気分を良くして迷宮の19階層へと転移した。



「ククク、さっそく魔剣ベリアルの試し切りといこうか」



 迷宮効果である幻覚が効かないクウは、ボス部屋である20階層へと一直線に伸びた通路を油断なく進んでいく。いくらスキルがあるといっても慣れない武器を扱うのだから、油断していてあっさり殺られることもないとは言い切れない。



「ブモッ!」


「おっと、こいつはビッグボア……じゃないな。牙が大きいからファングボアだ!」


 前方の十字路の脇から現れたボア系の魔物ファングボア。

 いつもなら居合の『閃』で仕留めるが、今使っているのは長剣だ。魔剣を抜いてファングボアを見据えつつ、しっかりと構える。



「ブフォォォォオ!」


 鼻息を荒げて突進を繰り出してきたが、動きは直線的なので問題なく避けることができる。軽く躱してすれ違いざまに横っ腹を切り裂いた。



 プシャァァァァァ



 バターを切り裂いたようにあっさり剣が通る。恐らく今までにも血を啜ってきたのだろう魔剣ベリアルは既に凄まじい切れ味を誇っていた。

 傷を負い、足を緩めたファングボアにクウは追撃を喰らわせる。



「はあぁぁぁっ!」


「ブモオオオォォォ……」



 魔剣をファングボアの首へと突き立ててトドメを刺す。

 クウが魔剣を突き刺すと刀身に入った赤いラインが光り、脈動を打つかのように点滅した。ドクン、ドクンと聞こえてくるようなエフェクトを見るに、血を吸い取っているとクウは予想した。


 その予想はまさにその通りであり、ファングボアの血を吸い尽くした魔剣ベリアルはさらに切れ味を増していくのだった。



 血を抜き取られて死体となったファングボアの剥ぎ取りをするために近づこうとすると、背後から迫りくる何かの気配を感じてその場から飛びのく。


 

 ガチンッ



 先ほどまでクウがいた場所を灰色の身体をしたグレイウルフの牙が空を切った。脈打つ魔剣の観察に気を取られて、背後から迫り寄るグレイウルフに気づかなかったらしい。

 ギリギリで気づけたからよかったが、下手をすればやられていただろう。



(俺も新しい武器を手に入れて浮かれていた……かな?)



 今度は油断なく周囲を警戒しながらグレイウルフに対峙する。

 さっきの隙に囲まれていたようで、クウを中心に半円状に4匹のグレイウルフが唸り声を上げていた。



「俺は本来カウンターを狙うのが得意なんだが、ここは攻めさせてもらう!」



 腰を低く落として膝のバネで一気に右端のグレイウルフに迫り、下から切り上げて首を落とす。一瞬のことで動きが止まった3匹のグレイウルフのうち、一番近い奴をさらに切り裂いて胴体部を真っ二つにした。



 我に返った残り二匹が仲間が殺されたのを見て同時に飛びかかってくるが、クウはニヤリと口元をゆがませて身体を回転させながら遠心力と共に横なぎを放った。



 剣を振り切ってから少し遅れてグレイウルフの身体は空中で血をまき散らしながら息絶えた。

 超絶的な切断能力がなければグレイウルフの身体の中で刃が止まって、普通なら2匹同時に空中で仕留めることなど出来ないが、多くの血を吸収した今のベリアルはそれを可能にする。



 敵がいないことを確認したクウは血を払うつもりで剣を振ったが、吸血能力をもつ魔剣ベリアルはそもそも血で濡れることがないので、それに気づいて顔を赤くする。幸い誰も見ていた者は居らず、安堵するクウであった。






 その後も仕留めた獲物の剥ぎ取りをしながら、グレイウルフ上位種のナイトウルフの群れと1対多での戦闘やビッグボアとも何度か戦ってあっさりと19階層をクリアすることができた。







~20階層~


「何気にもうボス戦も2回目なんだよな。まだ4日目なのに20階層を突破したなんてバレたら間違いなく注目を浴びて面倒なことになるだろうなぁ」



 今更気を配ったところでギルマスのブランに勝った時点で既に目立っているため無意味なのではあるが、本人はまだ大丈夫だと思っていた。

 文明の発達していないエヴァンの情報速度は確かに遅い。だが同じ街の中という限定条件の下では、日本に勝るとも劣らない情報速度をもつ。クウの試合を見ていた冒険者たちが酒の肴に噂を広げていったせいで、今では【ヘルシア】で知らない者はいないまでになっていたのである。




 そんなことは露知らずのクウは10階層で見たのと同じ両開きの扉に手をかけ、力いっぱい押し込む。嫌な金属音を鳴らしながら開いた扉の向こうには4足歩行の8mはあろう巨体が鼻を鳴らして待ち構えていた。



「ブフォォォォオオ!」


「へぇ、20階層のボスはボア系の大物が1体だけなんだな」



 20階層のボスに挑むことを教えたくなかったクウはギルドで情報収集を行わずに来た。本来ならば窘められることではあるが、《看破Lv7》を持っているので問題ないだろうと判断したのだ。それに、そもそも最前線を行く冒険者たちは何の情報もなくボスに挑まなければならないのだから、そう考えるとギルドでボスの情報を仕入れるのは甘えだとも言える。


 どちらにせよクウにとっては問題にならないことには変わらないのだ。



「とりあえずステータスは確認させてもらうぞ」




―――――――――――――――――――

   ――     7歳

種族 インフェルノ・ボア ♂

Lv52


HP:2,670/2,670

MP:1,490/1,490


力 :1,869

体力 :1,944

魔力 :1,533

精神 :1,629

俊敏 :1,152

器用 :931

運 :31


【通常能力】

《咆哮Lv5》

《身体強化 Lv4》

《硬化Lv5》

《炎魔法Lv4》

―――――――――――――――――――





「ちょっと待て! こいつ固すぎるだろ!」



 予想外に高いボスのステータスにクウは頬を引き攣らせた。






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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公の独り言の長さがかなりシュール……。 それから、輩、受付、宿屋、御者、武具屋というちょい役にいちいち名前を与えている理由が分からないです。 日本人の主人公が相手の名前を聞こうとするの…
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