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虚空の天使【完結】  作者: 木口なん
砂漠の帝国編
211/566

EP210 VS.デス・ユニバース①

明けましておめでとうございます。

今年も宜しくお願いします。


今年の内に完結できればいいんですけどね(遠い目)

 直径十メートルはあるだろう巨大魔法陣は怪しく光って一体の魔物を召喚する。一秒も経たずに魔法陣を展開したレイヒムには驚きだが、クウとて無反応だったわけではない。《思考加速》のスキルによって素早く反応し、魔法を発動させたのである。



「『《閃光フォース・レイ》』!」



 極太のレーザーが発射されて巨大召喚陣に向かって行く。

 とはいっても光の速さは秒速三十万キロメートルだ。その様子を観察することは出来ない。

 認識した瞬間に召喚陣は激しい光で焼き尽くされたのである。

 隣にいたレイヒムにだけは当たらないように調整されている絶妙なコントロールの光系統魔法。クウの演算力イメージと魔力操作能力があったからこその制御だった。

 だがクウは魔法陣があった場所を見つめつつ舌打ちをする。



「召喚されたか……」



 《閃光フォース・レイ》の光が消えたところにあったのは闇の球体だった。光を完全に吸収してしまうと呼ばれる想像上の物体である黒体だ。

 召喚された何かはクウがレーザー攻撃を放ってから対処してみせたのである。目視も回避も不可能なハズの攻撃だったが、どのようにしてか後出しで防いで見せたのだ。

 レイヒムはクウの攻撃を防いだことで不敵な笑みを浮かべつつ口を開く。



「ククク……。私もコイツだけは制御できなくてねぇ。本当は使いたくなかったのですが仕方ありません。これで貴方たちも終わりです」



 その言葉と共に漆黒の球体が薄れていく。

 恐らく闇属性と思しき魔法が解除され、レイヒムすら制御できないという存在が姿を現した。



「これは……一体?」


「何なのだコイツは」



 思わずそんな声を上げてしまったシュラムとミレイナ。

 クウですらどういうことかと不思議に感じたほどだ。

 何故ならそこにいたのは―――



「人……だと?」



 完全な人型。

 いや、人に間違いない。

 生気のない目をしているが、その見た目から判別できるその姿は人族のヒトだった。一見すると白髪の老人ではあるが、腰は曲がっていない。金や銀の糸で装飾が施されたローブを纏い、腰には短杖ワンドが差し込まれている。そしてその短杖には真っ赤な宝石が取り付けられているのが見えた。この短杖ワンド自体はそれほど高性能ではないため、もしかするとファッションなのかもしれない。



「……《森羅万象》」



 クウは最上位情報系スキルを用いて謎の召喚魔物(?)の情報を開示した。





―――――――――――――――――――

モルド・アルファイス  ― 歳

種族 デス・ユニバース ♂

Lv error


HP:――/――

MP:――/――


力 :38,292

体力 :59,382

魔力 :129,039

精神 :119,283

俊敏 :83,722

器用 :37,628

運 :0


【固有能力】

《無限再生》


【通常能力】

《看破 Lv10》

《偽装 Lv10》

《魔導》

《回復魔法 Lv10》

《結界魔法 Lv10》

《時空間魔法 Lv10》

《召喚魔法 Lv10》

《付与魔法 Lv10》

《魔法反射》

《魔力支配》

《MP自動回復 Lv10》

《思考加速 Lv10》

《属性耐性 Lv10》

《状態異常耐性 Lv10》


【加護】

《英霊の祝福》


【称号】

《異界の賢者》《魔導を極めし者》

《死者》《オリヴィアの眷属》《歪な魂》

―――――――――――――――――――



《無限再生》

加護がある限り無限に再生する。魔力も体

力も消費することなく、欠損すらも瞬間的

に再生させることが出来る。



《魔導》(エクストラスキル)

魔法系最上位スキル。

炎、水、土、風、雷、光、闇の基本七属性

を全て極めた者が到達するスキル。

これらの七属性を自在に組み合わせて魔法

を発動させることが出来る。また、魔法を

発動する際の消費魔力が激減する。



【加護】

《英霊の祝福》

オリヴィアの加護。

仮初の魂を得た英霊たちへと与えられる祝

福であり無限のエネルギーと再生を与える。

潜在力が無理矢理十倍まで底上げされ、全

てのスキルがLv10となる。






「は? ふざけてんのか?」



 クウはそんな声を上げてしまう。

 有り得ないステータス値とスキルレベル。Lv errorであり、さらにHPとMPも表示されていない。魔法に関するスキルを網羅している点もふざけているとしか思えない。特に魔力値や精神値は十万を超えているのだから笑えない。クウの精神値は四万ほどなので、二倍以上のステータスを誇っていることになる。果てには《無限再生》などという常軌を逸した【固有能力】まで所持しているのだ。



(てかオリヴィアって誰だよ!)



 【称号】にも《オリヴィアの眷属》とあることから、このデス・ユニバースという魔物(?)はオリヴィアという人物のものだと分かる。

 だが肝心のオリヴィアが何者なのかサッパリわからない。

 予測することは出来るが……



(加護を与えられていることから超越者の可能性が高いな。あの魔物は魔王オメガが与えたとか言ってたから、おそらく魔王の側近ってとこだろ。つまり四天王か)



 そしてもう一つ注目するべき所が《死者》の称号だ。

 一見すると普通の人間に見えるが、種族名デス・ユニバースとこの称号から判断してアンデッドなのだと予想できる。他にも気になる称号はあるが、あまり悠長に解析している暇はない。何せ有り得ないステータスを所持しているのだ。油断していると一瞬で殺される。



(アンデッドを眷属にしている四天王……『死霊使い』って呼ばれている奴がいるんだったか。こんなの見せられたらキングダム・スケルトン・ロードが可愛く見えてくるな)



 《思考加速》を使って瞬間的にその答えまで行きついたクウだったが、目の前のアンデッド……デス・ユニバースのモルド・アルファイスも《思考加速 Lv10》を持っているのだ。たとえ一瞬でも相手に隙を与えてはならないのである。

 モルドは生気のない目のまま瞬間的に魔力を練り上げてクウへと右手を向けた。



「『《殲滅炎弾フルバースト・フレア》』」


「拙っ!?」



 皺がれた声と共にモルドの右手から放たれたのは無数の炎弾。

 大きさこそピンポン玉と同じぐらいだが、その速度は亜音速域に達している。

 クウは咄嗟に天使の翼を展開して高速機動する。凄まじいGがクウの体を襲ったが、《魔力支配》で身体に魔力を巡らせ、身体能力を強化することで慣性力にも耐えた。

 だが瞬間移動を思わせるような移動も、有り得ないステータスを所持しているモルドにはしっかりと見える程度の速さである。モルドはクウの移動に合わせて右手を向け、炎弾を放ち続けた。



「なっ!? これは!」


「おい。どうなっているのだ!」



 もはや動きを追うことが出来ないシュラムとミレイナは戸惑いながらも警戒することしか出来ない。無数に放たれ続けている炎弾は内部から帝城を破壊しているため、一発一発がどれほどの威力なのかは理解できている。しかし早すぎて認識することも難しいのだ。

 モルドは身体能力すらもシュラムを上回っているため、《気纏オーラ》を使用してどうにか動きが追える程度だ。反応も出来ない。当然ながらミレイナもだ。

 そして現在進行形で爆撃されているクウは必死である。



(無茶苦茶だな……)



 クウは高速機動で回避しつつ、どうしても避けきれない炎弾は魔力の障壁を展開して向きを逸らすことで耐えていた。反則級のステータスとスキルによって放たれるモルドの魔法は高威力という言葉では表しきれない。

 元からレイヒムの召喚獣によって壁や天井が破壊されていたが、《殲滅炎弾フルバースト・フレア》によって増々崩壊が進んでいた。炎弾は何かにぶつかるたびに爆発し、城は音を立てて壊れていく。

 だが感情が全く見えないモルドは無慈悲にも更に強力な魔法を使用した。



「『《属性支配領域エリア・ドミネーション》』」



 低く掠れそうな声が聞こえた瞬間、クウはゾッとするような魔力の領域に囚われた。その範囲はクウを中心として球状に半径二十メートルほど。魔力を感知できるクウはその恐ろしさに気付いて反射的に能力を行使する。



「《幻夜眼ニュクス・マティ》起動!」


「……滅びよ」



 クウが能力を発動させた0.1秒後に指定領域を魔法が埋め尽くす。

 数えきれない炎が爆裂し、水が飛び交ったかと思えば氷柱が出現する。岩の槍が降り注いだかと思えば不可視の刃が氷柱と岩槍を切り裂いた。放電現象が領域の端まで伸び、激しい光の乱舞と共にエリアを焼き尽くした。そして次の瞬間には闇が包み込み、滅びの力で領域ごと腐敗させる。

 指定領域内を基本七属性の魔法で殲滅するのが極意だ。

 デス・ユニバースというアンデッドとなり、《英霊の祝福》のお陰で凄まじい魔力値を有しているモルドの魔法は一撃でも即死級の威力だ。それが無数に領域を埋め尽くすのだから殲滅率は言うまでもなく百パーセントである。シュラムとミレイナが範囲に入っていないのはクウが二人から離れるように気を遣って動いていたからに過ぎない。もしも範囲内に飲み込まれていたら命は無かっただろう。

 レイヒムはクウが魔法に飲み込まれる瞬間を目にして歓喜の声を上げていた。



「ククク……ハハハハハッ! 私の勝ちですよ!」



 レイヒムはデス・ユニバースのモルドを全く制御できないが、契約によって自分には攻撃できないようになっている。つまり自分以外の周囲を殲滅しつくすことの出来る召喚魔物なのだ。

 たとえ味方がいたとしても分け隔てなく殺し尽くす。

 自分の陣地だったとしても破壊し尽くす。

 つまり帝城でモルドを召喚した場合、この城が崩壊するまで問答無用で暴れ続けるのだ。

 扱いにくいゆえに流石のレイヒムも出来るだけ使いたくなかったのである。

 しかし最早そんなことは言っていられない。

 ここまで追い詰めれられてしまっては手段を選ぶことは出来ないのだ。たとえ【帝都】の住民に被害が出たとしても今はクウたちを殺すことが優先される。勿体ないが、シュラムもミレイナも殺してしまうつもりだった。



「私の計画を邪魔してくれた礼ですよ。ハハハハ―――」


「悪いがそんな礼は受け取れないな」


「―――ハハ……え?」



 背後から声が聞こえてレイヒムは振り返る。

 レイヒムに返答したのは即死級の魔法の海の中へ消えていったはずのクウだった。しかもすぐ隣にいたモルドは四肢と首を切断された状態で転がっていたのである。不死のアンデッド故に死んでいないが、《無限再生》で復活するまで動けないだろう。

 気づかぬ内に切り札が切り刻まれ、背後を取られていたのだから驚かないはずがない。



「な、何故生きて……」


「俺はそもそも戦闘タイプの能力じゃないからな。逆にこういったことは得意だ」



 クウの本当の能力は精神系。

 その最強格である意思干渉だ。

 意思ベクトルを操作して現実と夢幻を操作する。

 圧倒的な地力すらもひっくり返すトリックスター的な戦い方こそがクウの本来のスタイル。この世界に召喚された当初も格上を相手にそうやって勝利を重ねてきた。



「シュラムとミレイナは下がっていろ。このアンデッドは俺が始末する」



 圧倒的上位者の戦い。

 一瞬とはいえそれを目の前で見せられたシュラムとミレイナは頷くことしか出来なかった。






またまた滅茶苦茶な奴が出てきましたね。

謎のオリヴィアさんもいずれ出てきますのでお楽しみに。


それと正月休みということで今週だけ毎日投稿します。

一気に展開が進む予定です。



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