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虚空の天使【完結】  作者: 木口なん
虚空の迷宮編
20/566

EP19 VSゴブリン軍

 『風の剣』及び新メンバーとなったバウンドと別れた後、クウは当初の予定通り虚空迷宮の第10階層のボスを攻略するために迷宮へと向かった。


 美しい白の外観は相変わらず神秘的な雰囲気を醸し出しており、地下に迷宮なんかがなければ立派な観光スポットにでもなりそうなものではあるが、生憎並んでいるのは厳つい冒険者たちのみだ。例にもよって転移クリスタルを使用するためには15分ほど並ぶことになりそうな長蛇の列をなしている。



「転移クリスタルも4つぐらいあればいいのになぁ」



 愚痴をこぼしつつも律儀に並ぶクウ。

 仁義と礼節の日本人として順番は守らねばならないという謎の使命感の元、文句は言いつつも列の一番後ろに並んで付いて行く。そうはいっても、転移自体はクリスタルに触れて行きたい階層を呟くだけなので数秒で済む。如何に人数が多くとも時間はかからないのだ。




 



「ようやく俺の番か」



 昨日は転移クリスタルをスルーして奥の1階層への入り口から迷宮へと乗り出したが、今日は10階層からのスタートだ。新たに気を引き締め直してクリスタルに手を触れる。



「転移、10階層へ」



 光に包まれて目をつぶると、僅かに浮遊感を覚える。

 淡い青の光と共に、クウの身体は粒子となってその場から消えた。















 目を開くとそこは洞窟風の迷宮内だった。後ろを振り向けば、昨日登録したばかりの9階層と10階層の間にある転移クリスタルが鎮座している。

 どうやら無事に転移できたようだ。


 

「さてと、さっそくボス戦といこうか!」



 左手に樹刀の鞘に納められた木刀ムラサメを握りしめつつ、気合を入れて10階層へと歩を進める。洞窟を照らす優しい光を反射する土色の岩の階段を降りると、今までの階層とは変わって扉が現れた。


 扉と言っても特に装飾がある訳でもない両開きの物で、その鈍い光沢から鑑みるに金属製らしい。ゲームならば、この扉を潜った瞬間に鍵を閉められて脱出不可能になるのが普通だが、この世界エヴァンの迷宮のボス戦は扉を戻ることで逃走可能らしい。


 つまるところ、様子見だけして逃げることも可能なのだそうだ。


 しかしこの虚空迷宮ではボスフロアにすらあの悪質な迷宮効果が発揮されている。

 フロア全体にかかっている幻覚はボスフロアでも有効なのだ。もしも、幻覚耐性が足りない状態でボスに挑んだならば、その効果によってまともに戦うこともできず、方向感覚を狂わされて脱出すら困難になることだろう。


 もちろん《虚の瞳》を持つクウには関係ないが。





 クウはためらいなく扉に手をかけ、一気に押し込むようにして開く。ギギギという嫌な金属音と共に開かれた扉の奥には、すでにゴブリンたちが待ち構えていた。



「ギャイギャイ、ギィ?」

「ギギャギャ!」

「グゲ、ゴギャッ」

「ギャギィ、ギギ!」



 クウを認識した途端に騒ぎ出すゴブリン。


 後方には一際体格のいいゴブリンが堂々と立っており、その手前には昨日倒したばかりのゴブリンジェネラルが2体、そして最前線にショートソードや杖を握った普通の大きさのゴブリンがたくさん並んでいた。


 

「恐らく一番奥の奴がゴブリンキングだな。手前の杖を持ってる奴が魔法を使うゴブリンメイジ。ゴブリンジェネラルは昨日倒したばかりだから知ってるし、情報通りだ」



 イレギュラーがないことを確認して悠然とフロアに踏み込むクウ。改めてゴブリンアーミーを前に立ち止まり、右手を柄にかけた。


 念のため《看破Lv6》を使ってステータスを確認する。






―――――――――――――――――――

  -   3歳

種族 ゴブリンキング ♂

Lv28


HP:953/953

MP:39/39


力 :858

体力 :843

魔力 :205

精神 :183

俊敏 :830

器用 :798

運 :22


【通常能力】

《統率Lv5》

《剣術Lv4》

《威圧Lv2》

―――――――――――――――――――




―――――――――――――――――――

  -   2歳

種族 ゴブリンジェネラル ♂

Lv23


HP:540/540

MP:129/129


力 :502

体力 :499

魔力 :151

精神 :98

俊敏 :520

器用 :515

運 :15


【通常能力】

《剣術Lv4》

《体術Lv4》

―――――――――――――――――――




―――――――――――――――――――

  -   2歳

種族 ゴブリンメイジ ♂

Lv19


HP:365/365

MP:570/570


力 :411

体力 :389

魔力 :531

精神 :478

俊敏 :492

器用 :508

運 :27


【通常能力】

《風魔法Lv2》

―――――――――――――――――――











 ゴブリンキングは見据える。

 新たな挑戦者を。


 女のような顔立ちだが、雰囲気と匂いで男であることは分かっている。とすれば用はない。ただ、蹂躙して殺すのみだ。このゴブリンの軍団に単身で挑んだことを後悔させてやる。


 

 そのような面持ちでクウを睨みつけた・・・・・






 そして次の瞬間にゴブリンキングの目の前に広がるのは血の海に沈む仲間たちの光景。ゴブリンだけでなく、メイジ、ジェネラルですらもすでに首と胴が離れて息絶えてしまっていた。


 ゴブリンキングは戦慄する。

 いつの間に仲間は殺されてしまったのか。なぜ攻撃された瞬間すら見えなかったのかと。


 あまりの動揺にゴブリンキングは気づかなかった。

 背後から迫る死の一撃に……














「さてと、あまりにあっけない」



 血を振り、ムラサメを鞘に納めるクウ。


 《看破Lv6》でゴブリンアーミーのステータスを確認した瞬間から《虚の瞳》で幻覚をかけて、あたかもクウがその場から1歩も動かず、戦闘が始まっていないかのような光景を見せつけていた。


 まだ戦いが始まっていないと考えていたゴブリンたちは、1歩も動くことなくクウに次々と首を刎ねられて即死してく。ゴブリンキング以外を葬り去るまでにかかった時間は僅かに10秒と少しだ。


 最後にゴブリンキングの背後に回り、幻術を解除してトドメを刺したのだった。



「このスキルは凶悪すぎるな。完全にバランスブレイクしてるぞ」



 実際に、この時点でクウの精神値に勝てる存在は少ない。

 つまり、ほとんどの敵に対して幻覚をかけることができるので、幻覚で動きを止めている隙に急所を攻撃すれば、レベル差があったとしても簡単に覆すことができる。


 何より《虚の瞳》に魔力消費がないのが恐ろしい。

 要するに使い放題なのだ。



「うん、基本的に封印しよう。戦闘時は軽い幻覚で認識をずらす程度にとどめよう」



 強力すぎる力は驕りを生む。

 驕りは傲慢や油断につながり、いつか自分に跳ね返ってくるものだ。


 どうしても必要な時以外は、強力な幻術禁止。

 この制限が後々クウを救うことになっていく。











「まだ10時にもなってないな……。11階層に行くか」



 あまりに簡単に10階層を抜けてきたため、時間はまだまだたっぷり残っている。クウは予定通り11階層に降りてみることにした。


 11階層から20階層はボア、ウルフなどの動物系魔物が多くなる。

 突進を繰り出すボア系魔物や、3~5匹の群れで行動するウルフ系魔物は、狭い迷宮の通路においてはかなり厄介であり、さらにトラップも出現するようになる。


 10階層まではお試し期間だったとでも言うかのように難易度が上がるのだ。

 そのため、より慎重な行動や戦闘回避能力が求められることになるのだが、レベルアップが目的のクウにはそんなことは関係なかった。






「はぁっ!」


 ザシュ、ズドン



 《虚の瞳》を封印してもクウには《抜刀術Lv7》がある。スキルに頼らない地球で身に着けた体の運びと、エヴァンに来てから刻み込まれた戦闘感覚を融合させて、最適な行動をとり続ける。それだけで、この階層の魔物なら数体同時でも圧倒出来た。しかも居合いにおいては、攻撃力と攻撃速度が共に10.5倍まで引き上げられるので、防御力のたかいボアでさえも一撃で屠ることができた。



「えっと……ビッグボアは毛皮と牙が素材になるんだったな。肉も売れるし解体しておくか」



 ムラサメを鞘に納め、腰に差した解体用ナイフを取り出す。

 ビッグボアの解体は王都に居たときに一度だけしたことがあるのでやり方は分かっている。


 首を落としたせいで胴からはまだ大量の血が流れ出ているので、先ずは牙からだ。

 下あごに2つだけついている長い牙を引っこ抜く。このとき歯茎に切れ目を入れておくと抜きやすい。この牙はそんなに丈夫ではないが錬金術の触媒になるらしく、まぁまぁな値で取引されている。



 次に血が抜けきった胴体部を解体していく。


 仰向けに転がして首元から一気に腹の中心をナイフで割いて皮を剥ぐ。軽くナイフを当てながら丁寧にやれば、特に失敗することもない簡単な作業だ。恐らく器用値の補正もかかっているのでかなり楽に作業できている。


 皮を剥ぎ取った後は、内臓を取り出して肉をブロック状に切り分けて完了だ。


 持ち帰るときはアイテム袋があるので荷物にならない。


 捨てた内臓や血は、迷宮の掃除屋であるスライムが勝手に処理してくれる。迷宮を清潔に保つ役割があるので、冒険者内でもスライムの積極的な討伐は禁止されている。




「~~~っ! 意外と疲れたな」



 解体を終え、背伸びして立ち上がる。解体中に魔物に襲われることもあるので油断できないことから、精神的に疲労が溜まるのだ。



「ふぅ。先に進むとしようか。《看破》!」



 クウは通路の奥を見渡しながら《看破Lv6》を使う。



―――――――――――――――――――

弓矢トラップ


スイッチを踏むと側面の穴から矢が飛び出す。

穴は幻覚で隠されている。

―――――――――――――――――――



「なるほど、この穴から矢が飛び出すのか。これはスイッチを避けた方が速いな」



 幻覚が効かないクウには壁面の穴がはっきり見えている。

 罠を見抜く《看破》もある以上脅威にはならない。



 この日、結局クウは14階層までたどり着いた。






―――――――――――――――――――

クウ・アカツキ 16歳

種族 人 ♂

Lv40


HP:1,150/1,150

MP:1,097/1,097


力 :980

体力 :993

魔力 :1,027

精神 :4,500

俊敏 :1,188

器用 :1,204

運 :40


【固有能力】

《虚の瞳》


【通常能力】

《剣術Lv2》

《抜刀術 Lv7》

《偽装Lv6》

《看破Lv6》

《魔力操作Lv4》


【加護】

《虚神の加護》


【称号】

《異世界人》《虚神の使徒》《精神を砕く者》

―――――――――――――――――――





 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ゴブリンの年齢設定はどういいうこと? モンスター達はゲーム的に迷宮が生み出しているのか、生き物として生活し繁殖してるのかによって変わるんだろうけど、ボスが固定である以上自動ポップするん…
[気になる点] 迷宮内の魔物を看破したときに年齢が2歳や3歳ってでますよね? 何度も倒されてるはずなのに何故ですか?
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