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虚空の天使【完結】  作者: 木口なん
砂漠の帝国編
151/566

EP150 超越者

 少し誇ったかのような顔つきで元超越者であったことを語るファルバッサ。しかしクウは何ということもない風に真顔で言葉を返す。



「まぁそうだろうなと思っていた」


”予想していたのか?”



 リアはまだ超越者がどのようなものなのかを理解していないために首を傾げるだけの反応であり、クウも特に驚いたような顔はしていない。予想よりもパッとしない反応にファルバッサもつまらなさそうな表情を浮かべる。

 そんなファルバッサにクウは呆れたような口調で説明を始めた。



「あのなぁ、お前があれだけ『超越者には絶対に勝てない』とか言ってたら分かるだろうよ。昔オロチと戦ったんだろ? 超越者とまともに戦えるのが同じ超越者だけだとしたら、嘗てお前が超越者だったことは容易に想像できる。大方、弱体化の呪いをくらって超越者じゃなくなったから負けたんだろ?」


”う、うむ。その通りだ”


「それで超越者とは一体何なんだ?」



 最近我の扱いが雑ではないか? とブツブツ呟きながら気を落とす巨大竜。とても神獣として崇められているとは思えない情けない姿だが、クウは気にすることなく話を急かす。初めて会ったときは恐ろしい竜という印象だったが、今ではすっかり友達のような付き合い方である。

 ファルバッサも別に気にしているわけではないため溜息を吐きつつクウの質問に答えた。



”はぁ……超越者とは強大な意思力と潜在力を持つ「意思生命体」だ。世界のシステムから逸脱し、神の力の片鱗たる権能を操る存在と言える”


「待て待て! 知らない単語が一杯出ていたぞ」


「クウ兄様。ファルバッサ様も雑な扱いをされて拗ねておられるのですよ」


「子供か!」


”違うわ! 説明するから黙って聞いているのだ!”



 リアも言うようになったものだとクウは少し感心する。弄られているファルバッサからすれば堪ったものではないが、仲が良いことは悪いことではない。またファルバッサ自身も見た目に合わず温厚で世話好きという性格であるため、安心して弄ることが出来たのだ。



”ともかく説明を続けるぞ”



 ゴホンと咳払いしてファルバッサが仕切り直す。どこなく空気が和んでしまったが、今は非常に真剣な話をしているのだ。クウも命がけの戦闘をした後であったため、どこか緩んだ空気を求めてしまうのは仕方ないことだろうが……

 ファルバッサは少しだけ間を空けて再び説明を始める。



”まずこの世界のステータスがどういうものか知っているか?”


「自分の能力だろ?」


「あとは自分の証明のようなモノでしょうか?」



 クウとリアは即座にそれぞれの意見を述べる。クウとしてはこの世界の召喚されて初めてステータスというものに触れたため、どちらかと言えば新鮮なシステムだ。リアからすれば生まれた頃から慣れ親しんだ当たり前のシステムである。

 ステータス画面には自らの身体能力の数値、スキルや称号が表示されており確かに二人の言った答えは正しいと言える。

 しかしファルバッサは軽く首を振って口を開いた。



”普通に考えれば確かにその通りだ。「ステータス」と言葉を発することで自分の能力を閲覧することが出来るため良く知っているだろう。しかし超越者の視点からすれば話は変わってくる。

 ステータスとは……あらゆる生物に掛けられた能力制限なのだ”


『制限?』



 クウとリアは言葉を重ねて聞き返す。

 ステータスを当然と思っていたリアは首を傾げるばかりだが、十六年生きて初めてステータスと出会ったクウからしてみれば反論の余地ありだった。



「ファルバッサ。それはおかしいだろ。俺はステータスの無い異世界から来たから分かる。ステータスのお陰で俺は超人的な能力を手にしているんだぞ。とても制限だとは思えない」


”なるほど。お主の世界がどのような場所なのかは知らぬが、ステータスを制限だと考えるのが難しいというのは当然の反応だろうな”


わたくしもそう思います。レベルアップによって大きな能力上昇をすることは誰もが知っていることです。またスキルのお陰でわたくしたちは特殊な能力を行使できます」



 首を傾げていただけだったリアもファルバッサに言い返す。ステータスのお陰で特別な能力が使えるというのは【固有能力】を有するリアにはよく理解できていた。

 しかしファルバッサは静かに首を振りながら言葉を返す。



”だから言ったであろう。ステータスを制限だと考えるのは超越者の視点だとな”


「つまり俺たちの視点で考えれば制限ではない。しかし超越者からすればステータスは枷だと?」


”うむ、クウよ。お主はオロチのステータスを覗き見たのだろう? 我にはどのように見えたのかは分からぬが、少なくとも見えたステータスに違和感を感じたはずだ”


「……」



 確かにオロチのステータスはおかしなところだらけだった。

 その中で最も不可思議だった箇所は各能力の数値が見えなかったことだ。HP、MP、力、体力、魔力、精神、俊敏、器用、運といったステータス値を観測することが出来なかった。

 さらにスキルも表示されず代わりに【権能】の二文字。意味不明である。

 思い出してるクウに対してファルバッサは言葉を重ねた。



”そもそも超越者にはステータスというものが存在しない。「ステータス」と唱えても表示されることがないのが本来なのだ。お主の《森羅万象》だからこそ無理矢理ステータスとして閲覧できたと考えられるだろう。

 超越者は魂から湧き上がる無限のエネルギーを強大な意思力で制御し、その肉体からすら解放された神と同等の存在。もちろんエネルギー量は神に遠く及ばないが、その性質は神と等しいのだ。肉体は溢れだすエネルギーが意思の力によって形を成しているに過ぎず、意思力を砕かない限りは滅びることがない。神と同等ゆえに世界の制限……つまりステータスに縛られず、ステータスは表示されない。”


「なるほど。そりゃ勝てないハズだ……」



 エネルギーの差はあれど、神にも等しい存在と言われれば勝てないことも納得である。実際に神と出会ったことのあるクウは、その絶対的な強さを理解している。凄まじい能力制限をしても尚、次元の違う強さを持っていた虚空神ゼノネイア。

 それと同等の性質を持った存在が超越者なのだ。

 ファルバッサは口を閉ざして考え込むクウに説明を続ける。



”超越者にとってはスキルも枷に過ぎない。例えば我の使う《竜息吹ドラゴンブレス》だが、これは世界の制限によって魔力の圧縮率などが決まっている。しかし超越者となった場合はそれがない。意思力のままに自らの限界まで魔力を圧縮することができるようになるのだ。スキルも分解され、特性として「魔素支配」というものになる。

 知っていると思うが魔素とはこの世界に満ちている魔力粒子。それを自在に操作することで魔力の圧縮、指向性解放が可能となり《竜息吹ドラゴンブレス》と同様のことが出来る。それもスキルよりも強力にな”


「は、話について行けそうにないです……」


「大丈夫だ。俺は理解しているから後で説明してやる」


「お願いしますね兄様」



 食事を作るのが面倒だったため、虚空リングに収納していたサンドイッチを夕食として齧っていたクウはすっかりファルバッサの話に没頭していた。脳にエネルギー補給をしながらファルバッサの話を反芻して自分なりに理解していく。



「つまりまとめると―――」



 クウは手に残っていたサンドイッチを口に入れ、水で流し込んでから言葉を続ける。



「―――超越者は膨大なエネルギーを宿し、それを意思力で体すらも成している「意思生命体」。意思を砕かない限りは致命傷すらも再生させる。オロチで見たとおりだな。

 スキルは特性として取り込まれ、特に強い能力が【権能】として発現する。これらの能力は世界の定めたスキルと言う枷に囚われず、意思のままに効果を発する……といったところか?」


”おおよそ合っている。そして超越者になる条件とは【魂源能力】の獲得と最大レベルであるLv200の到達。意思力の解放こそが【魂源能力】の獲得であり、潜在力の解放がLv200の到達ということだな”


「そうか。【権能】となるのは【魂源能力】。その他のスキルは自らの特性として取り込まれ、超越者ステータス画面の種族名の下に表示されると」


”うむ。我はお主の見た超越者ステータスというものが良く分かっていないのだが……まぁ、おそらくそういうことだろう。察しが良くて助かるぞ”



 すでにリアは話について行けず、ウトウトとしながらクウにもたれ掛かっていた。今日はオロチと言う隔絶した能力を持った存在と相対することになったのだ。緊張が解けて疲れが出たのだろう。クウも疲れ切ってはいるのだが、ファルバッサの話が興味深かったために眠気は無かった。

 クウはリアに虚空リングから取り出した毛布を掛けてやる。砂漠の夜は冷えるからだ。

 ファルバッサもその様子を眺め、クウが再びファルバッサの方へと目を向けてから話を続けた。



”基本的にスキルは世界にアシストされている代わりに制限が掛かっている。【魂源能力】でさえも半分世界のシステムから逸脱しているとはいえ、ある程度のアシストを受けているのだ。しかし超越者の特性と【権能】には世界のアシストが無い代わりに意思力によって自在な能力行使が可能だ。

 さらに溢れるような潜在力のお陰で無茶苦茶な能力すらも一人で発動できる。オロチが使っていた超範囲殲滅魔法の数々を見たお主なら理解できるだろう”


「ところで潜在力と言うのはなんだ? 意思力は俺も扱うからよくわかっているんだが、潜在力のことはまだ説明されていないぞ」


”そうだったな。潜在力とはMPのことだ”


「魔力のことか」


”それは違う。二つは別物だ”


「何?」



 クウの中では……というよりも人族の間ではMP=魔力として考えられていた。現にクウも魔法やスキルを使う時に魔力を消費している。このときMPが減っているため、MPと魔力と同じものだという認識をしていたのだ。

 しかしファルバッサはMPと魔力が違うものだという。

 首を傾げるクウにファルバッサは得意げに説明を始めた。



”MPとは神の言葉で『マナルぺリウム』の略のこと。訳すると『霊力』といったところか。これは魂から湧き出る無限の力であり、MP総量が多いということは一度に溜め置ける霊力が多いということ。魂とは法則を越えた無限機関なのだ。また超越者に関していえば、魂からMPを取り出せるのでいちいち溜め置く必要はない。

 そして魔力とはこの世界専用の特殊エネルギーに過ぎん。我らは霊力を魔力へと練り上げることによって魔法などを発動しているのだ。超越者は世界のシステムに縛られない。故に魔力を介することなく、霊力を直接操って能力を扱うことが可能なのだ。変換に伴うロスもなく発動も早い。もちろん魔力に変換して扱うことも出来るがな”


「初耳だぞ」



 MPといえば『マジックポイント』だろ! とクウは思ったが、異世界と日本のゲームが同じはずがない。確かに魔力を練り上げるという行為をして魔力を用意しているため、ファルバッサの説明の裏付けもバッチリだと言えた。

 しかしここでクウに疑問が浮かぶ。



「だけど何でわざわざ霊力を魔力に変換するように世界が出来ているんだ?」


”その疑問は尤もだ。それに関しても説明しよう”



 ファルバッサの説明は続く。




説明が分かりにくかったらごめんなさい。



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