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仕事好き

 俺はイーラさんに竜種の生態と魔族の行動について話した。

 すでに竜種が少なくなってしまったこの世界では、やはりその生態もよく分かっていないらしい。

 俺も昔はそう思ってた様にせいぜいが魔物のボスくらいの認識だったみたいだけど、それは間違いだ。


 竜種にとって魔物は食糧なんだから。

 まぁ竜種を観察してられるやつがほとんどいないんだから仕方ないけどさ。


 もちろん前の世界でも竜種に対する認識は似たようなものだ。

 竜種の生態に詳しいのは沢山ペットにしてる俺と、その周りの人間くらいだろう。


「それでは魔族は、自らの強化と人類の弱体化を一緒にしていたのですか?それも遥か昔から?」

「まぁ狙ってやってたかは怪しいですけどね。結果的にそうなってます。」


 人間が使う魔法は、使えるレベルが1でも下がれば効果は半分どころの騒ぎではない。

 弱体化しているのは事実なんだろう。

 そして、魔力が濃くなれば魔物や魔族は増える。

 一石二鳥だな。


「それは・・私だけが知っていれば良い情報ではないですね・・」


 ちょうど各国の代表が集まっていることもあり、イーラさんは世界中の国に竜種のことを伝えるつもりのようだ。


 まぁ、俺はパスだね。

 王族とか貴族とか嫌いなんだよ。

 その辺は出来るだけイーラさんに任せることにする。


「ロイ様・・・・わかりました!王公貴族との仲立ちはお任せ下さい!」


 イーラさん・・道案内だけじゃ不満なんだね。

 イーラさんのために役割を与えた訳じゃないんだけど、まぁよろしくお願いします。


「ところで、伝説の剣の話がまだなんですが・・」


 あぁ、そうか。

 でも、たぶんいらないんだよなぁ。


「お兄ちゃん。貰えるものなら貰っておけば?使わなくても収納にしまっておけばいいんだし。」


 現実的なガラシャの発言に、イーラさんの口許が再びヒクヒクしている。


「ま、まぁ、そうですね。正直な話をしますと、この地に伝説を放置されたまま旅立たれた方がこの国としては困ると思います。」


 そりゃそうか。

 じゃあ拾っていくかね。

 後から剣のお陰で勝ったとか言われるのは癪なんだけど、どうせ俺は元の世界に帰るんだ。

 いなくなった後で俺のことを何と言われようが知ったことか。


 今回は国の顔を立てることにしよう。


「ありがとうございます!そういえば、過去の勇者様の中にも戦いの際は収納魔法から剣を取り出した、というような話があるんですよ?」

「へぇ」


 まぁ使えるなら使うよな。

 イーラさんが普通に使うんだから『無詠唱』はこの世界ではある程度は一般的なんだろう。

 詠唱なしで使えるなら収納魔法はかなり有能だ。

 容量が確保出来る上に普段は身軽だからね。


「それでは私は再び報告に戻らせていただきますが、皆様はどうされますか?」

「出来れば街を見てまわりたいんですけどね」

「そうですか・・それでしたら私は報告に参りますので、別の護衛をご用意致します。それまでこちらでお待ち下さい」


 護衛ね。

 まぁ案内してくれる人は欲しいから、別にいいかな。

 イーラさんが急ぎ足で部屋を出ていくと、再び俺達は暇になった。


「コリュー。具合はどうだ?」

「ん?げんきだよ!」

「そっか。ガラシャはどうだ?」

「もう平気だよ?お兄ちゃん程じゃなさそうだけどね」

「まぁ俺は耐性スキルを持ってるからな。ガラシャもすぐ手に入るだろ?」


『成長補正』は強力だ。

 ダメージを持続的に受けていれば、その耐性スキルがすぐに育つだろう。

 ガラシャもすでに何種類かの耐性スキルは育ててるはずだから、勝手は知ってるはずだ。


 コリューは・・ほっとけば大丈夫だろう。

 もうかなり平気みたいだしな。


「とりあえずこの国が何て言うかは知らないけど、まずは竜種を保護して回ることになるからそのつもりでな」

「でも、保護した竜ってどこで飼うの?」


 おぉ・・そうだった。

 大人の竜種ならエサはいらない。

 でも、だからって突然王都で飼っても良いものだろうか?

 俺は時間と圧力をかけて『召喚獣』として国と国民に認めさせたけど、調子にのった冒険者がちょっかいをかけてきたり、近所の住民が逃げ出したり意外に苦労したんだよ。

 いまだに怖がって店に近付かない人もいるくらいだ。


 今回は俺達にそんな時間はない。

 必要がなければこの国に戻ってくるかもわからないくらいだ。

 この魔力の濃さの中で竜種がどんな生活をしてるのかはわからないけど、おそらく子供ならエサもいるだろう。

 って、エサは自分で獲らせればいいか。


 とりあえず、国の許可がないことには保護しても集める場所がない。

 イーラさんの後を追うべきだろうか?

 いやいや、一度は任せたのに俺がしゃしゃり出たらイーラさんに悪いよね。

 ちょっと面倒だろうけど、帰ってきたらもう一度行って貰おう。


「ほかのリュウ、あつめるの?」

「おぉ。またコリューの仲間が増えるぞ。」

「じゃあ、コリューがあんないする!」


 あっ、忘れてた。

 コリューに聞けば竜種のいる場所はわかるのか。

 実はニートグループで飼ってる竜種もほとんどはコリューが見付けて俺が捕まえた竜ばっかりだ。


 魔力に飢えてて簡単に捕まえられる野良竜は、運搬や護衛、店の看板代わりにと、とても役に立つ。

 野良の竜種は魔大陸の山脈出身のエリート黒竜であるコリューと違って、大量の魔力とかも要求してこない良い子ばっかりだ。

 やっぱり素朴な子がいいよね。

 人も竜も。


「こっちの世界でもどこにいるかわかるのか?」

「わかるよ!あっち!」


 といってコリューが指差したのは、窓の外だった。

 遠くの方に山脈と大きな山が見える。


「あの山か?」

「あーやまの・・うー」


 言葉が出てこないらしい。

 ということは。


『あの山の頂上から向こう側に少し下った辺りだよ!』


 やっぱりテレパシーで話しかけてきた。

 言葉を覚えるために普段は喋らせてるけど、テレパシーなら言語の壁とかないから言葉が出てこない時はこっちを使う。

 まぁ言葉を聞けても喋れない竜種だって中にはいるからな。

 コリューはその辺は優秀だ。

 顔も良いし、もうすぐで店番が任せられるだろう。

 それが出来たら人不足が解消するぜ!


「あの山の頂上から向こう側に少し下った辺り、だな。」

「そう!」

「そこに何匹くらいいるかわかるか?」

「ん?んーと、じゅう?」


 当てにならん!

 コリューが11以降の数字を覚えてるかも怪しい。

 まぁとりあえず、沢山いるなら良かったよ。

 そこから行ってみよう。


 それで、どうするか。

 見えてるとは言っても結構距離があるな。

 これだけ距離があるとコリューに乗っていくのが一番早いんだけど・・護衛はまだか?

 いや、別に待たなくてもいいか。


「コリュー。先にあの山まで行っててくれ。後から転移で追いかける」

「わかった!」

「すぐ行くと思うけど、もし先に着いても喧嘩すんなよ」

「だいじょうぶ!」


 といって、コリューは助走を付けて窓から飛び出した。

 すぐに大きな竜の姿に戻って飛び去っていく。


 あれ?

 なんかあいつ、デカくなってないか?

 魔力の食べ過ぎか?

 太っても知らないぞ。


 しかし、大丈夫って言ってたけど、ホントかなぁ・・

 あいつはすぐに喧嘩するからな。

 まぁ獣の本能ってやつなんだろうけどさ。


 護衛とやらを待つ間にガラシャと二人で魔力量の話をした。

 さっき使った魔力は二人とも回復しているようだ。

 こちらでも魔力が回復出来るのは朗報だけど、かなり圧縮してるせいで二人とも体積がかなり目減りしている。


 実際に使ってみないとわからないけど、こっちの世界では節約しないとな。

 元々の世界では底知らずって感じだったから、こっちで使える魔法の回数とかも調べた方が良いかもしれない。


 そんな話をしていたら、廊下の方からヤバい気配が近付いてきた。

 また襲撃でもあったのか?

 気配は俺達のいる部屋の前で止まるとすぐにドアを叩いた。


 ドンドン!


 俺はガラシャと目を合わせて頷き合う。


「荒々しいな・・」

「私が開けるね?」


 ガラシャがドアの横に行き、俺が正面で待ち構える。

 ガラシャがゆっくりとドアを開けると、廊下には誰もいなかった。

 しかし、俺とガラシャには見えている。


「おいお前、何やってんだ?」


 気配の主は天井に張り付いていた。

 部屋の中の。


「これは失礼。まさか見破られるとは」


 見破るってなんだ。

 ガラシャが開けたドアから入って天井に飛び付いただけだろ。

 確かに速かったけど、俺はもちろんガラシャにも丸見えだったぞ。


「拙者、アインと申す。世界の危機に駆け付けた勇者殿の都会観光と食い倒れの案内を申し付かった。」


 アインとやらは床に降りてくると嫌味たっぷりの自己紹介をしてきた。

 装備は全身の要所要所に革鎧、腰には細身の革の鞘。

 冒険者っぽいけど、動きが速いから盗賊(シーフ)かな?

 いや、俺達の案内をしてくれるならこの国の兵士なんだろうけどさ。


 つーか、何ださっきの喋り方は。

 見た目は若いのに随分と古風だな。

 物語に出てくる騎士とかの喋り方に似てる・・のか?


「はて、勇者殿は3人と聞いておりますが・・」


 といってアインが部屋を見渡すと、ガラシャと目が合った。


「こんにちは」

「アインと申す!以後お見知りおきを!」


 アインは態度は一切変えずに挨拶をした。

 でも、気配だけをコロッと変えた。

 器用なやつだ。

 さっきまで殺伐としてた気配が、今はまるで飼い犬みたいだ。

 いや、強そうだから狼かもしれないけど。

 ガラシャに惚れたか?


「予定は変更だ。観光も案内もキャンセルで。」

「は!?では、拙者の仕事は!?」


 おい・・

 ロックフォードの人間は仕事がアイデンティティーなのか?


「俺達は今からあの山に行くけど、付いてくるか?」


 といって、俺は窓の外を指差した。

 あれ?

 コリューがもう見えないぞ。

 あいつ、デカくなってスピードも増したのか?


「呪われた山脈にですと!?」

「なんだそれ?あの山は呪われてんのか?」

「知りませぬ。迷信でしょう。」


 こいつ・・めんどくさい奴なのか?


「呪われてるかどうか知らねぇけど、とりあえずあそこに行くから。で、付いてくんの?」

「もちろんですとも!拙者の仕事には勇者殿を逃がさないことも含まれております!」


 うん。

 正直でよろしい。


「じゃあ行こうか。・・いや、待て。なんで呪われたなんて物騒な名前が付いてんだ?入ったら出られないとかか?」

「いや、普通に出れましたぞ?」


 あっ、行ったことあるんだ。


「おそらくはあの山脈の周りが泥で覆われて近付けないからではないですかな?あと、近付けばわかりますが、寒いのですぞ」

「へぇ、そう。そんな山によく行ったな」

「拙者、呪いだとか伝説の類いには目がないのですぞ!」


 なるほど。

 イーラさんと同類か。

 というか、呪いと伝説って同列で扱っても良いのか?

 まぁ俺達は空から行くから、泥とかの問題は関係ないな。


「あと、あの山には竜種が住んでおりますから、あまり近付かない方が良いと思いますぞ?」

「ありゃ?知ってんのか?」


 イーラさんが竜種はほとんど残ってないって言ってたのにこんなに近くにいるもんだから、てっきり知らないのかと思ったけど・・


「これは誰にも言ってない秘密ですぞ。」

「・・そうかい。とっとと行くぞ」


 俺達は呪われた山脈とやらに行くことになった。

 アインは完璧に巻き添えだけど、自分で行ったことがあるならたぶん平気なんだろう。


 転移で行くとアインに伝えたら、せめて城を出てからにしてくれと言われた。

 後で街には行くつもりだったから構わないけど、どうやら外出の手続きをしないとダメな決まりだそうだ。

 めんどくせぇな。


 一応、先に行ったコリューの分もアインが外出の手続きはしておいてくれるらしい。

 本人はいなくても良いのかよ・・

 緩いのか堅いのか、どっちなんだろう。


 そういえば城の近くは飛んじゃいけないんだっけ。

 アインは見逃してくれたけど、イーラさんだったら怒られたかもな。


 次からは気を付けよう。

 覚えてたらね。

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