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英雄伝説は定番です

 俺達は他に魔人がいないことを確認すると、とりあえずやっと駆けつけた兵士達に後のことを任せてスラム街を出た。

 生きてた女性は魔人になった人のことは知らないらしく、それも兵士に任せてきた。


 イーラさんは拾った服を片手に、報告のために城に行くらしい。

 俺達は観光と食事を希望したんだけど、当然却下された。

 逃げられたら大問題だもんね。


 食事は城で食べられるし、観光は後でイーラさんが案内してくれるらしい。

 筆頭魔術師って、暇なのか?

 まぁいいけどさ。


 城で用意された部屋で食べた食事は思ったよりも質素なものだった。

 肉も野菜もある。

 量はあるんだけど、味が薄かった。


 いつもなら自分でスパイスを収納から出してかけちゃうんだけど、料理人なりメイドなりが常に同じ部屋にいる状態で料理にケチをつけるようなことは出来なくて・・


 ちょっと聞いてみたら、やっぱり今の世界の状況では食糧ならともかく、スパイスまで育てる余裕は無い。

 といった事情があるらしい。


 そりゃそうだ。

 良かった。

 大量に持ってきて。


 腹は減ってたからたっぷり食べたけどね。

 素材が良いから薄味でも美味しかったし。


 食事を終えてのんびりしていると、イーラさんが報告から戻ってきた。


 どうやらイーラさんが拾った魔人の服はこの王都で最近人気の服屋が仕立てたものにそっくりだったらしい。

 その服屋はかなりの高級店で、スラム街の住民が手に出来るような物ではないんだって。


「じゃあ盗んだんじゃないですか?」

「いえ、スラム街の住民が入れるような場所ではないんです」


 つまり、貴族向けの服屋か。


「それに、あの店であのような色合いの服など見たことはありません。」


 まぁ生地の色そのままで染めてもいないんだから、貴族用の服屋には置いてないだろうね。


 しかし、イーラさん・・全身ローブで顔すらまともに見せてくれないのに、流行りの服屋とかにも行くのか。

 キャラが読めないな・・



 イーラさんによると、生地や縫製からその店で作ったのはほぼ間違いがないらしい。

 ただし、服自体は売り物ではない。

 それを着ていた魔人は店のオーナーの関係者の可能性があるようだ。


 とりあえずその服屋のオーナーである貴族を呼び出して問い質すことになるらしい。

 まぁたぶん俺には関係ないけどね。


 そんなことより、イーラさんには聞きたいことがある。

 今は部屋の中に俺達以外誰もいないし、時間もある。

 ちょうど良い機会だ。


 早速だけど、ちょっと質問をさせて貰おう。


「イーラさん。ディオって知ってます?」

「はぁ、どなたかのお名前でしょうか?私は存じませんが・・」


 あれ?

 いきなり外したかな?

 とっておきのカードだったんだけど・・


「じゃあ・・どうしよう・・」

「ロイ様?どうかされましたか?」

「いや、なんか、俺達の戦いに対するイーラさんの反応が不思議だったもんで・・。」


 なんか不自然なんだよね。

 一度は驚くんだけどその後は何も聞いてこないし、すぐに平静に戻る。

 なんか驚いてるのすらわざとのような気さえしてくる。

 いや、リアクション自体は自然なんだけどね。


「それでしたら、勇者の方は常識では測れないと聞いておりますので。驚きはありますが、納得でもあります。」

「聞いてるって、誰から?」

「はぁ。誰と言われましても・・物語では通常そうなっております。」


 は?

 物語?

 そういえば召喚されたばっかりの時もそんな事言ってたな。


「その物語ってどんなものなんですか?」

「色々とありますが・・」


 イーラさんが簡潔に話した物語はとてもよくある話だった。

 どこからか召喚された異世界人が剣と魔法を使って悪い竜を倒すような話だ。


 他にも召喚じゃなくて生まれ変わりだったり、敵が魔族だったり、色んな種類があるらしい。


 イーラさんは勇者が大好きらしく、物語の話をしながらドンドン熱くなっていった。


「ちなみにそれは・・事実なんですか?」

「事実ですとも!何を隠そう我がロックフォード王国には、かの勇者達が使用した伝説の剣があるのですから!」

「剣が?伝説の?」


 メチャクチャ怪しいな。

 でも、剣と魔法の世界だし、有り得るのかな?


「はい!御神託で召喚の場所が我がロックフォードと指定されたのも、おそらくはあの剣を持つ国だからでしょう!」

「は?神託?」

「はい!あれ?神託をご存知ありませんか?」


 知ってるよ。

 神のお告げだろ?

 神のお告げだからここに町を作るとか税金を上げるとか隣の国を攻めるとか、国が何かをやる時に言い訳に使うには便利なものだ。

 イゴイスでもたまに国の発表を聞いたけど、あんなの信じるわけないだろ。


「今回の召喚が叶ったのも各国の預言者に御神託が下った結果です。そうでも無ければ召喚は永久に叶わなかったでしょう。」

「うわ、そうなんだ・・」


 ってことは、神託ってホントにあるんだ・・

 ディオってそんなこともしてたのか?

 知らなかったな。


「そうだ!ちょうど良いので剣を取りに行かれませんか?ロイ様の実力ならきっと使えるはずです!勇者様が手にした時に剣は光を取り戻すと言われております!是非!」

「・・いや、結構です。」

「なぜですか!?」

「なぜって・・俺は前衛じゃないですし」

「・・え?」


 え?

 じゃないよ。

 やっぱり勘違いしてたのか。

 力試しとかいって兵士を連れてきた時におかしいと思ったんだよ。

 俺の場合、魔法を何発か打たせてくれればいいのにね。

 きっと過去の勇者は剣士ばっかりで、物語でもそうだったんだろう。


 でも、俺は剣士じゃない。

 得意なのは魔法だ。

 というか、職業でいうなら俺は商人だ。

前衛後衛の前に後方支援だ。


 それに、俺が手に取ると光を取り戻す伝説の剣だと?

 なんとなく予想がつくじゃないか。

 なんか嫌だ。


「ロイ様は剣士じゃないんですか!?」

「はい」

「でも、先程魔人を剣でバッタバッタと・・」

「手っ取り早いので。」


 というか、魔法を使った時の周りへの被害がわからなかったんだけどね。


「そんな・・では、前衛はガラシャ様が?」

「わたし?わたしは後衛、かなぁ?」

「そうだな。ガラシャの得意科目は回復魔法ですよ。」


 というか、俺が前衛じゃないのにガラシャがやるわけないだろ。

 さてはさっきの俺の動きは速すぎて見えてなかったのか?

 頑張った甲斐がないな。


「では、どなたが前衛を?」

「前衛は・・・コリューかな?」

「コリューちゃ!様が!?」


 ちゃんでも様でもどっちでもいいぞ。

 人じゃないしな。

 魔法で全滅させるって作戦が使えない時にはコリューに頑張ってもらうかも知れないから、前衛ってのは間違ってないだろ。

 体は丈夫だし。

 いや、コリューはブレスも使えるから純粋な前衛とは違うのかな?


「あの、私、国から勇者様の旅路をしっかりお支えするように言われているのですが・・」

「そうなんですか?じゃあ、道案内とか頼めます?ゆっくり放浪って訳にもいかないですし」

「み、道案内・・」


 あっ

 イーラさんの口許がヒクヒクしてる。

 そういえばイーラさんって筆頭魔術師だったっけ。


「すみません。忙しければ他の方でも・・」

「い、いえ!道案内も私の役目です!」


「そうですか?じゃあお願いします。あっそれと、こちらの世界の魔法とかを教えて貰えると助かります。」

「もちろんです!何でも聞いて下さい!」


 イーラさんは今にもすがり付いてきそうな勢いだ。

 英雄伝説みたいなのが好きみたいだし、勇者のパーティに入れるってのを楽しみにしてたんだろう。

 そしたら今回に限って現れた勇者が自分と同じポジションばっかりとか・・なんか、かわいそうだな。


「ところで、コリュー様はたしか黒竜と仰ってましたが・・本当にあの、竜種の黒竜なんですか?」

「そうですよ。今は魔法で人の形になってますけど、見たいですか?」

「いえ!今はちょっと・・」


 こら、今なわけないだろ。

 ここは室内だぞ。


 コリューは突然自分の話をされて不思議そうな顔をしている。

 しかし、それでも口の動きは止まらない。

 何なんだこいつは・・飯も食わずに魔力ばっかり。

 まぁ、いくら魔力を食べても胃袋が一杯になる訳じゃないから平気なんだろうけどさ。

 このまま食べ続けたらここらの魔力が無くなったりして・・。


 ん?


「イーラさん。この世界の竜種ってどうなってますか?」

「竜種ですか・・今はほとんど残っていないと思いますが?」

「残ってないって、どうして?」

「はぁ・・詳しいことはわかりませんが、竜種は魔族の好物だと言われておりまして、人が魔人になると竜種の元へ行くとされています。」


 竜種が好物?

 そうなの?

 んなバカな。


「昔は狂った人間が自殺でもしているのだろうと考えられていたのですが、魔人が集団で行動するようになってからは竜種が食べられてしまうようになりました。」


 あっ

 食べるんだ。

 いや、やつらは人間だって食べてたじゃないか。


「イーラさん。この世界の人って昔はもっと高レベルの魔法とか使えたりしませんでした?」

「はい。確かにそう聞いていますが・・?」


 やっぱり。


 竜種は魔力を食べる。

 魔族は大昔から竜種を殺して世界中の魔力を濃くしてたんだ。

 新たに生まれる魔物や魔族を増やすために。


 きっとそーゆーのも本能なんだろう。

 竜種はどちらかと言うと好物じゃなくて天敵なんだ。

 そして、もしかしたらやつらにとっての生殖行動に当たるのかもしれない。


 すげぇ長期的な計画だな。

 誰だそんなこと考えたやつ。


 まぁ、本能なんて考えるものじゃないか。

 本能的な欲望を果たすためなら生き物は本気になるからな。

 それに気が付いてない時点で今の人類に勝ち目はないだろう。


 ということは・・魔王を殺す前に竜種を保護した方が良いのかもしれないな・・

 うーん・・

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