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魔人は個人、魔族は団体の呼び名です。

「はい?」


 俺がイーラさんに示したのは、男女8人が大して広くもない道端で取っ組み合ってる状況だった。

 いや、取っ組み合ってるわけじゃないね。


 なんというか・・ガラシャは見ちゃダメ。


 4人ずつの男女は4組の男女に別れて地面の上で大人の取っ組み合いをしていた。

 といっても、殴り合っているわけじゃない。

 ほとんど服を着てないし、辺りは血だらけだ。


 男性Aは裸に剥いた女性をレイプしている。

 こう言ってはなんだが、この人が一番普通だ。


 違う男性Bもレイプしているが、相手の女性は首や手足が変な方向に曲がっている。

 残念だけど、明らかに死んでいる。


 あと、女性Cが男性の上に乗って腰を振っているが、自らに入れているのはどうやら死んで役立たずになった男性の手首のようだ。

 そして腰を振りながら男性の顔を殴り続けている。

 もう顔が原形をとどめていない。


 最後に、もう一人の女性Dは男性の股間前部に文字通り食らいついていて、顔の半分は男性の体内にまで入っている。

 当然顔は血だらけだ。


 見てるだけで痛い。

 エグすぎる。


「なっ、は?え?」

「イーラさん、落ち着いて。上になってる4人は魔人で間違いありませんね?」

「は、はい。間違いありません。」


 イーラさんはまだ少し混乱しているようだけど、魔人なら問題ない。

 俺が感じる気配も魔人だと言っている。


「俺がやる」


 俺はみんなに言うと同時に駆け出した。

 流石にガラシャやコリューに任せる訳にはいかない。

 4人が相手だとイーラさんにも厳しいだろう。

 今度の魔人は全員五体満足だ。


 それに、少なくとも最初くらいは自分でやるべきだと思う。

 こんな世界にガラシャとコリューを連れてきたのは俺なんだから。


 俺の手には収納から出した魔鉱の剣がある。

 駆け出すと、まずは一番近くにいた股間に顔を埋めている女性Dの首を駆け抜けながら切り落とした。

 この人は見てて痛すぎる。

 切り落としたのに顔が股間に埋まったままになってしまったが、構ってられないので一番奥にいる普通にレイプしている男性Aのところに向かう。


 男の魔人は二人とも骨と皮のように痩せている。

 女の魔人も痩せてはいるけど、付くべきところは肉がちゃんとついている。

 やっぱりスラム街とかでは体で稼げる女性の方が良い物を食えるんだろうか?


 ことの最中なだけあって、魔人達は当然武器も防具も身につけていない。

 しかも意表を突いた奇襲だ。

 これで勝てなきゃこの世界で俺は役に立たないかもな。


 男性Aは突然現れた俺達に気が付くと、突然手を横に振ってきた。

 魔法かと思って避けようとしちゃったけど、ただガラシャ達の方に石を投げただけのようだ。

 投げられた石が柱にでも当たったのか、みんなの後ろで家が崩壊する音を聞きながら男性Aに迫り、剣を振るった。


 無視すんな。


 男性Aは手で自分を守ろうとしたが、俺はすれ違い様にその手ごと首を切り落とした。


 硬い!

 なんだ今の!?

 骨か?

 魔鉱の剣だったから良かったものの、鉄だったら折れてたかもしれないな・・

 急いで確認したけど、俺の剣には傷は入っていないようだ。


 俺が魔人の予想外の堅さに驚いていた時、手首で楽しんでいた女性Cが素早く男性Aの体の向こうから襲いかかってきた。

 けど、俺は男性Aの体を蹴り上げて女性Cにぶち当てる。


 予想外の衝撃にバランスを崩した女性Cの片足を切り落とすと、こちらに向かって崩れ落ちる首を返す剣で切り落とした。


 大腿骨が切れるなら問題はないかな。

 気を付けないとこっちの手首がやられそうだけど。



 あとは男性Bのみ!

 と、そちらを見ると、男性Bはこちらをじっと見ながらまだ腰を振っていた。


「なめてんのか?」

「お前、強いな。」


 喋った!

 って当然か?

 元とはいえ人間だし、ディオも魔人には知性があるみたいなこと言ってたしな。


「申し訳ないけど、お前と友達になる気はないんだ。死んでくれ」


 と俺が言った瞬間、男性Bは座った状態から空中に飛び上がった。

 今にも崩れそうな民家の屋根の上に着地すると、様子を伺うようにこちらを見下ろしてくる。

 軽いからって無茶するなぁ。


「逃げんなよ。ウィンドエッジ!」


 俺が放った魔法はレベル1くらいだ。

 当然でしょ?

 こんなに魔力を圧縮した状態で高レベルの魔法なんて使ったら街が滅びるかもしれない。

 今はちょうど敵が上にいるから試すのにちょうどいいんだ。


 男性Bは飛んできたウィンドエッジが見えるのか、それとも何となくか、風の刃を掌で受け止めた。

 そしてウィンドエッジは男性Bの掌を浅く傷付けただけで消えてしまった。


「マジか・・」

「ロイ様!魔人は魔法に強いのでダメージが通りにくいのです!」


 イーラさん・・そうじゃなくてさ。

 こんなに魔力を使ってるのに効果がショボすぎるってことなんだけど・・

 なんとなくそうじゃないかとは思ってたけど、やっぱりね。

 まぁ今は考えてる場合じゃないか。


 男性Bはニヤリと嫌な笑みを浮かべている。

 俺の魔法がショボすぎるので勝てると思ったのか、逃げるのをやめてこちらに突っ込んできた。

 でも、男性Bが跳ぶために蹴り飛ばした家の屋根が崩壊してしまった。

 足場が不安定だったお陰で男性Bはゆっくりと俺の方に向かって落ちてくるだけのお手軽状態だ。


 俺は最後の魔人を剣を横に振るって真っ二つにした。

 胴体から下が無くなった魔人は生きていけるのかな?

 男性Bは地面に落ちて転がると、下半身が無くなったので上半身だけでもがいている。

 とりあえず生きてるね。


「イーラさん、魔人ってこれでもトドメを刺した方が良いですか?」

「そうですね。流石にすぐ死ぬと思いますが、人間よりも生命力がありますから、何をするかわかりません。念のために」


 そう言って近付いてきたイーラさんがウィンドエッジで魔人の首を切り落とした。

 もう混乱はしてないようだ。

 というか、イーラさんをビックリさせようとしてちょっと頑張ったんだけど、全然動揺してくれてないのか。

 なんか寂しい。


 何はともあれ、裸のおっさんに迫られるとか2度と経験したくない。


 今後の自分の幸運を願いながら、俺は剣を収納にしまった。

 剣だけをしまえば血糊を取る必要はない。

 収納魔法って万能だ。


 そして、俺は男性Aに犯されていた女性のところに向かった。

 この女性だけはまだ生きているのだ。


「大丈夫ですか?」

「ロイさん!離れて下さい!」


 イーラさんが俺のしようとしたことに気が付くと、すぐに俺と女性の間に入って俺が近付くのを止める。


「あれ?その人も魔人なんですか?気配は違うような・・」

「なりかけています。こうなっては手遅れなんです。」


 手遅れか・・

 辛いな。

 もう少し早く来れば間に合ったんだろうか?


「ちなみに、どうしてわかるんですか?」

「目です。目が赤いでしょう?」


 虚ろに開いている女性の目は確かにピンク色っぽかった。

 白目の部分に色が着いて見える。

 充血してる感じではなく、全体が赤い。


 試しに死んだ魔人の目を見てみたら、かなり白目が赤かった。

 血のように真っ赤だ。

 違いはこれだけか?

 目に白目がない動物じゃわからないな。


「まだ赤く成りきってないみたいですけど、どうにもならないんですか?」

「目の色が変わる前ならば出来ることもあったのですが、色が変わってからでは・・残念ながら、助かった例はありません」


 女性は俺達の会話が聞こえているのか、それともこの世界では常識なのか、自分が助からないと知って目から涙を流しているように見えた。

 ガラシャもそれを見て黙っていられなかったようで、珍しく口を挟んでくる。


「なんとかなりませんか?」

「・・すみません」

「イーラさん。とりあえずその目の色が変わる前なら効く方法ってのはなんなんですか?」

「それは、回復魔法です。もっとも、かなり高レベルのものでないと効果が得られませんが」


 それを聞いて俺とガラシャが顔を見合わせる。

 どんな回復魔法だか知らないけど、俺もガラシャも得意だ。

 特にガラシャが。


「イーラさん。高レベルってどれくらいですか?」

「私自身は治療をしたことがないのですが、レベル4以上、出来ればレベル5と聞いております。」

「5?この世界の人はレベル5の魔法が使えるんですか?」

「はい。魔術師でも高位の者だけですが。」


 元の世界では魔力量の多い魔大陸の魔術師でもレベル4くらいじゃなかったか?

 いや、4は会ったことがあるだけでレベル5を使えるやつもいるだろう。

 それにしてもこの世界は魔力の濃度が濃い。

 こんなに圧縮してるのにレベル5って物凄い魔力量だぞ?

 すごいな。


「とりあえずその回復魔法を教えて下さい。」

「それはもちろん構いませんが・・その、トドメを刺した後でも?」

「いや、魔法を試してみたいんで、そのままで。」


 俺とガラシャはその回復魔法、キュアマインドというのを教わった。

 呪文が俺が知っていた疲労回復魔法とそっくりだったので、似たようなものなのかもしれない。

 キュアマインドは元々、精神異常を治療する魔法だそうで、心に受けた傷なんかも高レベルなら治せるらしい。

 この魔法のお陰で魔人化する原因もなんとなくわかったらしいよ。


「ガラシャ」

「うん。」


 実際にガラシャがキュアマインドを試してみるのを横からイーラさんが見ている。

 というか、たぶん女性が暴れないか見張っているんだろう。


 ガラシャが教わったばかりの呪文を唱える。

 初めてなので無詠唱ではない。


「えっ!」


 とりあえずレベルは5にしたようだ。

 呪文を聞いてイーラさんがビックリしているけど、いくら圧縮しててもレベル5くらいなら楽勝だろう。

 まぁ前の世界みたいにレベル10を出し続けるような真似は出来そうにないけどね。


 ガラシャが出した魔力量は物凄いけど、どうやら効果はレベル5相当なんだろう。

 確かに目の色はあまり変わらない。

 さっきのウィンドエッジといい、もしかしたら周囲の魔力が濃いから打ち消されるのか?

 これは、水の中で水鉄砲を打つようなものなのかな?

 まぁなんでもいいか。

 そーゆーものなんだろう。


「効果がないかな?」

「いや、気配にも目の色にも効果は出てるよ。レベルが足りないんじゃないか?」

「わかった。やってみる。」


 今感じた気配の変化で魔人化の特徴がちょっとわかった。

 僅かな違いだ。

 魔力が染み込んだ気配・・かな?

 初対面でわかるかは怪しい。


「えぇ!?」


 レベル5の魔法に続けてさらに呪文を唱えるガラシャに再び驚くイーラさん。

 コントか。


 今度はキュアマインドのレベル7にしたようだ。

 効果は一気に上がった。

 明らかに色の着いていた目がかなり白くなったのだ。


「ふむ。」


 まだ完治はしてないのかな?

 おまけで俺もキュアマインドを唱える。

 すぐ横で何度も見たので俺は無詠唱だ。

 練習練習。


 ついでに回復魔法も一式かけてあげよう。

 よく見たら手首が折れてるし、色々と大変だっただろうしね。


「イーラさん。どうですか?」

「え?あ、はい。これなら問題はないかと・・」


 なら良いんだけどね・・

 でも、治せるとわかったらこれから戦いにくくなるな。

 なんか自分の首を絞めたような気がする・・


 さてと

 出来ればこれは俺が言いたくはなかったんだけど・・


「ところで・・そろそろ服を着させてあげませんか?」


 女性はまだ全裸のままなのだ。

 なんだかこーゆーのは男は言い出しにくいんだけど、誰も言ってくれないので仕方ない。


「でも、この人の服は粉々だよ?」

「そうですね。冬でもないですし・・仕方がないと思いますが」


 仕方ないのかよ。

 そうかい。

 言った俺がバカだったよ。

 ディオの作った世界の貞操観念はどうなってんだ?


 いや、多少の貞操観念はあるんだよ。

 ただ、裸を見られることが特別じゃないというか・・昔の混浴文化ってこんな感じだったのかな?


 ヨーロッパも昔は混浴だったらしいし、古代オリンピックだって全裸でやってたんだろ?

 街の中をランニングする時も裸だったっていうんだから、服ってだけで正装なのかな?

 すげぇ話が極端な気がするけど・・変なのは俺なのか?

 地球の知識とかがあると妙なところでひっかかるんだよな。


「あぁ、ここに服がありますね。」


 イーラさん・・それは死んだ魔人の服だよ・・


「どうせここでは誰かが拾って使いますから。構わないでしょう。」

「・・そんなもんですか?」

「えぇ。それにこれは中々上等な生地を使って・・・・あれ?これは・・」


 といってマジマジと手にした服をチェックしだすイーラさん。

 服はキチンと服の形をしている。

 体に巻くだけ、被るだけの布ではないようだ。


 この世界も一緒なら、服ってのは結構な情報が含まれてる。

 生地の素材や編み方やスタイル、繋ぎ目の縫い方なんかでかなり違いが出るのだ。


 俺も魔獣の毛で服を作った時とかに多少は勉強した。

 生地はもちろん、縫い方にも人や店の特徴が出てくるのだ。

 見た目はほとんど一緒なんだけど、中にはわざわざ生地の縫い目を外に向けて服のブランド価値をアピールしたり・・この話はいらないか。


 何にしても、どうやらイーラさんは服から何らかの情報を得たらしい。

 忙しそうに何かを考えている。


 それはそうと、そろそろ俺も色々と聞きたいことがあるんだけど、まだダメかな?

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