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ついに来ましたヘルヘイム

 白い光に包まれた俺達は、徐々に薄くなっていく光と共に声を聞いた。


「成功しました!」

「やったか!」


 光がおさまると、周りには思った通りの状況が広がっていた。

 すなわち、石壁に覆われた部屋と魔法の灯り、数人の人の気配、そして床には光をわずかに残したままの魔方陣がある。

 大体こうだろうと予想していたまんまの光景だ。


 声を出したと思われる人達はちょうど俺達の正面にいた。

 一人は頭から足までのローブを纏っていることからおそらく魔術師・・きっと俺達の召喚者だ。

 もう一人は、えーと、普通のおじさんかな?


 声を出したのは二人だったけど、その左右、少し離れた所に兵士が一人ずつ立っている。

 これは護衛か何かだろうな。


 俺が感じた気配はそれで全部だったけど、辺りを見回すと他にも沢山のローブ姿の人達がいた。

 魔術師と思われるそれらの人達は、魔方陣を囲っていたであろう場所で倒れている。


 気配はない。

 どうやら死んでいるようだ。


「は?死体!?」


 死体の真ん中に召喚とかどーゆーこと!?

 突然の出来事に混乱していると、得体の知れない息苦しさを感じた。

 まるで水中にいるかのような圧迫感と息苦しさ、あと、なんか気持ち悪い・・

 意味のわからない心地悪さに自分の胸を服の上から撫でていると、隣からガラシャの声が聞こえてきた。


「コリューちゃん!?」

「え?」


 俺が声に振り向くとそこにはコリューが倒れていて、ガラシャが走り寄るところだった。


「大丈夫!?」

「どうした!?」


 コリューはかなり日焼けした肌を青くして・・たぶん、青くして、口をパクパク動かしている。


「ちょっと!どういうことですか!」


 ガラシャが離れた所に立ったままの召喚者とその周りにいる人達に向かって叫んだ。

 突然叫ばれた人達は驚いてあたふたしている。


「えっ?お、おい!どうなってる!」

「そんな、わかりません!」

 おじさんが詰め寄るが、召喚者にも身に覚えはなさそうだ。


 これは何かの攻撃なのか?

 よく見たらガラシャも顔を青くしている。

 凄くつらそうで、今にも倒れそうだ。


「なんで?魔法が使えない!」


 どうやらガラシャは魔法を使おうとしていたらしい。

 状況的に回復魔法か結界魔法のどちらかだろう。


 魔法が使えないと言われて気が付いた。

 この気持ち悪さの原因は魔力だ。

 この部屋は魔力が濃すぎるらしい。

 濃すぎる魔力は生き物の敵だからね。

 そして、対処法は俺が知ってる。


「ガラシャ!自分の魔力を圧縮しろ!急げ!」


 そう言って俺はコリューの胸に手を当てる。

 コリューの魔力を圧縮しているのだ。

 他人の魔力は扱いづらいけど、複雑なことをやるわけじゃないならなんとかなる。

 ガラシャも俺に言われるまま、魔力をどんどん圧縮しているようだ。


「あっ、楽になってきた・・なんで?」

「まだだぞ?続けろよ?」


 どうやらガラシャは知らなかったらしい。

 魔力は空気みたいなものだ。

 基本的には圧力が低い所に吹き込む。

 だから周りの圧力が高い場合、魔力がなかなか出せないので少なくともさっきのガラシャのように魔力操作による魔法はかなり使いづらい。

 対処法は自分の魔力の圧力も上げれば良い。

 簡単だろ?

 自分で出来るならね。


 俺は自分の魔力を圧縮しながらコリューの魔力も操作する。

 コリューの顔色は徐々に良くなっていくが、まだ酸欠の鯉のように口をパクパクしている。


「コリュー、大丈夫か?・・おまえ・・・・魔力食ってんのかよ!」


 パシンと頭を叩かれたコリューはハッとしたように俺を見て、凄く嬉しそうにしている。


「魔力、おいしいよ!約束どおり!」

「・・あぁ、そうかよ・・」


 コリューは魔力に溺れながらも食べるという荒業を使っていたようだ。

 濃い魔力は旨いらしい。

 まぁこいつはいつでも何でも旨そうだけどな。

 体の中に直接濃い魔力を入れてるんだから、コリューはもう大丈夫だろう。


「ガラシャ。大丈夫か?」

「うん。でもまだ気持ち悪いよ~」

「じゃあ回復魔法かけてやるから、こっち来い」


 あんまり意味はないと思うけど、気休めにはなるだろ。


「ありがとう。お兄ちゃん」

「あぁ。」


 俺達が魔力への対処を大体終えると、状況を伺っていた原住民達が寄ってきた。

 明らかに警戒しているガラシャから距離を取った位置で立ち止まると、代表してローブ姿の召喚者と思われるやつが話しかけてくる。

 さっきまでそれどころじゃなかったけど、声からしてどうやら女の人らしい。


「あの・・何があったんですか?」

「あ?あぁ、もう心配ない。ちょっと魔力に当てられただけだ。」

「魔力、に、ですか?」

「あぁ。ここは魔力が濃いな。何でだ?つーか、あんた達は平気なのか?」


 辛そうにしてるのは俺たちだけだ。

 といっても周りは死体だらけ。

 この状況でピンピンしてるってのは、結界か何かだろうか?


「いえ、私達はなんとも・・」

「・・そうなの?」

「ねぇ。それよりあなた達は、何?」


 若干警戒を解いたガラシャの鋭い質問を聞いて思い出した。

 驚いた演技・・は、いまさらか?


「うん、そうだな。誰だ?」

 とりあえず適当に乗っかっただけの俺の質問に召喚者が答えてくれた。

「あっはい。申し遅れました。私はロックフォード王国筆頭魔術師のイーラと申します。」

「同じく、ロックフォード王国の宰相を勤めてい・・」

「すみません!ちょっと待って下さい!そうじゃなくて、状況がわからないんです!」


 ガラシャがおじさんの自己紹介を遮ってしまったが、このおじさん、どうやら宰相だったらしい。

 服装的には小綺麗な普通のおじさんって感じだけどな。


 しかし、この訳のわからない状況にガラシャが思ったより混乱しているみたいだ。

 どう考えてもほっとけば最後まで説明してくれるのにね。


 ということで、驚いた演技はガラシャに任せよう。

 俺は黙って聞いてることにするよ。

 俺、賢い。

 わからないことだけ質問しようね。


 とりあえず俺達は部屋を移って状況を説明して貰うことになった。


 部屋を出たところに立っていた兵士が交代で部屋に入っていくのを見届けた後、先導されるままに付いていく俺達。

 先導する兵士二人、宰相のおじさんと召喚者、そして俺達と続いている。


 どうやら召喚されたのは地下に近いフロアーだったらしい。

 階段を何度も登ると、外には沢山の兵士が訓練している広場が見えて、その奥には城下町が広がっていた。

 どうやら城に直接召喚したらしい。


 気になっていた魔力の濃さだけど、部屋を出ても一向に薄くならない。

 そして濃くもならない。

 大体一定だ。

 窓から外を見ても変な結界みたいな物が見える訳でもないし、さっきの召喚者イーラの口振りを考えてもこっちの世界ではこれが標準濃度なんだろう。


 これ、すごく厄介なんですけど・・

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