夢の再開
俺は夢を見ている。
空を飛んでいるような浮遊感を感じる。
まるで水に浮かんでいるかのように体が楽だ。
あぁ、あそこに見えるのは・・
いや、何も見えないな。
何だこれ?
真っ白だぞ・・
見えるのは何もない真っ白な空間・・いや、空間かどうかも怪しいが・・
一応、自分の体だけは見えてる。
逆にそれしか見えないけど、魔法でも打ってみるか?
妙な状況に混乱している俺の側に、突然何かが現れた。
「久しぶり!元気だったー?」
あぁ、こいつは登場する度にテンションが微妙に高いな。
しかし・・久しぶりに会ったけど相変わらず掴めないやつだ。
今だって目の前にいるのに姿が見えない。
いることや子供だってこと、どんな姿勢かまで認識出来るのに、実際には何も見えないんだよ。
前回は俺が魂だったから目がなくて見えないせいかと思ったけど、今は自分の手足が見えてるせいでこいつの異常さが際立つな。
「誰だお前」
「・・嘘でしょ?ボクのこと忘れちゃったの?」
「嘘だよ。ディオだろ?覚えてるよ」
こいつは前世で俺の体を食べてこの世界に転生させた大悪人だ。
最初に会った時も突然現れて「神様だよーアハハ~」とか言ってたし、こんなぶっ飛んだガキのことは中々忘れられない。
姿は見えないけど・・
「覚えてて良かったよ~。元気だったー?」
「元気だよ。つーか白々しいな。どうせ見張ってたんだろ?」
「わかってたの?でも、時々だよ?」
やっぱり。
まぁ自称神なんだしな。
神様は何でもお見通しなんだろう。
「いやー、何でもじゃないんだよ?」
「ナチュラルに人の心を読むんじゃない。・・それで、なんか用か?」
「えー、いやー、なんか冷たくない?」
こいつは人の体を食ったことを忘れたのか?
今回は俺の体は無事なんだろうな。
前回も寝てる時に食われたし。
「確認するが、これは夢だよな?お前の腹の中じゃないよな?」
「夢だよー。あの時はごめんねー?」
「まぁ夢なら良いよ。俺もこっちに来てから結構充実してるしな。ディオも何回か手助けしてくれたんじゃないのか?」
確信はないけど、ちょっと前世の俺と比べると運が良すぎる気がするしな。
「魔大陸に転移したのとか、迷宮とかもそうじゃないのか?」
「よく分かるねー。後は君がコリューと出会った時もそうだよー」
「は?コリューも?何でだ?」
転移は陸だからこそ何とかなったけど、広い海の上ならたぶん死んでた。
迷宮は俺にとって都合が良すぎる。
でも、コリュー?
あの時なんかあったっけ?
「あのまま進んでたら死んでたよー?」
「おぉ・・そうか・・」
そういえばあの時はまだ竜種の動きが全く見えなかったんだっけ・・
確かにそのレベルで竜種の巣に突っ込んだら死ぬわな。
「ちなみに転移の時は宇宙に飛び出してたよー」
「マジか!」
せめて海の真ん中くらいかと。
俺、こっちの世界でもう2度も死んでんじゃん・・
「それでさー、君にお願いがあるんだけど、聞いてくれるー?」
「お前・・・随分断り難いタイミングで言い出したな・・で?そのお願いって何だ?」
「うん、ちょっとね?魔王を倒してくれないかなって?」
・・は?
「今まで聞いたことないけど、この世界って魔王とかいるのか?」
「うーうん。この世界じゃないよ。この下にある世界だよ?」
「下って・・魔界とか地獄ってやつか?」
「違うよ?下だよー?」
「・・地下か?」
「いやー、下?」
「それじゃあ・・・・迷宮か!」
「下だってばー」
「・・わけわからん。ちゃんと説明しろ」
ディオに細かく聞いてわかったのは、ディオが作った世界は唯一のものではなく、いくつか作ってあって、それが積み重なっているってことだ。
たぶんだけど、ハンバーガーとか串団子のイメージで良いんだと思う。
なんで例えが食べ物かって?
滅んじゃった世界はディオが食べちゃうんだってさ。
神様って雑食なのな。
「それで、どうして俺がその魔王とやらを倒すんだ?」
「え?なんか強そうだし、倒してくれないかなーと思って?」
なんだその理由は・・
「じゃあ倒さなくってもいいのか?」
「うん。ちょっと聞いてみただけー」
「・・なるほど」
それじゃあわざわざ別の世界にまで行かなくてもいいかな?
めんどくさいし。
でも・・
「あー、ディオ・・俺が魔王を倒さないとその世界はどうなるんだ?」
「ボク他に持ち駒ないからねー、そのまま滅ぶよー?」
「本人を前に駒とか言うなよ・・で、世界が滅ぶのか?・・その、そこに住んでる人とか、生き物はどうなる?」
「滅ぶ前にほとんど死ぬと思うよー?まぁ全部食べちゃうから一緒だけどねー」
世界ごと踊り食いとか・・いったいどっちが魔王だよ・・
「繰り返すが、俺が行かなくても良いんだよな?この世界に影響はないんだな?」
「うん。行かなくても大丈夫ー。あーでもこの世界も壊れちゃうかも?」
「何でだよ!別の世界なんだろ!?」
「うーん、世界が付いてる棒がもうそろそろ限界なんだよねー。もしそれが折れたらこっちの世界も一緒に落ちちゃうからねー」
棒?
世界が付いてる、棒・・?
折れたら落ちちゃうってまさか・・串団子の方だったのか?
「まぁそんな感じかなー?」
「そんな感じなのか!?」
世界ってそんな風になってんのか。
考えたこともなかったけど、なんか嫌だな・・
「それでねーその棒がもう限界だから、もしも食べる時に折れたらこっちも落ちちゃうと思う」
「いやいや!じゃあ食べるなよ!」
「早く食べないと魔王が柱を折っちゃうよ?」
「じゃあそーなる前に食えよ!」
って俺は何を言ってんだ!?
落ち着け。
とりあえず、ディオはお願いとか言ってるけど俺に選択肢がないことはわかった。
でも・・
「何でディオがやらないんだ?」
「んーとね、そーゆールールだから?」
「いや、ルールってディオが作るんじゃないのかよ。」
「違うよ?先輩だよ?」
先輩て・・部活かよ。
しかし、ルールと聞いたとたんに「じゃあしょうがない」って思っちゃうのは俺が元日本人だからか?
「もういいよ。わかった。やらなきゃ滅ぶならやるしかないだろ。」
その後は細かいことも含めて情報収集だ。
ルールと聞いたらなんか気になっちゃうけど、俺が何かをする分には大丈夫らしい。
まず、俺が行く下の世界とやらには大陸が1つだけあって、名前をヘルヘイムって言うらしい。
そこでは今、人類と魔族が絶賛戦争中で
大変な状態になってるそうだ。
ちなみに魔族ってのは魔物になっちゃった人間のことで、魔人とも呼ばれてる。
きっと魔獣みたいなものだろう。
魔獣と違うのは、元が人類なだけあって知能が高く、魔法が使えるってこと。
すげぇ厄介だ・・
今はその魔族を止めることが出来ずに、人類は壊滅目前まで追い詰められてる。
俺が魔王だけ倒しても頭が変わるだけだから、討伐目標は魔族の幹部全般。
強いのは全部だそうだ。
バカじゃねぇの?
下の世界も一応はディオが作った世界なだけあって細かいことを除けばこの世界と基本的なことは一緒だから、言葉とかもちゃんと通じるらしい。
安心材料が一つでもあって良かったよ。
敵が沢山いるなら人手が欲しいからドラゴンクロウとかコーラドールでも連れていこうかと思ったけど、そんな大人数はダメらしい。
それと、俺を魔王とか幹部の元に転送してくれる訳じゃないらしい。
ルールに引っ掛かるんだってさ。
聞いてる限りルールってのは、人を助けるのはOKで何かを倒しちゃうのはダメって感じなのかな?
まぁ他にもあるんだろうけど、俺には関係ないらしいからほっとくけどね。
ディオが言うには、近々俺は向こうの世界の人間に召喚されるみたいだ。
人類を救う勇者として・・
やっぱりバカじゃねぇのか?
なんで召喚されるのにネタバレしちゃうかな?
俺が向こうで驚いた演技とかしなきゃいけないわけ?
すげぇ嫌なんだけど・・
って思ったけど、よく考えたら何も知らない世界に突然呼び出されるよりはましだよな。
実家でニート生活してるならまだしも、今の俺は奴隷や従業員の生活を支えてるわけだし。
いなくなった後のことを誰かに引き継いでおかないとみんなが困るかもしれない。
店を任せるならやっぱりガラシャが適任なんだけど・・
どうしたもんかな・・




