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勉強が足りませんでした

 先生が色んな本を貸してくれた。

 先生の私物だ。

 図書室の本は寄付された物もあり、先生の認識では先生の私物ではなく、みんなのものらしい。


 本はいろんなジャンルの物があったが、世の中のこと、つまりこの世界のことを学べる物が多かった。

 そういえば今まで読んでた本は文字の勉強が出来ればいいと思ってたので、物語とかが多かったかな。

『生活魔法の使い方』なんて魔法を使う時の注意事項くらいしか役に立たなかったし。


 先生に借りた本のお陰で結構この世界のことがわかった。

 中には地図が書いてある本もあったので地理についても学んだ。

 ライアンの説明じゃいまいちわからなかったけど、この本で見る限り俺が住んでるライクス王国は思ってたより大きい。

 逆に大陸は少し小さいように感じるけど、衛星写真が撮れるわけじゃないからあまり正確ではないだろう。

 昔は世界地図の縮尺を国ごとに変えるなんて普通に行われていた。

 どこの国でも自分の国を実際より大きく描いた地図が主流だったりしたらしい。

 おまけにどうでもいい所は結構適当なので、19世紀までヨーロッパの世界地図では日本がなかったり、あってもすごく小さかったりしたのだ。


 確か俺がこの世界に来る前にどっかの国の教科書の地図に韓国が載ってないとかで、韓国人が騒いでいるとニュースでやってた気がする。

 現代においても写真じゃない以上、地図なんてそんなものだ。

 なのでこの地図も、こちらのライクス王国側の人間が大きめに書いたのかもしれないので、実際に自分が行ってみないと縮尺はわからない。

 行ってもわからないかも知れないけど・・


 魔力石についても勉強した。

 あれは街の北にある鉱山で取れる魔晶石っていうものを精練して作るらしい。

 魔晶石は長い時間をかけて石に魔力が染み込んで成分が変わることで出来る。と、言われてる。

 魔力石は不思議なことに使えば使うほど小さくなるらしい。

 大きさは容量と出力に影響するので、一般的には大きさによって用途が決まる。

 大きい物は軍事用や冒険者の戦闘用、小さくなった魔力石は日常用で主に使われる。

 小さくなりすぎた魔力石は、集めてから一度溶かして大きく作り直すことで再利用している。

 お店などでも物凄く大きな魔力石を見ないのは、持ち運びに苦労するというのと、自分の能力以上に大きくても出力を使いきれる人がいないせいだ。

 魔力石がいくらあっても使う人の能力以上の魔力は発揮できない。

 魔力石に力があっても、結局扱うのは人の能力内での話らしい。

 だったら魔方陣を刻めばいいと思うのだが、そーゆーものでもないらしい。


 魔力石と違って金属に魔力が染み込んだものは魔紘と呼ばれ、魔力石と同じく魔力を込めておくとすごく丈夫になり、もしも多少の傷がついても勝手に直るらしい。

 それに込める魔力によってさらに耐性が付くので、魔法に凄く強い鎧も作れる。

 ちなみに魔紘は魔力石よりも貴重で、少量でもすっごく高いから普通の人は高くて買えない。

 鎧繋がりで言えば、革の鎧でも魔獣の革を使ったものは金属のものには劣るものの、防御力が高くて金属の鎧よりも軽いのでかなり重宝されるらしい。

 ま、これも魔獣が強いので貴重だ。


 他にも職業について学んだ。

 今まで名前だけとかイメージで勝手に想像してたけど、本で学ぶ限り俺に向いてるのは魔術師や冒険者ではなく、ハンターだと思う。

 ハンターとは素材などを売ったり情報を得る為に冒険者ギルドに所属したりはするから冒険者の一種ではあるらしい。

 でも、一般的な冒険者がギルドで依頼を受けて動くのに対して、ハンターは依頼を受けないで獲物を求めて自由に動く。

 魔獣を狩ったり危険な場所にある魔紘を求めて山を登ったりするらしい。

 アウトドアは嫌いじゃない。

 かなり自由だし、色んな場所にも行ける。

 遺跡や迷宮なんて面白そうだ。

 魔法は多少なりとも使えるのが普通なので、冒険者以外の魔術師っていうと魔法しか出来ない兵士のことを指すらしい。

 そりゃ普段は研究ばっかり出来るだろうけど、弟子入りというよりはやっぱり軍隊に入隊することになってしまうだろう。


 魔法については先生に直接教わった。

 生活魔法って言葉がある通り、魔法は生活の一部だ。

 料理に使う火も魔法で薪につけるし、夜も明かりの魔法がライトの代わりだ。

 孤児院では下級生が自由に入れない調理場や、先生や上級生の私室で魔法は日常的に使われていたらしい。

 あと、孤児院には井戸があるけど、ない家では魔法で出すらしい。

 小さくなった魔力石はそういった日常生活で魔力が足りなくなった時や灯りの魔法等を長持ちさせたい時など、日用品としても使われる。

 魔力石が生活に欠かせない消耗品なので、魔晶石が取れるこの街は王都ではないものの近隣の街や国からかなり大事にされているらしい。


 で、冬になって魔法を教わる前に1つだけ先に教わった。

 生活魔法で水を出す魔法だ。

 家で使えるのはもちろん、旅の途中など外で水を確保出来ない時にも使えるのでかなり使える魔法だ。

 魔法初心者の魔力量を計るのに、これでどれだけの水が出せるか試したりするらしい。



 最初に教わった呪文を唱えて水を出してみる。

 呪文はこの世界の言語ですらなかった。

 いくら頑張っても魔法が出なかった訳だ。


 次に魔方陣を使って同じ魔法を唱えて水を出してみると、水の勢いが全然違った。

 倍以上出ている。

 しかし、魔力の消費量は一緒だった。

 これは俺が呪文を理解していないこと、きちんと発音出来ていないことによるロスが発生しているらしい。

 完璧に呪文を理解すると魔方陣と同じだけ出力が出るだけでなく、噛んだりして呪文を少し間違えても魔法は発動するらしい。

 噛んでもいいなら無詠唱もいけるのではないかと聞いてみたら、一流の魔術師は使えなくはないけど少しロスが出るし、どっちみち頭の中で唱えるからそこまで短縮にならないので、不意討ちなど特別な事情がない限りは詠唱するのが常識らしい。

 ちなみにいくら呪文の理解が完璧でも魔方陣を使っても、魔力の相性でロスは発生するらしい。

 俺の魔力は緑で風魔法なので、今の魔方陣を使った水魔法でも少なくとも1、2割のロスが必ず出てるらしい。

 魔力石に相性のあった魔方陣を刻んだ場合、誰が発動してもロスは発生しない代わりに、刻んだ魔法以外は使えなくなる。

 魔力石はそれ自体が傷を直してしまうため、特殊な方法でしか魔方陣を刻むことは出来ないそうだが、この方法は先生も知らなかった。

 試しに集めた無属性の魔力を魔方陣に送ってみたらやっぱり大量の水が出た。

 ロスは発生していないらしい。


 俺は冬に入ったら本格的に呪文の勉強をすることになる。

 魔法の発動を魔方陣に頼る魔術師もいるらしいし、それが軍隊等、限られた魔法しか使わないならスピードの面でも有効な作戦らしい。

 しかし、使わないのと使えないのでは大きく意味が違う。

 使いたい魔法が増えれば魔方陣が描かれたスクロールを探す時間も長くなるし、当然その分隙も増える。

 魔方陣がダメになるなり奪われるなりすれば、ただの人になってしまう。

 生活魔法と特殊な環境を除いて、呪文の理解は必須の知識なんだ。

 それが前に先生が言っていた「魔法は座学が全て」という発言の意味だった。


 因みに俺は水を出す魔法を使ってみて、新しいことを色々と発見している。

 まず、俺の魔力は俺が思ってるほど多くない。

 俺は最初の頃と比べて凄まじく増えた魔力が、すでにこの世界の常識を越えてるんじゃないかと思っていた。

 だけど、実際はそんなことはないらしい。

 凄まじく増えたものの、最初はたかが3才の子供が持っていた極少の魔力なのだ。

 一般の大人のレベルには十分達しているかも知れないが、上には上がいるらしい。

 身体能力と一緒でこの世界の人達は魔力の成長も凄いらしい。

 自惚れていたとわかり、今後の練習にも力が入りそうだ。


 それと、最初に魔方陣でやってみた通り、集めた魔力でも魔方陣を使えば魔法は使える。

 ただし呪文を使った場合、勝手に俺の魔力を使われるので集めた魔力は使えなかった。

 今後どうにか出来そうな気はするけど、正直これ以上集めた魔力が活躍すると、折角鍛えてる俺の魔力の使い道が無くなってしまう。

 まぁ無属性で無尽蔵ってだけですでに勝てそうにないので、精々頑張って追いかけようと思う。

 あと、呪文を唱えた時と魔方陣を使った時の魔力の動きみたいなものに違いがあるのがわかった。

 呪文の方では魔力が滑らかに動いていないのだ。

 それを意識して魔方陣に近付けた結果、呪文の方のロスが改善されてきた。



 ほんの数日の間に学んだことは俺がこの世界に来てから学んだことより多かった。

 俺は順番を間違っていたのかもしれない。

 まぁこの世界の常識に染まっていたら魔力を集めることは出来なかったと思うし、損はしてないかな?

 迷惑をかけてるとは思うけど・・


 俺はまず、自分を色んな意味で鍛えることにした。

 魔法の勉強も体を鍛えるのも続ける。

 一応勉強もする。

 俺はこの世界の常識を学ぶ必要がある。

 貴族や軍隊、近隣の国についてや魔物や魔獣の種類も学ばなくちゃいけない。

 今までよりもずっとやることが増えた。

 幸い勉強や読書は魔力を消費しながらやることができるし、

 魔力操作はランニング中にもやるようにしたのでどうにかこなせてる。


 後は自分から頼み込んだ魔力注入も続けている。

 先生と相談して、取引してる店の様子を伺いながら、目立たないように。

 特に白の魔力石は良い収入源にはなるのだが、子供が作ってるとバレたりすれば下手すると誘拐とかもあり得る。

 俺ならなんとか出来る可能性もあるけど、他の子供が危険な目にあったら大変だ。

 まぁ口止め料は払ってるし、商売人が自分のとこの商品の秘密をバラすようなことをするとも思えないので、ちゃっかり利用させてもらっている。

 口止め料込みなので他の店より注入代は安めだが、量は飛び抜けている。

 俺の緑の魔力石だけでも相当な量だ。

 というかこの店は俺の緑と白しか卸していない。

 店主が金儲けに入れ込んでる間はまだ安心して任せていられる。

 といっても先生が有名だから、街では孤児院が優秀な兵士と商人に続いて魔術師も育てだしたと噂になっている。

 といってもあながち間違ってもいない。

 余った魔力で魔力注入をほぼ毎日行うことで、全員魔力が上昇しているからだ。

 このままいけば孤児院は本当にこの街の中枢を司る人物達の養成学校になってしまうかもしれない。

 優秀だと軍や貴族に呼ばれるって言ってなかったっけ?

 先生は呼ばれないのだろうか?

 孤児院には色々な人が訪れるけど、その内の誰かは先生のスカウトなのかもしれない。

 たぶん孤児院があるからって断ってるんだろうなぁ。

 実際に孤児院は大人が先生1人なので、いなくなったらやっていけない。

 まぁ今は俺からの手数料でかなり潤ってるはずだから、金のために軍の仕事をやる必要もないだろうけどね。



 他には時々ウサギ狩りなどをしながら鍛練の日々を送っていたら、俺は8才になっていた。

 いや、別に突然8才になったわけじゃないよ?

 うん、俺、頑張った。


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