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食糧庫

「さて、行くか。」

「カリーナ、手を。」

「あ、うん。」


 俺とガラシャ、そしてドラゴンクロウの6人は迷宮の入り口に来ている。

 つい最近出来たばかりのできたてホヤホヤの迷宮だ。


 元々育てようと思ってた迷宮は中を確認した後で退治した。

 折角育てるなら選びたいもんね。


 最初の迷宮は・・というか二個目の迷宮もそうだったけど、アンデッドがかなりいたんだよ。

 迷宮は魔力の濃いところに出来やすいけど、元戦場とかは特にできやすいらしい。

 そして、そーゆー場所に出来た迷宮にはかなりアンデッドが出るんだってさ。

 まぁ迷宮には迷宮にしか出ないレアなモンスターとか魔獣も出るらしいけど、俺達はレアだろうがアンデッドに用はない。

 アンデッドが落とす物で役に立つのは武器や防具だけど、低級なアンデッドが持ってる物は素材としてすら低級なんだってさ。

 迷惑な連中だ。


 ということで、俺達は3つ目の迷宮に来ている。

 そんなに迷宮があんのかって思ったんだけど、意外なことに結構あるんだよ。

 もしかしたら一部の魔物って迷宮がパンクすることで生まれるんじゃないのかね?


「じゃあ入りますよ。」

「全員繋がってるな?」

「大丈夫。」


 迷宮の中は時間の経ち方が違う。

 バラバラに入ると先頭と最後尾でかなりの時間差が出来てしまうのだ。

 それを防ぐために冒険者チーム等は迷宮に入る時に全員が手など、体の一部を接触した状態で入る。

 これだけで良いんだからいい加減なもんだけど、必ずバラバラになるよりましなので文句は言わない。


 迷宮の入り口は真っ黒な遮光カーテンの様になっている。

 くっきりはっきり空間に境目がある。

 ただの洞窟とか言ってすみませんでした。


 その黒い境目を抜けると世界が変わる。

 バルディさんが言ってたけど、少なくとも一階層で即死系の罠とか暗闇とか魔法が使えないとか水中とか毒霧とかのフロアだったことは無いらしい。


 ってそんなフロアがあんのかよ・・

 水中って・・

 水中で呼吸出来る魔法ってあるのか?

 あるよな?

 なきゃ死ぬぞ。


 俺は色々なことを考えてちょっとビビりながら迷宮の入り口をくぐった。


「全員いるな?」

「大丈夫。6人いる。」


 迷宮に入ったら人数を確認することは必須だ。

 もちろん入り口だけじゃなくて、ことあるごとに確認するらしい。

 転移系の罠とか落とし穴とか魔物に襲われたりとか色々あるらしいからね。

 まぁ登山と一緒です。

 命大事に。


「とりあえず・・広いな。」

「そうだね。」


 迷宮によるけど、入り口を入ってすぐの所は広くなってることがある。

 それでも普通は『通路よりは』というレベルで広いだけだ。


「広すぎない?オリン、どう?」

「こんなに広いのは・・ゴート領の迷宮以来かな・・」

「おい、オリン。広いと何か問題なのか?」


 カリーナとオリンだけで話してないで情報をくれよ。

 広いからなんなんだ。


「あんた少しは自分で考えなさいよ。足手まといは要らないんだけど?」

「カリーナ。お前帰ったらお仕置きな。」

「何でよ!」

「ご主人様のことをあんたって呼ぶんじゃない。せめてあなたにしろ。」

「はぁ!?ぐっ・・!もう!わかったわよ!」


 今こいつ、奴隷紋を発動させやがった。

 まぁ性格なんていきなりは直らないよな。

 徐々にでいいか。


「ロイさん。今までの二つの迷宮の入り口は覚えてますか?」

「あぁ、覚えてるぞ。」


 確か1つ目は通路よりちょっと広いだけで、6畳くらいの小さいホールになってた。

 2つ目は入ってすぐ通路だったな。


「出来たばかりの迷宮ではあれが普通なんです。ちょっとこれは異常ですね。」


 なるほど。

 迷宮ってのは成長すると入り口も広がるらしい。

 豪邸は玄関も広いもんな。

 今いる場所は20畳くらいはありそうだ。

 大豪邸だな。


「まぁ迷宮が最初からデカいのは歓迎するけどね。」

「お兄ちゃん。またアンデッドばっかりだったら小さい方がいいと思うよ。」

「そしたらまた即効で倒せばいいよ。強いアンデッドなら流石に装備も良い素材使ってるだろ。」


 いくら不遇なアンデッドでも、上級クラスはレアな素材がとれるらしい。

 この迷宮が他よりデカいなら何かしら収穫はあるだろう。


「じゃあロイさん。進みますよ。」

「あいよ。」


 俺達はオリンを先頭にして迷宮を進みだす。

 まぁ探知系に優れてる俺が先頭でも良いんだけど、ドラゴンクロウの隊列は崩さない方が今後のためになると思って先頭は譲りました。

 いいえ、俺はビビってません。


 オリンはチームに先行して罠や隠れてる魔物を探すのが役目だ。

 戦いになると後ろに引っ込むので実質的な前衛はイズナが担当する。


 玄関ホールを抜けると、そこには細くて長い通路が続いていた。

 分かれ道も見えてこないし、迷路タイプではなさそうだ。

 壁や床、天井は土で出来ているし、ただの洞窟にしか見えないな・・。



「ん?何か来るぞ。」


 少し進んだところで先にある曲がり角の奥から何かの気配が近付いてくるのを感じた。

 最初に気付いたのはやっぱり俺だった。

 なら最初から先頭を行けって?

 いいじゃん、後ろでも分かるんだから。


「何か来ます!」


 オリンが俺のセリフが無かったかのように警告する。

 やめてね。

 寂しいから。


「ブギー!」


 曲がり角から現れたのは・・


「イノシシ?」

「ブタです!」


 えー?

 これはイノシシだろ?

 牙が長いし鼻もデカくて丈夫そう。

 毛も濃くて黒いよ?


「珍しい・・ブタの魔獣だな。」

「マジで?」


 俺がわかってなかったのを察してイズナが説明してくれる。

 優しい子は好きだ。


 しかし、ブタの魔獣ってイノシシだったのか?

 いやいや、並べて見たことはないけど、たぶんどっかが違うんだろう。

 そもそも俺は豚もイノシシも生で見たことないしな。

 黒豚なんてテレビでも見たことないわ。

 こいつはかなりデカいし、違いは大きさかな?


「黒豚か・・あいつって旨い?」

「・・私は好きです。」


 オリンが好きなら安心だ。


 ちなみに黒豚はもうとっくに倒されてる。

 狭い通路で最後尾から見てたせいで誰が倒したのかもわからなかったけどさ。

 たぶんカリーナかな?

 流石はAランクチーム。

 ブタなんて敵じゃないね!


「魔獣・・迷宮で出たことあったっけ?」

「オリン、どうだ?」

「カリーナ、イズナ。二人とももう少し自分達で覚えてよ・・。大丈夫、少ないですけど、一応ありますよ。」


 迷宮では魔獣も出る、と。


「しかし幸先良いな。ここがこいつらの巣だったら焼肉屋でもやるか。」

「お兄ちゃん・・人手もよろしくね。」

「・・はい。」


 とりあえず、今までの迷宮と違って最初の魔物は食糧になる黒豚だ。

 育てるのはこの迷宮で決まりかと浮かれていたら、ドラゴンクロウのメンバーが浮かない顔をしているのに気が付いた。


「みんなどうした?」

「いえ、ちょっと・・」


 みんなは黒豚を見つめて考え込んでいるようだ。


「何かあったのか?」

「いえ、その・・カリーナ?これ、どうだったの?」

「・・変。」


 変じゃねぇよ。

 何がだよ。

 俺はつっこまねぇからな。


「やっぱり・・」


 ほら見ろ。

 だから言っただろ。


 ぜんっぜん、わかんねぇ!


「おい!何がだよ!いい加減説明しろ!」

「あのですね・・単純に言うと、出てくる魔物が強すぎるんです。」

「・・そうなの?」


 即効で倒しちゃったからわからなかったぞ?


「ロイさん。こないだ私が迷宮の一階層は外と危険度は変わらないって言ったの覚えてますか?」

「覚えてるよ?でも、外でも魔獣くらい出るだろ?」

「こんなに強い魔獣は滅多にいませんよ。それに、迷宮っていうのは普通、露骨なまでに階層によって難易度が変わるんです。最弱のはずの一階層でこんな魔獣が出たら不安にもなりますよ。」


 なるほど。

 初めての町を出て最初に出たモンスターがスライムじゃなくてはぐれメタルだったってことか。

 いやいや、ダメじゃん。

 倒せたらすげぇラッキーじゃん、この例え。


「とりあえず先に進んでみようぜ。今回がたまたま『はぐれメタル』だった可能性もあるだろ。」

「は?」

「え?」

「いや、何でもない。とにかく進もう。どうせこの階には敵らしい敵はいないだろ。」


 俺が収納魔法で黒豚くんをしまうと、再びオリンを先頭にして進みだした。


 バルディさん達コーラドールにやたらと注意されたお陰で、ドラゴンクロウのメンバーも凄く迷宮内を細かく注意して進むようになったらしい。

 まぁ今回は俺の迷宮を育てるんだし、前回みたいなことは辞めて頂きたいね。

 迷宮内でどんなにゆっくりしても外での時間はほとんど経たない。

 効率よりも安全面重視でいってもらいたい。



 俺の言った通り、この階に敵はいなかった。

 思ったよりも一階層目だけでもかなり広かったけど、この階層に出てくるのは食糧になる魔物ばっかりだった。

 すばらしい。

 一番強いのも黒豚くんだったし、ちょっとレベルを無視した食糧エリアだったみたいだ。

 罠も一切なかったし、難易度は一階層目に相応しい・・のかな?


 俺達は大量にゲットした食糧を一度外まで届けると、控えてた竜種の一匹にうちのグループの宿に運んで貰った。

 とりあえず材料費は浮いたし、魔獣の肉という最高の食材を届けられたな。

 今日うちに泊まった客はラッキーだ。


 帰る前に屋敷用に何か捕まえよう。

 出来れば黒豚を。


 いやー、絶対当たりだろ。

 この迷宮。

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