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奴隷商人ロイ

 

 イゴイスの奴隷市場は久々だ。

 最近は奴隷商人がこちらに来てくれるので市場まで来ることがないのだ。

 優秀な奴隷は全て買う、と言ってある通り、何人か連れてくれば必ず誰かは買っている。


 でも、優秀な奴隷が全てうちに来るかと言えばそんなことはない。

 俺はあんまりオークションには参加しないから、本当に優秀な奴隷は買えない。

 それに、他にも奴隷が欲しい客はいるからね。

 うちに来るのは一部だけだろう。



「これはこれはポメラニア伯爵様!わざわざお越し頂きありがとうございます!」

「あぁ、うん」


 俺、実は、イゴイスで貴族とかやってます。

 ポメラニア領とか小さくて収入としてはあてにならないし、むしろ今までが酷かったから街道の整備とか色々と出費が嵩んで今はマイナスだ。

 貴族に成りたかった訳じゃないんだけど、なんか流れでね・・

 どうしてこうなったのか・・


 領地の管理はツックの家臣団が引き続きやってくれてるからまだ良いけど、不正が酷かったから優秀な人以外はリストラした。

 残りの不正に関わったけど優秀な家臣と役人も奴隷にして働かせてるけど、やっぱり今は人手不足だ。


 ちなみにライクス王国の方にもルビィの街とキャッスルロックなど、その一帯を領地として持っている。

 戦争の褒美として貰ったものだけど、管理は国がやってるからお金だけ入ってくる。

 まぁ職員の給料とか結界の維持費とか全部引かれるから金額は大したことない。

 体のいい用心棒だ。

 シボラとの国境に戦力が欲しかったんだろう。

 対外的には昔と変わらず王国の直轄領のままだし、俺のことを公表した訳じゃないので、名実ともにただの用心棒だと思う。



 イゴイスの方では一応叙任式みたいのはやったけど、それ以外の式典や夜会のお誘いとかは全て拒否してる。

 そんなのやってられるか。



「本日はどのような奴隷をお探しで?」

 奴隷商はいつも通り愛想笑いを振り撒いている。


「いつも通り、優秀な人がいい。人手不足でね。多目に欲しい。」

「それはそれは!ではご案内致します。」


 この奴隷商もお得意様だ。

 いまだに・・というか、こいつに会う時は常に変幻魔法で見た目を誤魔化してるから、もしかしたら素で会っても気付かれないかもしれないけどね。



「こちらの奴隷はいかがでしょうか?」

「・・いつもそうだけど、下から見せるのは辞めてくれないか?」


 商売のテクニックなんだろうけど、毎回条件の悪い奴隷から見せられる。

 以前、本命をよく見せるためだと本人が言っていた。

 本心をバラした後も続けるのがとてもめんどくさい。


「まぁまぁ、では本命はこちらです!」

「本命だけにしてくれよ・・」


 奴隷商が俺を案内した部屋にいたのは、若い男の子だった。

 おそらく8才くらいかな?

 こちらをジーっと見ている。

 敵意は全く感じない。


「この子が?」

「あ、いえ、オススメはあちらです。」


 部屋の中で男の子とは反対側の壁にもたれ掛かっているのは、こちらもおそらく15才くらいの若い女の子だった。

 まぁこの世界では15才なら大人の入口に差し掛かってるかな?

 しかし、見た目が奴隷っぽくない。

 服が綺麗だし、生地もちょっと高そうだ。


「あれが?ここの職員じゃないのか?」

「いえいえ、実はイゴイスの元役人でして、ハイ。」

「いや、役人がなんで奴隷になるんだ?あの若さならエリートだろ?」


 役人は読み書き、計算はもちろん、法律等も勉強してないとなれない。

 十代でなるのは中々難しい職業なのだ。

 親が貴族だったりとコネや賄賂等の例外はあるが、何にしてもエリートなのは間違いない。


「ここだけの話、不正がバレたんですよ」

「・・不正、ねぇ。」


 俺達の話してる内容を聞いて女の子がこちらを睨んできた。

 目には力があり、不正を認めているようには見えない。

 ライアンとは違い、言葉で訴えてくることはしないが、態度がはっきりと言葉を否定していた。


「やったのか?」

「・・やってないわ」

「やったと、公式な記録にあるそうだけど?」

「・・やってないものはやってない。」


 うん。

 静かでよろしい。

 この年で自分を律することが出来るのは貴族の出だからかな?


「で、この子は何でここにいるんだ?オークションにはかけないのか?」


 今いるのはオークションにかけられる優良な奴隷用の部屋ではない。

 本当に優秀ならここにいる意味がわからない。


「はぁ・・役人が不正を行ったっていうのは国としても隠したいものでして」


 なるほど。

 役人が不正をしました!と大っぴらに言いたくないのか。


「それと、旦那様は元役人の奴隷を欲しがるのはどんな人だと思われますか?」

「どんな?・・優秀な奴隷が欲しいんだろ?」

「それもありますが、多くは人脈を求めている方ですね。そーゆー意味ではこの奴隷は若すぎるんですよ」


 ・・なるほど。

 人脈を作れる程に働いてないし、上層部とのパイプもまだないってことか。

 人脈がないなら貴族出身じゃないのかな?


「それに、頭が良すぎるのも問題です。命令の抜け道を探してまた不正でもやられたら、代金の元を取るどころじゃなくなりますから」

「・・なるほど。随分正直に答えるな。」

「信用が第一ですので。それに・・買われますよね?」


 奴隷商がニヤッと笑いながらこちらを見てきた。

 読まれてるな。

 まぁ構わない。

 付き合いも長いしね。


「二人とも買うよ。いくらだ?」

「ありがとうございます!」


 不正はやってないと思うし、奴隷にすれば命令で防げる。

 俺には人脈も必要ない。

 読み書きに計算も出来れば即戦力だ。

 店も多くなったし、経理担当がいればガラシャの助けになるだろう。


 男の子の方は孤児院で預かる。

 この年から教育すればきっと優秀な人材になるだろう。


 ・・目線で助けを求められたんだよ。

 断れないだろ?



 あとは・・頼まれてる人材がまだだ。


「とりあえず、この部屋の二人は買う。あとは・・そうだな。挨拶が出来るひねくれてない奴隷は?」

「もちろん居りますとも!さっ!こちらです!」


 早々に商品が売れてテンションの上がった奴隷商は次々と奴隷を見せてきた。

 その内の何人かは奴隷らしい、というか陰鬱な雰囲気だったので断ったけど、店番を任せられなきゃ力仕事でも職人達の手伝いでも宿屋の厨房でも、仕事は何でもある。



 何人か見繕って今日は切り上げようかと思った時、建物の入り口の方が騒がしくなった。

 なんか問題が起きたというよりは、盛り上がってるような??


「何事だ?」

「おそらく、商品が到着したのかと」


 商品・・もちろん奴隷だろう。

 盛り上がってる声は男性ばかりのようだから、相当美人な奴隷なのかもしれない。


「見れるか?」

「いや、見れますが・・」

「何か問題が?」


 美人なら問題がない限りはオークションに出されるだろう。

 買うのは難しいかもしれないけど、見るだけなら誰でも見られる。


「その・・暴れた場合、命の保証が出来ませんが・・」


 どんな女だよ・・



 とりあえず、見せてもらうことにした。

 多少強い人間が暴れたくらいで危険になるほど柔な鍛え方はしていない。

 むしろ逆に興味が湧いた。

 能力があるならうちで雇いたい。




「こんにちは」

「寄るな!汚らわしい!」


 いきなり邪険に扱われたけど、汚れてるのは向こうの方だ。

 まだここに着いたばかりで風呂には入れてもらってないらしい。

 結構若く見えるし、こちらを見ようともしないのは汚れてて恥ずかしいから・・というのは考えすぎか。


「俺はこんにちはって言っただけだよ。挨拶も出来ないなんて獣みたいな人だね。」

「気安く話しかけるな!殺すぞ!」


 中々気性が激しいようだけど、能力は素晴らしい。

 まだ何の説明も受けてないけど、気配と魔力を見るだけでも只者ではないとわかる。

 正直に言って、俺はこんなに能力の高い他人を見たことがない。

 その能力の高い女の子が4人もいる。

 そして、4人とも多少汚れてはいるけど、男の奴隷達が歓声を上げる程度には顔立ちも整っている。


「この人達は・・冒険者か?」

「はい。『ドラゴンクロウ』です。」

「ドラゴンクロウって・・A級の?」

「・・はい」


 道理で強い訳だ。

 ドラゴンクロウといえば、最近頭角を現してきた冒険者達だ。

 現役冒険者の中で、実力だけならトップに位置するグループだと聞いている。

 ドラゴンクロウという名前の由来でもある『竜化』という強力なスキルを、構成メンバーの全員が持っているらしい。

『竜化』というスキルは遺伝によるものなので、家族か姉妹なんじゃないかという話題も絶えない。

 実力だけがトップなのは、まだメンバーが若く実績が少ないせいだ。


 俺も一度は冒険者を志した者として、人類のトップに上り詰めた存在には興味がある。


 奴隷として・・というか、人材として一級品なのは間違いない。


「買えないか?」

「いや、流石にこれは・・」


 だよな。

 確実に今年の目玉商品だ。

 オークションを通さずに買うのは難しいだろう。


「買うにしても、大丈夫ですか?危険だと思いますが・・」

「たぶん問題ない。」

「そうですか・・」


 奴隷商はさっきからずっとビクビクしている。

 まだ奴隷紋は刻んでいないようだし、向こうがその気になったら建物の中は死人で溢れることになるだろう。

 こんなに近くにいては逃げようがない。


「そういえば、この人達は何をしたんだ?」

 冒険者のトップが奴隷になる理由ってなんだ?

 金はあるはずだし、実績欲しさに不正でもしたのか?


「この前ゴート領の迷宮が討伐されたのはご存知で?」

「あぁ知ってるよ。お陰で素材不足だ。」

「あれは、こいつらの仕業です。」

「それは・・」


 この世界には迷宮とかダンジョンとか言われるものがある。

 その全てに大量の魔物が潜んでおり、実際魔物の巣のようなものだ。

 放置すると迷宮がパンクして魔物の暴走が起きる為、迷宮発生が確認された場合は早急な討伐が望まれる。

 しかし、迷宮の中では貴重な素材や食料等も多く手に入るため、魔物を退治してパンクしないように管理しながら上手く維持している場合もある。

 当然だけど、そんな迷宮は討伐が禁止されている。

 管理された迷宮の周りには大きな街が出来上がる。

 その街は迷宮に支えられているのだ。


 ドラゴンクロウはその管理されている迷宮を討伐してしまった。

 俺が最近色々と買い出しに奔走しているのは、どうやらこいつらのせいだったらしい。



 奴隷商の話を聞いてドラゴンクロウのメンバーは悔しそうに俯いている。

 これはやったな。

 この国でよくある冤罪ではなさそうだ。


 まぁ開き直ってる訳じゃないみたいだし反省してるなら別に良いと思うけど、国としては莫大な損失だ。

 しょうがないじゃ済まないだろうな。


「つまり、借金奴隷の上に犯罪奴隷か?」

「・・仰るとおりです」


 そりゃ可哀想に。

 人生終わったな。


 実力的には簡単に逃げられるだろうにここにいるってことは、本人達は相当反省しているんだろう。

 様子を見る限りわざとじゃないにしても、起きた結果が悪すぎる。


 どんなに優秀でも迷宮から得られる素材や食料、国としての利益は冒険者グループ1つで賄えるものではない。

 下手するとそこそこ大きな街が2つ3つ滅ぶことだって有り得る。



 俺はオークションの開始時間を確認してから一旦家に帰った。


 家ではガラシャが俺の帰りを待っていた。

 奴隷市場以外なら結構どこでも付いて来ようとするんだけどね。

 あそこは雰囲気が嫌いらしい。


「あぁお兄ちゃん、お帰りなさい。」

「ただいま。どう?これで足りるかな?」


 今回は頑張って多めに買ってきた。

 若い男女10人。

 子供も3人いる。

 かと言って質は落としてないと思うから、ちゃんと育てれば何とかなると思う。


「全然足りないよ。どんどん買ってきてね。」

「お、おぅ」


 足りないらしい。

 10人で全然足りないらしい・・

 従業員達は過労で倒れたりしないだろうか?

 早めになんとかしないとな。


 ガラシャは奴隷を男女に別けて女性陣をメトラに引き渡している。

 男性陣は後でライアンかルークが迎えに来るはずだ。

 奴隷を買うのも慣れたもので、基本的な命令一覧も用意してあるし、人が多いからと言って今更慌てることもない。



「あっ、そういえば、後でまたオークションの方にも行ってくるよ。」

「そうなの?珍しいね」

「あぁ、冒険者を買おうと思ってさ。なんとA級だってよ!」

「お兄ちゃん・・買うのはいいけど、使い道は考えてあるんだよね?」


 つ、使い道って・・

 いつからこの子は人を物のように扱うようになってしまったんだ。

 俺のせいか?


「お兄ちゃん、聞いてるの?」



 その時、玄関のドアがノックされた。


 建物に近付く気配でわかってはいたけど、どうやら俺に客らしい。

 まだ俺は玄関ホールでガラシャと話していたので自分で開けると、そこにはさっきまで会っていた奴隷商が立っていた。


「先程はお買い上げ頂きありがとうございます。実は、旦那様に相談がございまして・・」

「相談?なんだ?」

「お兄ちゃん、入ってもらえば?」

「あぁそうだな。・・どうぞ?」


 頭を下げながら屋敷に入ってくる奴隷商。

 どうやら一人で来たようだ。

 いつも奴隷と見張りの為の兵士を沢山連れて来るので、何だか寂しそうに見える。


 さて、相談ってなんだろう?

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