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自分の居場所

 とりあえず、俺は王様・・アルテスタに書類を書き直してもらった。

 俺が王様になったかのような書類を見せて回っても、めんどくさいことが増えるだけだ。

 俺はそんなことがしたいんじゃない。

 ガラシャと先生を返して欲しいだけだから、書類には最低限それが出来るだけの内容が書いてあればそれでいい。


 アルテスタに名前を伏せた上でガラシャの誘拐疑惑や先生の状況を伝えると、ちゃんと書類を書き直してくれた。

 アルテスタが書類を書いてる途中で外の竜のことを聞いてきたので、召喚獣でペットだと言うとなんか勝手に納得していた。

 他に住んでる場所を聞かれた。

ルビィの街と言っても良かったんだけど、魔大陸に住んでると言ったら書類を書く手を止めて俺の顔を見てきた。

 しばらくすると「なるほど・・」といってまた納得していた。

 書類を書いてると王様モードのスイッチでも入るのか、またポーカーフェイスになってるので何を考えているのかよくわからない。

 そうこうしている内に書類は書き上がった。

 ちゃんと書き直してはくれたけど、俺に内容を見せる前に書類に封をしたのはなぜだろう・・。


「何で見せてくれないの?」

「そうゆうものだ。」


 どうゆうものなんだよ・・。

 なんかすごく不安だけどアルテスタは俺の奴隷になったこともあって俺には逆らえないはずだし、たぶん問題はない・・と思いたい。


「封を解いたら書類の信憑性は半減だからな。」

 何で釘を指した?

 奴隷魔法って大丈夫か?


 その後、ライクス王国の今後について話し出したアルテスタに全部任せるとだけ言っておいた。

 政治とか行政とかはまったく分からん。

 とりあえず、侵略戦争を始めたり、貴族の利益のために無駄に長引かせるのだけは禁止しておいた。

 俺の勘違いで奴隷にしてしまった手前、堂々と命令を出しにくい。

 執務室の中は完璧にアウェイだったぞ。

 何なんだここは。

 二度と来たくない。



 俺はアルテスタとの話を切り上げると、ミドリの元に転移した。

「お待たせ~」

「ピー!」

『随分のんびりしてたのね。この国を滅ぼすんじゃなかったの?』


 ミドリの物騒な言葉に俺は冷たい目で返事をする。

「誰がそんなことを言った・・。」

『冗談よ。だって・・ほら、見てよ。』

 ミドリがアゴで指した方を見ると、城の兵士達が力尽きて地面に伸びているのが見えた。

 城の内外に広がった兵士がほぼ全員伸びている。

 まだ元気な兵士は弓矢を放っているけど、ここには届いてもいない。


「何をやったんだ?」

 ミドリのブレスで切り裂いた形跡はない。

 セイリューの凍えるようなブレスでも無さそうだ。

 そもそも戦いの気配を感じた記憶がないんだけど・・。


 俺が不思議そうにしていると、ミドリが溜め息混じりのテレパシーを送ってきた。

『・・何にもしてないわよ。』

「何も?」

『何もよ。半分は私達を見て気絶。もう半分は魔力切れを起こしたみたいね。』


 なんじゃそりゃ。

 役立たずとかそんなレベルじゃないぞ。

 強い魔法が使えないにしたって、自分の限界くらい把握しておけよ。

 竜を見てパニックにでもなったか?

 道の真ん中で大勢で倒れてたら役立たずどころか邪魔でしかないだろ。


 俺が城の兵士達に呆れていると、ミドリの心の声が聞こえてきた。

『・・暴れたい。』

「ダメだからね。」

 まぁ気持ちはわかる。

 きっと城を攻めると聞いて少しワクワクしてたんだろう。

 陽動を任されてるんだから少し位は戦うつもりだったんだと思う。

 それがこちらが何もする前からこの様だ。

 逆に暴れたくもなる。

 というか、呆れて力が抜けるんじゃなく、暴れたくなる辺りが竜種なのかな?


 俺はみんなにご褒美の魔力をたっぷり与えてから話し出した。

「とりあえず、ここでの用事は済んだから移動しよう。」

『次はどこ?』

 たっぷりの魔力でミドリの機嫌も少しは直ったかな?

「えっと・・たぶんキャッスルロックかな?ここからだとルビィの街の奥だね。」

『そう。じゃあ行きましょう。』


 俺はみんなをミドリの背中に集めると、ルビィの街に転移した。


 まぁルビィの街に今寄っても用がないからさっさと移動したけどね。

 でも、用がないと思ったのは俺の勘違いだった。

 城でたんまり稼いでくるつもりだったけど予想外の展開で稼げなかったんだった。

 というか、よく考えたら戦争の原因とかどうでも良いから、ガラシャを誘拐した罰としてお金くらい貰ってくれば良かったな。

 今更だけど・・



 ミドリに街道を進んでおくように指示を出すと、俺はルビィの街中の魔力石屋を巡って魔力注入をしまくった。

 戦争をしているだけあって、白の魔力石はいくらあっても良いらしい。

 いつもなら遠くまで運ばなくちゃいけない魔力石を隣街で売れるとあって、商人達はみんなホクホク顔だった。

 冒険者以外は幸せなのかな?

 あぁ、兵士は大変か。

 平和だねぇ。


 キャッスルロックという名前からして山っぽいし、すぐそこにあるのかと思ったんだけど、そうでもないらしい。

 どうやらほとんど山の麓にあるみたいだ。

 ルビィの街は今いるデカい山脈の東よりにある。

 キャッスルロックは西の端なんだってさ。

 となると、ミドリ達が着くのはまだ先になりそうだし、俺は魔力石屋巡りをとことんやりこんだ。


 ミドリには遠隔通話を繋いでテレパシーで目的地を伝えた。

 どうやらコリューとセイリューは腹ごしらえをしているらしい。

 何を食べてるんだか知らないけど、街道を進んでて腹ごしらえって・・人じゃないだろうな・・。

 この辺って獣は多いと思うけど、魔獣とかいるのかな?


 とりあえず、街に着いたら連絡をするようにお願いしておいた。

 アルテスタよりもよっぽど頼りになる。

 奴隷って何なんだよ。

 まったく。


 魔力注入は戦争が始まったのを境に、さらに報酬が値上がりしたらしい。

 今やボロ儲けだ。

 いや、元々ボロかったけどね。


 ついでに道具屋で回復薬を売ろうとしたら物凄く驚かれた。

 レベル10の回復薬なんて聞いたこともないらしい。

 そういえばそうだった。

 レベル10は伝説クラスなんだっけ?

 まぁ案の定べらぼうに高い値段をつけてきたから、こちらから値下げすると言ったらさらに驚かれた。

 まぁ会話がおかしいもんな。

 でも、そんなに高値で買っても俺があちこちで売りまくったら希少価値が無くなってこの道具屋が潰れ・・はしないと思うけど、可哀想だ。


 ということで、相場と思われる金額の少し上で売った。

 まぁそれでもとんでもなく高い。

 家族が何年暮らせるんだろうな。

 魔力注入の金も入れたらかなりの額になった。


 これでこっちの大陸でも俺の財布は安泰かな。

 元々持ってた分もかなりあるし、こっちのお金がこれだけあれば何かあっても他の国で貴族みたいな暮らしができるぞ。


 はっはっはっ


 いや、俺はこの国の王様よりも上の立場だった・・。

 少なくともこの国では逃げる相手なんていなかったわ。

 あぁ・・逃げたい。


 色々考えながらも店を回ってるけど、さすがに半日で回りきれるほどルビィの街の魔力石屋は少なくない。

 どの辺りで切り上げようか悩んでいると、ふと今日を振りかえって落ち込んできた。


 半日で王城を攻め落として女子供を含めて奴隷を量産し、残りの半日でお金を稼ぐ・・。

 俺は何をやってるんだろうな・・。



 夕方になり、店仕舞いを始める店が増えてくると、俺も今日は切り上げることにした。

 稼ぎは十分だし、これ以上何かをする気にならなかったのだ。


 適当な所に腰を落ち着かせると、ミドリに連絡を取ってみた。

 遠隔通話が繋がった感覚がしないので、距離的に有効範囲から出てしまったと思い、諦めようとしたらミドリからテレパシーが届く。


『呼んだ?』

「あれ?届いてたのか?」


 繋がった感覚は無かったんだけど・・。


『いいえ?あなたの魔力を感じたから、もしかしてと思って。』

「あぁ、そう・・」


 どうやらギリギリ魔力は届くけど、魔法の発動まではいかない境界みたいな場所にいるらしい。


「そういえばテレパシーって距離は関係あるのか?」

『さぁ。試したことはないけれど、繋がらなかったことはないと思うわよ?』


 やっぱりテレパシーって便利だよな。

 あっ、音声転移を使えば良かったのかな?

 どっち道向こうの声はテレパシーで来ると思うけど。



 ミドリ達はやっと山脈の端にたどり着いたらしい。

 街道がキチンと整備されている訳ではないので上空からでは街道が分かりにくく、思いの外たどるのに時間がかかってしまったようだ。

 どうせコリューとセイリューが食料の現地調達をしてたから余計遅いんだろうな。

 まぁ、聞いた話では山脈を抜けたあとは山を下ればキャッスルロックの街が見えてくるはずだ。順調に行けばすぐにでもたどり着くと思う。


「じゃあ・・どうしよう・・」


 タイミングが微妙だ。

 もうすぐ夜だし。


「まぁいいか。」

『・・何が?』

「そっちに行くよ。用事は・・街に着く時間でどうするか決めよう」



 ということで、俺はミドリ達と合流した。


 俺の頭の中は「街に着いた後、最初は誰に話しかけたら良いんだ?」という疑問で一杯だった。

 軍隊に受付とかいないよね?




 結局、キャッスルロックに着いたのは夜になってからだったので、その日は孤児院に泊まった。


 収納魔法に残っていた魚をお土産にしたらみんな大喜び・・とはいかなかった。

 ルビィの街では魚がご馳走になるという知識すらないのだ。


 ほとんどゲテモノ扱いだったので、海トカゲの肉を出してご機嫌を取る羽目になってしまった。

 そっちの方がゲテモノだと思うんだけど・・

 味は自信があったんだけどねぇ・・




 キャッスルロックの近くではミドリ達が待っていた。

 コリューとセイリューはちゃんと睡眠を取るので近くの森に隠れている。


 久々の孤児院で俺が寝過ごしたお陰でもう今日の戦闘が始まりそうだ。

 寝坊とか孤児院にいた時はほとんどしたこと無かったんだけどな。

 何だかんだ言っても疲れてたんだろう。


 俺はまだ、9才だったはずだ。

 そりゃ疲れるよ。

 ・・9才、だよな。

 何やってんだろうな、俺は。


 久しぶりに孤児院に泊まったら何だか色々と考えてしまって寝れなかった。

 今は孤児院の自分の部屋も、前ほど落ち着く場所ではなかったせいもあるかもしれない。

 ここにいたら他の子供に危険が及ぶかも、というのが引っ掛かったのだ。

 圧倒的な力を手に入れるか、隠し通すか・・

 ここに居続けるのは難しいかな・・



 まぁ、今はとにかく先生とガラシャのことだ。

 みんなが絶対に悪い扱いは受けていないはずだと言うから安心してたけど、場所は戦場だ。

 早く助けて上げたい。

 もう少し頑張ろう。

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