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予定外の結果

 俺は兵士達を無力化したと判断して、その他の人達に話しかけた。

 とりあえず、一番派手な服を着たおじさんから。


「あなたが王様?」

「違う!私は・・」

「違うならいいよ。どの人が王様?」

「くっ!・・この方だ!」


 おぉ。

 隣にいたらしい。

 思ったよりも若いね。

 40代かな?

 もっと下か?

 王様なんて見るのも初めてだけど、確かに立ってるだけで威厳がある。

 着てるものは隣の貴族の方が高そうに見えるけど、もしかしたら部屋着かな?

 部屋着にしてはしっかりしてる。

 高そうだ。


「どうも、初めまして。」

「・・私に何の用だ。ポメラニアンとやら。」

 犬じゃねぇって。

 まぁいいけどね。


「戦争をやめて欲しいんだけど。」

「戦争はもうすぐ終わる。我がライクス王国の勝利だ。」

 そうなの?

 じゃあ俺が来る必要はなかったのか?


「徴兵した人はすぐに解放されるの?」

「徴兵?・・どうゆうことだ?お前は降伏させに来たのではないのか?」

「だから、俺は勝ち負けとかどうでも良いんだよ。で?徴兵した人達は?」

「すぐに解放はできん。国を守るためには人手が必要だ。」

「それは兵士の仕事でしょ。」

「何を言っている。国を守るのは冒険者の義務だろう。」

 義務って、それは違うだろ。

 なんで王族や貴族が勝手に起こした戦争の尻拭いを国民がやらなきゃならないんだよ。

 しかも冒険者だけ。


「じゃあやっぱりさ、勝ち負けとかどうでもいいから今すぐ戦争をやめてよ。」

「バカを言うな。そんなことをすれば降伏したことになる。こちらが先に戦争を終わらせることは絶対にない。」

 勝手に戦争を起こしておいて何を言ってんだか。

 今まで会った貴族に比べればこの王様は対応もしっかりしてるし、無駄にギャーギャー騒いだりもしない。

 嫌いじゃないんだけど、貴族はやっぱり貴族なのかな。

 王族って、貴族だよね?


「今絶対にって言ったけど、それは死んでも?」

「・・死んでもだ。」

 そうかい。

 じゃあ予定通りだ。

 やることやって帰ろう。


 これ以上の脅しは意味がないと思う。

 散々暴れたはずだし一応やるだけのことはやったから、もういいかな。

 めんどくさいことは終わりにしよう。


「じゃあ後悔しないでね。」

「するわけがない。国のために死ねるなら本望だ。」

「いや、誰も殺すとは言ってないから。」

「・・何?」

 ここで初めて王様が表情を変えた。

 今までのはポーカーフェイスだったらしい。

 王様は俺に殺さないと言われて、周りの貴族と一緒に不思議そうな顔をしている。


「じゃあ、さっさと終わらせようか。」

 そういうと、俺はその場にいる全員に魔法をかけた。

 ついでだから槍兵にもかけた。

 実力も無いのに王様の護衛が出来るんだから、そこそこ偉いだろうしね。


 かけた魔法は一種類だけ。

 効果は絶大だ。

 たぶん。


「俺の命令は絶対だ。最優先で実行しろ。」

 この時点でわかった人もいると思うけど、俺が使った魔法は奴隷化の魔法だ。

 つまり、これでここにいる全員が俺の奴隷になったわけだ。

 子供もいたけど、例外はない。

 子供に地位を譲って好き勝手されたら嫌だからね。


「命令は新しいものが優先されるけど、古い命令が取り消される訳じゃない。俺と俺の仲間や家族、ペットと奴隷達に危害を・・」

 俺は思い付く限り、どんどん命令を出していった。

 次々に命令を口にする俺を不思議そうに見ていた一同は、ポツポツとその意味に気が付いて自分の手を確認して表情を変えていく。


 みんなの手にはもちろん奴隷紋が刻まれている。

「そ、そんなバカな!」

「ちゃんと聞いててね。何度も言わないよ?」

「こんな一瞬で魔道具も使わずに奴隷紋を刻む等、聞いたこともない!どうゆうことだ!?」

 貴族や王族だけあって、紋章の意味はわかったらしい。


「魔法を唱えただけだよ。紋章無しで発動する魔法なんて珍しくもないでしょ。」

「魔法だと!?しかし、奴隷紋は・・」

「黙れ。静かにしろ。それから、俺の言葉は全て命令だと思え。」

 お願いは命令と判断されないのを忘れてた。

 結構めんどくさいんだよね。

 この魔法。


「俺に嘘をつくな。隠し事も禁止。俺が何か言ったら頷くだけでもいいから返事をすること。それから、口答えもダメだし、出来ればちゃんと敬って欲しいな。一応ご主人様だし。わかった?」

『・・はい。』

『・・あぁ。』

『ぐぁっ!』

 ほとんどの人が返事や首肯で答える中で、騎士と最初に俺が話しかけた貴族だけが無視したので、痛みで仰け反って倒れた。

 貴族って痛みに弱そうだけど、大丈夫かな?

 まぁ良い見せしめにはなるか。


「言うことを聞かないとこうなるからね。あと、俺のことを誰かに話すのは禁止だから。紙に書くのもダメだし、話の内容で相手に気付かせるようなこともしちゃダメだよ。もちろん俺や俺の居場所を探すのは禁止する。でも、命令だけは忘れたらお互いに情報交換して思い出す努力をすること。そこで眠ってる兵士達にも伝えておいてね。」

 人伝いの命令が有効なのかはわからないけど、ダメで元々、王様さえ奴隷にすればこっちのものでしょ。


 もう思い付くことは無くなってきたので、城の文官に何かあった方が良い命令はあるかって聞いたら色々教えてくれたので、そのまま命令した。

 隠し事禁止って言ったせいなんだろうけど、貴族や王族に睨まれてちょっと可哀想だ。


「奴隷同士でお互いにケンカとかしちゃダメだよ。立場を利用して首にするのも禁止。あぁ後、俺の命令を聞きたくないからって引退して跡継ぎに好き勝手やらせるのもダメだからね。」

「待て。」

「ん?」

 王様が俺に命令してきた。

 痛みを感じてないってことは俺を敬えって命令は守ってるわけか。

 まぁ周りがどう思おうが、本人が命令を守ってると思ってたら奴隷紋は反応しないからね。


「どうかした?」

「引退するなとはどうゆうことだ?王はお前がやるのだろう?」

「はっ?やるわけないでしょ。何でそうなるの?」

「王とは国の頂点に立つ者のこと。私が奴隷になった今、この国の王はお前だろう。」

 うわっ!

 マジか!


「いや、じゃあそれは・・王様っていう称号じゃなくて、役職として王様をやってよ。」

「王が役職?・・そんな話はこの国では聞いたこともないが・・。」

 いやいや、地球だと形だけの王様とかいるから、問題はないと思うけどな。

 まぁ良いじゃない。


「まぁ他の国では無くもない。やれと言われればやるしかないか・・。では、少なくとも名前は変えさせて貰おう。」

「はっ?名前?なんで?」

「私の名前はアルテスタ・ライクス・リベルタスという。ライクスとは血筋とは関係なく、この国の頂点に立つ者だけが受け継ぐ由緒正しき名だ。奴隷が名乗って良い名ではない。もはやお前のものだ。」

 え~?

 名乗った覚えはないけど、そうすると今のところ俺の名前ってロイ・ポメラニアンだよな?

 ライクスを名乗るとロイ・ライクス・ポメラニアンになるってことか?

 何それ。

 ふざけてんの?


「それはちょっと・・。」

「ちょっとなんだ。国を一つ自分の物にしたのだ。それなりの責任があるだろう。王としての仕事は私が続けるにしても、名は引き継いで貰うぞ。」

 なんで?

 名前ってそんなに大事?

 つーか俺って国を一つ手に入れちゃったの?

 周りの貴族とかはなんで反対しないの?

 って俺が「黙れ」「口答えするな」って言ったからか。


 なんかぐちゃぐちゃになってきたぞ。

 ホントに良いのか?

 まぁいいか?

 いいのか?


「ちなみに王様は何でそんなに平然としてるの?」

「狼狽えても何も変わらん。それに、上に立つものがしっかりしてないと国がもたんだろう。」


 よくわからないけど、もしかして帝王学ってやつか?

 その辺の貴族とは違うな。

 やっぱり俺はこの人が嫌いじゃないね。

 しかし、何でこんな人が戦争を起こしたんだよ。

 国民はどうでも良いのか?

 と思って聞いてみたら


「攻められれば反撃するまでだ。二度と攻める気にならないように、徹底的にな。」

 だって。

 俺はとんでもない勘違いをしていたらしい。

 ライクス王国が隣国に攻め込んだと思っていたけど、逆だったようだ。

 国境で小競り合いが起きた時、隣国の目的がルビィの街だということは読んでたので、密かに兵士を送り込んで街の手前で迎え撃ったんだってさ。

 しかも、今は敵を押し返して隣街のキャッスルロックまで陣地を広げているらしい。

 ライクス王国が戦争を始めたって聞いたような気がするんだけど・・。

 聞いてた話と違うぞ。

 なんてこった。


「なんか勘違いをしてたみたいだから、奴隷紋は消すね?」

「その必要はない。」

「・・なんで?」

「王とは国の奴隷のようなものだ。今までとそう変わらん。それに、一度これだけの人の前で奴隷になったのだ。これだけの出来事を隠し通せるものではない。」

 うわぁ。

 すごいやっちまった感が・・。


「まぁ私が王を続けるならば悪いことばかりでもない。奴隷紋はかなり強力な魔法だ。お前が命令すればこの者達から暗殺や裏切りを受ける心配が無くなる。これは大きな利点だ。」

 ・・すごいな。

 合理主義ってこーゆーことを言うのかな。

 奴隷になるのが良いことみたいに聞こえるぞ。


「それに、皆を差し置いて私だけ奴隷紋を消してくれなど、言えるわけがあるまい。」

「でも、俺が無茶苦茶な命令をするかもしれないでしょ?」

「いいや。私が見る限りではそうは見えないな。」

 そうかい・・じゃあいいや。

 掌の上で転がされてるような気持ちになったけど、変幻魔法ってちゃんと効いてるんだろうか?


 とりあえず、王様が良い人だってことはわかった。

 王様にしておいて欲しい命令を聞いてみんなに言うと、貴族は悔しそうな顔で頷いていた。

 まぁ俺には意味がよくわからない命令もあったけど、貴族にとってあまり良い命令ではなさそうだった。


 王様の周りの人が奴隷だと便利そうだったので、ついでに謁見の間の周りに集まっていた人達を集めて奴隷にした。

 貴族や女中も含めてかなりの人数がいた。

 みんな逃げることなく中の様子を伺っていたらしい。

 みんな王様が心配だったんだってさ。

 俺が悪役になった気でどんどん奴隷にしていくと、一部のメイドにお礼を言われた。

 何のことかと思ったら、「これで王様が安心して暮らせます。」って・・。

 だったら周りの人間くらい最初から奴隷にしとけば良い・・訳ないか。

 外聞が悪いし、王族付きの女中って貴族の中でも高位の娘とかがなるはずだし。

 奴隷にするのは問題か。


 城を守ってた軍の指揮官達をもれなく奴隷にしたあと、簡単な命令をしてから王様の執務室に移動した。

 執務室に入った俺に、王様は俺が頼んでおいた書類を渡してきた。

「これでいいか?」


 俺は書類を手にとって確認すると、呻き声を上げそうになった。

「・・あのさ、この名前は・・」

「こういった書類には普通、正式な名前を書かなければ効力がない。それに、内容がこれだ。平民だと思われたら誰も信じないぞ?」


 俺が受け取った書類にはこう書かれている。

『ライクス王国の国王の名において、王の持つ全権をこのロイ・ライクス・ポメラニアンに譲る。この者の言葉は王の言葉に優先する。

 アルテスタ・リベルタス』

 後半は頼んでないけど、まぁ言ってることはわかる。

 王の命令だから言うことを聞かない!とか言われた時もこれがあれば全て通る。

 でも、この二つの名前が並んでいると俺が王様になったみたいじゃない?

 しかも、『全権を譲る』って書いてある。

 貸すとか持たせるじゃなくて、『譲る』ってね。


「なんか、人に見せたら大変なことになりそうなんだけど・・」

「大変な事をしておいて今更何を言う。」

 そうだね。

 確かに城に殴り込みをかけて一気に制圧したよ。

 でも、こんなことになるとは思ってなかったからさ。

 俺は戦争を始めるようなバカに一言文句を言ってやろうと思っただけなんだよ・・


 どうしよ?


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