緑竜?
雷の攻撃魔法の名前はやっぱりサンダーかな?
広範囲攻撃魔法はどうしよう?
使ってみるか。
俺はまだ生きている緑竜の方に向かって広範囲の雷魔法を放ってみる。
魔法が発動すると、広範囲に雷が雨のように降り注いだ。
うーむ。
まるで地獄だな。
さて、効果はわかった。
名前はサンダーレインでいいや。
で、緑竜はまだ生きてる。
どれだけしぶといんだよ。
まぁサンダーは初めてだったから扱いやすいようにレベル10じゃなかったけど、それでもしぶと過ぎる。
ここが海の真ん中だから良かったものの、大きな街の一つや二つが簡単に滅びるくらいの魔法を使ってるんだぞ。
不死身じゃあるまいし、何で死なないんだ?
今、緑竜は炎と雷を受けて真っ黒に焦げている。
それでも生きていると思うのは、空中に浮いてるからだ。
もちろん『気配感知』や『魔力感知』にも反応がある。
どうやら今は自分の魔力を使って傷を治しているらしい。
まぁそれで生き残った訳じゃないけどね。
治療で生き残ってるんじゃなくて、生きてるから治療ができるんだ。
しかし、どうしたもんかね?
どうしようか悩んでいると、セイリューが海面から俺の横まで上がってきた。
生きてるのも上がってきてるのも気配でわかってたけど、改めて見るとかなりの怪我だ。
セイリューも自分の魔力を使って怪我の治療を行ってるみたいだ。
人間が使う治療魔法とは違うみたいだけど、これはたぶん傷付いた魔力石に魔力を送るようなものだと思う。
少なくとも皮膚や鱗ならこれで治りそうだ。
魔力だけで傷が治るとは、なんて便利な体だ。
他の魔物では見たことないけど、竜種独特のものかな?
まぁ、今まで見逃してただけかもしれないけどね。
セイリューに治療魔法をかけてあげたら喜んでくれたみたいだ。
俺の体に首を擦り付けてきた。
痛い!
鱗が痛い!
「キュイ~」
俺が痛がってるのがわかったのか、セイリューは首を擦ってた部分を舐め回している。
痛くはないから唾が酸とかそーゆーことはなさそうだ。
危なっかしい生き物だな。
さて、ちょっと忘れてたけど俺は急いでるんだった。
緑竜はまだ生きてる。
ちょっとずつ回復してるけど、全快には相当な時間がかかるだろう。
ほっといてもいいのかな?
でも回復してから追いかけてきたらエンマーク大陸が大惨事になりそうだ。
とどめをさすか。
そう思った時、『危険感知』に反応があった。
思わず振り返ろうとしてしまったので回避が間に合わない。
ごふっ!
脇腹に強烈な衝撃を受けて息がもれる。
くそっ!
敵の援軍か!?
と思ったんだけど、さっきまで俺がいた場所にはセイリュー以外は何もいない。
辺りを見回していたら、自分の脇腹に違和感があった。
脇腹を見下ろすと、そこには小さい竜がしがみついていた。
「お前・・コリューか?」
「ピー!」
なんでこんなところに?
「追いかけて来たのか?」
「ピー!」
コリューが頷いて答える。
追いかけてきたって・・どうやって?
俺の魔力を感じられるのかな?
俺の召喚獣なんだから居場所くらいわかるか。
わかるか?
普段、魔力は押さえてるんだけどな・・
まぁ、いいや。
実際に追いかけて来たんだから、出来るんだろう。
「コリュー、ちょっと離れろ。」
俺が命令すると、コリューは俺から離れて自分で宙に浮かんだ。
エサも無しで言うことを聞いてくれたよ。
やっぱり今までは魔力を抑えてたから舐められてたんだな。
コリューにご褒美の魔力を食べさせると、俺は緑竜の方に体を向けた。
まぁコリューだったら海竜の攻撃なんて避けるのも弾くのも余裕だろうし、ここまで来ることくらい簡単だろう。
そういえば、さっきからずっと海竜の攻撃は受けていない。
それどころか気配を探る限りでは近くにもいないみたいだ。
これはこの緑竜がいるせいかな?
コリューと旅をしてる時も魔物は寄ってこなかったし、どうやら明らかな格上の近くには寄ってこないらしい。
まぁ自然の生き物だもんな。
ということは、この緑竜がいれば海竜に襲われずに進めるのかな?
俺はセイリューの近くに移動して話しかけた。
「なぁセイリュー。」
「キュイ?」
セイリューは首を傾げて俺の言葉を聞いている。
俺って端から見たら魔物に話しかける危ないやつに見えるのかな?
いや、竜種に囲まれて平気な顔をしてる時点で危ないやつか。
仕草は可愛いんだけどね。
「こいつを仲間にしてもいいか?」
俺は緑竜を指差しながらセイリューに尋ねた。
まぁ最初に俺を攻撃したのなんてセイリューも一緒だし、便利なら仲間にしても良いんだけどね。
攻撃をされたのは俺じゃないから、一応本人の了承は得ようかと。
お仕置きは十分だと思いますけど、どうでしょうか?
「キュイ!」
頷いてくれた。
声も力強いし、嫌がってはいないみたいだ。
早速結界で緑竜を捕まえる。
もう今のままでも十分言うことくらい聞いてくれそうだけど、後で暴れられても困る。
結界に囲まれた緑竜は少しだけ顔を上げて結界を確認すると、尻尾で結界を殴りつけた。
ドーン!という大きな音が辺りに響く。
結界は無事だけど、大きな緑竜の体を包み込むために結界は結構薄くなっている。
心配で物理結界を重ね張りしたのが効いたのか、緑竜はすぐに大人しくなった。
瀕死だと思ってたけど、まだ元気だったみたいだ。
というか、全快だったら俺の結界は破られてたんじゃないのか?
俺の自慢の結界で防げないなら俺は逃げるしかないぞ。
不意打ちのサンドストームが効いたから良かったけど、まともにやりあってたら俺は今頃死んでるな。
どうにか勝てたし捕まえられたけど、こいつって俺の言うことを聞いてくれるのかな?
もしも言うことを聞かなきゃとどめを刺すしかないよな。
と思いながら緑竜に近付いて結界を一つ解除する。
残った結界は物理結界だけだ。
ブレスに気を付けながらまずは俺の魔力を緑竜に与える。
怪我のせいだと思うけど、ゆっくりと食べてるのがなんとなく上品に見える。
体が大きいから与える魔力も多めだ。
横でコリューがピーピー叫んでるのはきっと嫉妬だろう。
俺にももっと寄越せって言いたいのかな?
人差し指を立てて「しっ!」ってやったら静かになった。
ご褒美の魔力をコリューに食べさせると、俺は緑竜と向き合った。
「おい!俺の言葉がわかるよな?」
緑竜は苦しそうにグルルって唸って返事をした。
グルルじゃわかんねぇよ。
どっちだ?
しょうがないので数回治療魔法をかけてやると、みるみる焦げてた皮膚が元に戻っていく。
緑竜は体が楽になったのか、首を伸ばしてあちこちの傷の様子を確かめている。
ボロボロだった翼も原形を取り戻したようだ。
「これで少しは楽になっただろ?で、俺がお前のご主人様だ。俺の命令は絶対。わかる?」
もしもこれがわからないと・・。
『・・わかった。』
「・・は?」
『私の負けよ。好きにするといいわ。』
「・・何だこれ?」
さっきから頭の中に声が響いている。
少し迫力のある女の人の声だ。
状況からして緑竜の声なんだろうけど、竜って喋れるのか?
いや、喋れるとしてもおかしい。
聞こえたのは『日本語』だったぞ。
『どうしたの?意味はわかるはずだけど。』
「あぁ、うん。わかるよ。でもこれってどうやって喋ってるの?」
『テレパシーは初めて?お前が私に与えた魔力を通じて意思を伝えているだけよ。』
おぉ。
奴隷紋で言葉が通じるのと同じか?
『そうね。』
「・・心が読めるの?」
『読める訳ではない。私に向けられた言葉が聞こえるだけよ。お前も慣れれば使えるようになる。』
慣れれば使えるなら魔法ではないってことか?
じゃあ同じ竜種のコリューやセイリューも使えるのかと思って聞いたら、まだ使えないらしい。
子供だからね。
「ちなみにさ、この辺では一番強そうだけど、緑竜で一番強いのって君?」
『私は緑竜ではない。一緒にするな。』
「はっ?」
緑色の竜は緑竜じゃないのか?
俺は試しに鑑定魔法を使ってみた。
『風龍 レベル2 S』
「風龍?」
『そうだ。まだ進化したてだがな。』
風龍が誇らしげに胸を張っている。
ちょっと辛そうだ。
傷が開くぞ。
この風龍によると、どうやら竜種は進化すると龍種になるらしい。
『ゴブリンがホブゴブリンになるようなものだ。』
って軽く言ってるけど、ただの竜種でも人の手には負えない。
進化した龍種はもう人間にはどうすることも出来ないってことだね。
『そんなことはない。現に私はお前に負けたでしょう?』
「竜種の進化個体だって知ってたら一目散に逃げてたけどね。」
『逃げる?それだけの実力がありながら、何から逃げる必要があるの?』
それは色々だと思うな。
「俺はそんなに強くないよ。そこの黒い竜、コリューって言うんだけど、そいつには攻撃を当てることも出来ないからね。」
『それはお前が本気ではないからでしょう?いくら黒竜でも子供ではお前に勝てるとは思えないわ。』
えー。
また知らない単語が出てきたよ。
まぁおかしいとは思ってたけどね。
セイリューは子供でもちゃんと青竜の色をしてるのに、コリューは俺と旅をしてた時よりまた少しだけ大きくなったけど今だに黒いんだ。
やっぱり種類が違ったらしい。
『黒竜は上位の竜種よ。進化個体の魔龍に勝てるのは同じ魔龍だけなんだから。』
うん。
やっぱり強いんだね。
まぁわかってたよ。
素早いのは子供だからかと思ってたけど、かなり弱っているとはいえ風龍よりもコリューの方が気配を強く感じるんだ。
これが同じ種類の生き物な訳がない。
しかし、上位の竜種って・・かっこいいね。
まぁ人間の基準で言えばみんなSランクだから変わらないけどさ。
この風龍は口調はともかく、声からしてどうやらメスらしいので、ミドリと名付けた。
ついでに喋れるのがわかったので自己紹介もしておいた。
ちなみにコリューはメス、セイリューはオスだってさ。
まぁ竜種にとって性別はあんまり重要じゃないらしいけど。
やっぱりミドリはこの辺りの主だったらしく、この辺りの魔物でミドリに襲いかかってくるようなバカはほとんどいないらしい。
まぁここの魔物じゃなくてもほとんどいないだろう。
「一緒に来てもらうけど、ここを離れても大丈夫?」
『問題はないけど、なぜ聞くの?』
「いや、持ち場を離れてもいいのかと。」
『持ち場?ただの巣よ。自分の主が来いと言うなら行くわ。』
巣?
空中が?
と不思議に思ったけど、龍種はほとんど寝る必要がないらしい。
その気になれば1年や2年は寝ないで過ごせるし、思考の大部分を休ませながら飛び続けることも出来る。
本気で戦った後で体と魔力を回復させるために長めに眠るくらいなんだって。
「じゃあ今から眠る?」
『いいえ、今回は疲れる間もなくやられたから必要ないわ。』
そうかい。
まぁあっという間だったのは確かだね。
「じゃあ行こうか。」
ミドリをちゃんと治療した後で移動を始めると、みんなもちゃんと付いてきた。
俺が全速力で飛ばしてもみんな余裕で付いてくる。
速度でご主人様の威厳を示すのは諦めてミドリの背中に乗ったら、一気に進むのが速くなった。
さすが龍種・・。
翼がある生き物は違うね。
まぁ翼を羽ばたいて出るような速度じゃないような気もするけどさ。
不思議なことにミドリの背中に乗ってる俺が感じるのはそよ風だけだ。
どうやら周りの空気も一緒に移動してるらしい。
どんな原理になってるんだろう?
世の中わからないことだらけだ。
俺たちはセイリューの全速力に合わせて移動した。
コリューはたぶんミドリよりも速く飛べるんだろう。
遊びながらでもしっかり付いてくる。
ミドリがあんまり羽ばたいていないせいか、背中の乗り心地はかなり良い。
魔物に邪魔されることもないし、これならかなり早くルビィの街に着きそうだ。




