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充実した生活のために

 夕飯まで暇だから何かしようと思うんだけど、何をしようか。

 折角ちゃんとした家が手に入ったことだし、ここを充実させていきたいところだ。

 かといって何をすれば良いのか良くわからない。


 俺がこの屋敷から貰ったものはほとんどが武器や防具で、金属製の食器も貰ったけどあれは来客用なのか普段は使わない。

 つまり、無くなっても生活に支障のないものばかりだ。

 元々が貴族が住んでた屋敷なだけあって、今あるもので十分に快適なんだよ。


 じゃあたまには息抜きで買い物でもするか?

 でも、美味しいご飯もそのための食料もたっぷりあるし、この世界にオシャレな服なんてほとんどない。

 鍛冶屋で必要なものもルークが買いに行くんじゃないかな。


 これじゃ、やることがない。

 一人で考えててもしょうがないので、みんなに聞きに行くことにした。



 店に着いたら思いの外、客が入っていた。

 どうやら修理や研ぎ直し、武器や防具へ紋章を刻み込む依頼が多いらしい。

 ジェフさんがやってた店の元客が戻ってきたり並べてある上等な商品を見て依頼に来るから、早い段階で利益が出そうだ。


 みんなに買うものを聞いて回ったけどライアンとルークには必要なものはないと言われ、エイミーさんには今あるもので十分だと言われてしまった。

 あとはジェフさんだけだ。


「それでは、申し訳ないのですが・・メイドを一人、雇ってもらえませんか?」

 ジェフさんに何か必要なものはないかと聞いたら、申し訳なさそうにこう言われた。


「メイドを?」

「はい。今はエイミーが店での仕事と屋敷の家事を掛け持ちしてますから、倒れないか心配で・・」

 そうだった。

 今住んでいるところはカークの屋敷と比べれば小さいものの、貴族の屋敷なんだからそれなりに大きい。

 メイド達が逃げてしまったお陰で、エイミーさんは店を出す前からほとんど一人で家事をやっていた。

 店を出してからは掃除も行き届いてるとは言えない。

 ライアンにやらせる訳にもいかないから、誰か雇う必要があるだろう。


「助けて頂いた上に住む場所や仕事までお世話になってるのに大変申し訳ないのですが・・もちろん私の我儘ですから、メイドの給料は私の給料から引いてもらって構いませんので。」

「別に引きませんよ。でも、メイドってどこで探せばいいんだろう?ギルドで依頼を出すとか?」


 生憎とギルドで『メイド募集』と書かれた依頼書は見たことがない。

 探したこともないけどさ。


「それでもいいと思いますが、この国ではどんな人が来るか・・」

「まぁ、確かに。じゃあどうしたら良いですか?」

 家政婦協会とかあるのかな?

 いや、それでも来るのはイゴイスの人間か。

 ていうか、ここ、イゴイスだぞ?


「この国では奴隷が買えますから、それが一番確実だと思います。奴隷なら主人の命令には逆らえませんから。」

 ジェフさんが微妙な表情でこちらを見ている。

 まぁ自分を奴隷から解放してくれた相手に奴隷を買えって言うのは確かに言いづらいだろうね。

 まぁ、俺は気にしないけど。


「じゃあ良い人がいるか見てきますよ。」

「ありがとうございます。」

 出来れば経験者、いないなら人柄で選びたい。

 って言っても人柄なんて見ただけじゃわからないけどね。



 奴隷市場に着いた。

 奴隷を売りに来たことは何度かあるけど、買いに来たのは初めてだ。

 俺が受付に奴隷を買いに来たことを告げると不思議そうな顔をされたけど、収納から金貨が入った袋を取り出して見せたらコロッと態度が変わった。


 商人の説明によるとここでの売り買いは、商人との価格交渉による取引と夕方に行われるオークションの二種類があるらしい。

 一般的には高値が付きそうな奴隷はオークションに出されることが多い。

 夕方までは少し時間があるため、俺は商人に奴隷を見せてもらうことにした。


 メイドが欲しいと言った俺にニヤリとした笑みを浮かべた商人は、奴隷が入れられてる牢屋に俺を案内した。

 建物を進む間に他に欲しい奴隷はいないかと聞いてきたので、武具が作れる職人が欲しいと言ったら商人が嬉しそうにしている。


 案内されたのはライアンがいた場所とは違って、すごく狭くて檻のような牢屋が並んでいる場所だった。

 若くて戦える男はオークションに回されるのかな?

 ライアンは売れなかったけどね。


 廊下を歩きながら牢屋の中を覗いてみたけど、売れ残ってるのか時々薄汚い人がいた。

 どうやら風呂に入れたりするのは最初だけらしい。


 突然商人が立ち止まって話し掛けてきた。

「こちらの娘はいかがですか?処女ですよ。」


 奴隷商人は何か勘違いをしているらしい。

 まぁ変幻魔法をかけての勘違いだ。

 そうゆう客が多いってことだろう。


「家事は出来るの?」

「そりゃもう!見ての通りスタイルも顔も極上ですよ!」

 だからそこは聞いてない。


 しかし、極上か?

 確かに顔は整ってると思うけど、目付きが悪いぞ。

 スタイルもそんなに良いとは言えない。

 それに、俺からしたらオバサンだ。

 ホントに処女か?

 まぁ本当に極上ならオークションに出すだろうし、これが限界なのかな。


「もっと若い子はいないの?」

「もちろん居ますよ!」

 といって商人は牢屋の奥に進んで行った。


「さぁどうです?若いでしょう!」

 若いよ。

 すごく若い。

 寝てるから分かりにくいけど、俺と同じくらいじゃないかな?

 牢屋の外から見る限りはすごく可愛いけど、若い母親が付いてる。

 今も娘を守るように抱えて俺を睨んでる。

 もしかして若いって母親の方かな?

 良く見るとさっきのオバサンよりも若く見えるし、たぶん美人だ。

 美人というよりは可愛い系かな?

 すごく童顔な母親だ。

 スタイルまではよくわからないけど痩せてるみたいだし、たぶん胸もある。


「姉妹同時ってのもオススメですよ!」

 商人がニヤニヤしながらとんでもないことを言ってくる。

 だからそーゆーんじゃない。


 しかし、姉妹だったか。

 道理で若い訳だ。

 薄汚れているところを見ると売れ残ってるみたいだけど、若くて顔が良い姉妹が何で売れ残ってるんだ?

 人気あるだろ?


「話しかけても良い?」

「えっ、まぁ、良いですけど・・」

 なんだよ。

 急にテンションが落ちたな。

 何かあるのか?


「こんにちは。名前を教えてくれる?」

「・・あなたは?」

「おい!お前!」

 奴隷商人が怒鳴り付けようとするけど、俺が手で止める。


「俺はロイだ。初めまして。」

「・・私はメトラよ。」


「君達、年は?」

「・・私は14。この子はまだ9才よ。」

 うわ。

 14才の女の子を母親と間違えたのか。

 髪はボサボサで格好も薄汚いし、妹を守るようにこちらを睨んでるから分かりにくいんだよ。

 いや、まぁ、言い訳か。


「なんで売られたの?君たち借金奴隷でしょ?」

「私とこの子の・・ミリィの治療費にお金がかかって・・」

 妹の方はミリィって言うのか。

 しかし、二人の治療費ねぇ。

 奴隷商人の方をみると、苦いものでも噛んだような顔で姉妹を睨んでいる。


 つまり、売れ残ってる理由はそれか。

 商人が何も言わないということはまだ完治してないんだろう。

「治療っていうと、病気かな?」

「そうよ。お母さんと同じ病気だって。」

「お母さんと?その病気は完治するの?」

「治すにはすごくお金がかかるって、お父さんが言ってたわ。」

 治るなら問題ない。

 自分で治せばタダだからね。


「両親は今どこにいるの?」

「・・お母さんは死んだからいないわ。お父さんは知らない。宿は売っちゃったし、お父さんはもう売れちゃったから・・」


 お母さんは死んでて妹が同じ病気って・・。

 奴隷商人はもうこの姉妹を売るのは諦めたのか、廊下の奥の方を見ている。

 きっと次はどの奴隷を見せるか考えてるんだろう。


「宿って言ったね?お父さんは宿屋をやってたの?」

「うん。」

「君たちも手伝ってた?」

「当然でしょ?」

 それなら家事はできるな。

 奴隷商人はまだ姉妹と話している俺を不思議そうな顔で見ている。

 そりゃあ死ぬ病気にかかってる人の側に長居したい人は少ないからね。

 私には神様から貰った元気で丈夫な体があるから問題ないんですよ。

 はっはっはっ。


「ちなみにその宿屋の売りは何だったの?」

「売り?お客さんは私の料理を食べに来てるってお父さんが言ってたけど・・」

 それはあんたが可愛いからだろ。

 でも、この若さで食事が作れるのは有り難い。

 あんまり美味しくなかったらエイミーさんに教えてもらえばいいしね。

 看板娘になれるなら愛想も良いってことだろう。


 俺は姉妹との会話を終えると、奴隷商人と向き合った。

「可愛いし愛想もあるけど、病気じゃあね。」

「そうでしょうねぇ。まぁ他にも商品はありますから。」

 と言って商人は廊下の先に進もうとする。


「ねぇ、この二人はいくらなの?」

「はっ?」

「だから、この二人はいくら?病気だから安そうだけど。」

「はぁ。そうですね。二人合わせて金貨5枚ってとこでしょうか?」


 高いな。

 いや、安いのか?

 相場がわからん。

「ちょっと高いんじゃない?半額なら買うけど?」

「いやいや!半額はちょっと・・金貨4枚でどうです?」


 急に乗り気になった商人との価格交渉の結果、金貨3枚で二人を買うことにした。

 まぁ若くて可愛いとは言っても、病気持ちですぐに死ぬかもしれない奴隷としては高いと思うよ。

 ツックなんか銀貨だったぞ。


 後は職人だけど、調度良い奴隷はここでは見付からなかった。

 俺が探してるのは即戦力か、ジェフ達が独立した後で店を任せられる職人だ。

 ここにいたのは引退したおじいさんと、借金で店が潰れた三流鍛冶士だけだった。

 オークションにも今日は出ないらしい。


 ということで、職人は諦めた。

 腕の良い職人は必ず買うって伝えておいたから、その内連絡が入ると思う。


 奴隷紋の登録は簡単に済んだ。

 魔法陣が描かれた魔力石を姉妹の手の甲に向けて持って、それを俺が発動させるだけだ。

 少量の魔力が俺を通った後、魔法が発動して奴隷紋が刻まれる。

 手は常に見えてて可哀想なので別の場所に出来ないか商人に聞いたら、胸に刻みましょう!と言われたので、手にした。

 服を脱がないと胸には刻めないからね。

 個人的に興味はあるけど、そっちの方が可哀想だ。


 奴隷への命令の仕方は単純だ。

 文字で伝えるか、口で言ったことは本人の出来ることなら必ず守るらしい。

 ちなみにわざと守らないと、立って居られないほどの痛みが走るらしい。

 本当に忘れていたり、ミスでは痛みは走らない。

 命令を破ったという自覚が必要らしい。


 最初は何の命令もしていないので、何でも出来るし何もしてくれない。

 だから文字が読める奴隷には商人が用意してた紙を渡して命令する。

 読めない場合は主人が読み上げるらしい。



 この紙に書かれてる命令を読んで覚えろ。

 主人の命令は最優先で、すぐに守れ。

 主人や自分、周りの人を傷付けるな。

 物を壊すな。

 犯罪を犯すな。

 嘘をつくな。

 逃げるな。

 主人とはぐれたら主人の元に戻れ。

 大きな声を出すな。

 命令は新しいものを優先しろ。


 みたいなことが色々と書かれてた。

 二人とも文字は読めるらしいし内容も特に問題はなさそうなので、俺から直接渡す。

 これで最初の命令は終わりらしい。

 簡単で助かる。


 あとは・・

「奴隷の給料ってどれくらいが普通なの?」

「人や仕事によりますが、大人で銅貨10枚くらいでしょうか?」

 少ないな。

 まぁ奴隷は住み込みだからそんなものなんだろう。


「まぁ飽きたら捨てずに売りに来て下さい。ちゃんと替えも用意しますから。」

「飽きたら解放すればいいでしょ。あぁそうだ。解放って奴隷紋に魔力を流せばいいの?」

「『魔力操作』が出来るなら解放は簡単です。魔力を流して『解放』と念じて下さい。奴隷を譲渡する場合は同じように『譲渡』と念じれば大丈夫です。次に奴隷紋に魔力を流した人が命令を引き継いで主人になります。同じように紋章に魔力を流せば口に出さなくても命令は出来ますよ。聞こえますから。」


 他にも奴隷について教わった。

 基本的に服とか家具も給料から天引きだし、家賃も食費も取るらしい。

 もはや解放する気があるとは思えない。


 奴隷を買うには大金が要る。

 そもそも給料も何も計算しない人も多いらしいから、わざわざ解放する人は少ないってことだろう。


 銅貨10枚で金貨3枚を返すには、給料を全額返済に回しても3000日かかる。

 二人でも1500日だ。

 妹のミリィはまだ幼いから給料も子供料金だとすると、6~7年くらいはかかるのかな?

 まぁ普通に働いて借金を返すには調度良い期間かもしれない。


 とはいっても、これは死にそうな安い奴隷での話だ。

 まともな奴隷を買ったら解放なんてどれだけかかることか。

 まぁ奴隷は一生奴隷って決まってる訳じゃないんだから、まだましだろう。

 そーゆー国もあるらしいからね。


 俺は腕の良い職人が見付かった時の連絡を念押しした後、二人を連れて奴隷市場を出た。


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