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有能な執事がいると助かるよね

 俺とライアンは貴族の家で金目のものがないか漁っている。

 まだ玄関ホールを漁り始めたところなのでろくなものはないけど、飾ってあった甲冑は使えそうだ。

 かなり重そうだから前衛でも戦士しかつけられないだろうけどね。


 ライアンに聞いてみると

「そりゃただの飾りだ。」

 と言われてしまった。

 やたらゴツいし、立派なので戦士のルークにちょうど良いかと思ったんだけどね。

 こうゆう爪先から頭のてっぺんまで厚い金属で覆うような鎧は、式典の時か特別な競技の時しか着けないらしい。

 実践向きじゃないんだって。

 それでもかなり力の強い前衛、例えばAランクの冒険者チームの前衛ともなると、こんな鎧を着こなすやつがいたりするらしい。


 まぁそんなやつもいそうだよね。

 この世界は非常識なやつが多いし。

 俺を筆頭に。


「あの、すみません。」

 後ろを振り返ると、白髪混じりで執事のような服を着た男の人が立っていた。

 その後ろにはメイド服を着た可愛い女の子が続いている。

 女の子と言っても俺よりは年上だけどね。

 二十歳にはなってないと思う。

 きっとこの屋敷の使用人だろう。

 二人とも見た目が良くて仕事も出来そうだ。


「どうしたの?別に襲ったりしないから自由に逃げてくれて構わないけど?」

 敵かもしれないから、どちらかと言うとさっさと逃げて欲しい。


「逃げると言われましても・・私どもの家はここしかありませんので・・」

「ここに住んでるの?」

「はい。一階の奥に使用人用の部屋がありますので。」

 それは困ったな。

 正直に言って邪魔だ。

 俺はこの屋敷をさっさと漁りたいんだ。

 邪魔は困る。

 襲ってきてくれたら手っ取り早いんだけどな。


「えーと・・俺達はこの屋敷の金目のものを全部持っていくつもりなんだけど、どうする?」

 ライアンが苦いものでも噛んだような顔で俺のことをみてくる。

 わかってるよ。

 知らない人が見たらただの強盗だ。


「では、お手伝いしましょうか?」

「えっ?いいの?」

「はぁ。命をかけるほどの給金は貰ってませんし。構わないのでは?」

 この人は何を考えてるんだ?

 襲うならわざわざ話しかけてこないだろうし、強盗だと思ってるなら普通は逃げるだろ?

 なんで手伝うんだ?


「その代わり、といっては何ですが、この屋敷は残して頂けないでしょうか?」

 そーゆーこと?

 自分の家を守りたいだけなのか。

 それにしても勇気あるなぁ。

 出てった方が良いと思うよ?


「不用意に話しかけて、俺達に殺されるとは思わなかった?」

「まさか!」

 といって執事は俺とライアンが倒した連中に目を向ける。

「訳もなく殺すような者なら彼らは生きてはいないでしょう?」

「そいつらは奴隷として売るつもりだからね。」

 俺の言葉を聞いてメイドが固まってる。

 執事の人も脂汗を流してるのを見る限り、俺達を善人だと思ってたらしい。


 まぁむやみに警戒させる必要もないか。

「あなた達は売らないので安心して下さい。」

「ありがとうございます。しかし、私どもは売れませんので。」

「・・そうなの?」

「お気付きになりませんでしたか?私どもはすでに奴隷になっております。」

 といって二人は手の甲を見せてきた。

 そこには見たことのない紋章が刻まれている。

 魔力を感じるってことは、あれが奴隷紋ってやつなのかな?


「これのお陰で満足に屋敷も出られません。」

 なるほど。

 やっとこの人の行動の訳がわかった。

 愚痴のように話したけど、たぶん今のは状況を教えてくれたんだろう。

 俺達はここの貴族を倒した後、屋敷を出ていかずに家捜しを始めた。

 屋敷を出れない彼等は見つかる前に手伝うといって自ら出てくることで、助かろうとしてるんだ。

 つまり、敵から逃げられないなら味方になっちゃえってことだね。


「じゃあ金目のもので、簡単に処分出来るものがある部屋に案内をお願いします。」

「かしこまりました。こちらにどうぞ。」

 そう言って執事は階段を上っていく。

 俺は念のためにライアンに見張りを頼むと、後を付いていった。


「こちらになります。」

 執事が最初に案内してくれたのは金庫だった。

 書斎のような場所から隠し扉を抜けた先にそれはあった。

 中は俺からすればかなり趣味の悪い部屋になってた。

 金銀財宝という表現があるけど、金庫の中は金銀武具だらけだ。

 一応宝石類もあるけど、それよりも魔獣の革や派手な装飾の鎧が目立つ。

 もちろんお金も沢山あった。


「趣味が悪いですね。」

「えぇ・・本当に」

 おや?

 貴族の元で働いていても感覚は一般人と同じなのかな?


 まぁ、これは確かに酷い。

 立派な鎧も金銀でギラギラしてるし、宝石が散りばめてあったりする。

 材料は高いんだろうけど、こんなデコレーションされた鎧が売れるのか疑問だ。

 魔獣の革だって服や鎧に加工されていないものでさえ、色合いがおかしいものがある。

 青や赤、中にはピンクの毛皮が転がっているのは何なんだ?

 普通の剣や鎧も沢山あるけど、見た目が酷いものが目立って金庫の中は混沌とした雰囲気になっている。


 どうやら普通に見える武具は買ったもの。

 見た目が酷いのは貴族が作らせたものらしい。

 流石に銅や青銅などの安物の武具はなかった。

「旦那様は変わった趣味をお持ちだったので・・」

「いや、その話はいいです。」

 どんな趣味だか知らないけど、絶対にマトモじゃない。


 俺は広い金庫の中のもので、売れるものと使えそうなものを執事に手伝って貰いながらより分けていった。

 かなりの広さがあるけど、ここを隠し扉にして隠しきれるものだろうか?

 扉がないこの一角を隠しきれるなら大したものだ。


 とりあえず、というかお金は全部貰った。

 すごい量だった。

 このまま稼ぎ続けたら収納の中がお金でいっぱいにならないか不安だ。


 次に武具だ。

 これはかなり悩んだ。

 でも、材料を考えれば売れないことはないと思うので全部持っていくことにした。

 収納にしまう時にはかなりの抵抗を感じたけどね。


 念のために一つ一つ確認してたんだけど、壁にかかってた沢山の剣や槍の中でも少し地味な剣から魔鉱が見つかった。

 どうやら魔鉱が混じってるか、芯に使われてるらしい。

 表面は普通の鉄に見えるけど、魔力を吸うのでたぶん間違いないだろう。

 他に槍の中にも魔鉱を含んでるものが幾つかあったから、もちろん貰っておいた。

 それぞれちょっと振ってみたけど、剣は俺には合わなかった。

 材料は素晴らしいけど、剣としての出来もわからなければ俺にも合わない。

 まぁ気に入ればライアンかルークが使えばいいと思う。


 槍に関してはよくわからない。

 まともに使ったことがないんだ。

 せっかくだから、これから練習してみようかな?


 残りの金銀と宝石類も一応貰っておいた。

 鉄は持ってるけど、金銀は持ってないからそのまま保管。

 宝石類は売ると金貨の方が嵩張りそうなのでそのまま保管するつもりだ。


 結局金庫内のほぼ全てを収納にしまうと、執事が次の部屋に案内してくれた。

 他にも金庫ほどではないものの、高価なものが沢山あった。

 客室や寝室に飾ってある武器がほとんどだったけど、例えば回復薬が保管してある部屋もあった。

 もちろん全部貰っておいたよ。


 それを繰り返して一階に降りたけど、気絶してる連中はまだ誰も気が付いていないみたいだ。

 暇そうにしているライアンがこちらに気が付いて振り返った。


「終わったのか?」

「二階はね。」

「一階にあるのは食器類くらいでしょう。宜しければこのホールに持ってきましょうか?」

 俺は執事の言葉に甘えることにした。

 執事がメイドを連れて玄関ホールを出ていく。


「ライアン。この剣使う?」

「何だ、この悪趣味な剣は。」

 金庫で見付けた時は少し地味な剣だと思ったけど、どうやら俺もこの屋敷の空気に毒されていたらしい。

 よく見たら十分に派手だった。


「たぶん魔鉱が芯に使われてると思うよ。」

「魔鉱が!?」

 ライアンが剣を鞘から抜いて確かめている。

 やっぱり見ただけじゃわからないようだ。


「そんなに良い剣なのか?」

「材料はね。魔力石みたいに魔力注入してみなよ。吸ってるのがわかるから。」

「・・本当だ。確かに吸うな。」

 ライアンはすぐに魔力が吸われてることに気が付いたようだ。

 全部が魔鉱って訳じゃないからそこまではっきりと感じるものじゃないと思うんだけど、ライアンにもわかるらしい。

 言われれば普通の人にもわかるのかな?


「見た目は趣味じゃないけど、刀身は王都の鍛冶屋で打ち直してもらえばいいし、飾りも取って鞘は新しく作ればいいじゃん。材料は良いからね。売るのは勿体ないよ。」

「貰っていいのか?」

「別に俺のじゃないからいいよ。」

 ライアンは何度か剣を振って確かめてから貰うことにしたらしい。


 俺もその間に玄関ホールの壁にかかってた地味な剣を振ってみた。

 貴族が使ってたやつだ。

 よく見てみれば地味と言うより過度な装飾がないだけで、シンプルで機能美がある。

 刀身にはうっすらと格好いい紋のようなものが刻まれている。

 残念ながら魔紘ではないようだけど、見た目は結構好みだ。


 剣を振ってみた感触は、やはり木刀とは違ってずっしりと重みを感じる。

 それはそうだろう。

 今俺が持っているのは大人用の両手剣だ。

 少しだけ一般的な両手剣よりも細い気がするけど、それは普通の物よりも長いからそう感じるだけだろう。

 これと並べると俺の木刀が子供用に見えそうだ。

 当然、子供の体には不釣り合いな程に大きい。


「大型の魔物用ってとこだな。」

 ライアンが俺が持ってる剣を見て呟いた。

 なるほど。

 切るのが魔物だからリーチを優先してるのかな?


 一度も使ったことがないのか、刀身は曇り一つないし刃こぼれも一つもない。

 でも確かに名剣っぽいけど、いくらなんでもこれでアイアンゴーレムを斬ったら折れそうな気がする。

 ってアイアンゴーレムを剣で斬ったらほとんどの剣が折れそうだけどね。


 今の俺には重すぎるけど魔鉱にしたら少しは軽くなるし、体もその内大きくなるから俺の剣はこれにしようかな。

 これ以上の名剣は探してもなかなか見付からないと思うしね。

 重いのも良いトレーニングになるだろう。

 問題は剣が長くて今の俺じゃ鞘から抜けないってことだけど・・。


 俺は剣を鞘に納めると、収納にしまった。

 そして今度は刀身だけを収納から出してみる。

 また収納にしまって、今度は鞘付きで出す。

 どうやら思い通りに出来るみたいだ。


 収納さん、流石です。

 もうあなた無しじゃ生きていけません!


「それを使うのか?デカいだろ。」

 ライアンが心配そうに言ってくる。

 何で心配してんだ?

 確かにライアンに渡した剣よりこっちの方がデカい。

 一緒にいたら不釣り合いだな。


「重さは何とかなるからね。大きさはちゃんと練習するよ。」

「何とか・・なるのか?」

 ライアンが不思議そうに首を傾げている。

 説明しようかと思った時に執事がメイドを連れて帰って来た。


 一応探した結果、一階にも金目のものは沢山あったらしく、何往復もして色々運んでくる。

 その中にはまた剣があった。

 応接室にも剣が飾ってあったらしい。

 これもなかなかの名剣っぽいので、後でルークに使うか聞いてみることにした。


 しかしここの貴族は、趣味はかなり悪いけど、武具の品揃えがかなり良かった。

 王都の一番大きい店にも置いてないような高級品がゴロゴロしてる。

 もしかしてコレクターだったのかな?


 なんか得したな。



 しかし、金目のものがカークの屋敷よりも遥かに多いな。

 というか、カークの家にも隠し部屋とか金庫とかあったんじゃないかな?

 いや、あっただろ。


 失敗したな。

 今度暇な時にでもまた行こうかな?

 隠し部屋とか探すのは面倒だから、ホントに暇だったら行くことにしよう。


 ふと思い付いたんだけど、貴族の家は一つじゃない。

 貴族の領内にある屋敷にはもっと溜め込んでるのかと思ったので、執事に聞いてみた。

「どうでしょうか?旦那様は領地にはあまり行かれない方だったので・・」


 なるほど。

 だからこんなに溜め込んでるのか。

 そう思うとカークは自分の領地にいることが多かったのかも知れないな。

 じゃあ行くとしたらカークの街に行けばいいのか。

 そういえば、あそこの屋敷もデカかったな・・。

 何にしてもめんどくさい。



 その後、兵士や御者達はまだ誰も気が付かないようだったので、貴族以外の残りの連中を奴隷として売ってきた。

 御者はちょっと安かったけど、兵士は高値で売れた。

 もちろん装備は取り上げてある。


 これでやつらも少しは人の気持ちがわかるように・・なると良いんだけどな。

 なんか無理っぽいよね。


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