友達が出来ました
俺はギルドから転移すると、周りを確認した。
今いるのは昨日の最終地点だ。
海はまだ見えない。
「やっぱりいないよね。」
子竜はいないようだ。
俺もいるとは思ってないけどね。
「さて、召喚してみますか。」
召喚魔法は一応唱えたことがある。
ただし、従えてる魔物なんていなかったから何も出なかったけどね。
とりあえず俺は召喚魔法を呪文で唱えてみた。
魔力の動きも一応覚えてはいるけど、魔法が成功しなかったからいまいち意味がわからなかったのだ。
呪文を唱えると四方八方に小さい魔力が薄く広がって行き、すぐにかなり離れた場所の魔力を感じることができた。
これは、子竜の魔力かな?
召喚の仕方が良くわからないので、心の中で決定ボタンを押してみた。
すると新たな魔力が体から引き抜かれた。
その魔力が複雑な動きをしながら集まっていく。
なんだか魔力の動きは転移に似ているようだ。
そのまま魔法が発動した後、その場所には子竜の姿があった。
なるほど。
感知魔法で他の生き物に与えた自分の魔力を探して、その持ち主を転移に似た魔法で引き寄せるのか。
魔法が二段階になってるとは思わなかった。
しかし、これって色々応用出来そうだな。
この感知魔法のままだと他人の魔力は探せないと思うけど、今度ライアンとルークに魔力を渡してみるか?
かなり離れてても感じられたし、場所が探しやすくなりそうだ。
ふと子竜を見ると、俺の方を不思議そうに眺めている。
相変わらず可愛いやつだ。
頭を撫でようとしたら軽く噛まれた。
普通の人間なら指が無くなってるぞ。
何でも噛みつくんじゃねぇよ・・。
とりあえず子竜に自分の魔力を与えておく。
というか、攻撃の中でも魔力球での攻撃だけ噛み砕くと思ったら、やっぱりこいつは食ってたらしい。
色々試してみないとな。
これからしばらくは毎日呼び出すつもりだし、大事にしよう。
子竜は嬉しそうに魔力を食べているけど、竜だから食べるのかな?
他の魔物に魔力を与える時ってどうするんだろ?
魔獣の素材みたいに勝手に吸うのかな?
子竜にエサだと見せかけて魔力を出して近付いたところで拘束してみた。
「やっぱり吸うのか。」
魔力は子竜の全身から僅かに吸われている。
子竜は嫌がっているけど、逃げられないようだ。
嫌われたくはないのですぐに開放すると、警戒しながらまた魔力を食べ出した。
それでも食べるんだね。
こいつにも名前とかあった方がいいんだろうか?
無いと不便だよね。
じゃあ・・
「お前はコリューだ。いいな?」
「ピー!」
「ピーよりはいいだろ?」
我ながら適当だ。
まぁ日本語だから子竜のことだとわかるやつはこの世界にはいないけどね。
「コリューって人の言葉とか理解出来るのか?」
コリューは首を傾げている。
なんて可愛いやつだ。
絶対わかってないな。
将来的には理解出来るようになるのかな?
しかしこいつ、召喚される前はどこにいたんだ?
山脈の方じゃなかったけど、散歩中だったのかな?
まぁ別にいいけどさ。
俺は昨日の稽古の続きをしながら移動した。
といっても相変わらずコリューは遊んでるだけだと思うけどね。
ちなみに今日は鎧を着けていない。
コリューの体当たりみたいな抱き付き攻撃を避けるためだ。
鎧を着ていたら全く避けられないからね。
といっても鎧を脱いでもなかなか避けられない。
全く避けられないと腹や背中に強い衝撃が、少しだけ避けるとコリューが掴もうとするのか腕や足に切り傷が増えていく。
これ・・ホントに攻撃じゃないんだよね?
俺は移動と言うよりは、コリューから逃げるように西に向かう。
魔鉱は作れるらしいし、竜は目の前にいる。
これ以上山脈に近付く理由がないからね。
俺はコリューの攻撃を避けるために『飛行』ではなく『立体機動』を使いながら移動していた。
歩きよりは早いんだけど、さすがに予定よりも結構日にちが経ってしまった。
その代わりコリューとの特訓のお陰で、かなり成長出来た気がする。
体当たりを食らうこともかなり減ってきた。
まだ食らうけどね。
特に避けるタイミングを間違えた時とか、軌道修正されてど真ん中に当たったりする。
鎧を着けないでやってると痛みが酷いので代わりに『纏い』を使ってたんだけど、全身に全力の『纏い』を使った時に発見があった。
今までは攻撃力と防御力がメインで上がってたんだけど、全身に全力でかけた結果、素早さはもちろん知力も上がった。
どうやら『纏い』のレベルが上がったらしい。
らしいって言うのも久々に冒険者カードを見てみたら、書いてあった『纏い レベル8』っていう表記が『纏い』に変わってたんだよ。
前に全身に『纏い』を使った時にレベル9には上がったんだけど、もっと強く深く魔力を纏うのがレベルのマックスだったのかな?
レベルが書いてないし。
まぁ魔力量を増やせば効果は上がるみたいだけどね。
知力と素早さをスキルで上げても特訓にならないので、コリューとは出来るだけスキルを使わずに戦ってる。
森が無くなってからは『立体機動』も出来るだけ使ってない。
自分の足で勝負してる。
・・出来るだけね。
俺はそのまま特訓を続けながら移動を続けた。
海が見え、山に挟まれる頃にはちゃんと避けられることがほとんどになっていた。
これはコリューの姿が見えるようになったことが大きい。
どうやら元々後少しで見えるところだったらしい。
知力と素早さはずっと鍛えてたからね。
まだ時々消えるけど、ずっと見えなかった時に比べればかなり避けやすい。
コリューが消える瞬間はおそらく本気になった時だと思う。
すごく速いし、消える前の顔がマジだ。
なかなか俺に抱き付けないからストレスでも溜まってるのかな?
だからって俺は大人しく抱き付かせてやる気はないけどね。
だって本気のコリューは、ものすごく痛いから。
今俺は、これより進めば本格的に山と海に挟まれるってところにいる。
やっとここまで来た。
ここからはコリューがいたら邪魔だ。
周りの警戒を怠ると命に関わりそうだし。
ということで、今日はここで過ごして明日からこの先に進もうと思う。
「ピィ!」
俺が止まったのでコリューは俺に抱き付いて離れない。
何がしたいんだろうね。
子供なんてこんなものかな?
そういえば、竜は何を食べるんだ?
日中俺と一緒にいる間は魔力以外口にしない。
俺も日中はおやつくらいしか食べないけど、お裾分けとかもしてないし。
夜とかに何かを食べてるのかな?
俺と過ごした短期間の間に、コリューはほんの少しだけ大きくなっている。
だから何も食べてないってことはないと思う。
魔力で成長するんじゃない限りね。
腹を空かせてたら可哀想だしすぐ横には調度海があるので、魚でも釣ってみることにした。
気に入れば食べるかもしれない。
収納に入ってるだろ、とか言わないでくれ。
俺だって息抜きくらいしたい。
俺は海岸まで移動すると、久々に海面に釣り糸を垂らした。
『気配感知』のレベルが上がってるので、海中の気配も近くなら探れる。
大きめの気配を狙って針を動かす。
気配の近くに来たところで『纏い』を発動させると、魚は即座に針に食い付いた。
吊り上げた魚は鑑定の結果、「スズキ」だった。
デカいね。
俺と同じか、ちょっと小さいくらいかな?
デカ過ぎないか?
スズキってこんなにデカいの?
コリューは俺が魚を吊り上げた時にはすごく驚いてたようだけど、魚に興味を持ったのかすぐに噛みついて食べ始めた。
どうやら気に入ったようだ。
俺は嬉しそうに魚を食べてるコリューを横目に釣りを続けた。
やっぱり『纏い』を使うとどこでも入れ食いだ。
コリューにはかなり世話になったから好きなだけ食べさせよう。
といっても最初のスズキはコリューよりも大きいから食べきれないと思うけどね。
余った魚はもちろん収納にしまった。
明日にでも王都で売れば小銭になる。
毎日宿に帰ってるから食料はほとんど必要ないし、持ってる魚もついでに売ってしまうか。
途中で海トカゲが襲ってきたけど、なんとコリューが体当たりだけで倒してしまった。
俺はあれを毎日食らってるんだよな・・
スキルがあって良かったよ。
お陰で死なずに済んだ。
倒された海トカゲも収納にしまうと、釣りを続けた。
コリューのお腹がいっぱいになった後で、また特訓をした。
日がくれるまで動き回ってから、わからないのはわかってるけどコリューに別れを言って宿に帰った。
次の日
俺は海トカゲの肉は市場で、魚は貴族街区の高級レストランで売りさばくと、さっそく転移した。
今日からは最大級に警戒をしながらの旅になる。
気合いを入れていこう。
「ゴフッ」
後ろからの予期せぬ衝撃に、俺は吹っ飛ばされる。
突っ込んできたのはもちろんコリューだ。
どうして?
と思ったら、コリューがいた場所には昨日のスズキが置いてあった。
「エサが残ってたか。」
スズキを守ってたらしい。
おまけに海岸には海トカゲが2匹も倒れていた。
上がってきたところを倒されたんだろう。
近付いてみるとまだ瀕死の状態だったので、トドメをさして王都で売ってきた。
死ぬと腐ることを本能で知ってたのかな?
さすが野生の生き物。
食料の備蓄だったなら悪いことをしたけどね。
コリューのところに戻るとまた突っ込んできた。
予測してたので避けられたけど、コリューは不満そうだ。
「ピー!」
「なんかお前、大きくなってないか?」
「ピィー!」
言葉がわかったのか、翼を広げて大きく見せてくる。
やっぱり少しだけ大きくなった気がする。
魚のお陰か、海トカゲを倒してレベルが上がったのか・・
レベルかな?
魔物だしね。
さて、どうするか。
コリューがいたら進みにくいんだけど、今日もここで過ごすか?
それともコリューと一緒に進んじゃうか。
ちなみにコリューを転移で飛ばすのは無理だ。
俺はいまだに鑑定魔法ですらコリューに当てることが出来てない。
俺より素早いんだからコリューが死ぬことはないと思う。
竜にとっては仲間なはずだしね。
進んでみるか?
こういっては何だけど、自分だけなら逃げられると思う。
そして、コリューはある意味俺よりも安全だ。
じゃあ進んでみようか。
予定通り、危険なら逃げるってことでね。
俺が進み出すとコリューも付いてきた。
スズキのところに残ることもあるかと思ったんだけど、そんなことはなかったらしい。
いつもは走ってる俺がゆっくり歩いているので、コリューは横に並んで飛びながら不思議そうに俺を見ている。
「すぐに走るよ。お前も気を付けるんだぞ。」
「ピィ!」
言葉がわかるのかな?
最近はかなり話しかけるようになったから、少しは言葉を覚えたのかもしれないね。
「じゃあ行くぞ!」
「ピィー!」




