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初めての貴族んち

 深夜になったのでそろそろ活動を開始しようと思う。

 これはどう考えても子供の生活リズムじゃないよね。

 やっぱり眠いっす。


 昨日の夜は思いがけないスカウトにあうし、なかなか俺も立派になったもんだと思うよ。

 明らかにチートだと思うけど、一日だって日本にいた時のように家の中でダラダラ過ごしただけの日はないんだ。

 努力が実った気がするね。


 でも、チートの代表である魔力を除くと、俺のランクはD相当と評価されるらしい。

 まだまだ頑張らないといけないね。

 毎日続けてる筋トレの成果は出てきてる。

 少しずつだけど、大きな鉄の塊を使った筋トレが出来るようになってきてるからね。

 でも、不思議と体つきは変わらない。

 ムキムキな冒険者とかあんまり見ないし、この世界はそーゆーものなんだろう。

 見た目でわからないから『気配感知』や『魔力感知』なんてものがあるのかもしれない。

 相変わらず変な世界だ。

 ムキムキな子供なんて気持ち悪いから、俺にとっては有り難いけどね。


 今度必要ない鉄を使って鎧でも作ろうかな?

 もしくは鉄の腕輪とか。

 日常の動きで筋トレが出来るし、そのままトレーニングしたら素早さも上がりそうだ。

 それに将来的に装備を付けて活動するかもしれないから、今から慣れておくのも悪くないと思うんだよ。

 防具屋に相談してみようかな。

 子供用の鎧が作れたらの話だけど。

 カークの家で手に入る物によっては防具屋にもよることになるから、その時は考えてみるか。


 防御力はしっかりあるから、今のところ防具は必要ない。

 今は木刀しか持ってないけど、もちろん攻撃力も武器で上げられる。

 問題なのは素早さなんだよ。

 真面目に素早さを上げることを考えたい。

 今後もしも装備を増やすと、どうしても素早さを犠牲にすることになる。

 そしたら今よりもっと他のステータスの足を引っ張ることになるから、本当にどうにかしたい。

 この件が無事に終わったらまたダッシュで頑張ろうかな。

 他に鍛え方がわからないし。



 そんな考え事をしていたらカークの家が見えてきた。

 結構遠かったな。

 転移すれば良かったかもしれない。

 急いでないから良いけどね。


 カークの家は城の近く、王都の中心部にある。

 貴族街区だ。

 昼間から人口密度が低い上に平民の立ち入りは禁止されてるから、深夜なんて誰もいない。

 道に魔法の明かりが付いていなければ、そこら中が廃墟に見えたかもしれない。


 ただし、少ないとはいえ魔法の明かりで照らされた豪邸や専用の庭師に整えられたと思われる庭園は見るからに立派で、廃墟と間違えられることはないだろう。

 目の前には写真でしか見たことのない優雅な景色が広がっている。


「何度見てもすごいね。」

 昨日場所を確認した時も夜だった。

 昼間の景色も気になるから、明日出発前に見に来ようかな?

 余裕があったら覚えておこう。


 裏ギルドでは入り口で声をかけたけど、ここでは意味がないのでやらない。

 だって入り口の門から叫んでも建物まで届く気がしないからね。

 間違いなく近所迷惑だし。


 俺は迷うことなく敷地内に入ると、辺りの気配を探る。

 敷地内には見張りもいないようだ。

 離れの建物もあるみたいだけど、たぶんメイドでも住んでるんだろう。

 母屋と比べると安そうな建物だ。

 もしかしたら用心棒や私兵も住んでるかもしれないけど、昨日盗賊が来るかもって国の兵士に言われたばかりなんだ。

 いるなら離れじゃないだろう。


 思った通り、軽く探ってみても離れにはまともな気配は感じられない。

 といってもメイドとは思えない気配も伝わってくる。

 やっぱりカークの私兵もこの中に住んでるんだろう。

 邪魔さえしなければ俺は兵士に用はない。

 だから、今日は無視でいいかな。

 母屋を囲むようにいつもの結界を複数張ると、俺は入り口に足を向けた。


 入り口から探る限り、母屋の中には人はほとんどいないようだ。

 少数精鋭だろうか?

 それでもそんなに強い気配は感じない。

 こないだ宿に来た兵士の気配は離れで似たようなものを感じた。

 恐らく間違ってないはずだ。

 きっと今はみんな寝てると思う。


 これは、もしかして・・

 昨日、国の兵士に起こされて徹夜したから、今は寝てるのか?


 そんなバカな。

 交代制とかじゃないの?

 まぁ楽で良いけどさ。


 サイレントの魔法で音の心配はしなくて良いので、入り口のデカいドアを魔力球で吹き飛ばす。

 あぁ。

 このドアはいくらしたんだろう・・

 どうでもいいか。


 中は予想通りの成金趣味・・では無かった。

 歴史のある血筋なのかな?

 統一感のない装飾品がこの世界には存在しないだけかもしれないけどね。

 この世界の気品ってものがわからない俺には評価のしようがない。

 とりあえずそこら中に魔法で明かりを付けて様子を見るけど、何が高いのやら・・いやいや、全部高いんだろうけどね。


 もはや目的を見失いつつあるけど先ずはカークを探して、その後は魔鉱でも探すとしよう。

 いるなら2階だろうと階段を上がるとすぐに攻撃を受けた。


「やったか!?」

「ダメだ!来るぞ!」

 この展開は昨日もなかったか?

 家の中でファイアボールを使うなよ。

 一番被害がデカい魔法だろ。

 さっさと攻撃をしてきた二人を魔力球で無力化する。


 昨日と同じように一部屋ずつ調べても良いんだけど、とりあえず気配のない部屋は素通りする。

 目指すはカーク。

 気配が少ないからすぐに見付かるだろ。



「貴様!貴族に歯向かってどうなるかわかってるのか!」

 見付けたよ。

 それはもうあっさり。

 空き部屋ばっかりだったからね。

 奥に向かって歩いてたらこんな時間に3人の気配が集まってたから来てみたら当たりだった。


「死刑だぞ!お前は死刑だ!」

 何やらカークが叫んでる。

 俺は堂々と部屋に入ってきたのに、護衛の魔術師二人は集団魔法でも使うのかコソコソと話してるみたいだ。


 なんか昨日も最後は3人だったけど、今日は一人が戦力外だ。

 やる気出ないなぁ。

 しかも昨日は剣士が魔法使ってきたし、何かおかしくない?

 剣士なら剣で戦えよ。


 魔術師の作戦会議が終わったらしい。

 カークがずっとギャーギャー騒いでるのは時間稼ぎなのか?

 まさかね。

 たぶん護衛からも無視されているんだろう。

 この状況で護衛の方が後ろにいるのはそーゆーことだと思う。


 魔術師が魔方陣を使って魔法を発動する。

「食らえ!封魔結界!」

「はぁ!?」

 なんじゃそりゃ。

 そんな魔法知らないぞ。


「そして対物理結界!どうだ!これで出れまい!ふはははは!」

 おぉ!

 どうやら集団魔法ではなく、魔法での連係をしてきたみたいだ。

 しかも俺の知らない魔法を使って。

 でも攻撃魔法じゃないし、魔力量から見ても大したレベルじゃなさそうだ。

 残念。


「魔術師にはこの結界は破れない!お前は終わりだ!」

 凄いな。

 すっかり舐めてたぞ。

 頑張ってくれ。


「この魔法ってレベルはどれくらい?」

「両方ともレベル4だ!何も出来まい!」

 だよね。

 わかってた。

 でもレベル4ってかなり高い方だよね?

 魔術師としては一流なのかな。


 でもこの結界、感覚的に魔力は普通に使えそうだけど、何を封じてるんだろう。

 俺は試しに魔法を呪文を使って唱えてみる。


「はっ!レベル2の魔法なんぞ使える訳があるまい!」

「おぉ。ホントだ。」

 呪文を唱えても魔法が発動しない。

 こりゃすごい。

 魔方陣は持ってないから確かめられないけど、きっと使えないんだろうね。


 魔術師二人は勝ち誇ったように笑っている。

 カークは・・いいか。

 ずっと何かをギャーギャー言ってる。


 俺は無詠唱でウィンドエッジを発動させてみた。

 ちゃんと発動して魔術師のローブを切り刻む。

 対物結界はもちろんすり抜けた。


 うむ。

 これ・・ただの対魔結界の方が良いじゃん。

 あれなら魔力も通さないし。

 魔法を発動すらさせたくない時には有効だけどね。

 まぁ折角だから覚えておこう。


 知らない魔法と魔術師二人の連係を見てテンションが少し上がったけど、よく考えたら俺が入り口に立ってるのに物理結界を作ったらこいつらも出れないんじゃないのか?

 これだけのことに相談してる時間も長すぎたし、やっぱりこの世界って頭悪い人が多くないか?

 学校がないとこうなるんだね。

 怖いな。


 魔術師はローブを切られたことで結界を破られたと思ったのか、目を丸くして驚いている。

 口をパクパクしてるから、もしかしたら何が起きたのかすらわかってないんじゃないかな?

 まぁそんなことはどうでもいいか。


 俺は封魔結界を魔力を干渉させて、対物理の結界を『纏い』を使った蹴りで壊した。

 木刀は正体がバレるかもしれないので出来るだけ使わない方針だ。

「バカな!」

「破れるはずかない!」


 さっきからうるさい魔術師は魔力球で黙らせた。

 何だか、時間を無駄にした気がする。

 疲れるなぁ。


「なっ!こんなことをして・・!」

 まだギャーギャー騒いでるカークに弱めの魔力球をプレゼントする。

 しっかり吹っ飛んで壁に当たる。


「き、貴様!死刑だ!死刑だぁ!」

 魔力球のダメージはそんなになかったらしく、床に伏せたまま叫んでいる。


 あら?

 ここまで昨日と同じ展開なのか?

 まぁまた魔鉱が手に入るなら構わないか。


 と思って魔力で拘束してみると、魔力を吸っているのはカークの服だった。


「なんだ、その服・・」

「貴様ら平民は一生見ることもないから知るまい!これは羊の魔獣から取れた魔毛で編んだ最高級の服だ!貴様ごときの魔法では傷も付かんぞ!」

「・・あっそ。」

 魔力で拘束されても動揺を見せないのは大したものだ。

 大物なのか、いや、気付いてないだけかな?

 今度は強めの魔力球で黙らせる。

 カークは再び壁に飛ばされて今度はちゃんと気を失ったようだ。


「さて、どうしよう。防御力が高いなら欲しいけど、こいつの服って趣味が悪いんだよな・・」

 今着てる服も前回見た時ほどではないけど、刺繍が激しい。

 もしかしたら貴族の服ってのはこれが標準なのかもしれない。

 そう考えると貰っておいて損はないかな?

 良い宿やレストランを使う時に変装に使えるかもしれないし。

 変装のつもりが仮装にならなければ良いけど・・


 しかし、魔毛って・・

 きっと一般的な呼び名ではないんだろう。

 聞いたことないし。

 でも、よく考えてみれば魔獣の革が丈夫なら毛も丈夫だよね。

 魔力を吸うってことは傷も自己修復するんだろう。

 魔力石も魔鉱も魔獣も、全部魔力を沢山浴びて変質したものだ。

 原理は一緒なんだと思う。


 あれ?

 食べても食べても魔力で増える肉も・・

 いや、やめよう。

 気持ち悪い。


 服を脱がしたカークは見苦しいので王都のスラム街に転移で飛ばしておく。

 カークは服を脱いだらただのオジサンなので、スラム街ではあんまり浮かないと思う。

 貴族と思われて襲われるよりは良いだろう。


 俺は建物の部屋を一つ一つチェックして、金目の物を集めていった。

 美術品は諦めたけどね。

 売る場所がわからないし、見た感じだと量が多すぎる。

 売るのに手間と時間がかかりすぎるんだよ。

 だからって芸術品を壊すのは嫌だしね。


 ということで、集めるのは魔鉱を含めた金属製品、その他装備品になりそうなものだ。

 もちろんお金そのものや売れそうなものは貰っていく。

 クローゼットを漁ったら魔獣の革で出来たズボンとかも出てきた。

 形からして乗馬用のズボンかな?

 他にも素材が魔獣と思われるものはいくつかあった。

 魔鉱と比べれば簡単に手に入るし安いけど、それでも一般人が持てるような金額のものじゃないはずだ。

 折角だから根こそぎ持っていこう。

 要らなくなってもこれならすぐに売れるし。

 たぶん鎧の下に着るものとしては色々使えるものもあるだろう。

 あっ新品っぽいシーツも貰っておいたよ。

 宿で使ったら寝心地がよくなりそうだったからね。


 俺はどんどん部屋を調べていく。

 でも、もう適当だよ。

 別にもう怒ってないし、正直めんどくさい。

 この国を出ちゃえば関係ないしね。

 ただしばらくは夜だけ王都にいることになるかも知れないから、その間だけじっとしててくれればそれでいいと思う。

 ライアンとルークが無事なら俺は別にいいんだよ。


 あれ?


「・・しまった。」

 またやったよ・・。

 他の裏ギルドにライアンとルークの暗殺を依頼してないか聞くのを忘れてた。

 もうカークは転移させちゃったぞ。

 良かったよ。

 山に送ってなくて。

 スラム街なら生きてるだろ。


 何でこうミスばっかりやるかなぁ。

 もう早く帰りたい。



 その後、俺はカークはもちろん、カーク邸にいた全員に聞き込みをする羽目になった。

 カーク婦人は盗賊が来るかもしれないと聞いて貴族御用達の宿に泊まってたので、そこまで足を運んで聞いてきた。


 そんなことをしていたお陰でライアンとルークが安全だとわかった時には朝になっていた。


 もう疲れた。

 俺はスパイにはなれないと思う。

 必要ならやるけどね。

 何よりも眠い。

 早く帰って寝よう。


 流石にカークでも魔鉱は持ってないようだった。

 きっと最高級の素材だから、戦わない貴族が持つようなものじゃないんだろう。

 もしくはカークの街の舘にはあるのかもしれないけどね。


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