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昼間は平和です

 もしかして悪者って結構お金を持ってるのか?

 って稼げないなら悪いことまでしないか。


 裏ギルドの連中から巻き上げたお金は、人数が多かったせいもあって一般的な価値観からすればかなりの大金だった。

 また、同じく身ぐるみを剥いで集めた装備等の金目の物は盗品とかだったら嫌なので全部売り払ったけど、これまた大金になった。


 手元にはリーダーから貰った魔鉱と大金だけが残った。

 ある意味ウハウハだ。

 いつも回復薬で稼いでる金額に比べたら大喜びするほどじゃないけどね。



 ちなみに昨日裏ギルドを出たあとは、軍の詰所に行って『倉庫に強盗が入った』って通報したから大変だったみたいだね。

 裏ギルドには指名手配されてるやつも沢山いたらしくて、夜のうちに全員捕まって朝には大騒ぎだよ。


 俺が起きた時には王都中がその話題って感じだった。

 俺も戦利品を売り捌きながら何度もその話を聞いたよ。


 ちなみにカークの家はすぐにわかった。

 軍の詰所に行った時に、『逃げた盗賊が次はカークだって言ってた』って伝えるだけで即座に連れてってくれたからね。

 まぁ俺は空から勝手に付いてったんだけどさ。

 で、場所だけ確認したら宿に戻ってきた。

 眠かったからね。

 睡眠は大事だよ。

 うん。


 リーダー以外の戦利品には残念ながら魔鉱は無かった。

 全部に魔力を流してみたから間違いないでしょ。

 それでもかなり高く売れたけどね。


 装備を売りに来てわかったけど、金属の装備はみんな高い。

 良し悪しとかわからないけど、店の中には金貨が必要な商品がゴロゴロしてる。

 もしかしたら駆け出しの冒険者じゃ銅の剣でも買えないんじゃないのか?

 そう思ったので武器屋の店主に聞いてみた。


「駆け出しの装備?それならこん棒か木の棒だろうな。いいとこ木剣だ。」

 やっぱりね。


 木剣とは俺が木刀と呼んでるやつのことだ。

 剣の形に削った木のことで、切れ味なんかない。

 というか切るためのものじゃないし。

 俺が剣術の練習を始めた頃には、太くて大きい木剣は振れなかったから細いのにしたんだ。

 俺は見た目が木刀だからそう呼んでる。


 しかし、なんて原始的なんだ。

 さすがに駆け出しの冒険者に護衛とかの仕事はないらしいから、それでも何とかなるんだろう。

 雑用や採集、レベルの低いゴブリン退治の仕事でお金を貯めてから装備を徐々に充実させていくらしい。

 仕事の難易度を上げれば同時に報酬も上がっていくけど、装備を整えるのに必要なお金も跳ね上がるから装備が揃う前に死ぬ冒険者の方が多いらしい。


 そういえば革製の鎧はそんなに高くないみたいだね。

 銀貨10~40枚くらいで買えそうだ。

 肉が安く買えるから革も安いのかな?

 まぁ安いって言っても全身のパーツを揃えようと思ったらこれも大金になるけどね。

 やっぱり駆け出しの冒険者には買えないだろう。


 そう思うと兵士とかで見たことある人はみんな金属の装備を身に付けてたけど、あれは軍全体で見ると物凄い金額になるんじゃないのか?

 凄いな。

 軍隊の維持に大金がかかるわけだ。


 俺はこないだ剣を斬ったけど、あれって修理出来るのかな?

 暗殺者の切れた剣だけは手元にあるので武器屋の店主に聞いてみると


「こりゃ無理だ。一回溶かさないとな。修理っていうより作り直しになるぞ。」

 って言われたよ。

 そりゃそうだよね。

 どうせいらないので屑鉄として売り払った。


 それと、回復薬も売りに行った。

 そろそろ売りに行ってもあんまり喜ばれなくなってきたから、値下がりする前にやめといた方が良さそうだ。


 その時に他に高く売れる物を聞いてみたんだけど、簡単に手に入るものは無さそうだった。

 魔道具とかはそれなりに高いんだけど、俺には作れないしね。

 まぁ現状でかなりのお金を持ってるし、不満も不足もない。

 それこそどこかの山で魔鉱でも取って来るくらいしないと、俺の資産は目に見えて増えたりしないのかもしれない。



 宿に帰ってからは昼寝をして夜に備えた。

 今夜はカークの家にお邪魔する予定だ。

 貴族の家なんて初めて行くからちょっと心配だ。

 と言っても礼儀作法の心配は全くしてないけどね。

 どうせ無礼なやつしかいないだろうし、殴り込みに行って礼を尽くされても困る。

 心配は別のことだ。


 金目の物は沢山あるかな?

 高いんだろうけど美術品とか、どこで売るのかわからないものはどうしよう?

 自分で見ても価値がわからないものに関してはほっとくしかないと思う。

 でも例えば金属製の食器とか、高いのは知ってるけど中古で売れるかわからないものはどうしたらいいだろう?

 雑貨屋で売れるかな?

 それとも武器屋で屑鉄として売るか?

 最悪どこでも売れなければそれしかないかもね。


 俺はやつに痛い目にあってもらうためにも、カークの家にあるもので価値があるものは根こそぎ持ってくるつもりだ。

 でも、ゴミはいらないんだよ。

 魔鉱くらい希少なものならともかく、取ってきて売れないからって自分で使う気もない。

 まぁ直接見てから決めるしかないんだろうなぁ。



 美味しい夕食を食べた後、また少し眠ろうとしたら客が来た。

 例のごとく、宿のスタッフが緊張した顔付きで来客を告げにきたのだ。

 一階に降りてみると、そこには前回のように3人の兵士がいた。


 またか・・

 と思ったんだけど、どうやら雰囲気が前回と少し違うようだ。

 階段から降りていく俺に対して目を離すこともないし、少なくとも「子供に用はない」とか言いそうには見えない。

 よく見たら前回の兵士とは違うみたいだ。

 顔なんていちいち覚えてないけど、鎧が前と違う。


「キミが、ロイ君か?」

 ん?・・なんだ?

 警戒してるのか?


「ロイですけど、何かありました?」

「なるほど、確かに・・大したものだ。その年でその実力とは。」

 兵士は俺の体をよく見て観察している。

「装備が・・」「素材が・・」とブツブツ言ってるけど、どうやらこの人は『気配感知』を持ってるみたいだ。

 それでジロジロ見てたのか。


 この世界は魔力を使えるのが普通なだけあって、『魔力感知』を持ってる人は珍しくない。

 生活の中に魔法が溢れてるというのもあって、一番一般的なスキルだ。

 だけど、『気配感知』を持ってる人はそんなに多くない。

 冒険者でも盗賊等の探知系の人は持ってる人が多そうだけどね。

 そもそも『気配感知』が一般的なスキルだったら俺は表を歩けないと思う。

 たぶん化け物扱いされるからね。


 後ろの兵士二人も俺を見て納得顔で頷いてるところをみると、同じく『気配感知』持ちなんだろう。

 なんなんだ?

 こいつら誰?


「挨拶が遅れたが、私達は王国軍所属の兵士だ。詳しい所属は言えないが、カークの街からの情報で君のことを知って来た。」

「カークの街って、ギルドから?」

「細かいことは聞いていないが、それがどうかしたのか?」

「いや、別に。」

 ギルドのオバサンが悪い噂でも漏らしたのかと思ったんだけど、違うのかな?


「子供の身ながら、かなりの実力を持った冒険者だと聞いている。」

 なるほど。

 オバサンじゃ無さそうだ。

 この様子だとスカウトか?

 実力を持つと軍や貴族がほっとかないって先生も言ってたからね。


「見たところ装備無しでもDランクほどはある様子。たしかに子供としてはあり得ないほどの逸材だ。」

「はっ?」

 D?

 Bじゃなくて?

 確かに俺は自前の防御力が高いお陰で装備なんて普段着のまんまだけど、低すぎない?

 聞き間違いか?


「どうした?冒険者カードは持ってるはずだが・・自分を評価されたのは初めてか?」

「はぁ・・そういえば、初めてかな?」

「そうか。君は十分評価に値する。王国軍に来ないか?成長すれば魔力も伸びるだろうし、体が大きくなれば他のステータスもどんどん伸びるだろう。それをさらに鍛え上げる環境としては悪くないと思うぞ。勿論その他の待遇も保証しよう。」


 なるほど。

 俺の普段の魔力は人にはわからないはずだ。

 それこそ鑑定魔法でもかけない限りは正確な実力は読めないのかな。

 まぁ『魔力感知』のレベルが高ければさすがにバレそうだけどね。


「残念ですけど、予定通りなら明日には王都を出るつもりなんですよ。」

「それは行かなければならないのか?」

「えぇ。仲間と待ち合わせをしてるので。」

「そうか。では、どこかで自分を鍛えたいと思った時には是非とも訪ねてくれ。いつでも歓迎しよう。」


 そう言って兵士達は去って言った。

 本当にスカウト隊だったみたいだ。

 去り際も最後まで大人しかったし、みんながあんなだったら良いのにねぇ。


 さすがに王国軍の鎧ともなると良いものを使ってたな。

 あれは高いぞ。

 剣は中身を見てないからなんとも言えないけど、鞘がもう高そうだった。


 って俺は金の亡者か?


 価値がわかるとどうしても気になっちゃうんだよね。

 これも貧乏性って言うんだろうか。


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