裏ギルド襲撃
貴族はたぶん逃げないから、暗殺者のアジトから訪ねてみることにする。
しかし貴族から依頼を受けるなんて、どーゆーコネを持ってんだ?
もしかしたら貴族の私兵だったり、幹部に貴族とかがいたりしてね。
暗殺者のリーダーに聞いた話によると、悪いことばっかりやってる集団は一応世間からは裏ギルドとか犯罪者ギルドって呼ばれてるらしい。
裏の仕事を斡旋してるって意味なんだろう。
でも、依頼も受けるらしいけどほっといても自分達で勝手に誘拐とかやるらしいから、やっぱりギルドとはちょっと違う。
いや、ハンターが混じってるって意味では合ってるのか。
もちろん依頼を受けない集団も盗賊団とか色々あるらしい。
リーダーに教えて貰った場所はギルドで言えば支所みたいなものだ。
大きな街には冒険者ギルドも沢山ある。
今いる王都なんて支所だけで4つもあるらしい。
デカいだけあるね。
ちなみに冒険者ギルドって組織が基本的にどうなってるかというと、支部はそれぞれの街にあって、大きな街では支所が出入口ごとにあったりする。
本部は国ごとに1つどこかの街にある。
そして総本部が大陸ごとにある。
かと言って総本部が何もかも決める訳じゃないし、自由度は高いらしいけどね。
で、暗殺者のリーダーも裏ギルドの本部や他のアジトは知らなかったから、もし必要なら自分で聞き出さなくちゃならない。
なかなかめんどくさい。
必要悪ってことで本部はほっとこうかな?
まぁそれは後で決めるか。
裏ギルドの支所は冒険者ギルドと違って悪者のアジトだ。
泊まり込みというか、住んでるやつが沢山いるらしい。
殴り込みに行けば必ず戦闘になるだろう。
ということで、俺は入念に準備した。
当然だけど、変幻魔法はかけた。
ついでに透明化もしてある。
各種補助魔法で強化してあるし、さらに戦闘が始まってから『纏い』で全身を強化したらフル装備の出来上がりだ。
たぶんこれで竜に噛まれても大丈夫だと思う。
大丈夫かな?
流石に竜は無理か。
教えてもらった場所についた。
王都のほぼ端、どの出口からも遠い不便な辺りだ。
ルビィの街の孤児院を思い出すね。
建物自体に窓がないから倉庫に見えるけど、中からは人の気配が沢山感じられる。
半分くらいは起きてるかもしれない。
入り口にも見張りはいないし、深夜なだけあって外には人影は全く見えない。
貴族から仕事を受けるくらいだから軍の査察みたいのを受ける心配はしてないのかな?
空から一周してみたけど、特に見た目に変な所はない。
入り口も1つだと思う。
「じゃあ入りますか。」
緊張をほぐすために自分に言い聞かせる。
自分から喜んで来たい場所ではない。
だけど、このためにライアンとルークに先に出発してもらって、一人で王都に残ったんだから行くしかない。
ライアンとルークが暗殺の標的になってるかを、リーダーは知らなかった。
たぶん大丈夫だと思うけど、ここか本部でちゃんと聞かないとね。
「すみませーん。」
まずは挨拶から。
これは基本だ。
基本だよね?
もちろん周りにサイレントをかけてあるので、近付けば大きな声を出しても問題ない。
すぐに奥の方から人が近付いてくる気配がする。
気配はドアまで来ないで少しだけ離れた所で立ち止まったようだ。
「何時だと思ってやがる!今日は店じまいだ!帰れ!」
知らなかったな。
ここは何かの店だったのか?
「開けてくれません?緊急の要件なんですけど。」
「お前の都合なんて知らねぇよ!帰れ!」
「じゃあお邪魔しまーす。」
「はぁ?」
元から許可を貰うつもりなんてない。
なんとなく人が住んでるって言うから挨拶しただけだ。
バゴォン!
入り口のドアが魔力球で弾けとんだ。
ついでに飛んでったドアが当たって、奥に立ってたチンピラものびてるみたいだ。
倒す手間が省けた。
入り口からだと建物内に強そうな気配は感じない。
一安心だ。
しばらく攻撃は魔力球でいこうと思う。
魔法を使って加減を間違うと自分も建物の下敷きになりそうだからね。
無事に中に入れたので、建物に結界を張った。
これで逃げられないだろう。
ついでに変幻魔法を建物にもかけると、奥につながる廊下を歩いていく。
「襲撃か!?」
「どこのどいつだ!」
俺の姿が見えないのでみんながドンドン出て来てくれる。
楽で助かるなぁ。
途中にある部屋も全部チェックして、もれなくみんなに魔力球をプレゼントして無力化していく。
「しまった。」
さっそくミスをした。
知りたい情報って誰に聞いたらいいんだろ?
それにせっかく沢山人がいるんだから、みんなにクラスを聞けば良かったな。
まぁ情報は奥にいるやつに聞くとして、クラスはみんなに聞くか。
練習練習。
建物は外からの外観と違ってやっぱり倉庫ではなかった。
天井も低いし2階がありそうだ。
じゃあ偉いやつは2階だろう。
1階にいるやつ全員にクラスを聞いてから無力化したあと、俺は2階に上がった。
2階にも廊下の左右にはドアが並んでいる。
1階と同じなら個室みたいな狭い部屋が並んでるんだろう。
ここは寮か何かなのか?
今さらだけど、店はどうした。
店なら受付とかないのか?
2階にいた連中は下と比べてランクが高いやつが多いみたいだ。
2階にいるのは大体D-からC-くらいのやつが多い。
それに満たない連中が1階に住んでたようだ。
すぐに答えなかったやつはめんどくさいからそのまま眠らせてるし、自己申告だから確実じゃないけどね。
個室を全部チェックした後、廊下の一番奥に今までと違う大きめの扉があった。
中にはちょっと強めの気配が3つある。
ドアを破って中に入ると、即座に攻撃された。
ファイアボールが二つ飛んでくる。
予想してたのですぐに発動した結界で防ぐ。
「やったか!?」
一番奥にいるやつの声が聞こえた。
あいつがここのリーダーかな?
室内で火を使うなんて何を考えてんだ?
一酸化炭素中毒になったらどうすんだよ。
しかし、もう俺がいるのはバレバレか。
「残念。やってないよ。」
お返しで魔力球を放つ。
魔法を放ってきた剣士二人は避けようとしたようだけど、ウサギよりも遅いため無事に壁に弾き飛ばす。
リーダー以外はこれで片付いた。
「き、貴様は何者だ!こんなことをして、ただで済むと思ってるのか!」
俺は透明化だけ解除してリーダーに近付く。
「誰でもいいでしょ?ところで、今日子供を殺す命令をしたのはあなたかな?」
「それがどうした!まさか、報復か!?」
あっさり認めたな。
でも報復は違う気がする。
襲撃を待ってたからね。
「じゃあここで依頼を受けたの?」
「それが何だと言うんだ!いったい何者だ!」
あらら。
本部を探す必要が無くなっちゃったよ。
手間が省けたかな?
「ちなみにあんた達の代表はどこにいるの?」
「代表?ボスに何の用だ!貴様ごときがボスに会って・・」
俺は魔力球をリーダーの横に移動させる。
「な、何だこれは!どうなってる!」
「うるさいよ。」
弱めの魔力球で殴り飛ばす。
「がはっ!」
壁に叩きつけられたリーダーは地面に落ちて息を吐き出す。
ちゃんと手加減したので気は失ってないはずだ。
「こっちが質問してんだよ。聞かれたことに答えろ。」
「な、何だ。金ならないぞ!」
リーダーが起き上がりながら答える。
派手な音がしたわりにダメージは少なそうだ。
手加減しすぎたかな?
しかし、金はないのか。
そりゃ残念だ。
「お金のことは後で聞くよ。それよりも俺・・子供の殺しと一緒に他の依頼は受けたか?子供の殺しと同じやつから受けた依頼だ。」
「他だと?何だそれは!そんな話は聞いてないぞ!あいつら何かしやがったのか!?」
どうやらライアンとルークは無事らしい。
カークが別の裏ギルドに依頼でもしてない限りはね。
「だったらボスの場所はいーや。依頼をしてきたやつだけ教えてよ。」
「そんなこと言える訳がないだろう!」
「ちなみにボスの居場所は?」
「言わん!」
さっきの魔力球がダメージを受けていなかったようなので、同じくらいのを5個ほど当ててみる。
おじさんがピンボールみたいに跳ね回る姿はなかなか面白い。
「くっ!何なんだこれは!」
ダメージは与えられないか・・
おかしいな。
試しにちょっと強目に他のやつに当てた魔力球を当ててみたけど、やっぱり気は失わない。
というか思ったよりも飛んでいかない。
「何で?」
「何がだ!」
今までは同じような場所に当たりさえすればランクには関係なく、同じくらいの魔力球で大抵は気を失ってた。
つまり魔力球で与えるダメージにステータス上の防御力はあまり関係ないはずなんだ。
壁に叩きつける打撃や衝撃は別としても、きっとメインは魔力による環境ダメージなんだろう。
それなのにこれだけ魔力球を当てても、それほどのダメージがあるようには見えない。
こいつは魔力に対する耐性スキルでも持ってるのか?
「ねぇ、冒険者カードをみせてよ。」
「ふざけるな!誰が見せるか!」
なんでこんなに元気なんだ?
どうやら持ってるらしいので、冒険者カードを見せてもらおう。
ランクもわかるしね。
そう思って魔力で捕まえようとした時、変な感触が伝わってきた。
「魔力が吸われてる?どーゆーこと?」
「な!動けない!?」
ちゃんと捕まえられたらしい。
でも少しずつだけど魔力が吸われている。
これは・・魔力石?
吸われているのはリーダーの胸当て辺りだ。
裏に魔力石を仕込んでるのか?
でも、魔力石にしては魔力を吸う力が弱い。
「その胸当てってさ・・」
「な、なんだ!胸当てがどうした!ふざけるな!」
すごい慌てようだな。
やっぱり何か隠してるのか。
じゃあ今後の参考に教えてもらおう。
俺が胸当てを外そうと手を伸ばしたら、リーダーが顔を真っ赤にして拘束に抗ってるのが魔力から伝わってきた。
拘束するための魔力は徐々に吸われていくけど、何の問題もない。
どんどん足してるからね。
「何を隠してるのかなぁ?」
「やめろぉ~!」
抵抗むなしく胸当ては簡単に外れた。
しかし、胸当ての外されたリーダーの胴体にも胸当てにもおかしな所は何もない。
「普通の胸当てか?」
「そうだ!返せ!」
ただの金属製の胸当てに見える。
魔法的な補助効果も感じられない。
その時、俺は思い出した。
魔力を吸うのは魔力石だけじゃないことを。
「これ、魔鉱か!?」
「ち、違う!どこからどうみても普通の胸当てだろうが!」
そう思って見てみると表面がメッキっぽい。
擦れやすい部分はメッキが落ちて地金を晒してる。
それに鉄製にしてはこの胸当ては軽い気がする。
革製と同じくらいしか重さがないんじゃないのか?
革製の胸当てとか持ったことないから知らないけどね。
固さは金属製の胸当てのものだし、どうやらこの胸当ては魔鉱で出来てるみたいだ。
魔鉱は初めて見たよ。
かなり珍しい素材だからね。
「返せ!俺の胸当てぇ!」
「ただの胸当てでも良いから貰っておくよ。見ての通り、装備が貧弱なんだよね。」
拘束を解いたリーダーに魔力球をぶつけると、他のやつらと同じように壁に叩きつけられた。
もちろん気は失ってる。
しまった。
お金のことを聞くのを忘れた。
まぁ魔鉱が手に入ったからいいか。
どうせ魔鉱を買ったから手持ちが無いんだろう。
お金に付きまとう細かい魔力もこの部屋からはほとんど感じないしね。
俺は気を失ったリーダーの持ち物から冒険者カードを見つけ出すとランクを確認した。
「Cね。予想通りだ。」
残念ながらステータスやスキルは表示されていなかった。
俺は魔鉱と小銭に金目の物を収納に入れると裏ギルドのアジトを後にした。
限られた枠内ではあるけど、気配等から相手のランクが大分わかるようになった気がする。
あとはカークの家か。
あれ?
場所を知らないぞ?
まぁ結構時間がかかっちゃったし、カークの家は明日でいいか。




