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王都で金儲け

 王都が近付くにつれて街道を行く馬車が増えてきた。

 カークの馬車はあれ以来見ていないから別の街道を行ったのか、それとも途中の村で泊まった時に抜かれたのかもしれない。


「やっと見えてきたか。」

「結構かかったね。」

「だから乗り合い馬車に乗りゃ良かったんだ。」


 俺達は徒歩で王都を目指していた。

 俺が途中まで転移で飛んだからだ。

 でも、普通は街から街への移動では乗り合い馬車を使うらしい。

 徒歩で街を出るのは近隣や街道を外れた場所で採集などを行う冒険者か、馬車に乗るお金もない貧乏人くらいらしい。



「ちゃんと着いたんだからいいじゃない。」

「まぁ、急ぐ旅でもないしな。」


 街道には案内看板など無いため、とっても道が分かりにくい。

 途中ですれ違う馬車に道を聞きながら来たからちゃんとたどり着いたけど、最短距離を歩いてきた自信はなかった。


 見えてきた王都はかなりの大きさだ。

 当然街としての規模もそうだが、王都を囲っている柵、というか壁もデカいし入り口の門もデカい。

 遠目から見てもかなりの大きさだ。

 その立派な王都の入り口ともなると、ちゃんと検問が設けられているようだ。

 馬車は検問待ちでかなり渋滞している。

 商隊の荷物の検閲にかなりの時間がかかるためだろう。

 しかし、徒歩の検問はそこまで混んでいない。

 精々乗り合い馬車から降りてきた旅人や冒険者が荷物を見せて通るだけだから、こちらの方がスムーズなのだ。


 荷物が少なすぎて検問で引っかかるという小さなアクシデントはあったけど、俺達は無事に王都に入る事が出来た。


「さて、まずは宿か?」

「俺は別行動ね。後で遠隔通話で連絡するから、そしたら合流しよう。」

「そうか。わかった。」


 王都はさすがにかなりの大きさだ。

 他の街とは違って大通りも馬鹿デカい。

 どこの路地を見ても露天等で人が溢れている。


 俺は出来るだけ人のいない場所を探すと『飛行』で飛び立った。

 もちろんバレないように透明になってね。


 王都の大通りは城を中心に東西南北に十字に延びているようだ。

 俺は空から見た全体図を頭に叩き込むと、王都にいくつもある出入り口を回った。

 もしも滞在中に何かがあっても、全ての出入り口に転移出来れば、すぐに逃げられる。

 俺だけなら何があってもどうとでも出来ると思うけど、ライアンとルークがいるから用意はちゃんとしておく。



 王都を空から回っただけでこの日は終わってしまった。

 王都がバカみたいにデカい上に出来るだけ街道の先に転移出来るように回ったから、時間がかかったんだよ。

 まぁ王都についたのも昼過ぎだったしね。



 次の日、ライアンとルークは東の・・何だっけ?

 えーと、東の国の情報を集めて回るらしい。


 情報収集は二人に任せて俺はまた別行動を取っていた。

 昨日のうちに空から回れるだけ回っておいた病院や魔力石屋を訪ねてお金を稼ぐつもりなんだ。

 何で必要になるかわからないからね。


 宿でライアンとルークと別れた俺は、早速自分に変幻魔法をかけた。

 これは昔、孤児院の建物に結界をかけた時に結界の魔力を隠すために使ったものと同じ魔法で、結界をかけた空間を外から見ると「いつも通り、自然に見える」という変わった結界だ。


 今回はこれを応用して、結界として空間に使うのではなく補助魔法のように自分にかけている。

 この魔法は魔力操作で発動しているため、呪文も魔方陣もない。

 完全に俺のオリジナルだ。

 残念ながら人に教えることは出来ないので発表は出来ない。

 する気もないけどね。


 変幻魔法はカークの街でも何度か試している。

 狙った姿に変化出来る訳じゃないため、会話に気を付けないと相手が混乱してしまって少しめんどくさいけど、なかなか便利なので身元を隠したい時によく使っている。

 みんなから見えなくなる透明化と違って見る人によって何に見えるかが変わるため、使い分けで言うと対個人用だと思う。


 自分に変幻魔法をかけた後は転移で魔力石屋と病院をバシバシ回っていく。

 昨日は気が付かなかった店が沢山あることに気が付いた時は迷わず入って魔力注入でお金を稼ぐ。


 一通り回った後は道具屋だ。

 毎日のように寝る前に作っていたので、もうかなり回服薬が貯まっているのだ。

 いくら収納魔法の容量が大きくても、要らないものを入れておくつもりはない。

 俺はいくらでも魔法で治療が出来るんだ。

 釣った魚と違って基本的に自分の分はいらない。


 ちゃんと変幻魔法が切れていないのを確認すると、俺は今まで見た中で一番大きい道具屋に入った。


「こんにちは。白の回復薬を沢山売りたいんですが。」

「はっ?・・あぁ!これはこれは!わざわざ来ていただいて有り難うございます!」

 店主は突然貴族に訪問されたかのように頭を下げている。

 俺の言葉を聞いて貴族が一番「自然」だと思ったんだろう。


「えーと、頭を上げろ。売りたいのはこれだ。見てくれ。」

 俺は自然な貴族の話し方なんて知らない。

 変幻魔法を使う時の基本通り、出来るだけ口数を少なくして対応する。


 カウンターの上には俺が置いた白の回復薬が5個並んでいる。

「では、失礼します。」

 店主は回復薬を1つずつ手に取ると、鑑定魔法をかけているようだ。

「確かに。全てレベル4の白の回復薬です。」

「1個いくらだ?」

「そうでございますね。白のレベル4なので1つ金貨2枚になります。」

 売る時に目立ちすぎないように、回復薬はレベル4で作ってあるのだ。

 回復薬は持ってるだけで価値が上がるため、売値と買値の差がほとんどない。

 今回は少ないものの、漬け込み度が考慮されてないからそれが店の取り分とも言える。


「そうか。もっとあるが、いくつまで買える?」

「それは有り難うございます!いくつでも買わせて頂きます!」

 といって店主が頭を下げてくる。

 いくつでもと言っても限界があるだろ。

 このレベル4の回復薬だけでも百個近くあるんだぞ。


「百個あっても買えるか?」

「ひゃ、百個ですか!?」

 やっぱり驚いてる。

 無理だろ。


「もちろん買わせて頂きます!」

 あら?

 買えるらしい。

 じゃあ買い手はちゃんといるのか?

 売れ残っても売値が高くなるだけだから問題ないのかな?


 俺はお言葉に甘えて持ってる回復薬をどんどん収納から出してカウンターに並べる。

 明らかに懐に入る量じゃないけど、今の俺はどう見えているだろうか?

 デブか?それとも大きなカバンでも見えてるのか?


 しかし、これだけの量を一軒で捌けるとは思っていなかった。

 王都の道具屋を舐めてたかもしれない。

 ついでだから聞いてみよう。

「ちなみにレベルがどれくらいまでの回復薬まで買ってくれるんだ?」

「当店ではどこまででも買わせて頂きます!」

 だから限度があるだろうが・・

 買うけど金はないとか言わないだろうな?


 俺は収納からレベル10で作った白の回復薬を取り出すと、店主に渡した。

 レベル10とはいえ、集団魔法で作れないこともない。

 白の属性で作った人が過去にいるかは知らないけどね。

「これはどうだ?」

「お預かりします。」

 店主はすぐに鑑定している。

「これはっ!よくぞこれほどの物をお持ちで!もしやこれを売って下さるのですか!?」

 買えるらしい。

 道具屋ってそんなに儲かるのか?

 俺は掛け売りとかカード払いとか受け付けないぞ?


「見たことあるか?」

「まさか!ですが、聞いたことはあります!もしも売ってくださるならこちらのレベル4の回復薬も合わせて、金貨400枚で買わせて頂きます!」

 金貨400枚・・大金だな。

 レベル10相当の白の回復薬は相場が金貨二百枚なはずなので、計算してみるとそんなにお得な感じはしないんだけど、まぁいいか。

 しかし、そんなお金を店に置いてるのか?

 って言っても銀行なんてないだろうな。


 金貨400枚で売ると伝えると、店主は店の裏から箱を持ってきた。

 その箱の中から巾着袋みたいなものを4つ取り出すと俺に渡してくる。

「お確かめください。」


 確めるって言ってもどうすんだ?

 試しに袋に鑑定魔法をかけてみると『金貨百枚』と文字が浮かんできた。

 自分の持ってる金貨数枚に鑑定魔法をかけてみるが『金貨』としか浮かばない。

 どうやら袋に魔法がかけてあるみたいだ。

 金貨百枚ともなるとこんなところに金をかけるのか。

 一万円札の帯と同じなのかな?

 大したものだ。


 レベル10の回復薬を何個まで買うか聞いてまた「いくつでも!」と言われたので、百個でもか?と聞いたら「さすがにそれは・・」と言われた。

 どうやら一度に20個までなら買えるらしい。

 他にもレベルが違えば一緒に買ってくれるし、もっとレベルの高い回復薬も買うらしい。


 正直、王都を舐めてました。

 すみません。


 さて、大金持ちにはなったけど、特にすることはない。

 情報収集はライアン達がやってるはずだ。

 暇なので屋台を巡って美味しいものを食べては焼く前の状態で売って貰って収納にしまっていく。

 それに飽きたので宿に帰って回復薬を沢山作っていたら、そろそろ夕飯という時間にライアンとルークが戻ってきた。


「さて、どうする?」

「俺はどっちでもいいぜ?南へ行くのは無理だが、東でもここで待機でもどっちでもな。」

「しかし、ロイ君にだけ旅をさせる訳にもいくまい。ロイ君が南へ行くと言っても我々は東へ進むべきだろう。」

「でも、ロイが南に抜けてから転移で合流って手もあるだろ?」


 どうやら俺が見えていないらしい。

 よく考えたら変幻魔法を解除するのを忘れていた。

 いないのが自然だと思うとそう見えるのか。

 俺は今、壁か?


「おかえり。ライアン。ルーク。」

「おわっ!なんだよ!いたなら言え!」

「気付かなかったな。どこに隠れていたんだ?」

 話しかけると見えるのか。


「魔法でね。隠れてたつもりはないんだけど、脅かしちゃったか。」

「なんでもありだな・・」

 そんなことはない。


「それより、情報収集はどうだったの?東の・・何とかって国の様子はわかった?」

「あぁ。どうやら野蛮、というか下品というか・・横暴?セコい、というよりはがめつい・・」

 どうやら良いイメージは全くない国らしい。

 やっぱり山賊みたいな国なのかな?


「そんなにイメージが良くないなら、やっぱり俺が南に行って転移で連れてった方がいいんじゃない?」

「ルークが譲らねぇんだよ。ロイ君が進むなら私も進む!ってよ。」

 ライアンがルークのモノマネ付きで言ったことはルークの口からも何度も聞いている内容だ。

 最初に別行動を言い出したのはルークなのに、突然張り切って付いてこようとしてる。

 いや、俺に張り合ってるのか?

 俺が進まなきゃ諦めるみたいだし。

 たぶん理由はライアンが魔物退治に張り切ってるのと似たようなものだろう。


「まぁ冒険者が旅をするのを止めはしないけど、危険はないの?」

「情報を聞く限りでは騙されることは多くても襲われたという人は多くない。それはこの辺りと変わらないだろう。」

「そっか。でも万が一ということもあるし、南からのルートを回るのも有りなんじゃないかな?急がば回れって言うでしょ?」

「聞いたことがないな・・」

 だよね。

 俺もこの世界では聞いたことないよ。


「ロイ君は南を行くといい。万が一南がダメだった時でも私達が東を進んでおけば無駄にはなるまい。」

「まぁ、進んだ街道さえわかれば追い付くのは簡単だけどさ。」

 一人なら『飛行』で徒歩や馬車とは比べ物にならないスピードで進める。

 そもそも3人で進むのがとてつもなく無駄なんだ。


「どうしても行くって言うなら進む街道を決めてから出発だね。街道がわからないとさすがに探せないからさ。」

「わかった。では明日からは街道の情報を集めてみよう。」


 俺は何があっても転移で逃げられるから平気なんだけど、二人は大丈夫かな?

 まぁ冒険者としては先輩だし、年上の男の心配をするのは失礼な気もするな。

 大丈夫だって言うなら任せてみようか。


 俺が人の心配をするとは、大人になったもんだ。


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