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さらばカーク

 俺はライアンとルークの3人でのんびりと王都に続く街道を歩いている。


「じゃあレベルはそんなに上がってないんだ?」

「あぁ。そんなにすぐに上がるものでもないからな。レベルが2つ上がっただけでも大したものなんだ。」

 ライアンとルークはロックタウンでの討伐で、それぞれレベルが2つ上がったらしい。

 今ルークのレベルは26だって。

 年齢的にはもっと上かと思ったよ。


 あれ?

 そういえば、ルークの年っていくつだ?


「ねぇ、ルークって今何歳?」

「今年22になる。」

「はぁ!?」


 嘘だろ!?

 そんなに若かったのか?

 初めて会ったのは確か3年以上前だけど、その時にはすでにおじさんだと思ってたぞ。


「知らなかったのか?人にはよく貫禄があると言われるな。」

「貫禄は、あるよね・・」


 まさかライアンの3つ上だとは・・

 予想外だな。


 そのライアンは今、先頭を歩きながら周りをキョロキョロと見て魔物を探している。

 ライアンもゴーレム討伐でレベルが2つ上がっている。

 今は19だ。

 ちなみに俺のレベルも19。

 ライアンと同じく、ゴーレム討伐でレベルを上げた俺にレベルで追いつかれたのだ。


「手を出すんじゃねぇぞ!」

「それはさっきも聞いたよ。」

 ライアンは魔物を見つける前からかなり意気込んでいるようだ。


 レベルの上下は強さの上下には直結しない。

 レベルは実績だ。

 その実績で俺に追い付かれたのがライアンのやる気スイッチを押したらしい。

 さっき俺の冒険者カードを見て目の色を変えていた。


 これは良いことだと思う。

 まぁ俺の実績は『成長補正』があるから反則なんだけどね。

 ライアンがやる気になるならわざわざ言うこともないだろ。



 その後、街道から離れた魔物の気配にも反応するライアンのせいで、なかなか王都には近付けなかった。

 ちょっとやる気がウザい。


「ライアン。いい加減にしろ。」

 ルークがライアンに注意した時、後ろから一台の馬車が近付いてきた。


「どけぇ!道をあけろ!」


 大型の高そうな馬車が街道を駆けてくるのが見える。

 街道は当たり前だけど車道も歩道もない。

 場所によっては馬車が来たときに人が道を譲る必要もある程度には狭い。

 その狭い街道を丈夫そうな馬車はかなりの速度で飛ばしている。

 近付くにつれて、馬車に施された綺麗な装飾が見えてくる。

 あんな馬車に乗れるのは貴族だけだろうね。


「なんだろ?急いでるのかな?」

「さあな。」

「貴族だろ?野宿をしたくないとかそんな下らない理由じゃねぇのか?」


 ライアンは貴族が好きじゃないのかな?

 まぁ貴族が好きなのは商人くらいか。


「どけと言っとるのがわからんか!」


 もう退いてるだろ。

 俺達は3人とも街道の端に寄っている。

 ここは王都に近いこともあって街道はそこそこ広い。

 端に寄っているので馬車も十分に通れるはずだ。


 スピードを落とさずに馬車が横を通りすぎる。

 すれ違い様に御者をしている兵士の声が耳に入った。


「平民が偉そうに道を歩くな!」


 ほぉ。

 お前は平民じゃないのか?

 もしかして騎士爵ってやつだろうか?

 平民とどう違うんだ。


 色々と言いたいことはあったけど、ライアンの出した大声で言う気が無くなった。


「貴族ごときがデカい面して道を使うんじゃねえよ!」


 うん。

 スッキリした。

 俺が言ったんじゃないけどね。


「ライアン。よく言った!」


 俺と褒められて照れるライアンを見てルークが「先生は孤児院でどんな教育を・・」と呟いている。


 ルーク。

 それは違うぞ。

 残念ながら先生の教育ではない。

 昔、福沢諭吉という立派な人が居てだな・・



 その時、すれ違った馬車をすぐに見ることになるとは誰も思っていなかった。


「何で止まってんだ?」

「トイレじゃないの?」


 一時間も歩かずに先程の馬車が見えてきた。

 どうやら道の真ん中に止まっているようだ。

 まだ少し距離があるのでよくは見えないけど、特に魔物に襲われている様子はない。


「やっと来たか!」


 御者の隣に座っていた兵士が話しかけてくる。

 貴族なのに護衛の兵士は二人だけか。

 貧乏貴族かな?

 どうやら俺達を待ってたらしいけど、ライアンの声でも聞こえたのかな?

 まさかね。

 ルークが少し怯えているけど、貴族に嫌な思い出でもあるんだろうか?


「お前ら!さっさと手伝え!」


 ボーっとしていたら兵士が偉そうに命令してきた。

 馬車の様子は近付くにつれて見えていた。

 車輪がはずれているのだ。

 替えの車輪なのか、車輪に傷は無かったのかそこにはまだ車輪が転がっている。

 貴族の馬車だけあって車輪が一枚外れたくらいで倒れたりはしないようだけど、このまま走れば他の車輪も壊れるのはわかりきっている。


「無茶な走り方をするから。」

「全くだ。」

 俺とライアンの呟きにルークは表情をピクピクさせて反応している。


「何をしている!」

「早くしろ!」

 兵士達がギャーギャー言ってるが、特に気にならない。

 自業自得だろう。

 その時、馬車の扉が開いて中から偉そうなおじさんが出てくる。

 この世界の人間にしては小太りだけど、どうやらこの人が貴族のようだ。

 高そうな布にはこれでもかと刺繍がしてあって、どうみても一般人では買えない高級な服だとわかる。

 ちなみに高そうだけど、趣味は悪い。


「おい!まだか!」

「はっ!カーク伯爵、申し訳ありません!」

「すぐに!」

 といって兵士達が俺達をチラリと見てくる。

 たぶんわざと名前を聞かせて、言うことを聞かせようとしてるんだろう。

 でもそんなことは全く意味がない。

 乗ってるのが貴族ってことくらいはとっくにわかってる。


 しかし、カークってこいつか。

 カークの街の真ん中にデカい屋敷があったからどんなやつが住んでるのかと思ったら、普通のおじさんだったらしい。

 偉そうにしてるけど、威厳も何もない。

 服が一緒ならまだチャックの方が迫力がありそうだ。


「パーティーがあるのだ!貴様のせいで遅れたらどうなるか、わかってるだろうな!」

「あなた。大声を出すのはやめてください。」

 馬車の中から女の人の声が聞こえてくる。

 姿は見えないけど、どうやら奥さんみたいだ。


「おぉ、すまんな。しかし、急がねばなるまい?」

「それはそうですが、それよりも私は私が乗っている馬車を下民などに触って欲しくありません。汚らわしいですわ。」

「それではどうするというのだ?時間がないのだぞ。」

「わかっています。せめて下民に手袋でもさせてくださいな。少しはましになるでしょう。」


 酷い言われようだな。

 ライアンはずっとムッとした表情をしている。

 ルークはライアンが暴言を吐かないかとソワソワしてる様子だ。


「おい!いつまで突っ立ってる!伯爵様の前だぞ!跪け!」


 立ったままの俺達に兵士が怒鳴るけど、ライアンはずっとムッとしていて反応がない。

 あまり兵士と話す気はないらしい。

 じゃあ俺が。


「手伝って欲しいの?それとも跪いて欲しいの?」

「なんだと!?」

「どっちでもいいけど早くしてよ。こっちは暇じゃないんだ。あぁ、やるとは言ってないぞ。俺に下らない命令をしたいならそれなりの金を積め。金額によっては考えてやってもいいぞ。」


 もちろんいくら積まれてもこんなやつの命令なんか聞く気はない。

 普通にお願いされたらタダで助けて上げるけどね。

 ルークは開いた口が塞がらないみたいだ。

 ライアンは・・いつの間にか後ろに下がってた。

 さすがライアン。


「ぶ、無礼者!斬り捨てろ!」


 カークは顔を真っ赤にして怒っている。

 すみませんね。

 無礼には無礼を、がモットーなもので。


 兵士はまさか子供に突然暴言を吐かれると思ってなかったみたいで反応出来ていない。


「聞こえんのか!斬り捨てろ!」

 カークの声にやっと反応して兵士二人が剣を抜く。

 実は試したい事があったんだ。

 この兵士達はそんなに強そうな気配もしないし、調度いいから試させて貰おう。


「これだけのことをしたんだ。お前達も文句はないな?」

 兵士がライアンとルークに向かって話しかける。

 俺の保護者か何かだと思ってるんだろうか?

 それは不味い。


「そいつらは関係ないぞ。ただの護衛だからな。」

 無関係って訳にはいかないけど、一応予防線は張っておく。

 別に兵士も貴族も殺す気はないからね。


「なるほど。覚悟は出来てるな。」

 俺は木刀を腰から抜くと正眼に構えた。

「どうぞ。」


 兵士が時間差で斬りかかってくる。

 子供に二人がかりなのはご立派だが、完全に俺を舐めてるので連携も何もない。

 俺は兵士が振り下ろした剣に木刀をすくい上げるように叩き付けた。

 そして後ろから続いていたもう一人の兵士の手に持つ剣を横一文字に斬り裂く。


 カランカラン


 二本の剣が鍔から先を斬り飛ばされて地面に落ちた。

 兵士達は一気に軽くなった剣を目で見て動きを止めた。

「はっ?」

「な、何だこれは!貴様!何をした!」


「別に。ナマクラなんだろ。」

 俺は木刀を腰に差した。

 これ以上はやる気がないという合図だ。

 それがわかったのか、兵士二人は体から少し力を抜く。

 しかし、何もわかってないバカがまだいた。


「何をしている!さっさと殺せ!」

 カークはまだ顔を真っ赤にしている。

 血管に悪そうだな。


「お願いするなら助けてやるぞ?どうする?」

「誰が下民に命乞いなどするか!」

 バカはまだわかってないみたいだ。

 俺は殺す気なんかない。

 助けるとは馬車のことだ。


「じゃあ元気でね。大声出してるけど、魔物には気を付けた方が良いよ。」

「ぐぬっ!」


 もう用がないので俺達はこの場を去った。

 結局カークは見えなくなるまでずっと俺達に罵声を浴びせていた。

 振り返るたびに黙るから面白かったけどね。



 頃合いを見てライアンが話しかけてくる。

「さっきのはどうやったんだ?」

「さっきのって?」

「剣を木刀で切ったやつだ。」


 あれか。

 あれはただの『纏い』だ。

 アイアンゴーレムを切り裂いた時に思ったんだ。

 木刀だけじゃなくて体にも一緒に『纏い』を使って強化したら鉄も楽に切れるんじゃないかってね。

 で、試してみたわけ。


「あれも『纏い』か。凄いな。」

「すごいでしょ。」

「待て!そんなことよりも話すことがあるだろう!」

 ルークが何やら怒ってるみたいだ。


「なぜあんなことをした!黙って言うことを聞いていれば問題は起きなかっただろう!」

「問題って何?」

「あの貴族がこの先、黙ってると思っているのか!?」

「じゃあ返り討ちにすればいいじゃない。」

 ライアンも頷いている。


「しかし、我々にはそんな力はない。それに!貴族に歯向かったら死刑なんだぞ!」

「だから護衛って言ったでしょ?何か言われたらカークの街で雇われただけって言えばいいじゃん。そうだな、報酬は金貨一枚。高額だったから事情も聞かずに仕事を受けたって言ってよ。」

 適当にでっち上げた話だけど、これでたぶん通る。

 冒険者でも俺とこの二人は同じチームになったことも同じ仕事をしたこともない。

 だからギルドの記録を確認しても問題にはならないはずだ。

 それにルークにはまだ金貨一枚を貸したままなんだ。


「俺は貴族に馬車の修理の仕事を依頼されて、それを断っただけだよ。それに、その後のことは正当防衛でしょ?誰も傷つけてないし、もしもあれが問題になるって言うなら王様でも何でも相手になるよ。」

 ルークは黙ってしまった。

 言い返せないのか、それとも正論を言われて自分で納得したのかもしれない。


「今回はロイが正しいと思うぜ。」

「先生は本当にどんな教育をしているんだ・・。」


 だから、それは先生じゃないってば。

 あれ?

 じゃあライアンはなんでここまで貴族を嫌うんだろ?

 嫌な思い出があったのはライアンだったのか?


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