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あっけない別れ

 俺はただの鉄になったアイアンゴーレムを回収すると、周りにゴーレムがいないのを確認してから街に戻った。


 街の前まで来ると、戦っている冒険者が少し増えていた。

 調度交代の時間なのか、最後だからみんなで畳み掛けるのかもしれない。


 双子狼は1体のロックゴーレムと戦っていた。

 サンドゴーレムはいないようなので、たぶんもう倒したんだろう。

 見た感じだとまだまだ戦いが続きそうだ。


 援護として双子狼に補助魔法をかけてから街に入る。

 攻撃力を上げる魔法をかけたので、そのうち戦いは終わるだろう。


 俺は街に入って誰もいない路地で透明化を解くと、街の中心を目指して歩き出す。

 ライアンを探すために使った感知魔法の反応はそちらの方から出ていた。


「ライアン。」

 俺は井戸のところで座り込んで休んでいるライアンを見付けた。


「おっ?ロイか。どうした?」

「どうしたじゃないでしょ。いつまでも遊んでないで早く帰ってきなさい。」

 俺に母親みたいなことを言われてライアンが苦笑いしている。


「そうは言ってもなぁ。徴兵じゃ仕方ないだろ?」

 おや?

 どんなに嫌がってるかと思ってたのに、めんどくさがりのライアンでも仕方ないで済ませるのか。

 日本人の感覚だったら従わないやつがいっぱいいると思うぞ。

 俺も嫌だし。

 これはライアンを見直すべきか?

 まぁ元々能力は高く評価してるんだけどね。



 俺とライアンはルークがいる宿に移動した。

 ルークが怪我をして休んでると聞いたのでちょっと心配したけど、ただの捻挫だった。

 ロックゴーレムの振り下ろした拳を盾で受け止めたら足を挫いたんだって。

 色々間違ってると思うぞ。

 俺が言うことではないけど。


 ルークを治療してお互いに状況を伝えあった。

 まぁ大した内容じゃなかったけどね。


「もうすぐ終わるなら、後は報酬を受け取って帰るだけだな。」

 どうやらライアンはシャサ達を助けに行く気はないらしい。

 交代制なんだから当たり前か?

 反対にルークは行く気みたいだ。

「私は討伐に参加する。」

「やめとけよ。今来てるので終わりじゃなかったらどうすんだ?」


 なるほど。

 ライアンの方が正しい意見だと思う。

 敵に援軍でも来たら疲れてるところを攻められることになる。

 それは避けた方が良いだろう。


 結局ルークも休むことになったけど、幸いなことにもうこの街で戦うことは無かった。

 少ししたら双子狼が戦いを終わらせて戻ってきたのだ。

 今は交代して少人数で見張りをしてるらしい。

 前衛はやっぱり少なからず傷付いていたので治療してあげた。


「いやー苦労したぜ。魔物相手に頑張って手加減する日がくるとは思ってもいなかったからな。」

 ピロークが苦労話を楽しそうにしている。


 俺がかけた補助魔法のお陰でロックゴーレムが簡単に倒せるようになったのはいいけど、不自然なほど強くなったので手加減していたそうだ。

 そんなに強くかけたつもりはないんだけどね。

 倒すと言ったゴーレムを何体か街に通してしまったからそのお詫びと、帰って来たという合図代わりにかけただけだし。

 まぁ喜んで貰えたなら良かったよ。


「手加減しすぎて攻撃を食らいそうになってりゃ世話ないぞ。」

「そうですよ。危なかったです。」

「エビルに助けて貰ったもんなぁ?」

「魔術師が剣士を力ずくで助けるところなんて初めて見たぞ。」

「お、おい。それは言わなくても・・」

「ハッハッハッ!」


 補助魔法は6人全員にかけたのでエビルやシャサも強化されてたはずだ。

 ピロークはそれでエビルに助けられたらしい。


 楽しそうだな。

 良いことだ。


 今日は見張り以外はみんな待機で、明日までゴーレムが現れなければ報酬を渡されて解放されるらしい。

 みんな上機嫌だけど、一応騙されたことにはそれぞれ思うところがあるみたいだ。

 でも、仕事の情報収集でミスをした自分達が悪い上に、報酬が多く貰えるんだからあまり文句はないんだって。

 逆に良い仕事があると言って誘ったのに騙されて申し訳ないって謝られたけど、なんで俺に?

 カークの街で待たされたからかな?



「それで、シャサ達はこれからどうするの?」

「そうですね。カークの街でそろそろ漁が再開されるそうですから、またそこで稼ごうと思います。」

 そういえばチャックがそんなこと言ってたな。

 双子狼は元々漁の護衛で稼いでたんだし、元に戻る訳か。


「ロイ君達はこれからどうするんですか?」

「さあ?どうするの?」

 ルークに聞いてみる。


「転移は・・まだか?」

「そうだね。毎日試してるけど、やっぱり弾かれるよ。」

「そうか・・」


 今、まだって言ったな。

 じゃあもう少しで帰れるのか?


「少しでも近付いた方がいいんじゃない?」

 転移のために距離を縮める必要はないけど、海を渡るかもしれないなら今のうちに近いところまで行きたい。


「そうかもしれん。」

「じゃあ目的地は東の海岸かな。」

 ここでシャサ達と向き合う。

 双子狼のみんなは表情が暗い。


「ということみたい。」

「東ですか・・」

 今いるのは大陸の北西の端だ。

 双子狼のみんなとはここでお別れになる。


「東はどんな国なの?」

「・・野蛮な国です。」


 あら?

 シャサにしては珍しい。

 もしかして、怒ってる?


「東には、気を付けて下さい。」


 どうやら別れを惜しんでくれたんじゃなかったらしい。

 冒険者なんだから別れには慣れてるか。


 でもこの国だって漁師は依頼料を払わないし、街ぐるみで冒険者を騙したりするし、結構酷いと思うけどね。

 それにギルドのオバサンとか性格酷かったし。

 確かに良い人もたくさんいるけど、東は野蛮っていうのはどーゆーこと?

 山賊とか多いのか?

 でもそれじゃ、シャサが何で国ごと嫌うのかわからないな。



 シャサ達は休みをとるために自分達の部屋に戻ってしまったので、俺は一度カークの宿に戻って、チャックに東の海岸を目指すかもしれないと伝えてみた。

「東か・・あいつらと関わるのはやめとけ。」

 チャックはそれだけ言うと厨房の奥に引っ込んでしまった。

 会計は明日でいいのか?


 しかし、みんな東か、東はって国の名前すら教えてくれないぞ。

 俺は東の海岸を目指すかもって言ってるだけだ。

 東にある国がダメなら南から回り込めばいいんじゃないのか?

 それとも東の海岸はその『東の国』とやらが全部抱え込んでるのか?


 みんなが知ってはいても教えてくれない状況にそろそろ飽きてきた。

 情報といえばギルド!ということで早速聞きに来た。


「イゴイスに行くならしっかり準備した方がいいですよ。」

 やっと名前を教えて貰った。

「みんながやめとけって言うんだけど、そんなに酷い国なの?」

「酷い・・かどうかはちょっと・・」

 と後ろにいるオバサンの方を見ている。

 オバサンの出身地か?

 職員の顔を見る限り、察しろって言いたいのかも知れない。

 そりゃオバサンは酷いかもしれないけど、だからって国も一緒とは言えないぞ?


 昔知り合いの外人が言ってた。

「俺達外人は、地元では生きていけないから日本にいる。地元の人間はこうじゃない。」

 ってね。

 なるほどって思ったよ。

 日本人だって海外に移住する人って変わってるもんね。

 というか、海外に移住する時点で変わってる。


 それに、オバサンの故郷だからってオバサンばっかりだったら・・気持ち悪・・


「・・ところで、みんな東はやめとけっていうけどさ、南から回り込めたりしないの?」

「南はもっとダメです!」

「・・そうなの?」


 ギルド職員は俺にこの大陸の地図を書いて見せてくれた。

 なんというか、西から一口かじった大きな饅頭のような形をしている。


「いいですか?この大陸の中心は大きな山脈なんです。」

 といって陸地の真ん中に大きな丸を書いた。

 西から食い込んでる海とほとんど接してるらしい。


「南に行きたければ、基本的には東から大きく山脈を迂回するしかありません。」

「でも、山越えとか、それが無理でも山脈の海沿いとかは進めないの?」

「海と山から竜に挟まれても生きて通れるなら大丈夫です。」

「竜に?挟まれるの?」

「はい。山脈は竜の巣です。海との隙間が狭いので海竜にも狙われるかもしれません。」


 そりゃ無理じゃね?

 俺だって海で釣りとかするけどさ。

 気配感知が使えるようになってからは海の気配を常に伺ってるからね。

 もちろん海竜が出たら逃げる気マンマンだ。

 あれ?

 竜が出る度に逃げればいいのか?


「ということで、Aクラスの冒険者でもなければ南から回り込むのは難しいですね。」

 Aクラスなら通れるのか。

 一人なら行けるかな?


 ギルドの職員はオバサンがいるせいで印象すらハッキリは喋れないみたいだから、ここでの情報収集はもう諦めた。

 近くに行ったらもっと詳しくわかるだろ。

 いざとなったら南回りで俺だけ行ってライアンとルークは転移で連れてくればいいし。

 っていうか東の海岸まで俺だけで行けばいいのか?

 その方が早い気がするな。



 ギルドを出た後は釣りをして時間を潰した。

 片手で鉄の塊を使って筋トレをしながらね。



 次の日、俺はみんなをカークの街に連れてきた。

 双子狼もカークの街で次の仕事を探すらしいから一緒だ。

 そしてライアンとルークに昨日考えてたことを聞いてみる。

 俺だけで東の海岸まで行った方が早いと思うけど、どうする?ってね。

 ルークには真っ先に反対された。

「子供だけに旅をさせるわけにはいかない。」

 ってさ。

 ライアンは何も言わなかった。

 たぶん付いてくるつもりなんだろう。


 想定通りだ。

 いない方が早いのは確かだけど、旅は道連れって言うからね。

 目的地がどんな場所かもわからないし、危険や面倒があったら別行動ってことで話はついた。


 これでやっと旅が出来るぞ。

 それにルビィの街にも近付く。

 チャックの宿で精算を済ませて、早速俺達は出発した。


 見送りをしてくれるという双子狼達に手を振りながら街道を進む。

 なんてことはしない。


 俺達は別れの言葉を言うと、王都に向かう街道の途中まで転移した。

 途中までランニングで来ていたのだ。

 旅はいいけど、無駄に歩きたくはないよね。




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