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護衛詐欺

 予定ではそろそろライアンとルークが仕事から戻ってくる。

 俺は宿屋の裏で久々にのんびりと木刀を振りながら今後のことを考えていた。


 ルークは出発する前に「今は出来ることがない」って言ってた。

 つまり、時間がたてば出来ることがあるのかもしれない。

 乗り気じゃないにしても1ヶ月もかかる仕事を受けたんだから、きっとすぐではないんだろうけどね。


 まぁいざとなったら『飛行』を使って海を渡って行けばいい。

 もしも空中に転移できるなら何日かかければ行けるかもしれないからね。


 とりあえず『飛行』は最後の手段として、今は自分を鍛えながら何が起きても対処出来る力を蓄える。

 目標はそこだ。



 相変わらず客の少ない宿は快適だ。

 どうやら少ないのは西の海岸で漁をしてないかららしいけど、そろそろ漁師小屋も復旧できるらしい。


 宿の方からこちらを覗く気配がする。

「おい、ロイ。」

「なんだチャック。」

 話しかけられるのはわかってた。

 気配感知は優秀だ。

 しっかりスキルを育てれば意表をつかれることはないだろう。


「お前が宿にいるとは珍しいな。ところで、お前の仲間っていつ帰ってくるんだ?」

「さあ?そろそろじゃないの?」

「こないだもそう言ってたろ。」

「こないだもそう聞いたからだよ。」


 もうライアン達が出発してから予定の1ヶ月は過ぎている。

 でも、予定の日数は過ぎてるけど、旅の予定なんて読めるものでもないだろう。

 馬車が壊れただけで何日ロスするかもわからない。

 天候にも左右される。

 これくらいの遅れでオロオロしてたらこの世界では生きていけない。


「遅れてるんだろ。なんだ?宿泊費を入れて欲しいのか?」

「違う。お前、仲間が東に行ったと言ってたよな?」

 言ったかな?

 東の街道を使ったとは言った気がする。


 チャックは俺が返事をしないのに焦れたのか、続きを話し出す。

「それで、東ってのは王都のことでいいんだよな?」

 東の街道は街を出てすぐに分岐してる。

 東にまっすぐ行くと、この国の王都がある。

 俺も数日おきに街道を進んでるから、商隊がランニングの邪魔をしなきゃもう着いてるはずなんだけどね。


「いや、違うぞ。二人は東の街道を使って北の山の向こうに行くと言ってた。」

「やっぱりか!」

 チャックが何かミスをしたような顔をしている。

「それがどうかしたのか?」

「いや、お前の連れは冒険者だろう?ロックタウンは今の時期に行っても帰れないぞ?」


 ロックタウンっていうのは北の山の向こうにある街の名前か?

 帰れないってどうゆうことだ?

 季節的に雪に覆われる訳じゃないだろうし。

 雪解け水で増水した川に阻まれて帰れないとか?

 まさか。

 だったら商人も行かないはずだ。


「依頼は護衛だろ?で、報酬は少し高めだったはずだ。あとは・・大人数だったんじゃねぇか?」

「確かに護衛って言ってたよ。報酬は知らないけど、俺達のチームだけで8人だ。他にもいるなら大人数かな?」

「いや、ただの商隊の護衛なら8人で十分に大人数だ。」


 チャックが溜め息を吐いた。

「・・騙されたな。」

「なんだと?じゃあ依頼は嘘なのか?」

「いや、依頼は護衛であってる。仕事は片道で終わりだ。報酬は向こうで往復分貰えるだろ。」


 意味がわからない。

 それは騙されてるのか?

 かなり良い仕事じゃないか。


「だけどな、しばらくは帰れないぞ?」

「はっ?」

「向こうで徴兵されるからな。」

「徴兵って・・はぁ?」


 この世界でいう徴兵とは、国や街の緊急時に冒険者を集めて防衛任務に着かせることだ。

 冒険者は徴兵の義務を負う代わりに全額ではないけど税金を免除されてる。

 徴兵されるってことは・・


「・・戦争すんの?」

「いや、相手は魔物だ。」

「意味わからん。ちゃんと説明しろ。」



 北の山の向こうにあるロックタウンは鉱山の街だ。

 ルビィの街と違って冬も雪に覆われることはないので、一年中良質の鉱石を掘り出している。

 そして、毎年今の時期に魔物に襲われる街でもある。

 原因はわからないけど、毎年魔物が大量発生して街に押し寄せてくる。

 そのため、街では毎年この時期に街にいる冒険者を徴兵して街を守らせているらしい。

 普通の徴兵と違ってロックタウンの徴兵では報酬が用意されるため、依頼と捉える一部の冒険者からは人気があるらしい。

 だけど、今年はカークの街で漁をしていないせいもあって、この辺り一帯の冒険者が少ないようだ。


 宿屋の主人にしてはいやに詳しいと思ったら、この辺の住人ならみんな知ってるらしい。

 しかもチャックも昔はよく徴兵に参加したから住人よりも詳しいんだって。

 元冒険者だったのか。


「それで冒険者を集めるために護衛の依頼を?」

「そうだ。毎年いくつかは出るがな。今年はかなり多めだったから相当足りないんだろ。」

「じゃあ商人ってのも嘘?」

「いや、それは本当だろう。商人にとっても自分の街だし、護衛の報酬の大部分は街から商人に払われるからな。雇えるだけ雇って街に送り込むんだよ。」


 なるほど。

 まぁ商人は悪人って訳じゃなさそうだ。

 なさそうか?

 毎年人を騙して街から金を貰ってたら、もう街ごと悪人な気がするな。


「ちなみに仲間のランクはどれくらいだ?」

「えーと、チームで言えばCかな。」

「Cか。ギリギリだな。」


 街を襲うのは毎年生まれたてのゴーレムの群れが数十匹。

 多い時には百匹を越えるらしい。

 とりあえずCランクならば生まれたてのロックゴーレムとは戦える。

 だけど、1体ずつならともかく、一度に数体相手するとなると倒せるかは怪しいらしい。

 しかもさらに格上のアイアンゴーレムが相手だとBクラスの攻撃力がないとダメージも与えられない。

 いつもなら人海戦術に訴えて叩きのめすらしいけど、今年は冒険者が集まるかわからない。

 かなり厳しいというのがチャックの予想だ。


「でも街には魔物避けの柵とかあるだろうし、魔法もかかってるんだろ?安全じゃないの?」

 この街にも柵はあった。

 あるのはここだけじゃないだろう。


「魔物避けってなんだ?柵はもちろんあるが、そんなの壊されたら終わりだろう?」


 マジか。

 こっちは魔法が進んでると思ってたけど、守る方は遅れてんのか?

 それは不味いな・・

 逃げ込む場所がなきゃ満足に休みも取れない。

 交代要員がいなきゃ尚更だ。


「とりあえず行ってみる。」

「今からか?護衛を雇って街に着く頃にはとっくに終わってるぞ。」


 まだ俺を金持ちのボンボンとでも思ってるのか?

 毎日部屋から転移してるのに、鈍いやつだな。


「大丈夫。途中までは転移で行くから。」

「はっ?転移?」

「あぁ。他のやつには内緒だぞ。終わったらまた来るよ。」


 冒険者だったなら説明しなくても転移を見ればわかるだろ。

 俺はチャックへの説明を放棄して転移魔法を使った。


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