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荒野のランニング

 久々にゆっくり寝れた気がする。

 朝起きた時に昼まで寝てしまったかと思ったほどだ。

 やっぱり魔力は使い切るに限る!

 あんなに気持ち良く寝れるなら毎日やろうかな?

 野営じゃないなら比較的に安全だし。

 レベル10の魔法を使えばすぐだしね。

 まぁすぐに回復しちゃうから眠いのも一瞬だけど。


 宿の一階に降りると、店内にはすでに俺の分の朝ご飯の準備が出来ていた。

 先に顔を洗ってから頂いた。

 そういえばこっちの世界に来てから一人でご飯を食べるのは初めてじゃないかな?

 まぁ少し味気ないけど、すぐに馴れるだろう。

 今日は食堂も一人だから淋しいけど、誰かがいたら居たで子供が一人だとめんどくさそうだな。



「おい、ボウズ。」

 店員のオジサンが話しかけてくる。

「何?」

「昨日の朝はあと二人いただろ。何で一人なんだ?」

 なかなかにめんどくさい質問だ。

 そういえば夜に受付してくれたのはこのオジサンじゃなかったな。

 いや、このオジサンは厨房担当か。

 エプロンしてるし。


 しかし、どう答えればいいんだ?

 本当のことを言っても補導とかされないだろうな。

 いやだぞ。

 知らない孤児院で二人の帰りを待つなんて。


「えーと、二人は仕事だよ。」

「仕事?お前を置いてか?」

 独り立ちした・・って言っても二人だし。

 俺が独り立ち?

 いやいや、それも不自然だ。


「別にあの二人は俺の保護者ってわけじゃないからね。別行動だよ。」

「何が別行動だ。」

 やっぱり信じない。

 まぁ俺だって立場が逆なら信じないけど。


「1ヶ月すれば帰ってくるよ。」

「1ヶ月!?その間ずっと一人なのか?」

「そうだけど、迷惑なら出てくよ。」

 もう朝ご飯は食べ終わったので席を立つ。

 泊まってた部屋に荷物もないし、このまま出ていこう。

 誰か呼ばれると面倒だ。


「待て待て!誰が出てけなんて言った!それで、1ヶ月分の滞在費はあるのか?」

「あるよ。自分でも稼げるから問題ないし。」

「そうか、稼げるか。」


 オジサンは鼻で笑いながら俺の言葉を繰り返した。

 どうやら強がりだと思われたようだ。

「まぁ聞け。いいかボウズ。連日で泊まったからうちは入れたんだろうけどな。普通はボウズみたいなガキが一人じゃ宿は泊まれないぞ?」

 なんだと?

 なんとなく予想はしてたけど、昨日が大丈夫だったからなんとかなると思ったのに。


「金を積めばなんとかなるでしょ?」

「どれだけ積む気か知らねぇが、金を見せれば付け上がるやつも多いぞ?強盗にでもあったらどうする?」

「結界を張って寝るから大丈夫。」

 昨日はやってなかったけど、今日からはそうしよう。

 昨日は魔力消費のための、魔法とか魔力を隠す結界しか張ってなかったのだ。

 久々の眠気に負けてしまったようだ。


「はっはっは!結界か!なるほどな!」

 絶対に嘘だと思ってるな。

 もういいや。

 めんどくさい。


「オジサンさ・・」

「誰がオジサンだ。俺はチャックだ。」

「じゃあ、チャック。別に迷惑をかけるつもりはないよ。もう出てくから安心して。」

「だから出てけなんて言ってないだろうが。」

 じゃあどうしろって言うんだ?


「1ヶ月だろ?だったらうちに泊まれば良い。」

「は?」

「別に事情なんて聞かねぇよ。うちは金を払って貰えればいいからな。」

 嘘をつくな。

 さっきこっちの事情を聞いたばっかりだろ。

 もう大体話し終わったぞ。


「まぁそんな目で見るなよ。わかった。じゃあ後払いでいいぞ?」

「後払い?」

「ああ。1週間でも1ヶ月でも好きなだけいろ。でも居た分は払えよ?後払いだから長期割引はなしだ。どうだ?他の店に倍額出すよりは安いぞ?」

 別に倍でもいいけど、めんどくさいのはやだな。

 夜は結界を張るつもりだから正直どこでもいい。

 流石に1ヶ月も野宿するのは嫌だけど、ベッドで寝れるならどこでも一緒だ。

 だったらここでもいいかな。


「わかった。しばらくここに泊まる。」

「よっしゃ!そうこなくちゃな!」


 営業トークだったのか?

 だったらもっと上手くやれよ。

 そんなんだから俺しか客がいないんだよ。


 宿を出ると俺は道具屋に向かった。

 シャサに貰った薬草で回復薬を作る準備のためだ。

 魚ばっかり釣っててもしょうがない。

 俺が目指してるのは漁師じゃないからね。


 道具屋とは、乱暴に纏めると冒険者等が使う物で武具以外を取り扱う店だ。

 それぞれ良いものを安く買いたければ専門店に行った方が良いけど、まとめて買い物を済ませたければここにくればほとんどの物が揃う。

 仕事が急に決まる冒険者御用達の店である。


 昨日は保存食を買いにきたけど、ルークの買い物が早すぎてゆっくり見れなかった。

 だが、ここに必要なものがあるのはシャサから聞いて知っている。


 店内に入ると、やる気のなさそうな店主の『変な物』を見るような視線を掻い潜って店内を進む。

 まずは回復薬が置いてある棚だ。


 回復薬はすぐに見付かった。

 高い商品だけあって目立つところに置いてある。

 その回復薬に鑑定魔法をかけてみる。

 まずは端っこの青いやつだ。


『回復薬(青2)

 漬け込み度152』


 と出た。

 シャサに習った通りだ。

 これは青、つまり水属性の魔力でレベル2の治療魔法をかけた回復薬ってことだ。

 魔力の属性は何でも良いらしい。

 自分の魔力と同じ色の方が良いとかいう人もいるらしいけど、差を感じる機会がほとんどの人にないため、実際のところはわからない。

 もちろん白の魔力は別格だけどね。


 漬け込み度の進み方は一個一個違うけど、平均的にみると大体1年で100増えるらしい。

 回復薬は漬け込んだ時点から薬草の効果でレベル1くらい効果はアップするし、漬け込み度100ごとにレベル1くらい効果が上がるという目安でいいらしい。

 つまりこの回復薬だと、レベル4.5くらいの治療魔法に相当する。


 魔法と違って薬なら傷口に集中的に使うのも楽だし、もちろん飲むこともできる。

 効果も高いし、小分けにも出来るので使い勝手が良いのだ。


 この回復薬の値段は銀貨30枚だ。

 ものすごく高いと思う。

 まぁ相場を見にきたんだ。

 そうゆうもんだと納得するしかない。

 続いて一番高い回復薬を鑑定してみる。


『回復薬(赤3)

 漬け込み度420』


 こちらはレベル3の魔法を4年以上漬け込んでるらしい。

 治療魔法のレベルで言うと8ちょっとってところか。


 値段は金貨5枚。

 バカみたいに高い。

 なんだこれは?

 何かの冗談か?

 売る気ないだろ。


 やる気のなさそうな店主に話しかけてみる。

「すみません。これは非売品ですか?」

「何言ってんだい。値札が付いてるだろ?商品だよ。」

 やっぱり商品なのか。

「これ、売れます?」

「売れるに決まってるだろ。売れない物を置いといてどーすんだい。それより、何も買わないなら出ていきな。」


 買いますとも。

 回復薬を作る為の道具と、薬を入れるためのビンを10個くらい売って貰った。

 その後でまた色々聞かせて貰った。

 流石に商品をちゃんと買ったので、きちんと説明してくれた。

 これでちょっと曖昧だった回復薬の作り方もバッチリだ。


 店を出ると人のいなそうな路地に入ってすぐに転移する。

 飛んで来たのは最初にシャサに会ったところだ。

 何の目印も無いところでもちゃんと転移出来るんだな。


 そこで準備運動を始める。

 今日は久々にトレーニングをするつもりなんだ。

 しっかりと筋肉をほぐした後でゆっくりとランニングを始める。

 荷物も何もないのでかなり身軽だ。

 向かう方向は北。

 山の方向だ。

 シャサにも聞いたけど、道具屋の店主に聞いた限り薬草が生えてるところはこの辺りだと北の山の辺りだけらしい。


 ランニングと言ってもかなりの荒れ地なので、そこまでのスピードは出ない。

 それでもすっごく鍛えられそう。

 そもそも剣術や日々のランニングをこなしてきたから走れるのだ。

 こんな岩だらけのところは日本にいた頃の俺だったら、手をつきながらゆっくり歩いて進んでると思う。


 荒れ地に慣れてきたところで次の段階に進む。

 ランニングを続けながらの魔力操作だ。

 以前は街中だったのでただ体の周りを動かしてるだけだった魔力球を、そこら中に放つ。

 といってもちゃんと狙っている。

 魔力球を使ってランニングの邪魔になりそうな石を退けて岩を砕くのだ。

 そしてランニングのスピードを上げる。


 昨日寝る前に考えたこのトレーニングは、すぐに失敗だとわかった。

 魔力球で生じる砂埃が酷すぎるのだ。

 岩を砕いた後なんて前が見えなくて危なすぎる。

 感知魔法は常に発動してるので岩から跳んだ先が魔物の巣、なんてことはないけど、足元が見えない荒れ地のランニングは十分に危ない。

 これではスピードが上げられない。


 しょうがないので広範囲風魔法のウィンドを常に発動することにした。

 感知魔法と風魔法を使いながら魔力球を放つ。

 中々難しいけど、良い練習になる。


 魔力の操作に集中して精度が高くなるに連れて、ランニングのスピードも上がっていく。

 もうほとんどダッシュみたいな速度が出ている。

 俺はやはりやれば出来る子だったようだ。


 調子に乗っていたら小高い丘を走り抜けようとして失敗した。

 丘の向こうは下り坂だと勝手に思っていたんだけど、先は谷と呼べそうな深いクレバスになっていたのだ。

 しかも浮かれていた俺は、クレバスに気が付いた時には丘の上からジャンプしていた。


「やばっ!」

 咄嗟に作った魔力球を足場にしてクレバスの向こう側に跳ぶ。

 ギリギリ崖に手がかかった俺は崖をよじ登った。


「うわ~、死ぬかと思ったぞ・・」

 まぁ結界を張れば無傷だろうし死ぬことはなかっただろうけど、物凄くビックリした。


「ちょっと休憩するか・・」

 調度この先に魔物と思われる気配がある。

 走り抜けようと思ってたけど、魔物が移動するまで待っていよう。


「しかし、魔力球って足場にできたのか。

 咄嗟にやったけど、失敗してたら自分の魔力で吹っ飛んでたんじゃないか?

 まぁ、吹っ飛んでもクレバスは越えられたけどさ。」


 まったく、危ないところだった。


 心臓の鼓動が収まるまで待ったけど、魔物がいなくなる気配がない。

 少しずつ動いてるようだけど、もう少しかかりそうだ。


「暇だな。釣りでもするか?」


 何かやることはないかと考えていたら、昨日宿で冒険者カードを確認していないことを思い出した。

 早速収納からカードを取り出す。

 今は依頼も受けていないので、裏表両方でも名前しか文字は書かれていない。


「念じるんだっけ?」

 全部出ろ!と念じるとすぐに文字が浮かび上がってくる。

 魔力も使わないようだ。


「これは便利だな。」

 カードにはこう書かれてあった。



『ロイ レベル11 B

 所属 ニート B


 ステータス

 攻撃力 C-

 防御力 A+

 素早さ C

 知力 B-

 魔力 S


 スキル

『纏い レベル8』『二段ジャンプ』『魔力操作 レベル8』『魔力回復』『無詠唱』『物理耐性 レベル2』『環境耐性 レベル1』『状態異常耐性 レベル1』『魔力感知 レベル8』『並列思考 レベル4』『成長補正 レベル5』

 』


「はぁ~?」

 もう突っ込みどころが多くて何から言ったらいいのかわからない。

 とりあえず、魔力がSっていうのはまぁ納得かな。

 魔力量はあきらかに周りのレベルと比べても飛び抜けてるからね。

 攻撃力ってのは多分物理攻撃のことだと思うけど、そうなら低いのは子供なんだから当然だ。

 素早さは・・素早さはある方だと思ってた・・。


 しかし、耐性ってなんだろう?

 免疫力みたいなもんか?


 そういえば思い返してみると、俺は怪我も病気もしたことがない。

 少なくともロイから俺になってからは一度もない。

 森でのランニング中に魔力の操作に気がいって木に突っ込んだことがあったけど無傷だったし、剣術の稽古でもアザ一つ作ったことはない。

 いや、稽古に関しては先生の手加減のお陰だと思うけどね。


 でもこれ、怪我が物理耐性で病気が状態異常耐性ってことか?

 じゃあ環境は?

 水の中でも呼吸できるとか?

 なんじゃそりゃ。

 それと、『成長補正』って・・


 そこで俺は自分がこの世界に来る直前に自称神様のディオに言ったことを思い出した。

『元気で丈夫な体、これは譲れない。』

『成長できるか不安だ。』

 確かこのようなことを言ったはずだ。

 そしてディオは俺に『大丈夫』と言った・・はず。


 じゃあ、これはディオがやったんだろう。

 どの程度効果があるのか知らないけど、神様がやったことだ。

 結構な御利益があるんだと思う。


 ディオのやつ・・

 ん?

 この場合は怒るところなのか?

 感謝じゃないか?



 でも、このステータスって人に見せても大丈夫かな?

 化け物扱いされない?

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