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お金はあるけど貴族じゃないよ

 俺はライアンとルークに宿の一階にある食堂でご飯を食べさせながらお互いに報告をしていた。


「金貨3枚だぁ~!?」

「うるさいよ。」

「黙れ。」

 ルークにも怒られてやんの。


 まずは食事を食べながら俺が何をしていたかをライアンとルークに話した。

 俺は昼間に屋台でつまみ食いをしたので、軽めの食事だ。

 ライアンはステーキを頼もうとしてルークが止めたので、二人は肉も入ってる具沢山のスープを食べている。

 別に酒も飲んでいいと言ったんだけど、やっぱりルークに断られた。

 人の金で無駄遣いはしない主義のようだ。


「それで?そっちはどうだったの?」

「ギルドでも色々と聞き込みをしてみたが、双子狼から得た情報と大差なかったな。一応追加の情報もある。」


 二人が得た情報はこうだ。


 ・街の両替商でも俺達の硬貨は見たことがないらしい。

 ・この大陸に名前はないか誰も知らない。

 ・この大陸の他に大陸はない、もしくは見付かっていない。

 ・ここは大陸の北西らしい。

 ・大陸の周りは水竜の巣だ。


「ということは?」

「ああ、他の星なんてことはないだろう。」


 流石に俺もそう思う。

 とりあえず、水竜の巣に囲まれてる大陸なんて聞いたことがない。

 おそらく、ここは東西南北の4つの大陸の中心、魔の海だ。

 つまり魔大陸ってことになる。


「大陸があったんだね。」

「あるという噂だけなら聞いたこともあったがな。」

「言葉が通じるのはなんでだろう?」

「わからんが、昔は交流があったのかもしれん。」


 ディオの手抜きじゃないかな?

 まぁそんなことを言っても誰も信じてくれないと思うけどね。


 ライアンがスープにがっつきながらこちらを見ている。

「で、どーすんだ?」

「ライアン。お前には話しただろう。ロイ君に転移を試してもらう。」


 おぅ、そうだった・・。

 いや、別に忘れてないよ?

 ただちょっとルビィの街までのんびり旅でもしながら帰るのもいいかな?って思っただけで。

 水竜の巣の上をのんびり旅できるなら大したもんだと思うけどね。


 食事を終えた俺達は部屋に戻って転移を試してみることにした。

「さて、どうやるの?」

 俺はベッドの上で胡座をかいてルークに手順を聞いてみる。

 部屋は四人部屋だった。

 三人部屋があるのかは知らないけど、結構広く使えるので快適だ。

「俺達は転移魔法というものについて詳しくわかっていないのだが、三人よりは一人の方が楽に出来るのではないか?」

「そりゃね。運ぶものの大きさによって使う魔力も増えるみたいだし。」

「ではまずはロイ君が試してみてくれないか?それで成功してからライアンや私を運んでもらいたい。魔力が足りなくても一人ずつ運べばいいし、もしも魔力が全く足りない等の理由で私達が帰れなくなっても、ロイ君は帰れるはずだ。」


 初めは俺が実験台になるだけじゃないかと思ったんだけど、どうやらルークは俺達が飛んできた時の転移魔法が俺の限界を越えたものだと思ってるみたいだ。

 まぁ通常の転移魔法に全力でレベル9相当の魔力を足したんだから当時としては間違ってない。

 ただ、俺は今レベル10の魔力を扱えるんだけどね。


「わかった。やってみるよ。」

 使えてもわざわざ言わないよ?

 隠すつもりもないけどね。

 だって失敗するかもしれないでしょ。

 実際にあの時の転移魔法に使った魔力が暴走して普通ではあり得ない距離を飛んだ可能性もあるわけだし。


「ところで、方向はわかる?」

「大体だけどな。」

 そういってルークはコンパスを取り出す。

 コンパスといっても紐が結んである細長い石みたいなものだけどね。

 きっと磁石なんだろう。

 動きがそれっぽいし。


「東はあっちだな。」

 そういって東を指差す。


 ルーク・・。

 東はわかってるよ。

 さっき日が沈むのを見たし、というかこの街に来る途中でもシャサが「海岸沿いを南に行く」ってはっきり言ってただろ?

 そんなにアバウトで良いなら転移した直後に試せば良かったんじゃないのか?

 一応西に転移したってのは予想してたんだし。


「ルーク・・ちなみに距離はどれくらいかな?」

「そうだな・・ルビィの街はエンマークの北東部だから・・大体大陸2つ分くらいでいいんじゃないか?」

 大体すぎるだろ!

 大陸1つ分ってどれくらいだよ!


 でもまぁ、これは仕方ないか。

 正直距離なんて全くわからない。

 ちゃんとした縮尺の地図なんて見たことないし、あるかもわからない。

 そもそもこの魔大陸の大きさもわからないんだから仕方ないと思う。

 というか転移でマトモに長距離を飛んだのはこないだが初めてだったのだ。

 言ってしまえば距離の調節の仕方すらもよくわからない。


「わかった。やってみるよ。」

 やるにはやるけど、帰れなくても知らんぞ。

 元はライアンのせいだからな。


 必要ないだろうなと自分で思いながら、体を東に向ける。

 飛ぶ場所はどうするか。

 突然誰かの目の前に現れて脅かすのも悪いから、自分の部屋でいいかな。


 手抜きをしてないアピールで呪文を丁寧に唱える。

 自分の部屋をイメージする。

 距離はかなり遠くだ。

 呪文を唱えていくと、体から出た魔力が俺を包み込む。

 複雑な動きをしながら俺を中心に魔力が圧縮されていく。

 圧縮されるにつれて動きがより激しくなっていくが、呪文が完成した直後に突然集まっていた魔力が弾けた。


「あれ?」

「どうした?」

 うーん。

「わかんない。失敗したみたい。」

「そうか・・」


 今のはなんだ?

 なんか弾かれたような・・


「転移に慣れてないからよくわかんないけど・・いや、ちょっと別の場所で確めてみる。」

 そういうと俺は再び転移魔法を発動させた。



「そうそう、やっぱりこれだよね。」

 俺は今、カークの西の海岸に立っている。

 壊れた建物がある辺りだ。

 体は東を向いたまま西の海岸に転移したから、やっぱり体の向きとかは関係ないみたい。

 ついでに言えば距離も方向も適当にイメージしたけど、ちゃんと転移出来た。


 俺がここに飛んだのは転移を発動した時の感覚を思い出すためだ。

 続いて初めて釣りをした海岸に飛ぶ。

「おっ?」

 さっきの転移と使った魔力の量は、体感的にはほとんど変わらない。

 歩いて数時間と数日の距離では使う魔力に違いは然程なさそうだ。

 ってことはつまり、無茶苦茶大雑把だけどさっきは距離が遠すぎて失敗した訳じゃなさそうだ。

 おまけに今の感じなら3人分の転移でも魔力は十分に足りそうだ。


 じゃあやっぱり弾かれた?

 なんでだ?

 俺は宿の部屋に転移した。


「ただいま。」

「うお!」

「どうだった?」

 ライアンは驚き、ルークは結果を聞いてくる。

 宿からもう一度ルビィの街への転移を試してみるけど、さっきと同じように失敗してしまう。

 黙っててもしょうがないから質問に答えた。

 感覚は伝えられないけど、俺は転移魔法が弾かれたという予想を二人に伝える。


「どーゆーことだ?」

「わかんない。」

「弾かれた、というのは結界のようなものか?」

「うーん、そうかもしれない。・・そうか。そういえばルビィの街って結界を張ってるよね?」

 街の中心部には体育館のような建物がある。

 以前に一度だけ見に行った時は警備している兵士が誇らしそうに結界のことを話していた。


「あれは空から魔物が侵入出来ないようにしているだけのはずだ。建物で例えれば天井だけで壁はない。それにギルドや軍宛の緊急の書類や荷物もあるから、結界は張っても転移が出来ないのはおかしいだろう。」

 なるほど。

 たしかに転移が出来ないようにする結界なんて張る意味がわからない。


「じゃあなんで?」

「さあな。可能性ならいくつかあるが・・」

「例えば?」

「例えば、いつも張っている結界は転移を防ぐものだったとか。」

「それは無さそうじゃない?」

「そうだな。俺もそう思う。」

 じゃあなぜ言った・・。

 ルークの顔が雲っている。

 他の予想は悪い話なのか?


「一番考えられるのは何?」

 なさそうな可能性を聞いても意味がない。


「・・ここで予想を話しても帰れなければ意味がない。とりあえず今出来ることはないだろう。」


 勿体振るなぁ。

 まぁ言う気がないならいいけどね。

 実際に帰れないんだから考えてもしょうがない。

 ちょっと心配になっちゃったからこれからはもう少しだけ帰る方向で動こうかな。

 って言ってもやることないんだけどね。

 俺に出来ることがあるならやってるし、さすがにライアンはともかくルークは帰してる。

 なんだかんだ言っても、転移はこっちに来た日にも何度か試したのだ。

 二人が寝てる隙にも出来るだけ全方位に向かって試したけど、ことごとく失敗した。

 さっきのように弾かれる感覚はなかったので、おそらくレベル9では3人分の転移には魔力が足りなかったんだろう。

 自分だけか、ルークと二人なら成功したかもしれないけどね。

 いくら何でもライアンを荒野の真ん中に置いていく気にはなれなかった。

 なんの目印もない荒野の真ん中に戻ってこれる保証もなかったし。


 俺も甘い。

 ライアンなんか置いていけばいいんだよ。

 いや、やらないけどさ。


 すぐに戻ることは出来そうにないと話していると、ライアンが「街がダメなら森かゴブリンを倒した街道の上に飛べ」と言ってきた。

 なるほど!と思って試してみるけど、同じ様に失敗した。

 微妙に役に立たないやつだ。

 能力は高いはずなんだけどね。


とりあえず、帰れないということは確認出来たものの、明日からどうすれば良いのかわからない。

「じゃあ明日からはどうするの?」

「そのことなんだが、ロイ君は何かやりたいことはあるか?」

 やりたいこと?

 なんだろう?


「釣りかな?」

「そうか。それではライアンは私が預かってもいいか?」

「は?」


 突然だな。

 ライアンも驚いてるみたいだ。

 俺への返答の速さを考えると、もう考えてあったみたいだな。

「いいけど、どうするの?」

「ライアンを鍛え治す。」


 わお。

 俺も驚いたけど、ライアンもビックリしてる。

「おそらく、能力だけを見ればこいつは私よりも実力が上だ。才能もある。しかし、今は君に甘えてしまっている。今はお互いのために一緒にいるべきじゃないだろう。」


 甘えてるのか。

 そういえばライアンは元々冒険者だ。

 レベルも確か17だったし、今の俺よりはかなり上だ。

 孤児院にいる時も狩りは俺任せだったし、冒険者になってから上げたんだろう。

 考えてみると、今のようにダメダメな状態で冒険者をやっていたとは思えない。

「ちょ!ちょっと待て!俺にはロイを守るという使命がある!」

「あるわけないだろう。守ってもらってるのはお前だ。」

「なんだと!」


 ルーク・・厳しい人だったんだな。

 しかし・・

「ライアンを任せるのはいいけど、死なない?」

「うっ!」

 こらルーク。

 うっ、じゃないだろ。

 ルビィの街では大物扱いだったホブゴブリンが、こちらではザコみたいにポコポコ出てくるのだ。

「・・大丈夫だろう。」

「だろう、じゃ困るんだけど。ルークもだけど、ライアンが死んだら先生やメリンダに合わせる顔がないし。」

 とりあえず、俺がいれば結界と治療魔法と転移があるので死ぬことはないだろう。

 二人だけで行動させるよりは安全なはずだ。

「待て待て!あんなザコに俺が負ける訳がないだろ!」

 ライアンが怒ってゴブリンをザコ扱いしている。

 まぁ、ザコだけど。


「そうかな?戦って勝てる?」

「勝てるに決まってるだろ!」


「じゃあ別行動でいいかな。」

 ライアンがやる気を出したなら特に心配はない。

 ルークの挑発に軽く乗っかってみたけど、ライアンだって挑発だってことくらいわかってる。

 ライアンはバカじゃない。

 というか頭は良い。


「そういえば、ライアンって『纏い』は使えるの?」

「なんだ?使えるけど。」

 ライアンもコロッと荒れていた口調が収まる。

 やっぱり頭は良いけど、ライアンの場合は頭の良さがサボりに繋がるんだろうなぁ。


「使えるんだ。じゃあこれは出来る?」

 俺は木刀を出して『纏い』を使うと、ルークが関心したような声を上げる。

「ほぉ。」

「なんだ?どうやってる?」


 知らないか。

「木刀に『纏い』を使ってるだけだよ。」

「木刀に?」

 ライアンは黙って『纏い』を使った木刀を観察している。

「見たことはない?」

「ないな。『纏い』は体術で使うスキルだ。武器に使うなんて聞いたこともない。」

 そうなのか。

 まぁ予想してたけどね。

 カルストもガトエルも使ってなかったし。


「ライアンなら出来るんじゃない?」

 そう言って木刀を渡す。

 魔力操作もかなり上達したはずだし、出来るだろ。


「あぁ~、こうか?」

 木刀をライアンの魔力が包み込む。

「そうだね。それで刃の部分を魔力を尖らせて作るんだ。」

「簡単に言いやがって・・」

 ライアンがブツブツ呟きながら魔力を操作すると、歪ながらも刃が出来る。

「刃が歪んでるよ。」

「だから簡単に言うんじゃねぇよ!すげぇ難しいぞ!」

 文句をいいながらも刃の形が揃ってくる。

 さすがライアン。

 器用さが飛び抜けてるな。

 ルークは自分の剣で試そうとして早々に諦めた。

 今はライアンが持っている木刀を傍観している。


「出来たね。じゃあこれを切ってみて。」

 俺は収納から海トカゲの鱗を取り出した。

 何となく取っておいたのだ。


 カラン


 ライアンが木刀を振ると、切れた鱗は床に落ちた。

 この野郎、俺の手ギリギリを狙いやがった。

「さっきのお返しだ。」

「あっそ。」


 別に手を狙っても避けられるからいいけどね。

「すごいな。」

 ルークが呆れた顔をしてライアンを見ている。

「たしかに威力は凄いだろうな。だけどこりゃ魔力の消費が多過ぎて多用できないぞ。」

 そういえばライアンって魔力は少ないんだっけ?

「何回くらい使えそう?」

「さぁ、まだ無駄があるからわからんが、そう多くはないだろうな。」

「そっか。でも街の外でもいざとなったらそれでどうにか出来るでしょ。」

 戦力も強化出来たし、これで安心して別行動できる。


「それは武器を選ばないのか?」

 ルークが興味を持って質問してくる。

「飛び道具では試したことないけど、それ以外は大丈夫じゃないかな?こないだの釣りでも糸や針まで使ってたから・・あっ!」

「どうした?」

 ルークが不思議そうに俺の顔を覗きこむ。


 しまった。

 なんで忘れてたんだ。

「釣具を買ってない・・」

 ライアンとルークは呆れているけど、俺は真剣だ。


 そのあとはルークに買ったものを見せて忘れ物がないか確めてから眠りに着いた。

 ルークはさらに呆れた顔をしてたけどね。


 俺が買った胡椒等の調味料や金属製の食器は貴族が使うものらしい。

 どおりで高いわけだ。

 確かに孤児院では食器は木製だったな。

デカくて貴重なはずの海トカゲの売買代金が全部無くなるなんておかしいと思ったんだ。

 まぁ金属の方が丈夫そうだし、いいでしょ。

 バターも同じく一般人は使わない。

 そもそもバターのことをライアンとルークは知らなかったみたいだ。


 バターうまいのに・・。


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