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医者の真似事

 買い物を済ませて、、済んだか不安なんだけど、シャサ達がいるはずの病院に来た。

 ルークに少しだけでも買い物に付き合ってもらえば良かったかもしれない。

 買い忘れがないか心配だから後でルークに確認してもらおう。

 まぁ収納がある分、人よりも荷物は多目になるのはしょうがないと思う。

 あるものは使わなきゃ勿体ないじゃない?


 病院に着いたので、まずはシャサ達を探さなくちゃならない。

 流石に部屋の場所までは聞いていない。

 日本の大学病院ほどではないけど、かなり大きな建物だ。

 孤児院と同じような石造りの建物で、部屋数も多そうだ。

 この世界では良い建物は石造りということなのか、もしくは大きい建物を木で建てる技術がないのかもしれない。

 近くに森があるんだから木が貴重ってことはないと思う。

 小さい家は木で出来てることも多いしね。



 受付みたいなところがあったので、場所を聞いてから部屋に向かう。

 建物に入ってすぐにわかったけど、日本で行ったことのある病院とは雰囲気が違う。

 思ってたよりもさらに重い雰囲気の中を抜けて目的の病室についた。


「こんにちわー」

 扉を開けると、思ってたよりも広い部屋に木製のベッドが4台並んでいた。

 大部屋だったのかな?


「ロイ君、こっちよ。」

「あ、シャサ」

 双子狼は全員揃ってた。

 怪我人の二人の男も。


 一人は魔術師で名前はエビル。

 もう一人はピロークという名前の剣士だ。

 戦士、剣士、魔術師が二人ずつとは、バランスの良いチームだな。

 いや、探知系がいないか。

 盗賊系がいないってことは戦闘を得意としてるんだろう。


 俺が思ってたよりも二人は酷い状態だったらしい。

 エビルは魔術師だけあって自分でも回復魔法を使っていたので、やっと一人で立って歩けるようになったらしい。

 でもピロークはまだ起き上がれない。

 というか、このままだと歩けるようになるか怪しいらしい。

 今回双子狼が稼いだ報酬でも少しは良くなるかもしれないって程度だって。

 いや、待て、その大事な報酬でこの人達は鮭を買おうとしてなかったか?

 ・・いいのか?


「完治しないの?でも、治療魔法をかけたら怪我は治るんでしょ?」

 水竜の攻撃には回復系の魔法をかけても治らない呪いか何かでも掛かってるのだろうか?

「ロイ君は治療魔法を使ったことはありますか?」

 シャサが優しく聞いてくる。

「あー、そういえば怪我人には使ったことないかも。」

 確か治療魔法は呪文と魔方陣で魔力の動きを覚えただけだ。

 俺、怪我したことないし。

「じゃあ良かったら使ってみて下さい。」

 と言って俺に魔方陣の描かれたスクロールを渡してくる。


 俺が治療魔法を使えることは知ってるはずだけど、なんでだ?

 ロスが少ないようにってことかな?


「・・おい。どうゆうつもりだ?」

「大丈夫ですから。ロイ君お願いします。」

 ピロークは俺が魔法を使えるとは思っていないようだけど、シャサは説明もせずに大丈夫で済ませて俺を促す。

 正直にいうと俺もどうゆうことだか聞きたい。

 でも聞ける雰囲気でもないので、シャサに任せることにした。

 まぁ実際に魔法の発動は大丈夫だから別にいいだろ。


 魔方陣に魔力を送ってピロークに魔法をかける。

 魔力は俺の記憶通りに動いてピロークに向かって体を包み込む。

 魔法はちゃんと発動した。

 魔方陣はレベル2の治療魔法だったみたいだ。

「どうですか?」

 何が?

 どうと聞かれても予想通りだったけど・・

 シャサは俺が困ってるのを見て微笑んでいる。

 さっぱりわからない。

 だけど、ピロークを見てわかった。


 変化がない。

 魔法はちゃんとかけたけど、治ったようには見えない。

「治ってないの?」

「ああ、けど少しは楽になったよ。その年で魔法が使えるとは、凄いな。」

「どうです、わかりましたか?治療魔法は他の魔法に比べて効率が凄く悪いんですよ。」


 俺はちょっと呆れていた。

 効率ねぇ。

 効率が悪いにしても限度があるだろ。

 レベル2の攻撃魔法なら上手く当てれば鎧を着た戦士だって殺せるだろ?

 治療魔法だけがこうなのはなんでだ?

 回復魔法の中でも疲労を回復させる魔法とかはかなり効く。

 なんかおかしいよな?

「すみませんが色々と試してみていいですか?」

「は?」

「ええ、もちろん。」



 俺は言葉の通り、色々と試してみた。

 呪文を使ってレベル1から3まで試した時点でピロークはもう何も言わなくなった。

 エビルはみんなの顔をキョロキョロと見ているけど、めんどくさいので無視する。

 別に口止めをしたわけじゃないけど、とりあえず今はみんな黙っててくれるみたいだ。


 体全体ではなく、傷に魔法をかけてみたら傷がみるみる治った。

 これは体に使うよりは効率が良さそうだけど、傷が見えてないと出来ないかな。

 次に集めた魔力、通称甚蔵さんを魔方陣に流して治療魔法を発動させてみた。

 すると発動した魔法はさっきと少し違った動きをした。

 さっきはピロークを包み込んで発動した魔法が、今度はピロークの体に染み込んで発動したのだ。

 見た目にも具合が良くなった気がする。


「なんだ?何をした?」

 ピロークもさっきとの違いがわかったらしい。

「具合はどうですか?」

「そりゃこれだけ魔法をかけて貰えば楽にもなるが、最後のはなんだ?何倍も効いたような感じがしたが・・」


 何倍もねぇ。

 白の魔力以外では回復魔法はロスが大きいとは聞いてたけど、ここまでか・・。


 ついでに無詠唱で甚蔵さんを使った治療魔法を発動させてみたけど、変わらず高い効果を出した。

 ピロークはベッドの上で起き上がって体を動かしている。

 みんなは何が起こったのかわかっていないものの、慣れてきたのか軽く流している。

 有り難いね。


 他に試すことはなかったかな?

「そうだ。ピロークさんの魔力の属性は何ですか?」

「突然なんだ?属性は風だが・・何か関係があるのか?」

 風か。

 俺と一緒だな。

「エビルさんは?」

「え?あ、えっと、水です。」

「なるほど。ちょっと魔法をかけさせてもらってもいいですか?」

「もちろん構いませんが・・」


 なんで敬語なんだよ。

 たぶんシャサにつられたな・・。


 魔方陣を使って発動させた魔法はさっきのピロークと変わらず、体の回りを包み込んで発動して大した効果は見られなかった。

 属性の相性は関係ないらしい。


 試しに疲労回復魔法のレベル1を疲れてそうなエビルにかける。

「あれ?」

 効いたみたいだ。

 続いて同じくレベル1相当で甚蔵さんを使った疲労回復魔法をエビルにかける。

「おぉ!すごい!」

 かなり効いた・・

 属性のロスは回復魔法全般に発生するらしい。


 ということは・・

「治療魔法って本当に効果あるの?」

「ありますよ。治療期間をかなり減らせますし、後遺症を減らすこともできます。」

 見てわかることを聞く俺にシャサはきちんと答えてくれる。

 死人を減らすと言わなかったのはおそらく、そーゆー使い方はあまりされていないのだろう。

 死にそうな患者を全快させるような治療をする余裕はこの世界には無さそうだ。

 あまりにも効率が悪すぎる。


 治療魔法は治療期間を減らすために使われる、ということは

「戦闘中に怪我を治すことは出来ないんだよね?」

「治療魔法ではそうですね。そこまでの劇的な効果があるのは回復薬です。」

「回復薬は効くんだ?」


 本では読んだことがある。

 回復薬とは治療効果のある薬草をすりつぶして回復魔法をかけた後、熟成させたものだ。

 かける魔法のレベルはもちろん、漬け込めば漬け込むほど効果が高い。

 しかし、作るのに時間と手間がかかるのでかなり、というかすごく高いらしい。


 なるほどね。

 そっちの実験もしてみたいな。

「私達が四人で採ってきたのも薬草ですよ。」


 マジか!

「それってまだ持ってたら売ってもらえません?」

「差し上げますよ。」

「いいんですか?せっかく採ってきたのに。」

 シャサは苦笑いを浮かべている。

「もう必要ありませんから。」

 シャサが横をみるとピロークがベッドから立ち上がっている。

 仕事と言っていたけど、自分達の用事も兼ねてた訳ね。

 つまり、報酬って言ってたけど、実際は薬草が目当てだったのか。


「お礼として受け取って下さい。今はこれくらいしかできないんです。」


 実験台になってもらっただけなんだからお礼なんていいのに。

 言葉遣いも丁寧な言葉からしっかり敬語になっちゃったよ。

 そうだ、じゃあ手を貸して貰おう。

 まずは・・


「じゃあ、これは相談なんですが、僕のことを誰かに聞かれない限り黙っててくれませんか?」

「もちろんですよ。」

「当然だろう。」

「約束します。」

 みんな約束を守ってくれそうだ。


「そちらの方々もお願いできませんか?」

 この部屋は4人部屋だ。

 あと二人、こちらを目を丸くして見ている人がいるのだ。

 二人共頷いてくれた。


「しかし、聞かれない限りってのはなんだ?」

 ピロークがまだ少し辛いのか、ベッドに座りながら聞いてくる。

「嘘をついたり危険な目に合ってまで黙っている必要はないですから。」

 そういうとみんなが悔しそうだったり悲しそうだったり色んな顔をしている。


「じゃあそうゆうことで。」

 俺はみんなの返答を待たずに両手を広げると、部屋全体に全力で治療魔法をかけた。

 凄い魔力が出た。

 もしかしたら隣の部屋くらいまでは届いちゃったかもしれない。

 みんなは黙って呆れた顔をしている。

 あれ?

 今の魔力量ってもしかして、レベル10じゃね?


「シャサさん・・使える魔法のレベルが上がるのってどんな時ですか?」

 シャサが突然の質問に不思議な顔をしている。

「一般的には魔力量が増えた時ですね。あとはレベルが上がった時でしょうか。普通は呪文を使っても自分のレベルまでの魔法しか使えません。レベルが上がれば上のレベルの魔法が使えるように・・ロイ君・・もしかして・・」

「はい・・」

 シャサは事情をわかってくれたみたいだ。

 というかそんな制限があったんだな。

 知らなかったわ。

 そういえば先生にも聞いたことなかったかも。

 魔力の最大出力を大きくしようと頑張ってた俺の努力って・・。


「海トカゲを倒した時にレベルが上がったんでしょう。」

 そうだろうね。

 あの時以来何も倒してないもんな。

「レベル10までは使える魔法とレベルが一致します。レベル11以降はわかりません。」

 なんじゃそりゃ?

「レベル11の魔法ってないんでしょ?」

「人前で使った人はいない、というだけですから。」

 なるほど。

 だから『わからない』ってことね。

 まぁあっても必要ないだろ。


「あと、シャサさんにお願いがあるんですが。」


 シャサへのお願い事は病院の魔術師に俺の知らない回復魔法を聞き出して欲しいというのと、魔力注入の交渉だ。

 自分でやっても良いんだけど、そろそろめんどくさくなってきたのだ。

 この街に来てからも買い物をするだけで子供子供ってうるさく言われて、もうウンザリしてきた。


「それならギルドに加入して冒険者カードを持てば、少しは解決するかもしれませんね。」

「そうなの?」

「レベルの他にクラスがはっきり書かれますから。それを見せれば子供扱いはなかなか出来ないでしょう。」

「親のだろ!とか言われない?」

「自分のカードじゃなければ名前しか浮かび上がりません。自分のでも隠せますが、見せてもいい項目だけでも見せれば信じますよ。」

 カードってそんな風になってんの?

 知らないことばっかりだな。

 持ってるスキルとかも見れるらしいし、便利なもんだな。


「ただし、逆にデメリットとしてギルドに入ると実力がバレることもあるかもしれません。煩わしいこともあるでしょうし、普通の子供のままの方が便利かもしれないのでよく考えて決めてください。」


 難しいことを言うなぁ。

 ただの子供は俺には無理だろ。

 とりあえず今が不便だから登録するよ。

ここなら孤児院のみんなに迷惑がかかることもないしね。

 後のことは後で考えます。


 その後、病院との交渉はスムーズに進んだ。

 シャサがカードを見せたら一発だった。

 やっぱりカード作ろう・・


 魔力注入は回復魔法の効果が高い甚蔵さんでやった。

 一箱金貨1枚。

 3箱で金貨3枚。

 そんなにいらないと言ったらシャサに止められた。

「相場は守った方がいいですよ。ロイ君が相場価格を崩して誰かが得をする分だけ、他の誰かの仕事がなくなりますから。何をするのでも、タダっていうのは本当は良くないんです。」

 なるほど。

 俺は教わってばっかりだな。


 病院の魔術師からは病気用の魔法を教わった。

 医者本人も使い方がよくわかっていなかったようで、俺が自分で病人に試して確かめた。

 言われたそばからタダで治療したのでシャサと目を合わせづらいけど、どうやらこの魔法は免疫力を高めるらしいことがわかった。

 病原菌に回復魔法が効かないのはなぜだろうか?


 治療魔法の効率的な使い方と合わせて、魔術師に免疫強化魔法の使い方を教えるという逆転現象が起きてしまった。



 用事を済ませて宿に帰ると、もう夕方を過ぎていた。

 なんとライアンとルークはお腹を空かせて待っていた。

 そういえばこいつら無一文だったな。

 金を渡しておけば良かった。


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