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カーク到着

 このまま行程が順調なら今日中には街まで行ける予定だ。

 昨日一日でかなり進めたからね。

 シャサが言うにはもうすぐ街道が見えてくるらしい。


 街道が近付いてきたせいか、辺りが平らになってきた。

 お陰で結構遠くまで見渡せる。

 いや、平らで見渡せる場所に街道を作ったんだろう。

 今までは魔物を警戒しながら海岸線に沿ってまっすぐ歩いてきたけど、これだけ見渡せるなら魔物の不意打ちを受ける心配も少ない。

 まぁ油断して襲われるのは嫌だから、このまま街道までは行くけどね。

 少しだけ高くなっている場所で前衛陣が緊張を解いたのがわかると、後ろを歩くマーシャも一息ついたみたいだ。

「ここからなら街道も見えてるかな?」

「どうでしょう?もうすぐで見えると思いますけど。」

 シャサと俺はずっと気を抜いている。

 いや、俺だけか?


「なぁカルスト。もう海から離れてもいいだろ?直接街に向かおうぜ。」

 凄くだらけてるやつがいた。

 なんて余裕だ。

 ライアンは只者じゃないな。

 本当に黙ってて欲しい。

 一秒たりとも気を抜くなとは言わないが、バレないように抜いてくれ。


 もう少し進んだ辺りで前方に今まではなかった物が見えてきた。

 明らかに人工物、というか村かな?

 建物がいくつかありそうだ。

 目的の街ならシャサが教えてくれると思うんだけど、違うよな?

 まだ街道にも出てないし。


「あそこに見えてるのは何?」

 気になるので聞いてみる。

「あれは漁師町・・ですかね。」

「漁師町ですか。」

 曖昧な言い方だな。

 シャサがこんな言い方をするのは初めてじゃないか?

「正確に言えば町ではないんです。海で漁をする者が休むために建てたものですから。」

 なるほど。

 まぁ町や村の興りなんてそんなもんだけど、まだあそこは町ではないってところか。


 海岸沿いを進んで建物に近付いていくにつれて俺の予想とは少し違うことがわかってきた。

 明らかに建物が古いのだ。

 というか、壊れてる建物ばかりだ。

 中には新しそうなものもあるけど、やっぱり壊れている。

 一軒一軒確かめる余裕は無いけど、みんな古くなって壊れた感じじゃない。

 不思議に思って見ていると、シャサが説明してくれた。

「この辺りは昔から漁師が住んで漁をしていたんですけど、海からの魔物によく襲われるのでかなり昔に町を私達が向かってる場所に移したんだそうですよ。」

「じゃあ、ここにあるのは?」

「街や外からきた人達が漁の為だけに建てたものですね。中には人が住んでた物もあると思いますけど。」

 でも、見える範囲では住めそうな、というかまともに使えそうな建物は一つも無いぞ。

 全壊してるのも多そうだ。

「今は誰も使ってないの?」

「今はそうですね。少し前に水竜に襲われたので・・」

 なるほど。

 そりゃ大変だ。


「死人とか出なかったの?」

「ええ、今回は運よく。ですが怪我人はかなり出ましたし、建物もあの状態なので漁はやっていません。」

 そりゃそうだろうなぁ。

 全部が今回の襲撃のせいじゃないにしても建物がこの状態で死者が出なかったのが凄いと思う。


「俺達も水竜が出たときにここに居たんだ。」

 突然ガトエルが悔しそうに話し掛けてきた。

「漁師の護衛でな。水竜が出てきて漁師達を逃がしてる時に仲間も二人怪我をした。」

 ああ、それで本来は6人組の双子狼が二人足りない状態で仕事をしてたのか。


 あれ?

 怪我をしてここにいないんだから入院してるってことだよな?

 でも、入院ってのは魔法治療を受けられない貧乏な人か、魔法の効かない病気の人がするものだったはずだ。

 病気じゃないだろうし、金か?

 でも、水竜って聞いた感じだとA級だろ?

 C級の双子狼が死人も出さずに避難誘導なんて結構な手柄なんじゃないのか?

「その仲間の人はどうしてるの?」

「今は入院してるな。」

 やっぱり。

「護衛の報酬は出なかったの?」

「あ?ああ、釣れなかったから払えんと言われた。」


 ガトエルやカルストが悔しそうにしていることからもきっと普通は満額貰えるんだろう。

 シャサも怒っているようだ。


 とりあえずこの話題はこれまでにした。

 あんまり人にして楽しい話題でもないだろうしね。

 俺達はやっとたどり着いた街道を内陸に向かって進んだ。


 この数日間でシャサが知っている魔法は大体教えてもらったと思う。

 代わりに俺が知ってる魔法でシャサが知らなかった魔法は教えてあげた。

 二人とも魔術師としてはレベルアップできたかな。

 まぁ魔法以外のこともあるから俺は教わってばかりだったけどね。


 俺達が向かってる街はカークというらしい。

 カークとはこの辺りを治めている領主の名前だ。

 街はカーク領カーク、もしくはカークの街と呼ばれている。

 名前が示す通り領主の館も街の中心に近いところにあるらしい。

 当然、呼び名はカークの館だ。

 領地の名前を自分の家名だらけにするのはどんなやつか、言わなくてもわかるだろう。

 きっと自己主張の激しいやなやつだ。

 でも税は思ったほど高くはないので、海で取れる海産物などで結構潤ってるらしい。


「見えて来ましたよ。」

 内陸に入って森の中を進んでいた街道の先に、いくつかの建物が見えていた。

「カークの街にようこそ。」

 なぜか恥ずかしそうにシャサが言ってくれる。

 言い慣れていないんだろう。


 街は魔物避けと思われる大きな柵に囲まれている。

 この辺はルビィの街と変わらない。

 魔物がいるんだから変わらないだろうなぁ。


 街に入ってすぐに俺達は別れることになっている。

 元々街まで案内してもらっただけだからね。


「じゃあ、ありがとうございました。」

 口々にお礼を言い合って別れる。

「シャサ、また後で。」

「ええ、また。」

 俺は後で双子狼の残りのメンバーが入院してる病院に行くことにしていた。

 場所はちゃんと聞いてある。


「さて、どうする?」

「まず情報だろ。やっぱりギルドじゃねえか?」

 ルークとライアンがこの後どうするか話し合っている。

「俺は別行動するからよろしく。」

 とりあえず俺は金を稼がなくちゃならない。

 まずは捕まえた魚やトカゲを売るつもりだ。

 そして買い物。

 先生の隠れ蓑はないので隠すのは諦めている。

 問題が起きたら逃げるので、一人でも問題ない。

 というか一人の方が楽だ。


「そうゆうことなら先に宿を決めよう。夕方にそこで合流すればいいだろう。」

 さすがルーク。

 冒険者歴が長いだけあって頼りになる。

 というかルークも流石に今日中に帰れるとは思ってなかったか。

 まぁ双子狼のメンバーは全く知らないようだったし、簡単にはわからないだろうな。

 俺の場合は帰ってからも冒険者になるつもりなので、買い物は無駄にはならないはずだ。


 宿選びもルークに任せて、俺とライアンは付いていくだけだ。

 しかし、宿に入ったところでルークの態度が変わる。

「この年で子供の世話になるとは・・」

 わかってたことだけどね。

 今俺達が持ってるお金で使えるのは、俺が双子狼に鮭を売って貰った銀貨5枚だけだ。

 試しにルークが手持ちのお金を見せてみたけど、使うのを断られてしまったのだ。


「すまない・・」

「別にいいよ。」

 ルークが選んだ中級冒険者が使いそうな宿は、一泊銅貨40枚だった。

 俺には高いか安いかよくわからない。

 3人分を俺が払うと、ルークは申し訳なさそうにしている。

 宿の店主もライアンとルークを軽蔑したような目で見ていた。

「肩身が狭いな・・」

「まぁいいじゃない。」

 俺は気にしない。

 何度も言うけど、わかってたし。


 宿を出て二人と別れると、俺は色んな店が集まってる辺りに移動する。

 時間は昼くらいなので道も店もそこまで混んでない。

 歩いてる人達は冒険者風の人が多い。

 街にある店や売ってるものはルビィの街とそんなに変わらないみたいだ。


 獲物を売るのはスムーズに済んだ。

 大量に買い取ってくれる店もシャサに聞いていたので獲物が一気に捌けた。

 大量といっても1割くらいは残してある。

 どうせ食糧は買うからね。

 収納から出した獲物が生だったので氷魔法で凍らせてから渡したら追加でお金を貰えた。

 双子狼に売った時に驚いた鮭の値段はここでも一緒だった。

 一匹銀貨5枚。

 トカゲは大きすぎて適正価格がわからないので、店員に任せた。



 続いて今度は買い物だ。

 野菜と肉は知らないものもあったけど、出来るだけ味の想像できるものを買っておいた。

 調味料は塩くらいしか持っていなかったので買いまくった。

 白コショウと黒コショウは特に。

 俺はコショウが好きなんだ。

 売ってて良かった。

 高かったけどね。


 調子に乗って買い物をしたのでもうお金が心もとない。

 調味料が凄く高かった。

 多目に買ったのもあるけど、コショウとか値段を聞いてビックリした。

 砂糖もすごく高いし、ぼったくってるのかと思って値切ったんだけど、どうやら適正価格だったらしい。

 鮭よりずっと高い。

 野菜と肉は安いんだけどなぁ。

 他に鍋や食器、毛布なども買わなくてはいけないので、もう少しお金を稼いだ方が良さそうだ。


 お金を求めて歩き始めてすぐに目的の店は見つかった。

「すみません。魔力注入をしたいんですけど。」

「はいはい。・・は?」

 店員は自分に話しかけたのが小さい子供だとわかるとビックリしている。


 もちろん魔力石を売ってる店だ。

 シャサが持ってる杖には魔力石が付いていたから、店がないってことは考えてなかったしね。

 店員のいる店の奥には魔力石の入ってると思われる箱が見える。

「一箱あたりの報酬はいくらですか?」

「一箱?一箱なら銀貨20枚だけど、お父さんかお母さんがやるのかな?」


 安いな。

 それじゃルビィの街では口止め料込みの値段よりも遥かに安いぞ。

 俺や将来的にはガラシャもだろうが、ルビィの街では魔力注入でかなりの金額を稼げる。

 だが、これだけ安いと魔力が特別に多くないと魔力注入だけで生きていくのは辛そうだ。

 まぁそれでも銀貨20枚か。

 孤児院時代にかなり稼いだお陰で金銭感覚が狂ってるのかな。


 それで構わないと告げて箱に近付く。

 見た感じではルビィの街で使われてる箱と大きさは変わらない。

 石を入れるので重くなるせいか、魔力石の箱の大きさはどこでも変わらず小さめなのが標準らしい。

「君じゃ持てないだろ。親を連れてきたら渡すよ。それにしても箱ごとは無理じゃないの?」

 持たないけど持てるし、親はいない。


 箱を覗くと、確かに魔力の籠ってない魔力石が入っている。

 それにさっさと魔力を込める。

 1分もかからずに箱の中の魔力石は緑の魔力で満たされた。


「銀貨20枚。」

 驚いて魔力石を確認している店員に報酬を請求する。

「えっと、はい・・」

「ついでに魔力注入をして稼ぐにはどこでやるのがいいか教えて下さい。」

 この店はそんなに大きくないので見える範囲で箱はそんなに多くない。

 全部やってもいいけど、店が困るかもしれない。

「それなら、病院かギルドかな。」


 なるほど。

 それもルビィの街と変わらないらしい。

 ルビィの街でもギルドでお金を払うとギルドにある魔力石から魔力を移してくれたし、販売もしてた。

 病院は怪我人の治療で大量の魔力が必要になる。

 この辺りは漁で出る怪我人がかなりいるそうだから、それなりに稼げるはずだ。


 ということで、シャサとの約束もあることだし、買い物を早目に済ませて病院に向かうことにする。

 まぁ今思い付くものはほとんど雑貨屋で買えたから楽だったけどね。


 楽は楽だけど、金はすっからかんだよ。

 雑貨屋も色々高かったけど、油とかバターとかなんで高いわけ?

 買いすぎなのかな?

 でも収納は余裕なんだよね。


 そういえばシャサ達が食べてた干し肉とかは買ってないぞ・・。

 買うか?

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