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大きくなったかな?

 先生のところに向かう途中でガラシャを眠らせた。

 なんかこれ人聞きが悪いな。

 俺は

「魔力はどれくらい増えた?」

 って聞いただけだ。

 張り切って魔力を使い切ったお陰ですぐに眠りに付いたガラシャは部屋に置いてきた。

 先生との話がちょっと煩くなるかもしれないからね。





「ダメです!!」


 やっばり・・


 俺は

『白の魔力石を作ってるのは俺だと公表すればいい』

 と先生に伝えただけだ。


「でも先生、それだけ公表すれば他のみんなは安全になりますよ。そうすれば今の状況は解決じゃないですか?」

「ロイ。あなたはわかってません。

 確かに今の状況は安全とは言い難いかもしれませんが、そこまで危険というわけでもないんです。

 あなたのことを公表するのは要らぬ危険を呼び込むことになりかねません。」


 俺は勘違いをしていたらしい。

 先生の詳しい話を聞いて理解できた。


 もしもいなくなった従業員が白の魔力石の情報を流していたとして、情報を得た組織なり個人は孤児院を狙うかもしれない。

 しかし、それでもこの街の中で孤児院が白の魔力石を作っていることを知っているのは極一部だ。

 それなのに俺が魔力石を作っていることを公表すれば、街中の悪人に加えて軍や貴族、商人達が俺を狙うかもしれない。

 わざわざそんなことをしたら孤児院がどうなってしまうかわかったものではない。

 俺に言うことを聞かせるためにどっかの誰かが子供を人質にとってしまうことだってあるかもしれない。


 正直に言うと、俺は孤児院を出ることも考えていた。

 しかし、それでも孤児院をまるごと人質にとって俺を手に入れようとする者はいるかもしれないらしい。


「すみませんでした。」


 すごくあっさりと、俺は自分がこの世界の素人だったことを再認識して、恥ずかしさを覚えながらも先生に話して良かったと安堵していた。

 先生に話さずに勝手に公表することも考えていたのだ。

 危うく孤児院を危険に晒すところだった。


前の世界では自分が優秀だからって家族が危険な目にあうことは考えにくい。

俺が治安の悪い国の金持ち育ちだったなら考え方も違ったのかもね。



 その後話し合った結果、白の魔力石は暫くは作らないことにした。

 もともと最近はあまり作ってないから、特に何も変わらない。

 大きく変わったのは子供達の外出禁止をやめたことだ。

 外出するときは俺が一人一人に結界を張って安全を確保することにした。


 誘拐を防ぐことは出来ないが、外出出来ないストレスが無くなったので、孤児院はすぐに元の雰囲気に戻った。

 数日後には魔力石店の女主人がいなくなった従業員が見つかったと連絡してきた。

 連絡を寄越したのはいなくなった従業員本人だった。

 酔っぱらって喧嘩をしたあと、入院していたらしい。

 病院で病気を移されて入院が長引いたとか笑いながら言っていたが、あの女主人の店は大丈夫だろうか?

 まぁ俺が心配性なだけで、この世界では普通なのかもしれない。


 いつもの生活に戻ったお陰で俺も自分の鍛練を再開することができた。

 といってもガラシャが常にくっついてきて離れないので、ガラシャの専属家庭教師のように色々と教えてもいる。

 センスが良いと思っていた通り、ガラシャは魔力操作まで覚えてしまった。

 常に一緒にいるから俺の魔力操作をみて教えて欲しいと言ってきたのだ。

 流石に無理かと思ったのだが、教えた数日後には魔力球を打てるようになっていた。

 次は体の周りを動かせるようにしたいらしい。


 そうだ、大事な変化を忘れていた。


「お兄ちゃん!出来たよ!すごい?」


 妹が出来たよ。

 もちろんガラシャだ。

 最近はかなり俺になついてお兄ちゃんと呼んでくる。


「うんうん。ガラシャは凄いなー。将来は立派な魔術師になれるぞ!」


 俺も満更でもない。

 だって可愛いし。


 あとはどーでもいい変化だけど、ライアンがたまに魔力操作を習いに来ている。

 ライアンはもう孤児院を卒業してるけど、孤児院に顔を出した時に俺がやった授業の話を聞いて俺のところに教わりにくるようになった。

 こう言ってはなんだが、無駄にセンスが良い。

 魔力操作だけならすでにガラシャよりも出来ている。

 しかしライアンはガラシャよりもさらに魔力量の延びが悪い。

 流石にガラシャよりは多いけど、もう少したてば抜かされそうだ。

 成長期が過ぎてるんじゃないかとライアンに言ってみたらなぜか怒られた。

「男なら量より質だろ!」

 と訳のわからないことを言っていた。

 聖属性の魔力を持ってるガラシャに、どうやって質で勝つつもりなんだろう?


 ライアンは驚いたことにちゃんとした冒険者になっていた。

 器用で頭も良いし、たしか魔法もある程度は使えた気がする。

 剣術も先生に習っていたので新兵としては上等なはずだ。

 それだけの条件が揃ってれば入隊試験で落ちることはないと思っていたのでライアンに聞いてみたら、どうやら自分で冒険者になったらしい。

「軍隊なんて窮屈なところ、やってられねぇよ。それに冒険者の方が稼げるしな。」

 そう言われて「なるほど。」と頷いてしてしまう辺り、ライアンとは仲良くなれる訳だと納得してしまう。

 ライアンは

「お前も冒険者になれよ。俺が面倒みてやるぜ?」

 と言っていたけど、俺に面倒をみてもらうつもりだと思う。


 しかし、悪くない提案だ。

 もちろんライアンの面倒を見るという話ではない。

 冒険者になる方だ。

 この前も俺が孤児院にいるせいで迷惑をかけたばかりだし、将来的にハンターもいいな、とは思っていたので少し早いけど冒険者ならちょうどいいかもしれない。

 問題は先生に反対されるかもしれないことだけど・・

「なんだそんなことか。なら俺から話しとくよ。」

 とライアンが言ってくれたので任せることにした。

 まぁ元々俺は居候だし、多分大丈夫だろ。

 ・・大丈夫かな?


 数日後、先生とライアンと一緒に冒険者ギルドに行くことになった。

 ライアンから話を聞いた先生が、まずは冒険者のことを知るべきだと言ったらしい。

 ライアンが朝早く迎えに来て、一緒に朝ご飯を食べてから孤児院を出発した。


 ライアンの野郎、飯目当てで迎えに来やがったな・・

 俺も先生も冒険者ギルドの場所はわかってる。

 迎えに来る意味がわからん。



「そういえばよ、この道ってこんなに歩きやすかったか?」


 街の中心に向かう道を歩きながらライアンが言った言葉に俺と先生はピクッと反応してしまう。

「こんなもんじゃない?ライアンの体力が増えたから楽なんじゃないかな?」

 俺が誤魔化すと先生が

「ロイが魔法でやったんですよ。」

 とバラしてしまう。


 土がむき出しの地面は凸凹で、魔力石を運ぶ度に台車が揺れて運ぶのに苦労していたので習いたての土系の生活魔法で平らにしたのだ。

 次の日には先生も知ることになって、渋い顔をされてしまった。


「ロイ。お前はもう少し大人しく出来ないのか?目立ちたいなら何も言わないけどな。お前はまだ表舞台に立つ気はないんだろ?」

 確かに俺は表舞台なんて立つ気はない。

 立つ才能はあると思うけどね。


 でも、ライアンにそんな話をしたことがあっただろうか?

 先生の方をみたけど、先生も首を傾げている。

 言ったのは先生ではないらしい。


「おいおい、俺だってそれくらいわかるぞ?お前が本気でやってたら、今頃王都で何かしらの仕事についてるだろ。

 今も孤児院にいるんだから、その気はないんだろうけどな。」


 驚いた。

 出来るやつだとは思っていたけど、正直に言ってここまでだとは思ってなかった。

 俺のことをウサギ捕り名人だとか言っておいて、とんだ曲者だ。

 いや、実力は認めてるよ?

 俺に興味がないと思ってただけで。


「おい、ロイよ。そんなに意外そうな顔をして俺を見るなよ。・・悲しくなるだろ。」


 感心したのになぜかライアンが凹んだ顔になった頃にちょうどギルドについた。


 そういえば、ここに来るのは2度目だ。

 昔は門前払いだったけど、今日は先生と一緒にいるから中に入っても何も言われない。


「ロイ!」


 突然名前を呼ばれたのでビクッとしてしまった。

「ロイ!久しぶりじゃない!元気にしてた?」


 建物に入った俺に話しかけてきたのはメリンダだ。

「ちょっと、何で黙ってるの?大きくなったわね。」

「うん。久しぶり。」

 親戚のおばちゃんみたいなことを言っているメリンダに挨拶を返すと俺は先生の方を向く。


「メリンダはここの職員になったんですよ。知りませんでしたか?」


 知らなかった。

 というか孤児院の卒業生でその後を知ってるのはライアンだけだ。

 自分の鍛練ばっかりしていたけど、もう少し周りの人間に興味を持った方がいいかもしれない。


 ギルド内を見回している間にメリンダが先生とライアンと挨拶を交わすと建物の奥に案内された。


「適当に座って。」

 そう言って案内されたのは会議室みたいな部屋だった。

 木の長机の両側に椅子がいくつか並んでいるだけの質素な部屋だ。

 言われた通りに適当に椅子に座る。

 先生とライアンが俺を挟むように隣に座って、メリンダが正面に座った。


「ライアン、何であんたがいるのよ。あんたはもう冒険者でしょ。」

「別にいいだろ。それより、俺の時はカウンターでちょっと説明してもらっただけだぞ。なんなんだ、この差は。」

 とライアンは不満そうだけど、メリンダはライアンを見下している。

 俺はライアンと先生に連れられて冒険者ギルドに来たけど、メリンダの反応を見る限り、ライアンは呼ばれてないらしい。


「有望な冒険者を優遇するのは当然でしょ?」


 聞きましたか、みなさん!

 この私が『有望な冒険者』と言われましたよ!

 というかライアンも黙っちゃったし、これは共通認識なんだろうか?

 先生も苦笑いしているだけで否定はしていない。


「じゃあ説明するわね。まずは冒険者の説明から。」

 ライアンを黙らせたメリンダは俺に向くと説明を始めた。


「冒険者っていうのは、解りやすく言えば何でも屋よ。基本的にはギルドで受けた依頼を所属している冒険者が処理することで依頼料が冒険者に払われるわ。特に仕事内容に制限もないし、犯罪に関わるもの以外ならどんな依頼でもあるわよ。」

「犯罪に関わってるかはどうやって判断してるの?」

「初めての依頼主の時だけ、念のためにギルドが調査を行うから依頼というよりは依頼主を信頼して仕事を受けてるわ。だけど、そんなことしなくても犯罪に関わる依頼はほとんどないわよ?冒険者に頼んで通報されるくらいなら自分達でやっちゃうだろうし、その気になったらそんな依頼ばっかり受けてる組織もあるらしいしね。」


 なるほど、そう言われてみたら日本の何でも請け負う派遣会社でも、犯罪に関わる仕事はなさそうだ。


「あとで実際に依頼を見てみたらいいけど、この辺りだと魔力石を掘り出す工夫の募集とそれを運ぶ商隊の護衛と魔力注入が多いわ。魔物退治はどこの街にもあるけど、この街では商隊が沢山くるから依頼料が高めになることが多いわね。」


「なんで商隊がいっぱいいると魔物退治の依頼料が多くなるの?」

「そうね。例えば急ぎの依頼が出ることもあるし、討伐系の依頼でギルドが同一の依頼内容だと認めた場合、重複した依頼に関しては全部払われるのよ。」

「なるほど。でも、重複してたら商隊は依頼を出さないんじゃないの?」

「そりゃ商隊の中には出さないところもあるわよ。でも、商隊だって早く討伐して欲しいからね。依頼料を足してでも冒険者を雇いたいところは多いわ。」


 なるほど、両方にとって美味しいわけか。


「ちなみに場所や時期、獲物の数とかでギルドが別件だと判断した場合は重複させないで処理することで討伐漏れを防いでもいるのよ。その時に冒険者が辺りを念入りに捜索しても見付からないなら重複処理に戻して依頼料を払うこともあるけどね。」


 すると、メリンダの説明を聞いたライアンが突然興奮して身を乗り出した。

「待てよ!俺はそんなこと聞いたことないぞ!依頼の内容を判断出来るのはギルドだけじゃないのか!?」

「駆け出しの冒険者がそんなこと出来るわけないでしょ!信頼できる冒険者だけよ!」


 どうやらまだ働いてもいないのに新人が知らないことを説明してくれる程度には信頼されてるらしい。

 嬉しいけど期待が恐いな。


「他に聞きたいことはある?」

「えっと、冒険者にランクとかはある?」

「あるわよ。ルーキーと、初級中級上級冒険者、あとランクとは言えないけど、長くやってれば冒険者内ではベテラン冒険者って呼ばれるわ。ランクも考慮するけど、それぞれその冒険者にはこなせないと判断すれば依頼しないってこともあるのよ。」


 そりゃ大人数の護衛依頼とかをルーキーが一人で受けたいとか言ったって無理だろうね。


「ランクが随分大雑把なんだね。」

「まぁね。一応強さの目安は新しい鑑定魔法を使えばわかるわ。でもまだ冒険者カードにはレベルしか記載されてないから、わからないのよ。知ってると思うけど、レベルは強さに直結しないし。」


 聞き捨てならない単語が出てきた。

 先生を見ると先生も知らなかったのか、驚いた顔をしている。


「メリンダ。新しい鑑定魔法とはなんですか?」

「えっ?先生も知らなかったんですか?最近冒険者カードを研究して開発された魔法らしいですよ?魔法をかけた人や魔物のレベルと強さを確認できる魔法です。今の冒険者カードより詳しくわかるそうなので、今後作る冒険者カードはこっちの魔法がかけられるかもしれないんですって。」


 それは初耳だ。

 というか俺は古い鑑定魔法も知らんぞ。

 それも気になるけど、まだ知らない単語がある。

 俺と先生が気になった単語は違ったらしい。


「冒険者カードとレベルって何?」

「レベルを知らないの!?」


 メリンダは驚いて身を乗り出した。

 ライアンみたいなことをしてしまったのが悔しいのかライアンをチラッと見ると元の体制に戻る。

 メリンダとライアンは仲が良いんだけど、なんかライバルっぽい感じなのか、無駄に張り合うんだよね。


「そんなことをロイが知ったらどうするか、メリンダもわかるでしょう?」

 と意味ありげな顔で先生がメリンダに説明している。


「まぁ、そうですね。でも、もういいでしょう?

 ロイ。レベルって言うのは・・説明が難しいわね。

 魔物や生き物を倒すという経験で上がるものよ。レベルが上がると魔物は体も少しずつ大きくなるし凄く強くなるの。でも人はそんなに変わらないわ。力が強くなったり目が良くなったりするけど、それで強くなるかと言われればそこまででもないって程度。でも、強くなきゃ魔物は倒せないから、冒険者として優秀かの目安にはなるのよ。」


 なるほど、それは上げたい。

 多少でも強くなるなら上げない理由がない。


「あと、冒険者カードっていうのはギルドで発行してる身分証明書みたいなものよ。でも冒険者ギルドで発行してるからそう呼んでるけど、別にギルドでしか発行できないわけじゃないし、軍とかでも発行してるはずよ?呼び方は知らないけどね。正式名称は何だったかしら・・?

 まぁいいわ。で、冒険者カードには最初に名前とレベルと所属が書かれてるのよ。

 ギルドでは依頼を受けるときにカードを出して貰うわ。そしたらカードには簡単な依頼内容が書かれるの。だから同時にこなせない依頼を受けようとしてもギルドがチェックするし、受けることは出来ないわ。」


 なるほど、よく出来ている。

 これならやっていけそうだ。

 まぁハンターも捨てがたいけど、冒険者だってそれなりに面白いだろう。


「後は・・そうね、この街独特のことだけど、もうすぐ依頼はほとんど無くなるわ。」


 なんでだよ!?


「雪で街からの出入りが出来なくなるから当然よね。まぁそれでも来るのは雪かきとか雪降ろしの依頼くらいかしら?」


 なんてこった。

 孤児院を出た途端に貯金を切り崩すのは嫌だ。

 これじゃあ冒険者をやっても生きていけないじゃないか。


 結局、この日は依頼の受け方を習ったら帰ることになったが、もうすぐ孤児院に着くところで思い出した。


「あっ、鑑定魔法教わるの忘れた!」


 まぁいいか。

 時間はあるし、次回でも問題ない。

 冬が明けるまで稽古を積んで、先生のフェイントをかわせるようになっておこう。

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