人の目
新しい生活での確認強迫が、始まったのは3月頃だった記憶がある。
仕事に朝行くときは、主人の方が出勤する時間が30分程早く
私が仕事を出るときはいつも私1人の状態であった。
今までは、実家暮らしだったから自分の部屋だけ確認すれば良かった。
それでも30分という時間がかかっていた。
だが、今は実家ではない。
自分の部屋ではなくアパート1室全て確認しなければいけないという事に
押し潰されそうだった。
でも、やらなければ仕事に行けない。
30分で出来る自信はなかった。
だから1時間という時間を確認の為に費やすため・・・
早起きをし、出勤1時間前には家の点検をし始めていた。
なんとか、1時間で終わらせる事が出来れば自分の中でも納得がいき
誰にも迷惑かけなかった。自分が苦しかっただけで終われたと思えた。
最後に玄関の鍵を閉める。
玄関のノブがとれてしまうんじゃないかというぐらい何度も何度も
ガチャガチャと鍵がかかっている事を確認した。
気が済むと・・・アパートの裏にある駐車場まで歩く。
そして、車にエンジンをかけ出発する。
職場までの通勤時間5分・・・
私の事を考えアパートを借りる際に職場の近くにしてもらったのだ。
そんな短距離の道でさえ怖くて仕方なかった。
横断歩道が特に苦手なところだった。
自分が見落として人が渡っているかもしれないのにひいてしまったら
どうしよう・・・
ひいてもいない、人影さえもない無人の横断歩道に私は怯えていた。
なんとか職場に着く事ができても私の頭の中は家から職場までの通勤道が
本当に何もなかったのか・・・自分の運転に誤りはなかったのか・・・
自分のしてきた行動、見てきたものを思い出し何度も何度も頭の中で
確認していた。
車が大丈夫だと確信がもてたら次は家はちゃんと点検したのか・・・
家のことが気になりどこをどんなふうに点検したのか思いだし
頭の中で確認する。
家の事、車の事に確信がもてたのは・・・職場についてから3時間後だった。
仕事をしながら3時間頭の中ではこのような考えても仕方のない事を
考えていたのである。
人の目があるので自分の行動がおかしいと思われないように
考えてるが為に仕事で失敗をしたりボーっとしていたりという事が無いように
私のこの変な感情が誰にも知られないように必死で考えながらも自分を隠し
今までどうり、人の前では笑い仕事もテキパキとやり私の状態を絶対に
知られないようにしていた。
恥ずかしい事だと分かっていたからだ。
こんな事に3時間も時間をかけている自分がおかしいと分かっているからだ。
職場の人にはなんとか知られる事も無く月日が過ぎ去って行った。