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インテルセクト 2




 職業案内所で仕事を探してみるが、なかなかいいのが無い。

 一番の希望は時間が自由に取れることなのだが、さすがに数ヶ月単位で休みをくれるところはない。

 日雇いでも短期でもいいが、給料は高くても旅にいけるほどの額じゃなかった。

 貯めても一年に一回旅にでるのが精一杯だろう。

 だからといって給料全額貯めることにして、フォレやクラージュに養ってもらうわけにもいかない。


「まさか、異世界で就活とか……。

 というか、仕事選びの縛りがきつすぎ」


 それにしても、まさかマッサージが、この世界でも資格必要だとは思わなかった。

 試しに資格をとる方法を調べてみると、学校に入れなければならず、入学金に五百万ほどかかって、卒業か退学かよほどのことが無い限り数年間は学校から外出できないとなっていた。


「なんでこんなに条件厳しいんだよ……」


 溜息が出る。

 氣のおかげでとりあえず力仕事はできる。

 最終的にはこれでいくしかないかと思うが、もう少し自分に何かできることはないか考えてみる。


「前の世界で何かないかなぁ」


 頭が煮詰まってしまってるので、外に出て冷やすことにする。

 木陰のベンチで考えていると、猫が膝に乗ってきた。

 人懐っこく触っても逃げないので、後でフォレに餌でも買ってもらおうと頭の片隅で考えながら撫でる。

 前の世界にヒントがないかと考えてみたがない。

 文明の進み方と発達の仕方が違うので、どう応用していいかわからない。

 確かにこの世界の文明は元の世界の数世紀前だが、魔法があるので実際は二十世紀並の文明レベルかもしれない。

 そうなると俺が思いつく程度のことは全部している可能性が出てくる。


「はぁ……。

 理系に進んでたらよかったか、いや俺の頭じゃ無理かぁー」


 溜息しか出ない。

 悩んでいると、猫のだらしない声が聞こえた。

 ん? と下を見てみると無意識のうちに猫をマッサージしていたらしい。


「んー、気持ちいいか?

 じゃあ、もっと気持ちよくしてやろう」


 氣を生み出して、手を温める。

 猫は完全にリラックスして身体をこちらに預ける。


「はぁ、猫に効いてもしょうがないんだよなぁ」


 ふと引っかかるものがあった。


「猫……、動物、動物ねぇ。

 いやでも、この世界ってそこまで動物に優しいんだろうか、ああいう考えって現代ぐらいに出てきたものだろうし、それにニッチ過ぎて需要があるとは思えんけど……。

 一応フォレに相談してみるか」


 思っていると丁度、フォレが来た。


「猫と戯れて何しておるんじゃ、ノーリ」

「ちょっと外で頭を冷やそうと思って」

「そうか。

 それで、何か仕事はあったか?」

「やっぱり、日雇いとかしかないな。

 ただそうなると旅の資金を貯めるにはかなり時間がかかる」

「じゃろうなぁ、やっぱりクラージュに頑張ってもらうしかないかの」

「ただ、現実的に無理そうなのを一つ思いついたんだけど」

「現実的に無理なの思いつかれてものう。

 まぁいい言ってみろ」


 思いついたことをフォレに説明する。


「ふむ、面白いことを思いつくの。

 だがまぁ、ノーリの世界ではどうだったか知らんが、この世界では厳しいのう」

「外国とかならメジャーらしいけど、俺が住んでた国じゃマイナーではあった」

「でも、やってみる価値はあるの」

「あるの?!」

「問題しかないがな。

 だが上手くいけば稼げるかもしれん。

 まだ何かあるかもしれんノーリ、お前の世界のマッサージ屋とはどういうところじゃった?」

「そうだな、男なら肩こったり腰痛めてたりしたら行くところだけど、女なら美容目的とかかなぁ。 

 あとアロマとか焚いたり」

「アロマ?」

「この世界にはないのかな、植物のエキスをいれた水を沸騰させて、水蒸気を作るんだよ。

 で、匂いで精神を安定させたりするんだ。

 他にも肌に直接塗るアロマオイルとか蝋燭に混ぜてアロマキャンドルとかもあったなぁ」

「いや、植物のオイルを使うマッサージはあったが、そういうのもあるのか」

「マッサージじゃないけど似たような効果のもので、細長い針を身体に刺したり、葉っぱを加工して固めた物を背中のツボにおいて燃やすとかあるな」

「なんじゃその拷問」

「マッサージとは違う選択肢として、してるところもあったんだよ。

 俺はうけたことないけど、結構効くらしいぞ?

 まぁ俺はできないけどな」

「そうか。

 まぁ、色々と参考になった。

 さて、どうクラージュを説得するか……」


 やっぱりクラージュに迷惑をかけることになるのか。

 クラージュがいなかったら今頃どうなってたんだろう。




 クラージュのもとに帰ると昼食を作り終えていた。


「あ、そろそろ帰ってくると思ったんで、ご飯できていますよ」

「おお、すまんの」

「いえいえ。

 それよりどうでした?」

「ちょっと厳しいのう。

 じゃから頼みがあるんじゃが」

「はい、なんでも言ってください」


 クラージュ、内容も聞いていないのにそういうこと言っちゃ駄目だ。


「ノーリが面白いことを思いついてな、それをやろうと思うんじゃが、多分儲からん。

 じゃから、もう一つお金を稼ぐ方法として、お菓子を売る店をやろうと思う。

 まぁ喫茶店でもいいが、十分な広さの建物を借りれるかわからんしの」

「あの、アルブヴェール?

 お菓子作るのって、誰ですか?」

「そりゃ、一番上手な者に決まっておるじゃろ」

「あの、私これでも戦士なので、そういうのは苦手っていうか趣味で作るぶんにはいいんですが、冒険者ギルドで依頼貰ってきたほうが、性にあってるんですが」

「もし急ぐ依頼を受けてたらいざというときに旅立てんじゃろ。

 それに、なんでも聞くって言ったじゃろ。

 ということで、これを食べたら飲食店系の組合に行って登録して、その後また不動産屋にいくとしよう」


 クラージュは観念したように頷いた。




 昼食を食べ終えて、組合に行き、不動産屋へ来た。


「あれから色々考えて、飲食業とあとちょっとしたことをしようと思いまして、十分な広さの建物はあるでしょうか。

 住居としても使いたいんですが」

「うーん。結構高くなるよ?」

「できれば安いところがいいんですが」

「無いねぇ。

 まぁ訳ありでもいいなら無いわけでもないけど」

「ほう、どんな訳ありなんじゃ?」

「いやな、簡単にいうと幽霊が出るんだよ」

「幽霊?

 なら、浄化系の魔法でどうにかなるじゃろ」

「それが、かなり力のあるエルフが試したんだけど、駄目だったんだよ」

「それは凄いの。

 それだけ無念の死をとげたのか、その建物の持ち主は」

「いや、幸せそうに逝ったよ。

 いわくつきの土地でもないし、不思議なんだよね。

 だから、結構大きい貸し店舗で広い庭も付いてるのに、今では借りようとする人すら来なくてね、困ってるよ」

「それはどこにあるのあの?」

「行ってみるのかい?」

「いや、場所がよかったら借りよう」

「死人こそ出ていないが、住んだ人はノイローゼなるような建物だよ?」

「駄目なら逃げ出すだけじゃよ」

「ここだけど」


 不動産のおじさんは地図を取り出して、指差した。


「ほう、なかなかいい場所にあるの。

 建物の間取りはどうなっておるのかの?」

「こんな感じだよ」

「ふむ、ちょっと手を加えねばならんが、大丈夫じゃな。

 クラージュここを借りよう」

「実際に見なくていいんですか?」

「そうだよ、せめて一泊してみたらどうかね。

 それからでも遅くないだろ」

「まぁ、二人がそう言うのなら、そうするか。

 じゃあ、今日から二泊三日で泊まるから、鍵を貸してくれんかの?」

「お嬢ちゃん、積極的だし肝が据わってるねぇ。

 お姉さんも大変だね」

「ふふふ、これでも結婚しておるからな」

「このお兄さんとかい?

 ああ、頼りなさそうだもんね、お嬢ちゃんがしっかりしてるのも頷けるよ」


 確かにさっきから一言もしゃべってないけど、……まあそういう評価になりますよね。


「じゃあ明後日、僕のほうから行くから、そのときに鍵を返してくれればいいから。

 その前にも返しに来てくれてもいいよ」

「その言い方じゃと、三日もった奴はおらんのかの?」

「大体一ヶ月はもつよ、一番短いと借りた次の日に出て行ったけど」

「ほう、それは楽しみじゃ」


 フォレは鍵を受け取った。




 一度荷物を取りに宿に戻って、屋敷を目指す。

 歩いていると段々と住宅地のような建物が並ぶ場所に出ていた。


「なんか、ガッツリと家建ててるんだな」

「まぁ、家の見た目をしておるが大体が貸し店舗じゃがな。

 前に言ったじゃろ、規則と税金さえ守れば好きにしていいと、当然家を建てるのもありじゃ。

 普通の家として使っている者もいるじゃろうが、わしらみたいに店をやる者が大半じゃな」

「でも、ここの土地って国のなんだろ、じゃああの不動産屋は?」

「国営じゃよ。

 国から借りた土地をさらに誰かに貸すとこもあるようじゃが、そっちは借り賃が高くなる。

 建物自体は土地を借りた者が建てたものじゃが、まぁ色々な理由で出て行ったのを、国が再利用してるんじゃな」


 出て行かないようにしなければ。


「国営じゃから安いと言ったが、城壁の近くなるほど中々手を出しづらい額になるから、さっきまでいたような市場のような場所が多くあるんじゃ。

 で、今わしらが向かっている貸し店舗はいわくがあるから、ここら辺でもかなり安くなっていてわしらでも借りれるというわけじゃな」


 そうして歩いていると、他の建物とは違った雰囲気の建物が見え始めた。


「ここじゃな」


 たしかに周りの店舗よりは大きく庭も広そうで木々が生い茂っているのが見える。


「これは、思っていたよりいいところじゃな。

 何より木が生えているのが良い」

「そうですね。

 この辺りには、木々が少いですから、落ち着かなかったんです」


 森生まれは完全にこの建物を気に入ったらしい。


「幽霊でるのがなぁ」

「なんじゃ怖いのか、ノーリ」

「ええ、怖いです!」

「ノーリア、そんなことを力強く言われても困ります」


 そんなこといわれても、心霊現象とか好きだけど実際に遭遇したら怖いのは当たり前だと思う。

 元の世界なら気のせいだと思えるが、ファンタジー世界じゃ本当にあるから、虚勢張ってもしかたがない。


「そこらへんはわしがどうにかしよう。

 とりあえず、中に入って様子をみることにしようぞ」


 建物の中に入っていくときなにやら視線を感じたが、気のせいだったらいいなぁ。




 窓を全て閉め切っているので、夕方前でも暗くフォレに灯りを出してもらって、一回から窓を全部開けていく。

 そして、建物の窓を全部あけて適当に部屋割りを決めて、荷物をおいた。


「どうなるかなぁ」


 そう呟いたとき、後ろに気配を感じて振り返ってみたが、誰もいなかった。


「うわぁ、定番から入ってきたか」


 どうしよう、普通の人間としては、耐えれそうにないかもしれない。

 フォレさんが早くどうにかしてくれるのを、祈ろう。


「ノーリ、明るいうちに、蝋燭を蝋燭立てに刺しておくぞ」

「ああ、わかった」


 二人で建物中の蝋燭立てに蝋燭を刺して、厨房にいるクラージュの元に行った。


「どうじゃ、厨房は使いやすそうかの?」

「はい、大丈夫です。

 勝手に戸棚が開閉したり、変な気配があったりしますが、問題ありません」


 それは大いに問題あるんじゃないだろうか。


「それに、前の持ち主の食器もそのままで、素敵な物ばかりなので、商売にも使えそうです」

「そうか。

 さて、どう改装しようかのう、普通の家として作られてるようじゃし、ちょっとお店として使うには不便じゃからの」

「この建物って勝手に改装していいんですか?」

「不動産屋が貸しているのはあくまで土地じゃからな、建物自体はおまけじゃ。

 自分達で費用を出すなら、取り壊して新しく建てるのも自由なんじゃよ」

「それなら、なんで今までの人たちは、そうしなかったんですかね」

「ここを借りるお金はあっても、そこまでできるほどのお金がなかったんじゃよ。

 それで、貯まるまで耐えれんかったんじゃな」

「なるほど」


 ――バンッ!


 厨房の扉が突然勢いよく閉まった。


「うおっ!」

「ノーリ、ナイスリアクション」

「怒らせましたかね?」

「じゃろうな。

 一番早く出て行った者は、この土地を更地にするつもりじゃったらしいからの。

 まぁ大体の正体はわかったし、対応はあとじゃな」

「アルブヴェール、わかったんですか?」

「クラージュはまだわからんのか?

 そっち方面も鍛えんといかんの」


 クラージュは余計なことを言ってしまったというような顔をしたが、どの道そういう運命だったんじゃないかと思う。


「とりあえず、次は庭を見てみるか」

「そうですね」


 二人が余裕すぎて、なんか嫌になる。

 庭に出るために玄関ホールにくると、二階の廊下に黒い影が入っているのがみえた。


「フォレ、なんか二階にいるぞ」

「ん? 幽霊じゃろ」


 軽くスルーされて、ちょっと悲しくなった。

 庭にでると、思っていた以上に広くて、あと家が二軒ほど建ちそうなぐらいあった。

 木々は塀に沿うようにだけ植えられてる。

 庭の建物側半分は庭園があったようだが、形跡だけでなくなっている。


「これだけ土地があれば十分じゃの。

 クラージュ、一部しか使わせてやれんがハーブでも栽培してみるか?」

「いいんですか?

 ならそうさせてもらいます」

「一部だけしか使ったらいけないのか?

 これだけ広いんだし、好きなだけ使わせたらいいのに」

「ちょっと理由があってな、まぁそれを知るのは大分先の話になるが、楽しみに待っておるがよい」


 凄い嫌な予感がする。


「しかし、案外厄介な幽霊じゃのう」

「フォレがそういうってことは、結構強いのか?」

「いや、吹き飛ばさずにやるのが面倒だというだけじゃ、穏便に話ができるばそれが一番いいんじゃがな。

 まぁそれは夕食の後に片付けるとしよう、そうせねば静かに眠れんからの」


 それまでは三人一緒にいるように言われたので、夕食を作るクラージュを手伝う。

 夕食を食べ終えて片付けて、三人で玄関ホールに来るまで何も起きなかった。


「さて、さっさと片付けるかの。

 わしはここを借りること決めた。それを阻止しようとするなら容赦なく排除するつもりじゃ。

 もし嫌で何か言いたいことがあるなら出てくるのじゃ」


 フォレがそう言うと、周りから幾つもの不気味な笑い声が響いてきた。


「何かあるなら、出てこいと言うとるじゃろう」


 不気味な笑い声が、苦しそうな声に変わった。

 そうして、目の前に光の輪で縛られた黒い影が現れた。


「これがこの建物の幽霊?」

「ちがうの。

 これは精霊の類じゃな」

「精霊ですか?」

「うむ。

 長い年月の間に物に魔力が宿って意思を持ったものじゃ。

 わしと似たような存在じゃな」


 いわゆる付喪神というやつか。


「ココハ、ゴシュジンノモノダ、デテイケ」

「そのご主人は死んだじゃろ、幸せそうにとも聞いておる。

 何か恨みを残したわけではないんじゃし、わしらが使ってもよかろう」

「ココハ、ゴシュジントオレタチノオモイデガツマッタバショダ、ダレニモツカワサセナイ」

「ふむ、思い出の場所に入ってほしくないというわけか、なるほどの。

 ならば、改装はやめよう。しかしわしらも住む場所は欲しくての、この建物は理想的なんじゃ。

 じゃから仲良くやっていこうではないか」

「デテイケ!」

「あんまり手荒なことはしたくないんじゃがな」

「フン、キサマラゴトキ二、オレタチヲドウニカデキルカ!」


 玄関ホールのいたるところから黒い影が出てきた。


「交渉決裂というやつじゃな」


 黒い影が一斉に襲い掛かってきたが、フォレの足元に魔法陣が描かれ光のドームが現れて阻まれる。

 そして、それが拡大していく。

 黒い影は光のドームに押されていって、壁に挟まれると消えていった。


「やった?」

「まだじゃな」


 光のドームは建物の壁をすり抜けていく。


「庭に出るぞ」


 フォレはそう言い歩き始めたので、俺とクラージュは後についていく。

 庭に出ると黒いモノを閉じ込めた光の球が中に浮いていた。


「こいつらはの、この敷地内にある物一個一個すべてに意思が宿って、それが集まった集合体じゃ」

「土地もですか?」

「そうじゃ。

 この狭い敷地の神獣じゃな。

 こいつらのご主人というのは、魔力が強かったみたいじゃし、色々と興味深い物を集めるのが趣味だったようじゃな。

 でなければ、この建物を建てて不動産の男が死を見取った僅かな期間では、これだけの力は持てん。

 エルフが浄化しようとしたらしいが、ある物全てじゃからな、どこまで気付いていたか知らんが、一部を浄化しても他が残っていたら元通りじゃから、無理だったんじゃろうな」

「ナンナンダ、キサマハ」

「おぬしらと同じ存在じゃよ。

 まぁこことは比べ物にならいないほどの魔力から生まれたがの」


 光の球が徐々に小さくなっていく。


「わしはここが気に入ったからの、共に暮らすことができんというなら、消えてもらってわしの魔力でこの土地を支配しようかの」

「マテ!」

「待ってどうする? わしには待つ理由がないが」

「オレタチガキエタラ、ホンタイハドウスル」

「店で使ってもいいが、売れるものは売ろうかの、所持してても面倒なのが多そうじゃし。

 それと、おぬしらがいなくなるのじゃ、改装もしよう」

「スマナイ、アヤマルカラ、オレタチヲケサナイデクレ。

 ナカマトハナレタクナイ!」

「わしらに得がないのう」

「アナタノドウグニナル」

「ふむ。

 わしらの道具になるならよいぞ」

「ワカッタ!」

「よかろう。

 一応首輪をつけさせてもらうぞ」


 光の球が一瞬強く輝くと消えた。

 一連の流れを黙ってみていたが、最後のほうはフォレのほうが悪役に見えというのは黙っておこう。


「お見事でした、アルブヴェール様」

「ふう、上手くいったの。

 なかなか使い勝手の良い召使ができたの、これで長く留守にするときは安心できるのう」


 やはり元々そういう考えだったのか。

 でも、最後まで応じなかったら本当に消していたんだろう。




 二日後。

 不動産屋のおじさんが、呆然としながら俺たちを見た。


「これはどういう……」


 無理もない、目の前を紅茶が入ったカップが飛んできたのだから、こんな反応にもなる。


「ここの幽霊とお話をしてな、一緒に住むことになったんじゃ。

 とうわけで、ここを借りる手続きをしたいんじゃが」

「そ、そうですか。じゃああとで書類を持ってこよう」


 おじさんは考えるの放棄したようだった。


「そういえば、飲食の他に何かすると言ってましたが、何をするんですか?」

「マッサージをしようと思う」

「しかし、旦那様は資格は持っていなかったはずじゃ」

「いや、人間相手ではなく、動物のマッサージ屋じゃ」




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