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これから その4



 とりあえず、森に来た経緯を空間に穴が開いてて運悪く飛ばされたというか流せれてきたと説明すると、


「転移魔法の跡や自然魔力の暴走による空間の乱れに巻き込まれたということですか」


 そう納得したので、間違ってはいないから別の世界から来たことは省いた。

 それからフォレさんと会ってからのことを説明する。


「それで、キスされて――」

「キィっ?!」


 突然、奇声を発した。

 なんだと驚いたが、つい話のながれで無意識にキスされてしまったことを口走ってしまったと気付き嫌な汗が出る。


「あ、あの、状況的にしかたがなかったんです。

 それでえっとこのことは、お姉様にご内密にしていただけませんでしょうか?

 あと、俺がクラージュさんに言ったというのもフォレさんには秘密ということで」

「わかりました。

 このことは聞かなかったことにしましょう。私も拷問で人が惨たらしくなるのは見たくないので」


 話がわかる人でよかった。


「とりあえず、それでフォレさんが魔法で黒いドラゴンを種にして終わらせて、エルフの村に来たんです」

「なるほど、そういうことでしたか。

 まぁアルブヴェール様が話したがらないのも、わからなくはないです。

 それにしても氣を利用したマッサージで穢れが出るですか」

「ほとんど氣による作用でマッサージは関係ないですけどね」

「そうですか。

 でも、少し興味はありますね」

「エルフもマッサージはしたことはないんですか?」

「いえ、戦闘訓練後に自分でマッサージはします。

 ただ、氣を使用したマッサージというのは聞いたことはありません。

 氣によるそういう作用も聞いたことはないので、ノーリア殿の氣が特別なのでしょう。

 光の点と線ですか、それはエルフにも見えるのでしょうか」

「いや、やったことないんでわからないです」

「そうですか。

 確かめたい気はしますが……」


 まぁ、俺がエルフだとしても初対面の相手に身体を触らせるのは嫌だよな。


「それなら手だけ試してみますか?

 光の点と線は身体中にあるので、当然手にもあります。

 確かめるだけなら、それだけで十分だと」

「手だけでもわかるなら、お願いしてもいいですか?」

「もちろんです」


 氣を生み出して、魔法陣を発動させる。

 クラージュさんの手を触らせてもらい、氣の量を増やしていくと、フォレさんのときよりは少ない量でクラージュさんの手にも光の点と線が見えた。


「見えましたよ」

「どこに教えてもらってもいいですか?」


 クラージュさんに指差しで教える。

 俺が教えられた部分をクラージュさんは魔法でマーキングした。


「片手だけでも大分ありますね」


 クラージュさんは自分の手を興味深そうに観察して、しばらく握ったり開いたりしていたが、動きが止まった。

 黙って見ていたが、ずっとそのままなので、ちょっと心配になってきた。


「あの、俺なんか変なことしました?」


 どう考えても、俺が教えたことが原因っぽいので遠慮がちに聞いてみると、クラージュさんは頭を振って否定する。


「すいません、身体の全ての光の点と線を教えてもらってもいいですか?」

「いいですけど、触らないとわかんないですけど……」

「正直、抵抗感はありますが、この際しょうがありません!」


 なんか凄い決意で言ってきて、何がクラージュさんをそうさせるのかわからないが、大丈夫だということなので頼まれたとおり教えることにする。

 とりあえず、座ってもらい肩に手を置いて見てみる。

 見えた場所を教えるが、何か違和感がある。

 なんだろうと考えていると、見えている場所の数がフォレさんと違うのだ。

 氣の量が少ないからかと思い増やしてみたが、少しは増えたがそれでもフォレさんの数とは違っていた。

 人間の姿に変身したドラゴンとエルフの差なのかなと思うが、本で見た人間の場合の数よりも少ないような気もすると考えこんでいると、つい肩を揉んでしまった。

 その瞬間、見えている場所の数が増えた。


「えっ?」

「どうしましたか?」

「いや、それが、なんか見える数が少ない気がして考えていると、つい肩をもんでしまったんですが、その瞬間見える数が増えたんですけど」


 自分でもどういうことなのか上手く説明できない。


「それは……、もしかしてですが光の点と線が見える要因の一つにノーリア殿の知識が関係してるのではないでしょうか」

「えっ?

 でも、肩を揉むまで忘れていたわけではないですよ?」

「身体で覚えているというか、マッサージをすることがトリガーとなって、知識と見える部分を繋げているのではないかと。

 光の点と線は実際に目で見ているわけではなく、目で見ているように感じているだけなら、ありえます」


 知識だけでは見えず、触ってやっとわかるというのは、やっぱり俺が未熟だからだろうか。


「クラージュさんの言うとおりなら、あの、全身マッサージをしなきゃいけなくなりますけど」

「……どうにかして、見る精度を上げれませんか?」

「あー……、触ったらまずい場所の周辺をマッサージするときに氣の範囲を拡げて、補完していくってのはどうでしょうか。

 あくまで場所の知識がないわけじゃないんで、直に触らなくても見えている場所とかもあるので、それで大丈夫じゃないかと」

「わかりました、それでお願いします」


 マッサージすることになり、あらためて触ってみると、やわらかくてビックリした。

 氣や魔法で身体を強化しているといっても、フォレさんと闘っていたのだから鋼のような筋肉をしていると思っていたのだが、思いのほか柔らかかった。

 前にアスリートの筋肉は使っていないときは柔らかいと聞いたことはあったが、こういうことなんだと理解した。


「うん、柔らかい」

「あの、私から頼んでことですが、感触の感想を言うのはやめて欲しいのですが」

「あ、すいませんでした」


 とりあえず、細心の注意を払ってマッサージをしながら光の点と線を教える。

 光の点にフォレさんのような穢れがついているということはなかったが、光の線が歪んでいる部分があった。


「クラージュさん?」

「ぅんぁ? ……はい、なんですか」

「俺はマッサージは未熟ですし、戦ったり……というかスポーツとかしないんで断言できないんですけど。

 なんか変な癖とかあります?」

「どうしてですか」

「今ここを触ったんですが、こっていて光の線も歪んでいたんです」


 わかりやすいように親指で押して大まかになぞる。


「っぁん……」


 クラージュさんの声に反応したら、ただではすまない。

 本能で悟って努めてスルーする。


「えっとーですね。

 クラージュさんは適度に運動をしているだろうし、姿勢も正しいので歪むっていうことは、過剰な訓練とか変な癖がついているからじゃないかなぁと思いまして」

「そう……ですか。

 それは氣やマッサージでどうにかなりますか?」

「試してみないとわかりませんが。

 俺が未熟なので無理だと思います」

「他にもありましたか?」

「俺が気になった部分はここだけですが、ちょっとそれっぽいところもあったような。

 それに、マッサージしていない部分もあるんで、まだ見つかるかもしれません」

「なら、少しでも気になったぶ部分と、これからのするところで見つけたら教えてください」

「わかりました」


 それから、トータルで一時間ちょっとマッサージをした。


「どうでしたか?」

「思った以上に身体が軽くなりました。

 正直なところ、激しい運動したときのケア程度の認識でしたが、少し認識を改めたほうがいいかもしれません。

 そして、アルブヴェール様が話したがらいのがよくわかりました。

 これはまずい、とくに姉にしられると、まずい……」


 かなり深刻な表情でクラージュさんは言った。


「それで、つい頼まれるがままにマッサージしましたけど、どうしたんですか?」

「手だけ教えてもらったときに、氣を使用してみると運用効率があがったんです」

「それがどうかしたんですか?」

「ノーリア殿は戦闘をしないのでわかりづらいですか。

 そうですね、エルフにとっても氣というのは重要な力なんです。

 しかし、種族的に魔力よりで人間よりも氣の量は何倍もありますが、魔力のほうが応用性も高く結果も出しやすいので、魔力よりは重要度は下がります。

 だから、氣に関しての技術は人間よりも劣っているんです。

 ですが、ノーリア殿のおかげで、氣を魔力と同程度の結果を出すことができるようにできるかもしれない」


 つまり、より強くなれるということなんだろう。


「それで、より氣の運用効率を上げるために光の点と線の場所を教えてもらいました。

 そして、これがそれを実現させるための、魔法です」


 クラージュさんの身体に小さい魔法陣が無数に現れて、ラインで結ばれていくと消えた。


「すいませんが、歪んでいた場所がどうなっているか確かめてもらっていいですか?」


 お願いされたので触ってみると、歪みが正されていた。


「治ってる……。

 もしかして俺みたいに魔法で氣を使ってるんですか?」

「成功していて良かった。

 はい、氣をただ使うだけなら魔法と両立できるのですが、氣を効率的に使用しよと思うと、意識をそちらにも向けなければならないので、集中できません。

 なので、使い慣れていて自動で機能させることができる魔法を使って気を制御するほうが適しているんです」

「そういうことですか。

 それで、使用してみてどんな感じですか?」

「そうですねぇ……」


 風も無いのにクラージュさんの周りに土煙が上がった。


「え?」

「これほどとは、もし昨日この魔法があったら、試験を合格できたかもしれない」

「それ、そんなに凄いんですか?」

「想像以上です。

 氣を極めた人間が、ドラゴンを倒した話を聞いたことはありますが、本当だと思えるほどです」


 想像以上に成果が出て、クールそうなクラージュさんが興奮している。


「じゃあ、昨日より前に会えていたらよかったですね」

「いや……あのちょっと興奮してしまって、合格できたかもは、少し言い過ぎました。

 そもそも、合格ラインがわからないので、もし合格を目指すならアルブヴェール様を倒すということなので。

 それに、私としては試験の合格はどうでもよかったんです」

「ああ、フォレさんに成長具合を見てもらいたったんですね」

「そうです。

 元々アルブヴェール様の時間があるときに見てもらうつもりでしたし。

 実際、最初試験は見学していたんですが、姉が……」

「ああ……プリエールさんが……」


 だいたい何があったのか察しがついた。

 クラージュさん溜息を吐いていたが、いきなり後ろを向いた。


「何か用ですか、アドミラシオン」


 えっ? とクラージュさんが見ている場所を見ると、アドミラさんが出てきた。


「さすが、クラージュお姉様。見つかっちゃいました。

 今日こそ抱きつけれるチャンスだと思ったのに」

「私の隙をついて抱きつこうとするのは百年早い。

 ですが、この距離まで後ろをとらせてしまうとは。

 成長期に入ったら、すぐに抱きつかれてしまうかもしれませんね」

「クラージュお姉様に褒めてもらえた!

 でも、今回は運が良かっただけです。

 遠くでもわかるほどにリラックスなさってたんで」

「そ、それは……思ったより気が抜けてましたか……。

 私のほうが精進が足らなかったようですね、気を引き締めなければ」

「あー、失敗した。

 もう当分チャンスがないかも、もっと真剣にやってればよかったよ」


 アドミラさんは本当に残念そうに言った。


「ところで、クラージュお姉様と、おにーさんは何をしているのかな?」


 なんだろう、おにーさんの部分で一瞬凄い棘を感じた。

 いやまぁ、大体察しはつくんだけども、深入りしないほうが身の安全だ。


「偶然ここで会って、色々話をしていたんですよ、アドミラシオン」

「そうなんですか?

 なにか魔法使ってるみたいですけど」

「ああ、会話の中で、新しい魔法が思いついたので、見せていたところです」

「へぇ、どんな魔法なんですか?」

「強化魔法の一種ですかね。

 氣を魔法で効率的に運用するんです」

「魔法で氣の運用ですか?

 どういうものかいまいちわかりませんが、普通に使ったほうがよくないですか?」

「それは、説明してもいいが、実際に使ってもらったほうがわかりやすいかもですが。

 しかし……」


 そう言ってクラージュさんは俺を見た。

 多分、魔法を教えるのは簡単なんだろう。

 しかし、クラージュさんとアドミラさんの体格は違うので、俺が氣でアドミラさんに教えなくてはいけないのかもしれない。

 その場合、ここで何をしていたのか、アドミラさんが知ってしまう。

 俺はやましいことはしてないし、クラージュさんも必要だと思ったからマッサージを受けた。

 だからといって、異性に身体を触らせたことを知られるのは恥ずかしいと思うだろうし、触った俺をアドミラさんからしたら、抹殺の対象にしかない。


「クラージュお姉様?」

「とにかく、創ったとはいえ思いたものを形にしただけですから、アルブヴェール様に見せて意見を頂きたいと話していたんです」

「そうなんですよ、アドミラさん」

「ふーん、そうなんですか。

 まぁいいですけど。

 それより見せたいなら、見せに行きましょうクラージュお姉様。

 さっき宿舎の前でアルブヴェール様とお会いしたんで、見てもらう時間はある思いますよ」

「フォレさん、用事終わったんだ」

「ああ、そういえば探してましたよ、おにーさん」

「夕食を一緒に食べる約束をしてたから、それかな?

 夕食までには早いけど、とりあえず、行きましょうか」

「そうですね、行きましょう」


 アドミラさんの話だと、フォレさんがプリエールさんと宿舎から出てきたところで会ったらしい。

 なので、まだ近くにいるかもしれないので、宿舎に向かう。


「それにしても、ちょっと意外です」

「何がですか?」

「クラージュお姉様が、思いついたばかりの魔法を誰かに見せるのがです」

「そうなんですか?」

「クラージュお姉様って、プリエール様より弱冠魔法が苦手だから、恥ずかしがって完璧にできたと思わないと人に見せないんだよ」

「へぇ、それなら確かに今見せにいこうとしているのは意外ですね」

「でも、一人で創ると視野が狭くなるでしょ、だから普通なら気付いて取り除ける欠陥でも、そのまま残っててね、手の施しようがないことも多々あるんだ。

 あたしの知る限り、魔法を創った数はプリエール様よりクラージュお姉様の方が多いけど、使えるのはその半分未満ぐらいなんだよ。

 だから、今回のかなり自信がある魔法ってことだね」

「いや、これは補助魔法なので、普段作っている攻撃魔法とは違って……」

「ああ、魔法ができたとき、これがあったら昨日の試験も合格していたって豪語してましたよ」

「ちょっと興奮して舞い上がっていたときの言葉を言わないでください!」

「あれ、クラージュお姉様試験に受かりたかったんですか? てっきり……」

「いえそのとおり、姉さんに言われて出ただけですよ」


 アドミラさんが胸をなでおろした。


「それはよかったです。

 クラージュお姉様に出て行かれると、とてもとても寂しいですから」

「ありがとう」

「再戦するための方法を教えるかどうか、一瞬迷っちゃいました。

 着いていかないなら教えてもいいかなぁと思っちゃいます」

「え、そんな方法あるんですか?

 フォレさんってそういうの許してくれないイメージがあるんですけど」

「ちょっと危ない橋を渡ることにはなるけどね。

 危ないって言っても、アルブヴェール様を怒らせたり、怪我をするようなことじゃないから」


 そこでなんで俺の肩を叩くんだろう。


「アドミラシオン、駄目ですよ、ノーリア殿を困らせたら」

「いえ、無理強いなんてしません、クラージュお姉様」

「そうですか? ならいいですが」

「それにしても、当分見てもらえる機会がないなら、緊張感がって実際使用しているところを見てもらいたいですねクラージュお姉様」

「まぁ、そうですね。

 戦いに使う強化魔法ですから、戦闘の中でしかわからない欠点とかあるかもしれませんし」


 そう言うクラージュさんの横で、チラッとアドミラさんが俺を見た。

 アドミラさんの目は、やってくれるよね、と言っていた。

 そして初めてあったときから、この人に抵抗できる気がしないので、


「あの、えーと、フォレさんに再戦する方法を聞いてみたいかなー」


 そう言ってしまう。


「聞きたい? 聞きたいよね」

「ええ聞くだけなら……」

「やっぱり興味あるよね」

「どうしたんですか、ノーリア殿」

「興味が、興味があったんですよ……」

「まぁ私も興味ありましたけど」


 それでも怪しがるように見てくる。


「じゃあ、説明すよ」


 クラージュさんが完全に怪しがる前に、アドミラさんは説明を始めた。


「え? そんなことでいいんですか」


 説明を聞いて俺はついそう言葉が出た。


「うん」

「これぐらいな、やってもいいかなぁ。

 やって駄目だとしても、なにかありそうでもないし」

「私もちょっと過激なものを想像してましたけど、もしご迷惑にならないのなら、お願いしてもいいですか?」

「危険そうでもないですし、いいですよ」

「うんうん、おにーさんならそう言ってくれると信じてたよ。

 じゃあ、早くアルブヴェール様のところに行こう」




 宿舎の前でばったりフォレさんとプリエールさんに出会う。


「フォレさん、アドミラさんから探してるって聞きましたけど、用事は終わったんですか?」

「おお、ノーリどこに行っておったんじゃ」

「適当に散歩してました。

 で、二人に会ったので雑談してました」

「そうか。

 二人ともノーリの相手をしてくれてすまんの。

 それで名前のほうは覚えたかの」

「まだですね。

 でも、もう大丈夫です」

「……そうか。

 まぁ、インテルセクトに着くまでに覚えたらよい。

 クラージュとアドミラシオンはこれから何か用事はあるかの?」

「いえ、ありませんが、アルブヴェール様にお願いしたいことがあります」

「ん、なんじゃ?」

「新しい魔法を創ったので、アルブヴェール様に見ていただいてアドバイスがほしいんです」

「ふむ。

 まぁ時間もあるし、いいぞ」

「ありがとうございます。

 それで一つ提案があるのですが」

「提案?」

「昨日の試験をもう一度行ってもらいたいんです」

「……どういうことかの?」

「はい、新しい魔法は戦闘系なので、実際に闘ったほうがいいアドバイスをいただけるのではないかと」

「それはわからんことはないが。

 試験と同じ形式で見るのではなくて、試験をしたいというのがわからん」

「そうしたほうが、緊張感があっていいと思いまして。

 実戦ほどの本気さはなくても、何か賞品があるほうがまだ真剣味が出るかと」

「緊張感に、真剣味のう」

「私もいい提案だと思います、フォレ様」


 予想通りプレエールさんが話しに乗ってきた。


「おぬしは……」

「私情など持ち込んでいません。

 フォレ様がいくら真剣に見ると言っても、簡単な手合わせと緊張感をもった闘いでは見えるものは違ってくるはずです。

 これはある意味、私情になるかもしれませんが、妹は将来村の守りの要になれるだけの才能があると思います。

 その妹の成長を助けるためにも、頼みを聞いてもらえないでしょうか」

「じゃがのー」


 フォレさんは渋る。

 それほど拒むことでもないと思うのだが。

 フォレさんは色々理由をつけて、旅に連れていかなければならない可能性があることを無くそうとする。

 正直、今のプリエールさんの言ったことのほうがもっともらしく聞こえるぐらいだ。


「まぁ、皆これだけ頼んでるんですし、受けてあげたらどうですか、フォレさん」

「ほう」


 フォレさんの視線が冷たくなった。

 まぁこれぐらいは予想範囲内だ。


「それに、明日から旅に出るんですし、フォレさんも森から出るのは自分の我侭だって言ってたんですから、もうちょっとサービスしてあげてもいいんじゃないですか?」

「ノーリは肩を持つか」

「いや、肩を持つっていうか、少しぐらい良いんじゃないかと」

「いえ、もういいんです、ノーリ。

 無理に試験を行わなくても、アルブヴェール様は見てくださるだけで十分です。

 私の我侭が少しすぎました」


 クラージュさんの言葉に、フォレさんの動きがピタリと止まった。


「え、でも……」

「アルブヴェール様にも色々とお考えがあってのことだろうし、ノーリとアルブヴェール様の仲を悪くしたくない」

「でも、こんな機会は当分ないんじゃないですか。クラージュ」


 視界の端でフォレさんがビクッと震えたように見えた。


「あのどうかしました。フォレさん」

「いや、ちょっと再試験をしてやってもいい気になっただけじゃよ」

「え、本当ですか?

 良かったですね、クラージュ」

「はい、ありがとう、ノーリ」

「……まぁいい、この際じゃもう一度受けたい者、新しく受けたい者がいるなら全員参加してよい。

 三十分後に昨日の場所で行う。

 連絡は頼んだぞプリエール」

「わかりました」

「さて、その間少しお茶でもしようかの、ノーリ」


 思った以上にドラゴンの尻尾を踏んでしまったらしい、フォレさんの笑顔が超怖い。


「は、はい」




 私はアルブヴェール様たちと別れて、装備を整えるためにアドミラシオンと家に向かう。


「クラージュお姉様のお家なんて久しぶりです」

「そんなに嬉しそうにしなくても、いつでも来ていいと言ってるでしょうに」

「いえいえ、クラージュお姉様に抱きつくという目標が達成されるまでは、自由に遊びに行くのは我慢です」

「そうですか、どういう拘りかわからないけど、好きになさい」

「はーい」

「それよりも聞きたいのですが、どうしてアルブヴェール様は心変わりして再試験をしてくれるのでしょう?

 貴女の言うとおりにしましたが、意図も理由もわからなくて」

「んー、クラージュお姉様は、もう少し乙女心を知ったほうがいいと思いますよ。

 女心は空のように千差万別に変化してきますけど、それでも共通する部分というのがあります」

「共通する部分ですか。

 貴女はそこを突いたと?」

「そうです」

「それは?」

「今回は嫉妬心ですね」

「アルブヴェール様が?!」

「クラージュお姉様、アルブヴェール様も後天性とはいえれっきとした女ですよ。

 おにーさん――自分の旦那様が―― 何か理由があったにしても、自分以外の女と呼び捨てあっていたんですよ、自分ですら呼び捨てにされたことがないのに。

 そんなの見たら多少嫉妬してもしょうがないですよね?」


 アドミラシオンの説明を聞いて背中に冷たいものが落ちてきた気がした。


「私は無事にすむと思いますか?」

「まー、アルブヴェール様も長いこと生きてますし、大人気ないことはしないと思いますよ。

 おにーさんのほうは知りませんが。

 一応装備をしとけば問題ないかと思います」

「そうですね。完全装備でいきましょう」




 三十分後、俺はフォレさんと一緒に中央広場にいた。


「やっぱり、クラージュさん以外挑戦する人はいませんね」


 広場に大勢いるが、全部見物人だ。


「もうちょっと気概が欲しかった気もするが、しょうがないかの。

 さて行くかの」


 フォレさんはすでに広場中央にいるクラージュさんのもとに歩いていく。


「アルブヴェール様、私の我侭を聞いてくださりありがとうございます」

「なに、わしもちょっと大人気なかった。

 二人旅というのがしてみたくての」

「あ、あのさっきのことなんですが」

「気にすることはないよ。誰かに入れ知恵されたんじゃろ?

 それよりもちょっと時間が押しておる、暗くなってきてもおるからな、空に星が見えるまでに終わらせたい、明日は早いしの。

 さて、始めようか」


 フォレさんが魔法陣を地面に描いた。


「一応言っておくが、ルールは昨日と同じじゃ」

「はい」

「では、好きな位置好きなタイミングで始めるとよい」


 クラージュさんはフォレさんから離れて向き合うと、深く深呼吸をして、ブロードソードを鞘から抜いた。


「おにーさん解説いりますか?」

「お願いします、アドミラさん」


 クラージュさんの身体が淡く光り、ブロードソードを構える。


「行きます」


 クラージュさんが宣言すると、消えた。

 速過ぎて見えない。


「消えた……」


 アドミラさんから、そう呟きが聞こえた。

 何故か見物人も似たようなことを呟いて、ざわめく。

 元から消えてるしようにしか見えない俺からしたら、何に驚いているかよくわからない。

 しかし、見えるはずのアドミラさんが消えたと言った理由に気付いて、ざわめいてる理由がわかった。


「アドミラさんの目でもクラージュさんが消えるぐらいに、動きが速いってことですか?」

「そうだよ。

 今はちょっと落ちてるけど、それでもアルブヴェール様と同等の速さで動いてる」

「クラージュさんて本気を出したらそんなに速くなるんですか?」

「たしかに昨日よりもクラージュお姉様は気合入っているけど、それだけでここまでにはならないよ」

「え、じゃあ……」

「多分、新しい魔法の効果だよ」

「え、アレそんなに凄かっんですか?」

「いやー私もそんなに凄いとは思えないんだけど、そうじゃないと説明できないっていうかー」


 クラージュさんは消えて見えないが、脚捌きや踏み込み剣が風を斬り鎧が擦れ互いを打ち合う様々な音が響いて、まだ健在なのを示している。

 そして時折、閃光が瞬いてその後に轟音がなり、魔法が撃たれているのがわかる。 


「クラージュさんは、まだいけそうですか?」

「うん。

 とりあえず、アルブヴェール様からできるだけ離れないようにしつつ、ヒットアンドウェイをして、どうにか保たせているよ」

「離れないようにヒットアンドウェイ?」

「連撃をせず、一撃を放ったら、素早さと魔法を駆使してアルブヴェール様の死角に逃げてるの」

「そんなこと可能なんですか?」

「普通は無理だけど、今のクラージュお姉様は速度が同じだからなのと。

 恐らくだけど、アルブヴェール様よりクラージュお姉様のほうが人型としての経験が多いからできてることだと思う」

「じゃあ、フォレさんはどんな感じなんですか?」

「えーと、全ての攻撃を避けて攻撃を当たられると思ったときに手を出してる感じかな。

 かなり余裕があるっぽい。

 それにただのパンチや蹴りに見えるんだけど、当たったら一撃で終わりだと思う。

 クラージュお姉様は、どうにか紙一重で避けてるけど」


 アドミラさんは解説してくれるが、かなり見入っている。

 クラージュさんが長く食いついていけるか、それともフォレさんの一撃で一瞬で終わるかの攻防が繰り広げられているんだから当然だ。

 でも、案外このままで膠着するんじゃないかと思ったとき、


「ふむ、新しい魔法の欠陥が見えてきたようじゃのう」


 フォレさんの身体がブレると、地面を擦りすべる音がして土煙が上がる。

 その中から、クラージュさんが素早く立ち上がって剣を構えた。

 大丈夫そうに見えたが、すぐにもう限界なのが見て取れた。

 肩で激しく息をして、体も痙攣しているように震えて、立っているのがやっとのようだった。


「その新しい魔法は氣を運用するためのものじゃな。

 いつも感覚で使っている氣を、幾つもの基点とラインを設定して効率よく使えるようにしておる。

 どうでもいいが、その設定された基点とラインは、どこかで覚えがあるの」


 フォレさんの冷たい視線が俺に突き刺さる。

 俺がクラージュさんをマッサージしたことに気付いたのだ。


「あとでノーリとはじっくり話をせんとならんな。

 それで続きじゃが、氣の効率化だけではこうはならん。

 もう一つの能力が本命かの?」

「い、いえ、違います」

「ならば、たまたまか。

 しかし無茶をするのう。

 肉体に氣を合わせるのではなくて、氣に肉体を合わせるとはな。

 氣は肉体に依存しておる、肉体に変な癖があったりしたら流れが歪むほどにな。

 じゃが、おぬしは流れを魔法で矯正して無理やり正しい流れをつくると、それを肉体に反映するようにしておるのじゃ」


 なるほど、だからさっき見たときに歪みが治っていたのか。

 だけどそれだけで、フォレさんと同じ以上の速さになったりできるのだろうか。


「元々の強化魔法、氣の効率運用、そして完璧な肉体操作が相乗効果でわしと同等以上の速度を出せるようになっておる。

 が、三つ目の肉体操作で身体が悲鳴を上げておるはずじゃ。。

 氣に合わせて肉体の矯正と簡単に言っても、ただ立っているだけなら何もないが。

 動いている途中で、氣のラインを正常化させてそれに合わせるために、筋肉を弛緩させて強制的に理想的な姿勢にして、力が入った状態に戻すということを何度も行っておる。

 そんなことをしていては身体が悲鳴を上げるのは当たり前じゃ。

 氣のラインの乱れというのは、無茶な動きや長年の癖からなるものじゃ。

 今回は後者じゃが、長年の癖ということは身体に染み付いておるから、それと同じ時間をかけて治さねば、逆に身体に歪みができる。

 それに、自動調節させるようにしておるから、肉体の変化と脳の認識が微妙にずれて、筋肉が緊張状態になっておらんか?」

「は、い……」


 クラージュさんが搾り出すかのように返事をする。


「その魔法を戦闘で使用するなら、日常生活で使って根本から身体の歪みを無くしてからじゃないと、今のようになるぞ。

 機能が単純じゃから改良する余地はほとんどないし、まぁ戦闘用というよりは、肉体訓練に使用するのがおススメじゃな」


 フォレさんはそう結論付けた。


「さて、お願いされた新しい魔法へのアドバイスはしたし、その身体ではもう無理じゃろ。

 降伏するんじゃな」

「い、え……。

 アルブヴェール様の解説の間に少し回復しました、まだいけます。

 それに短期使用限定ですが、この魔法の使い方がわかりました」

「下手したら当分動けなくなるどころか、変な歪みができるぞ?」

「私は要領が悪いので、こうなるぐらいじゃないと自分の魔法ですら上手く使えるようにませんから、今からが本番です。

 では、行きます」


 クラージュさんが一瞬消えて、突きを出す姿勢でフォレさんの目の前に現れる。


「せっかく見えない速さで間合いに入れたのに、どうして……」


 アドミラさんの目でも追えない速度でフォレさんに近づいたらしが、何故か目の前で止まったらしい。

 フォレさんが悠然と見ているなか、クラージュさんは突きを出すと見せかけて、上段から下まで一気に振り下ろした。

 それを、フォレさんは試験で初めて驚いた表情になって、後ろに跳んだ。


「突きに見せかけて、上段から振り下ろした?」


 アドミラさんが今見たものを確かめるように呟く。

 俺が見たものと同じで、ふと疑問が湧いた。


「あれ? 俺でも見えていたものを、なんでフォレさんはあれだ間合いを空けてるんだろ」

「それは違うよ、おにーさん」

「違う?」

「おにーさんが見たのは残像だよ。

 クラージュお姉様が動作ごとにわざと動きを止めてたから、残像で一連の流れを見たような気になっただけだよ。

 実際に、突きの姿勢、上段の構え、振り下ろし終わった体勢の間の動きは見えてたかな?」


 言われてみれば見えていない。


「あたしも見えていなかった、もしかしたらアルブヴェール様も。

 多分だけど、クラージュお姉様はずっとその速さで動こうとしていたんだけど、長く動けば動くだけ身体に反動がきて、アルブヴェール様と同等の速さにまで落ちていたのかもしれない。

 それでも速いけど。

 だけど、さっきの攻防で単純な動作だけに絞ったなら、速度を落とさずにできることがわかった。

 ただ斬るっていう動作でも、ちょっとした間を入れて分けることで動きを細かく単純化させて、動きを速くさせたんだと思う」


 途中で間をいれるから、残像が生じて、俺でも見えたように思ったのか。


「ということは、フォレさんでも見えない速さになったから、間合いを大きくとったってことですか?」

「うん、そういうことだよ」


 案外これはいけんじゃないかと思ったが、フォレさんの顔がやけに嬉しそうだったので、クラージュさんには悪いが、無理そうだなと思った。

 クラージュさんもフォレさんの表情を見て同じことを思ったのか、先に仕掛ける。

 連撃の動きが残像で、俺でもわかるが、その動きはまるで武道の型を見ているようだ。

 フォレさんは紙一重でかわしてしたが一瞬腕が霞んだ。

 ほぼ同時にクラージュさんが後ろに跳んだが、消えて倒れた姿勢で少し離れた地面に現れた。

 すぐに立ち上がり剣を構える。


「やっぱり駄目かな。

 いくら速くても間を入れるし単純化もしてるから、動きが読みやすいんだよね。

 読めても対応できないはずの速さなんだけど」


 アドミラさんの視線の先には、息を整えようとするクラージュさんとそれを満足そうにみるフォレさんがいる。


「ふむ、昨日の皆といいおぬしといい、戦いに秀でておらん者も含めて、ちゃんと成長していてわしは嬉しいぞ。

 もっと見てやりたいが、おぬしの身がもたんし、時間がないのでな」


 フォレさんがクラージュさんの目の前に突然現れる。

 しかし、見えていたのかクラージュさんはすでに剣を振っていた。

 完璧なタイミングでフォレさんに剣が当たろうとした瞬間、クラージュさんが魔法陣の外の地面に倒れていた。

 広場は静まり返る。

 あっという間に決着がついて、もう何がなんだかわからない。

 アドミラさんを見ると、アドミラさんも俺を見て、


「何も見えなかった」


 ということなので、何もかもフォレさんが上手だったということだろう。


 フォレさんは魔法陣を消してクラージュさんに歩み寄る。


「今ので怪我はさせてないと思うが、大丈夫かの?」

「アルブヴェール様が私を吹き飛ばしたときに、保護の魔法をかけてくださったので、大丈夫です。

 っつう――」

「ちょっと無理しすぎじゃな。

 ちゃんと安静にするんじゃぞ」

「はい、わかりました。

 ありがとうございます」

 俺とアドミラさんは二人に駆け寄る。


「どうじゃノーリ、なかなか見ごたえがある闘いじゃったろ?」

「いや、俺じゃほとんど見えなくて、凄いことをやってるのはわかってはいたんですけど。

 とくに最後なにしたんですか?」

「簡単じゃよ、身体強化魔法をつかってあとは勢いよく押しただけ」

「それだけ?」

「そう、それだけじゃ。

 まぁ、昨日のプリエールの魔法級の強化魔法ではあったがの。

 それよりもじゃ、試験のほうは不合格じゃ。

 が、まぁ見込みもあるしまだまだ伸び代もあるようじゃし、及第点をやっていいぐらいの内容じゃったから、クラージュ本気でついてきたいのならば同行を許そう」

「へっ?」


 クラージュさんから間抜けな声が出た。


「あの、フォレ様それはどういうことでしょうか?」


 思ってもいなかったことを言われて呆然とするクラージュさんの変わりにプリエールさんが尋ねた。


「言ったとおりじゃよ。

 が、まぁ説明するとな。

 元々の合格ラインは、わしが認識してない攻撃を防ぐ防御魔法を発動させることじゃ。

 わしが気付いていないということは、わしを殺しうる攻撃ということじゃからな、神獣の相手も務まる可能性がある。

 弱っているわしにそんなこともできないなら、やはり足手まといじゃしな」

「それならば、妹は合格ラインを満たしていなかったと思いますが」

「それはな、気付いておる者もおるじゃろうが、わしは一定の範囲か動いてなかったんじゃ。

 そうしたのは個人的な事情じゃが、クラージュだけがわしをその範囲か出した。

 昨日もクラージュだけ長く闘えたし、今日見せてもらった魔法もよくできておったからな、将来的な伸び代の見込みもいれて総合的に、合格を上げてもいいと思ったんじゃよ。

 どれか一つでもなければ。不合格じゃったがな」

「なるほど、そういうことでしたか」

「さて、クラージュ。

 実際のところ、おぬしは森から出る気はまだないじゃろう?

 だから、無理強いはせん。

 見返りもないしの。

 じゃがもし来るというのであれば、わしが直に鍛えてやろう。まぁそのぐらいしかできんだけなんじゃが。

 そのことを踏まえて明日の朝までに答えを出すように。

 そういうことじゃからな、プリエール」


 クラージュさんに余計なことを言わないように、プリエールさんに釘を刺す。


「さて、疲れたし夕食にしようと思うが、村人がほぼ全員いてちょうどよかった。

 これまでの世話になった感謝もこめて、今日はパーティーを開こうと思って、ご馳走を作ってもらっておる。

 準備が少しかかるが、その間に今いない者を呼んでくるのじゃ。

 それまでの間、これでも飲んで待っていてくれ」


 そう言って、フォレんは魔法でその場にいる全員に飲み物を配った。


「さぁ、ノーリとアドミラシオン手伝うのじゃ。

 今から忙しくなるぞ」

「うう、やっぱりあたしもですか?」

「あの二人に妙な入れ知恵をしてくれたみたいだからの」

「ですよね。

 でも、あたしもあんなこと言うんじゃなかったと公開しています」

「そうなるとは限らんじゃろ。

 まぁとにかく、人手が足らんのはたしかじゃから、手伝ってもらうぞ」

「わかりました」

「フォレ様、私も手伝います」

「プリエールはクラージュの面倒をみてやっとれ」


 そうして、俺はフォレさんの手伝いをしたが、ほとんどのことをフォレさんが魔法でこなしてしまうので村人全員参加のパーティーの割には忙しくはなかった。

 ただ、料理に関してはモウジィさんが鬼のような働きをみせたという。




 翌朝、馬車に荷物を載せていると、ふらつきながら杖をついてクラージュさんが来た。

「あ、おはようございます」

「おはようございます、ノーリア殿」

「身体は大丈夫ですか?」

「ええ、全身筋肉痛になっていますが、どうにか」

「そうなんですか。

 見送りにこないで、安静にしていたほうがよかったんじゃ。

 フォレさんも魔法の反動のことはわかっているから、部屋で安静にしてても、問題なかったと思いますよ」

「いえ、私もついていきます」

「えっ?!

 まだ、森を出る気はなかったんじゃないでしたっけ」

「その気持ちはまだあるんですが、アルブヴェール様が直々に鍛えてくださる機会がこの先あるかどうかわからないので、ついていくことにしました。

 これからもよろしくお願いします、ノーリア殿」

「はい、こちらこそよろしくおねがいします」


 クラージュさんと握手する。


「それでクラージュさんの荷物は?」

「今、アドミラシオンが持って来てくれている途中です」


 アドミラさんが荷物を持ってやってきた。


「ありがろう、アドミラシオン」

「どういたしまして」


 俺は馬車に載せるためにアドミラさんから荷物を受け取る。


「おっも!」

「だらしないなぁ、おにーさんは」

「いや、この見た目でどれだけ重いんですかこれ、鉄でも入れてるんですか?」

「鞄の中を魔法でちょっと広げてね、クラージュお姉様の武具が入ってるから、まぁ鉄が入っているのはあながち間違ってないかな?

 でも、魔法で大分軽くしてあるけど、おにーさんには重たかったみたいだね」


 武具なんて普通もてないと言いたかったが実際にアドミラさんが持ってきたので、大人しく頷くしかなかった。


「それにしても、空間を広げれるなら、もっといろんな者を持っていけるんじゃないですか?」

「あまり個人だけの魔法で空間操作はしないほうがいいんだよ。

 この村の結界のように固定されているんなら大丈夫だけど」

「そういうものですか」

「それよりおにーさん、ちょっと耳を貸してもらえるかな?」


 初めて会ったときのことを思い出して嫌な予感しかしなかったが、言われたとおりに耳を近づける。

 アドミラさんは俺の耳を力強くつまんで軽く引っ張って、


「クラージュお姉様に手を出したら、地獄を見せる」


 ドスの効いた声で言った。


「はいもちろんです。肝に銘じておきます」

「うん、ならいーんだよ、おにーさん」

「ノーリとクラージュきておるな」


 村の上役達を引き連れてフォレさんがきた。


「フォレさん、荷物の積み込み終わりました」

「ご苦労、ノーリ。

 クラージュは本当にいいのか?」

「はい、きちんと考えて自分で決めたことです。

 それに、もう帰ってこないというわけではないですし」

「そうか、じゃ出発するとするかの。

 村長、何かあったときは連絡するように、迷惑をかけることができないなどわけのわからんことを考えるのではないぞ、それよりも、村の者に何かあったほうが嫌じゃからな。

 それと、各地の神獣の情報を頼んだぞ」

「はい、わかりました」


 俺達は馬車の荷台に乗り込んで、結界の外にでるまで見送るプリエールさん達を見続けた。





 約一ヵ月後、俺達は中央国家インテルセクトに到着した。





 

 無駄に期間が空いてしまいました。

 その割には、話が進んでないという。

 短くするつもりだったのに、何故こうなった


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