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25話

side ジークムント・ナルニート


ナルニート国の王城、その城の王の間にて、今、二人の男が話していた。


一人はナルニート国の王、ジークムント、もう一人はそのジークムントと臣下であるフルーガであった。


ジークムントが幾枚かの書を手に持ちながら言う。


「…皇子、それも第三皇子の祝賀会に六獣王国の王が全員出席するか」


長らくなかった六獣王の集結、全員が一同に揃うのは5年振りの事ではないだろうか、ジークムントは内心でそう思い出しながら、それをフルーガへと確認する様に呟く。


「はいっ!セイウチ王!エルファニカ王!スルドイヤ王!ハンドレッド王!イーター王!のっ!六獣王様方から出席するとの旨の書が届いておりましたのでっ!間も無く来られると思われますっ!!!」


フルーガが煩くも、王の間に響き渡る声で返答する。


「…皆がジオラルドを見ることが目的か」


六獣王達の目的は、見えていた。

齢数ヶ月でありながら、オーラバーストを扱い完全獣人化を会得し、そしてグラノドワームという害悪種を一人で打倒してしまった。


売り文句としては十分過ぎる成果、本来なら国だけにとどめて置きたかったジオラルドの情報は、ジークムントがセイウチ国へと外遊に行っている間に、ズーランド大陸中へと広まってしまった。


王の緘口令も出ずに数日放置された情報は、瞬く間に市意へと渡り、商人を介して国を渡る。


ジークムントがそれを知ったのは、事件から5日後、セイウチ国からナルニート国へと帰り支度をしている時だった。


「……気になるのはやはり、エルファニカとイーターだな。普段なら絶対に参加しないこの2名が揃い踏み、何も起きなければ良いが、な」


エルファニカ国とイーター国の王の二人は、国の情勢という事も理由に有ろうが、王達の会合に不参加となることが多い二人だった。


特にエルファニカ王については、王への就任式に会ってから、数度、ジークムントが自ら尋ねて会ったのみで、彼は王となってから会合に一度も参加していなかった。


こんこん

「失礼しますっ!陛下、ジオラルド殿下が、城へと到着されました」


ジークムントが各国の王への対応をどうするべきかと思案していた時、王の間の扉がノックされ、衛兵がジオラルドが来城したことを告げた。


「そうか、通せ」


直ぐにジークムントは衛兵へとそう返答し、ジオラルドを王の間へと招く。


「はっ!それでは案内してまいります!!」


衛兵はジークムントの返答を聞くや否や、王の間から下がり、ジオラルドを呼びに向かって行った。


「…本当に何もなければ良いのだが」


各国の情景が怪しくなっている今、祝賀会にて何も起きなければ良いと、ジークムントは願わずにはいられなかった。


何故ならばそれがそのまま、戦火の火種となる可能性があったからだ。


こんこん

「おっす!オヤジ!?」


だと言うのに関わらずこの息子は、ノックし返答が有る前に王の間へと入って来くるなり、この態度だ。


ジオラルドの隣で、その行動に慌てているサイドルールを見て、ジークムントは思わず尋ねた。


「……サイドルールよ、息子のマナー教育の方は無事に行われたのだろうな?」


「…はい、勿論にございます陛下!」


その間は何だ?とは思うが、そう言うのなら信じる他ない。と考えてジークムントはその視線をサイドルールからジオラルドへと向けた。


「……そうか、ジオラルドよ。今は良いが、祝賀会が開催中は俺にも敬語を使うんだぞ?」


「任せろって!ばっちしだよ!」


ジークムントの言葉に全く態度を改めないジオラルドに、本当に大丈夫なのだろうかと心配になるジークムントだった。


「…そうか、ならば構わん。祝賀会までは時間がまだある。既にジオジークとジオラークが来ている。一度挨拶して来い」


だがジオラルドは賢い、祝賀会では何だかんだといっても、上手くやる筈だ。そう心に言い聞かせつつ、ジークムントはジオラルドを下がらせる事にする。


「…俺がジオジークに半殺しにされたこと知ってそんなこと言ってる?」


兄達への挨拶は必要な事だ。

特に今夜は他国の王と貴族達が、多勢、この城へと訪れるのである。


皇子同士の仲が悪いというのは、国に取って決してプラスではない。


「その程度の兄弟喧嘩は、獣人の王族にはよくあることだ。何れにしろ王座を賭けて戦う事になる。今から争わなくても良いだろう」


3人の皇子が成人を迎えれば、選別の義が行われ、どの道争うことになるのだから、せめて今の内くらいは仲良くして欲しいというジークムントの親心でもあった。


「それは俺でなく、ジオジークに言って欲しいわ」


あいつが絡んで来なければ、俺もあいつに干渉しない。

もう既に仲が悪いのだから、いっそのこと相互不干渉で良いだろう。


「既に言った。…しかしあれは聞かんだろうな」


王に拘るジオジークが、現在の王である親父に言われても聞く気がないのならば、俺がいくら歩み寄りはしようと、どうにもならないだろう。とジオラルドは思った。


そんなジオラルドの考えを、その視線から感じ取ったのか、ジークムントは首を小さく横へと振ってから言った。


「親だからこそ止められぬ事もある。……そうだ。ジオラルド話は変わるがサファリ領で大規模な開発を行っている様だな?…文官達が無駄なことをと笑っていたぞ、領民もいない場所を開拓してどうすると、な」


ジオラルドにそう尋ねてくるジークムント、文官からあまり良いだろう噂を聞いていない様でありながらも、その瞳には期待を持っていた。


「領民は何れ来るさ、その為の準備だよ。…だから今は領民が居ないでなく、受け入れてないってだけだ。聞いたところによると、領民を受け入れると、国へ税を納めないといけないんだろ?」


そうジオラルドも当初は、領地を開拓するなら早く領民をサファリ領へ招き入れた方が良いと思っていた。


民から得られる税収、民が暮らす事で行われる様になる売り買い、領地を早期に発展させるには、必須だと考えていたのだ。


「そうだな、領地で領民が居るということは、それだけその領地を受け持つ貴族に金があるということだからな。領民一人で当たりに付き、年銀貨3枚の支払い義務があった筈だ」


しかし問題もあった。

領地で領民から収入を得るということは、領主から国へ払う国税の存在があったのだ。

現状、サファリ領には仕事は溢れているが、その給料は決して高いとは言えず、寧ろ平均賃金よりも低い、其処から国への国税を払う事を考えて領税を民に課すことになると、1人当たり銀貨5枚は必要になる。


3人家族であれば年銀貨15枚となるのだ。そんな事をしてしまえば、領地で働いている人達は瞬く間に辞めて出て行ってしまう事になる。


よってまだ時期が早いと決断したのだ。


「それをまだ払えそうにもないからな。だから受け入れてないんだよ。でも3年後、王都並にとは言わないが、大都市になったサファリを見たら、その文官達も、そんな事言ってられなくなるぜ?」


そう3年後だ。運河が完成すれば、其処を使用する際に商会から通行税を取ることが出来る様になり、船が通る数だけ領地に金が入る。


そしてもう一つ、サファリ領の貿易の目玉商品となる規格統一工業品の販売だ。


それを商会に大量に売る契約を結ぶ、値は少し安くしてもいいし、船の通行税を何台までなら幾らと定額にしてしまってもいい。

売る物の値段が安くするなら、その分、船で往復してもらい通行税を払って貰えばいいのだし、通行税をその様に定額にするのなら、売る物の値段は据え置いて、長期間の買取を契約させれば良いのだ。


サファリ領の将来設計は、この6ヶ月の間に粗方決まっていた。


後はそれを成すのみなのだ。


「それは楽しみだな。期待しているぞジオラルド?」


ジオラルドの自信に満ちた態度に、ジークムントは笑顔でそう言った。


「おう!任せとけよ、親父!」


ジークムントの言葉にまた、ジオラルドも笑顔で答えた。


「…さて、そろそろ他の王族達も来る頃だ。お前は控え室へと迎え、フルーガ案内をしてやれ」


そこでジークムントが話を終わらせ、フルーガへとジオラルドとサイドルールの案内を託した。


「はいっ!このっフルーガ!ジオラルド殿下の案内!仕りました!!」


ジークムントの命に、フルーガは王の間に声を響かせて答えた。


「ふーん、今のがジークの3番目の息子なんだね?」


フルーガの先導により王の間から、ジオラルドとサイドルールが出て行った直後、ジークムントの背後より、一人の男が静かに現れた。


「…案内の者はどうしたアシカ、勝手に入って来たのか?」


その声にジークムントは振り向きさえすることなく、静かな声色で言った。


「ワイバーンでバルコニーから来たよ。まあお互い様なんだから怒らないでよ、ジーク?」


アシカとジークムントに呼ばれた男は、軽薄そうにそう顔に笑みを浮かべて答えた。


「怒りはしてないが、王城の警備を見直さねばならんことは確かだ。まあ、お前だと気付いて放置したのだろうがな衛兵達も…、困ったものだ」


ジークムントは苦笑いしつつ、アシカへとそう答えた。


「それこそ、お互い様でしょ」


アシカはジークムントの肩を軽く叩きつつそう言う。


「まあな、で、どうだった。ジオラルドは?」


其処で漸く、ジークムントはアシカへと振り返ると、ジオラルドの印象について、どう思ったのかをアシカへと尋ねた。


「凄いよね、1歳でしょ彼、なのに自分で考えて行動してる。そして聞いたところ領地開発もやってるんでしょ?…頭が下がる思いだよ、鬼才だね」


その問いにアシカは、ジークムントの顔を見つつ、嘘偽りなく、思ったままを告げた。


「…そうだな、鬼才と言えばエルファニカ王も参加すると回答があった」


そんなアシカの言った言葉の中で、ジークムントはある少年の事を思い出した。


「…何が目的なんだろうね。王の就任式依頼、彼とは会ってないけど、ジークは頻繁に会ってるのでしょ、実際どうなの?」


ジークムントの言に、眉間へと皺を寄せつつ、アシカがジークムントへとそう尋ね返した。


「…賢い、それでいて厄介な奴だ。そして完全獣人化を会得している。…見たがあれは別格だ。打ち勝つイメージすら浮かばなかった」


アシカは思う。

ジークムントをして勝てないとイメージさせてしまう程の力を雄する少年について、アシカとかの少年が出会ったの彼が12歳の時だった。


初めて会った時、その幼さにも関わらず、自身の父を殺めて、王へとなったことに心底、恐れを抱いた。


あれから3年、彼はどの様に成長したのか、正直会いたくないと思わずにはいられないアシカだった。


「どういうつもりで来たのか、考えなければいけないことが沢山だね。此処へ来る途中にハンドレッド国の旗を見たよ。百獣王レオナルドも来るなんて、いよいよ何かが起こりそうだね」


だが考えなければならないことは、エルファニカ王だけの事ではないのだ。


ズーランド大陸を纏める六獣王であるからこそ、他の国の状況についても把握している二人には、まだまだ他にも考えなくてはいけないこのがあった。


「予兆はあったからな、…エルファニカ宿願の完成、そしてハンドレッド国の軍国化」


ジークムントが淡々と語る。


「そしてイーター国の海兵隊による人間大陸への侵攻と、ナルニート国に産まれた鬼才、ジオラルドだね。本当に平和な国って僕の国だけだよ」


二人の考えが同じだと言わんばかりに、ジークムントの後を引継ぎアシカが語る。


「…あと数年、恐らくはその時に舞台に立っている者達が、ズーランド大陸だけでなく、人間大陸も巻き込み、世界を揺るがす戦になるだろうな」


戦乱が起こると思われるのは、後数年後、その見解は奇しくも二人が共にそう思っている事だった。


「止めれなさそうだしね。僕の子はそういうの向いてないから、女の子だし、もしもの時は助けてよね、ジーク?」


六獣王でありながらも、やはり止めれない事もある。ナルニートはジークムントも後継者たる3人の皇子も優秀、その内2人は幼い身で有りながら既に獣人化を会得している。


しかしセイウチ国はと、アシカは内心思う。セイウチ国には皇女が一人居る。


ルーツとしては戦う事に適したセイウチを持ちながらも、その皇女は戦いが好きではなく、率先して訓練することもないのだ。


「努力はするが、距離を考えろよ?」


だからこそアシカはもしもの際にと、ジークムントを頼る。

唯一心許せる親友の力を…。


「そうだね、ジークが来てくれるまでは、何かあっても耐えてみるよ」


「…頼られても困るぞ」


広い王の間にそんなジークムントの声が小さく響いた。


こんこん

「…なんだ?」


丁度、二人の会話が終わった時だった。王の間の扉がノックされ、ジークムントの返答により、扉が開かれ衛兵が姿を現し言う。


「各国の王達が続々と来場されております!」


衛兵のその言葉にジークムントが王座から立ち上がり言う。


「そうか、今から向かう」


「はっ!ではその旨を伝えて参ります!」


衛兵がジークムントより先に、それを伝えに言った後、アシカへとジークムントが視線を向けると、アシカが迷った様な表情で声を掛けて来た。


「…僕も行こうかな、ジークと一緒に、いい?」


「良いも悪いも、一緒に来ねば貴様は、此処で何をしているつもりなんだ?」


アシカの言葉にジークムントは若干、呆れを含めた声色で尋ねる。


「あははは、そうだよね。まあいいじゃん、久し振りに皆の顔見に行こうよ」


珍しく気が張っている様だ。そう内心で考えつつ、この祝賀会が無事に何事もなく終わる事をジークムントは祈る。


…神は信じないのが獣人だが、今回ばかりは神を信じるという人間達の気持ちがわかる気がする、な。


「…そうだな、本当に無事に終わると良いのだがな」


ナルニート国、王城正門にて、4体の豪華な服装に身を包んだ男達が待機していた。


「…就任式以来だな、エルファニカの小僧?!王達の会合に出席しねぇーとは、どういう了見なんだてめぇーはよ?」


沈黙を破る様に声を出したのは、金色の鬣を持った獣人だった。

その金色の鬣の獣人が声を掛けたのは、他の獣人達を圧倒する程の背丈を誇る獣人であった。


「……ハンドレッド王、ご無沙汰しております。国内の政務を纏め切れて居らず、国外に出ることが儘成らずに、会合へ参加出来ずに申し訳ない。…今後は時間も取れる為、参加する様にしましょう」


声を掛けられたその獣人は、見た目と反して、丁寧に声を掛けて来た男へとハンドレッド王と敬称で呼び返答する。


「なんだてめぇ!それは会合が二の次って考えていると思っていいのかっ!?馬鹿にしてやがんのかっ小僧!!?」


しかしそれが逆にハンドレッド王と呼ばれた男の勘へと障ったのか、ハンドレッドは男へと詰め寄り怒鳴る。


「………その様なことはありません」


しかし、詰め寄られ怒鳴られた男は、冷静に表情を変えることなく、それに返答した。


「ハンドレッド王、此処は他国の王城だ。その様な物言いは感心しない。久しいなエルファニカ王よ、就任式以来だが、私の事は覚えているかね?」


一色触発、そんな雰囲気の中で、唯一動いたのは、壮年の獣人の男であった。

ハンドレッドを諌めて止め、詰め寄られていた男をエルファニカ王と呼び声をかける。


「はあ、スルドイヤ王。ご無沙汰しております」


エルファニカ王と呼ばれた男は、直ぐにそれに丁寧に返事をして答えた。


「スルドイヤ王!何で止めやがる!此処らではっきりとさせとかねぇーと!」


ハンドレッドは止められた事が気に入らなかった様で、スルドイヤ王と呼ばれた壮年の男へと詰め寄ろうとするが、其処で王城の正門が開かれ、ジークムントが声を掛けた事で止まらざる得なかった。


「ハンドレッド王、落ち着いてはくれぬか、今日は息子の祝賀会だ。遠路遥々来てくれた皆には、暖かい気持ちで息子の誕生日を祝って欲しいと思っている」


「……前回の会合以来だな。ナルニート王とセイウチ王よ」


ジークムントとアシカに、それまで争っていた男達に関わることのなかった男が歩み寄り挨拶をする。


「やぁ、皆!久し振りだね。エルファニカ王は2回目だけど、元気そうで何よりだよ。イーターも黙って見てないで止めてくれれば良かったのにさ」


その挨拶にアシカは明るく、全員に向け声を掛けた。

そして争いを止めずに見ていた先程、自分とジークムントに声を掛けて来た男へと向かい苦言を言う。


「…ご無沙汰しております。イーター王、セイウチ王」


エルファニカは静かに再び、丁寧な声色でイーターとアシカへと声を掛けた。


「あぁ、此方こそね!」


「そうだな」


それなアシカは明るく答え、イーターと呼ばれた男は静かにそう一言だけ答える。


「ナルニート王は、2ヶ月振りでしたか、その際はエルファニカに来ていただきありがとうございました」


そしてエルファニカは最後に、ジークムントへと向き直ると、そう声を掛けた。


「構わん、いつ迄も此処で立ち話もないだろう。久し振りの六獣王の集結だ。会合も兼ね、祝賀会まで親交を深め様ではないか」


ジークムントはエルファニカにそう答えると、他の5人の面々の顔を一通り見てからそう言うと、自ら場を先導して六獣王達を城へと招き入れたのだった。


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