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24話

朝、最近習慣となりつつあるアリアと2人での食事を終えて、今日もぶらりとサファリ領地を散策でもしに行くかな?とそう内心で考えていた時、部屋の扉がノックされた。


こんこん

「はーい、開いてますよ!」


そのノックに俺が答えるよりも早くにアリアがテーブルの席に座ったままの状態で、声を上げて答えた。


「…お前が答えるなよ」


一応、此処の部屋の主は俺なのだから、答える冪なのは俺の方なのである。


「お前等も俺が答えるまでは、入って来るなや!」


そして俺はアリアの返答により、部屋へと扉を開いて入って来た2人にも文句を一つ吐いておく。


「…ちっせぇーな、殿下。その身だけでなく器までもなーんて、冗談を言ってる場合じゃないんですよ!」


それは本当に冗談なのか?偉く真剣に言っていた様な気がしたのだが…。そんな事を考えていると、目の前に一通の手紙がサイドルールの手により俺に差し出された。


「殿下、此方を見てください」


サイドルールから手紙を受け取り、既に封が切ってある手紙を取り出して広げてみると…。


「…何だこれは?」


何度も言うが、俺は字がまだ読めないんだけど?この手紙から俺が読み取れること、それは偉く達筆な字で何かがぎっしりと、丁寧に書き込まれていること位だった。


「……すっかり忘れていましたからね」


ミナが片手で後頭部を軽く掻きながら言う。


「…領地の事に掛かり切りとなってしまい、本分を疎かにしていたとは、自分が情けないわい」


ミナの言葉にサイドルールは二度程頷き返してから、そう言った。


「…いや、だから何だよ?何が書いてあんの?」


二人は既に手紙を読み、状況を把握しているのかもしれないが、俺は字が読めない為、手紙を読んだ二人のどちらかに書いてある内容を教えて貰いたいのだか…。


じゃないといつ迄経っても、俺だけ話の外だ。俺が関係しているだろう話なのにである。


「召喚状です、王家からの」


俺の問いにミナがそう短く答えた。

王家からの召喚状?…はて、俺はまた何かをやらかしてしまったのだろうか?


「殿下の満一歳を記念して行われる祝賀会への参加について、出席の意向を確認する書ですな。もっとも主賓の殿下がこれを断る事など出来ませんから、形式上のものですが…」


サイドルールの説明により、思い出した。

そう言えば確かに以前にその為に勉強をしていたな。


ここ数ヶ月は、何もせずに漠然と暇な時間をアリアと共に領内を散策したり、領地内にある森を探検したりと遊んでばかりだった。


……正直、森の探検が楽し過ぎて、そんな事をこれぽっちも忘れてたわ。


「1週間後ですから…、これからやったとしてもあまり効果はなさそうですからね」


そうか、ということは後1週間で、俺は1歳なるということなんだな。

異世界に転生して、もう1年近くが過ぎたのか、早かった様な長かった様な。


「………時間はたっぷりとあったのだか、後悔していても始まらぬか、テーブルマナーについては概ね出来て居られたし、ダンスについては踊る相手が居ない為、問題はないか…」


サイドルールが重苦しい表情で、眉間に皺を寄せ言った。


「獣人化して踊ったらダメなのか?それが出来たらアリアと踊るって約束してるんだけど?」


そうだ。ダンスと言えば、以前に獣人化しても良いのであれば、アリアと最初に踊るって約束をしていたのだっけ?


「っあ、殿下。覚えててくれたんだ!」


それを思い出した俺は直ぐに、それをサイドルールへと確認することにしたが、彼から返って来た返事は良いものではなかった。


「…なりません。ジークムント様なら許可するでしょうが、今は下手にジオジーク殿下を刺激する様な事はお辞めください」


眉間に皺を寄せていたのから、更に表情を厳しいものへと変化させて、サイドルールは言った。


「…ん、どうして其処でジオジークが出てくるんだ?」


何故、此処でジオジークの名が上がるのか分からなかった俺は、それをサイドルールへと尋ねた。


だかその問いに答えたのはサイドルール本人でなく、これまた少し怒った表情をしたミナの方であった。


「吹聴して回ってるんですよ、殿下がグラノドワームを倒したのは偶然だと、私が噂を確かめるため、ジオラルドと戦ったが、あいつは私に手も足も出なかったと言って!」


まあ、確かに手も足も出してないのは本当だからな、尻尾しか使って無かったし、ジオジークの無敵モードが始まってからは、それこそ手も足も出ない状況であったから、これもまた本当の事だ。


「…無かった事になったんじゃなかったのか?金貨500枚返せとか言われたりしないよな?!」


何もなかった事にする為に、メルノーラ様から頂いた金貨だったのだ。

その話が無かった事にならず、実際に有ったこととして、話が広まってしまっているのなら、これは金を返せと言われるのでは無いだろうか?


「…我々が語っている訳ではありませんからな。無かった事にしようとした向う側が吹聴しているのですし、此処で無かった事に成らなかったので金貨を返せとは言えんでしょう」


そうサイドルールが溜息を吐きながら言と、そんなサイドルールに続いて、ミナもすれに同調する様に言う。


「…親の心子知らずってことなんでしょうね。あの一件以来、ジオジーク様は変わられてしまったと聞きますしね」


サファリ領に居て何処からそんな情報を仕入れているのか知らないが、ミナとサイドルールの情報によると、ジオジークはある年齢特有の病気に掛かってしまった様だな。


「…次会ったら爆笑しちゃいそうだわ」


厨ニ病、それは一度患ってしまうと完治まだ長い病なのである。



所変わり、サファリ領地の森の中、アリアと二人で森を奥へと進んでいると、アリアが幾分落ち込んだ声でそう俺へと聞いてきた。


「殿下、良いんですか?こんなことしていて?」


「…問題ないよ、サイドルールも言ってたろ。今から後悔しても遅いって、なら今を楽しもうぜ!」


俺はそうアリアの問いに答える。


「だからと言って、私達だけ森で遊ぶのもどうかな?と私は思うわけですよ」


しかしアリアはまだ納得がいっていないのか、未だにこのままで良いのか?とそう悩んでいる様だった。


「…遊びと、そう考えるから駄目なんだよ。これが上手く行けば、絶対に金になる!そしたら3年目の予算危機も一発で解決だぜ!!?」


確かに遊びの延長線上から偶然思い付いた事であったが、成功すればまだこの世界では誰も成していない事である為、量産体制さえ最初に整えてしまえば、維持費も少なく利益が出る為に必ず儲かるのだ。


駄目だった場合も、損害と言えば俺とアリアが掛けた時間位な物だった。


「…そんな上手く行きますかね?」


俺の言葉にアリアが期待する様な、でも少しばかり不安な、そんな曖昧な表現で聞いてきた。


「行くか行かないかは、今日で分かるさ」


俺が背中に背負っている樽と、その樽の中に入っている回転装置、そして森の中に置いている箱の中身、今日漸く準備が整ったのだ。


焦らずとも結果は、今日出るのである。


「…蜂蜜は好きなんですけど、ね。蜂に刺されるのは嫌です」


3ヶ月前、アリアと始めてサファリ領地内の森へと探索へ来た時の事だった。


異世界という事もあり、森の中に棲息する生物や植物は、地球にある様なものではなく。明らかに大きさが異常であったり、逆に小さかったりと、または見たこともない雲の巣の様に四方八方に太い枝を伸ばす木などもあった。


そんな森の中を途中、途中に尻尾で木に傷を付けて目印を残して進んで半刻程経った時だった。


「殿下!止まってくださいっ!ロウロウビーです!?」


初めて聞く名称の言葉と、アリアの慌てた声色に驚き、その場へ立ち止まり振り返り聞く。


「ロウロウビー?…何だそれ?」


振り返りアリアを見ると、アリアは後方へと飛び下がりながら、俺の背後を指で指し示していた。


「で、殿下!後ろっ!!?」


嫌な予感しかしない、な。

そう思って即座に身体に纏っているオーラバーストの出力を上げて、もしもの危険に備え、後方へと視線を向けると、案の定、危険は大量の羽音を伴い、猛スピードで俺へと襲い掛かってきた。


「へっ?…っあ、蜂かよっ!!?てかデカッ!って向かって来た!!」


雀蜂の1.5倍は有るのではないかという大きさの蜂が数千匹、俺の身体へとその身に宿す針を刺そうと身体中へと纏わり付いてきた!


「きゃああッツ!!!殿下がロウロウビーに刺されっ!……殿下?」


身体の周り数cmの所まで張ったオーラバーストによる縦は、蜂からしっかりと俺の身を守っていた。


しかし、数が数なだけあり、アリアから見れば俺の体は蜂に覆い隠されて見えるのだろう。


遠くからは慌てる声が聞こえた。しかし数秒しても痛みによる声を上げない俺を不審に思ったのか、アリアは俺を訝しげに呼ぶ。


「ん?…何だよ?」


「その痛く無いのですか?」


何時もと同じ声色で慌ててもいない俺の声を聞いた途端、アリアの口からは安心したのか、溜息が吹きこぼれた。


「刺さってないから痛くないよ、普段から体を覆ってるオーラバーストの出力を少し高めたら疲れはするが、この蜂って毒あんの?」


そこまでこの蜂に怯えるというこたは、大きさだけに驚異が有るのではなく、また別の要因、雀蜂の様な猛毒を持っているのだろうかと考え、それをアリアへと問うた。


「あります。致死性が物凄くあります。刺されると肉が腐るんです」


肉が腐るとか恐ろしい毒だな。念の為にオーラバーストの出力を更に上げてから言う。


「…そうなのか、もうちょっと出力を上げとくか刺されたらヤバイみたいだし、ってかこの蜂、凄く甘い匂いがするな、蜂蜜か?」


先程より蜂から漂ってくる甘い良い匂い、蜂蜜の匂いなのだろうか?


「はい、ロウロウビーは万年蜂で1年中蜜を集めてるから、その匂いだと思いますよ。ロウロウビーの蜜は市場で売れば高値で売れるんですよ!」


1年中蜜を集めるから万年蜂か、此の世界には色々な生物が居るのだな。


「へぇー、養蜂とかしてるのか?」


単純な疑問だった。高値で売れるなら安定的に収益を得る為にも養殖は必然、そんな前世の記憶と経験に基づく理論、当然、養蜂もしているのだろうと思って確認の為に聞いたのであったのだか…。


「養蜂?…蜂を育てるって事ですか?しませんよ!そんな事!しかもロウロウビーですよ!?そんな事をしたら何人の人が死ぬか…」


まさか養蜂をしていないとは、思わなかった。毒が有るとも言っても刺されなければ問題ない。


なら煙で燻し、蜂が大人しくしている間に蜜だけを取れば良いと思うのは、やはり知識があってこそのものなのだろうな。


「因みにロウロウビーの蜂蜜って幾ら位で売れるの?」


この世界で養蜂をしていないというのなら、これはまた一つのチャンスであり、またとない機会だ。


「…250gで銀貨1枚ですけど、殿下まさかっ!!?」


アリアから値段を聞いて驚いた。これ程の大きな蜂だ。

巣のサイズもそれなりに大きくなる筈、そして年中休まずに蜜を集めるのだ。


「…一攫千金じゃねぇーか!!?」


一つの巣から数kgは蜂蜜が取れたとして不思議でもないだろう。


「よしっ!アリア!俺達だけで養蜂をやるぞ!!?」


やらない手はなかった。


「無理ですよ、そんなの!私はまだ死にたく無いんですっ!」


「…嫌でもやるんだよ!」


俺の発言に否定的なアリアに、やる事を強要する。

今後、養蜂をサファリの商売の一つとするのなら、俺の様なオーラバーストで蜂から身を守りながらやる方法では駄目なのだ。

何時迄も俺だけがやっていては、規模も大きく出来ないし、商売として目もでない。


だからオーラバーストを使えないアリアでも作業が出来る様に、養蜂の方法を考える。


そしてアリアがそれを出来る様になれば、それは他の平民でも可能ということ、そうすれば少しずつであるが、拡大も可能であり商売としての利益率も上がる!


「そんなーぁ!!横暴じゃないですか!」


「横暴は王族の専売特許だ!だぁーはっははは!!金の成る木だぜ!これは!」


それから俺はロウロウビーの巣の大きさを木の上まで見に行き、体でその巣の大きさを測ると、木から飛び降りて身体に纏わり付いている蜂を振り落とし、まだ身体についている蜂を手で振り払ってからアリアへと近付く。


「…本当に全部払いましたか!?刺されたら私、死ぬからね!分かってる殿下!?」


「わぁーったよ。っは!…これでどうだ?」


怯えて俺に近付いて来ようとしないアリアに、俺は身体に纏っているオーラバーストを一瞬だけ爆発的に出力を上げ、直ぐに元に戻す。


すると未だに身体に纏わり付いて居たのか、俺の身体の周りに蜂のバラバラとなった死骸が数匹落ちた。


ぱらぱら

「….まだ付いてたのか、まあ、これて良いだろ?」


蜂の粘り強さにそう驚きながら、俺が言うと、アリアがそれを見て漸く安心したのか、俺に近付いて来て言う。


「もうっ!ちゃんと確認して置いて下さいよね!」


「悪かったよ。それより要る物が有るから城へ戻るぞ」


アリアにそう謝りながら、俺は木々に付けた目印を元に城へと帰り、領内で働いていた大工3人程に声を掛けて、養蜂箱を取り敢えず5箱を作らせた。


流石は大工か、物の数分で俺の言った指示通りに養蜂箱を作り終わってしまう。


養蜂箱は俺の記憶では、確か正方形の箱に数段の溝を付けて、その溝に木枠をはめるという物だった筈だ。


この木枠に蜂が巣を作らせる訳だが

、作るのを待つというのも面倒か、あの木に有った巣を切り分けて、この木枠に詰め込めば良いか?


そうだな。詰め込んだ巣は数箇所を紐で縛って少しすれば自然に木枠に付くだろうしな。


「…よしっ、アリア!行くぞ!?」


俺は大工に使っていないという古くなったノコギリ、それと墨壺用の糸を少し分けて貰ってから礼を言うと、ノコギリを糸で背中に結び、養蜂箱5個を両手に抱えて、再度、森へと行く為にアリアへ声を掛けた。


「ええっ?!今からまた戻るんですか!?」


俺の言葉にそう驚き、聞き返して来るアリアに頷いてから、俺はまた先程帰って来たばかりの道を、また森へと向かい歩きだした。


「よしっ、じゃあ、アリアは此処で見てろよ」


「当然です、来いと言われても行きませんもん!」


まあ、逆に何の対策もしてない今から、一緒に来られても困るけどな。


それこそ無駄死にとなってしまう。


「怒んなよ、これが上手くいけば、ロウロウビーの蜂蜜を好きなだけ食わせてやるからよ」


何故ならこの養蜂箱に巣が根付き、蜂の蜜が取れる様になった暁には、アリアにそれをしてもらうことになるのだから、存分に蜜の味を味合わせてやるくらい。


命を対価にしていることを考えれば安いものだろう。


「…約束ですよ!」


あぁ、その時が来たら存分に自分で採って味わうといい。


蜂のサイズと針の鋭からして、並大抵の防御服では針が服を貫いてしまうだろう。


煙で燻すとはいえ、何処まで大人しくなるかも分からない。


夏には辛いかもしれないが、厚手の豚皮を二枚重ねにした物で、一度、サイドルールに防御服を作らせて見るか、それを俺が着て問題なければアリアに着させてやらせよう。


「…さて、じゃあ先ずは巣を落とすか!」


そして俺はノコギリ片手に木を登り巣を落とすと、養蜂箱の中に入れてある木枠にノコギリで輪切りにした巣を糸で結び固定して行く。


周辺にあった他の巣もバラして、其々を5個の養蜂箱へ入れ終わると、俺はその養蜂箱を持って移動して、

四方八方に枝を伸ばしている木の根元へとそれを置いた。


此処ならば太い木の枝に周囲を囲まれている為に、蜂を襲うクマの様な獣が巣を狙って来ても、枝が邪魔をして襲えないと考えたからだ。


その20日後、5箱あった内の養蜂箱の内の2箱の蜂が巣から居なくなっており、中を見てみると女王蜂の死骸があった。


女王蜂を見てみると、どうやら俺が巣をノコギリで分解した際にその身体を切ってしまったことが原因と思われた。


残りの3箱の養蜂箱については、順調に巣が木枠に根付いていた。


そして今日、漸く試行を重ねた結果完成した防御服と、蜂蜜を採取する為に大工へ作らせた樽の底に大きなコックの付いた蛇口を付けた物と、遠心力で蜂蜜を分離する装置、そして蜂蜜を入れる為の容器が揃った。


「ほ、本当に大丈夫なんですよね、殿下!この防御服を信じて良いんですよね!?」


防御服を着終わった後、そうして不安そうに聞いて来るアリア、頭の部分には木製のヘルメットの様なものと、視界を確保する為のガラス製のカバーの様な物を着けている。


ガラス部分にはもし割れても蜂が入り込まない様に、ガラスの外側2cm程度の所に蜂を通さない為だけの薄い布が張られている。


「心配すんな、豚皮を2枚重ねた上に、その下を厚手の布で覆ってる。針は刺さらないし、服の中にも蜂が侵入することはまずないよ」


そうアリアを安心させつつ、俺はアリアを伴い、ロウロウビーの養蜂箱へと近付き、養蜂箱の下から周辺の湿った草木を集めた物に火を付ける。


「…う、うぅ!では逝きます!」


「なんか発音が違って聞こえたぞ?」


養蜂箱を燃やさない様に気を付け、暫く燻していると、蜂は少し大人しくなった様だ。


「…煙で本当に大人しくなるんですね」


煙で燻すことで本当に蜂の動きが緩慢となり、大人しくなったことにアリアは驚きつつ言った。


「まあ、な。じゃあ今の内に木枠を外して、あの樽に入れてくれ」


「はい、確かこの溝に沿っていれるのですよね!…はい、入りました」


俺の言葉に、アリアは養蜂箱から木枠を一つ取ると、表面に着いていた蜂を払い、巣の膜をナイフで落とすと、遠心分離機の溝へと木枠を入れる。


「…全部やんだよ。何で一個だけなんだよ」


一個だけそれを入れて、此方へと出来たと言い報告してくるアリアに、俺は冷たくそう言い放つ。


「よしっ、じゃあ始めるぞ!」


アリアが巣を全て遠心分離機に入れ終わった後、俺は遠心分離機の柄を握るとゆっくりと回転し始める。


「そうやって使うんですね」


アリアが感心しながら、その様子を見ている中、俺は遠心分離機を回し続けていたが、ふと回す負荷が軽くなったと思い、樽の中を見てみる。


すると樽の中には大量の蜂蜜が、溜まっていた。


「そうだ。この回転で蜜だけを樽の壁へと飛ばして、後は勝手にしたまで落ちるのを待つ、それでこの蛇口を開けると…」


ドバドバ

そんな音を立てて、大量の蜂蜜が予め用意してあった綺麗な空樽へと入っていく。


「うわぁ!こんなに蜂蜜が採れるんですね!」


本当に凄い量であった。

予想していた以上の収穫に内心の喜びが表情に笑顔となり現れる。


「…いや、まぁ此処まで採れるのか、予想以上だよ。1個の巣で15kgも取れるんだな。流石は万年蜂と言われるだけはあるな」


樽の8割付近までを養蜂箱1つで満たされたことに驚きながら言う。


「えーっと、15kgだから250gを一本とすると、60本分、つまりはこれだけで銀貨60枚の儲けなんですか!!?」


アリアが驚きの声を上げる事も分かる。領内にあった余り物で作った器具と、銀貨2枚掛かった防御服のみでこれだけの売り上げを期待出来るのだから驚くのも当然だろう。


「あぁ、そうなるな。後2箱も同じだけ取れるとすると、金貨1枚と銀貨80枚ってわけだ。それが年4回取れる訳だから、金貨7枚と銀貨20枚だな」


「…凄いですね。養蜂箱を増やせばもっと採れる様になりますもんね!?」


まあ、倍々ゲームとなる事は確かだ。そんなに蜂の巣が見つかればだが…。


流石に俺も蜂を人口で増やす方法は知らない。それはこれから研究して行ってもらう事にしよう。


「…まあな、後でサイドルールの所へ持って行って驚かせてやろうぜ!」


この収穫を見せて、成果が期待出来るとサイドルールが判断すれば、養蜂が本格的に商売となり、動き出すだろう。


「はい!殿下!……っあ、でもその前に蜂蜜味見させて下さいね!」


「あぁ、好きなだけ食べればいいさ」


その後、一度城へと満タンとなった樽を持ち帰り、更に森へと引き返す際に2本の空樽を持って行き、同じ様なロウロウビーの蜜を採った。


その夜、サイドルールへとロウロウビーの養蜂をアリアと二人で行っていた事を連絡し、今後はアリアが主体となって養蜂を行っていくこととなった。


後日、サファリ領内の森の一斉探索が行われて、24個もの巣が見つかった事により、養蜂箱は27箱へと増えた。


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