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2話

side ミリィーナ・パロマウント


六獣王様の治める大陸、ズーランド大陸、その大陸の西方にあるナルニート国は、六獣王に名を連ねるジークムント様が治める国です。


六獣王様とは、世界が闇の者達に支配されている時代に、ズーランド大陸から闇の者を退けた六人の英雄達から由来がきているそうです。


六人の英雄様達は、シロサイ、シロクマ、ライオン、アフリカゾウ、トドという古代の獣の血を受け継ぐ一族の出身の方々だったそうです。


その方々がズーランド大陸を支配していた闇の者を倒した後、荒れ果てたズーランド大陸に、それぞれが国を起こしたことにより、民達が自然と六人の獣王が居ることから、六獣王様と言われる様になったと聞きました。


ナルニートの獣王様はシロクマの流れを組んでいるということです。


そのナルニートは今活気に沸いています。先月、第三王妃様が無事に皇子様をご出産なされたからです。


一年前、王妃の御懐妊を喜んだジークムント様は、国中の人々に皇子の身の廻りを世話する者として、5歳から10歳までの優秀な子供を探している。希望者、推薦者はその子供と共に王宮へ来いと発表しました。


私の家、パロマウント家は商家でしたが、ジークムント様にお近付きになれるチャンスと父が張り切ってしまい。その結果、一番年齢の近かった私が国へと面接に来ることになりました。


周りは貴族や昔からの名家ばかりの子女が合格した中、私だけが爵位も何もない家系でした。…田舎の小さな商家なので当然ですけど、当初は虐められたりするのだろうと覚悟していましたが、皆さん本当にいい人達ばかりで、一年間、一緒にご作法や護身術を学んでいる間に、立場も忘れて友達の様になっていました。


そして今日、ついにジオラルド様へと始めて会う日が訪れました。


ジオラルド様の為に用意さた新しい城、其処で私達6人はジオラルド様の世話係として過ごすことになるのです。


ジオラルド様直属の武官というクリーク様へ連れられ、ジオラルド様の部屋へ到着し、部屋の中にいらっしゃるジオラルド様を見て感動しました。


部屋へ案内された時は寝られている様でしたが、私達が近くに居ることに気付いたのか起きられて、目を開けると第三王妃様と同じ金色の毛並みに、ジークムント様と同じ紫色の瞳。


私はカリスマというモノを始めて体感しと思いました。


「うゅ……」


私達の中でも一早く目覚めたことに気付いたアリアが、ジオラルド様の元まで駆けていくと、両手でジオラルド様を抱き上げて胸元に抱えました。


「すごい、本当に綺麗な瞳。お腹が空いてるのですか?」


ジオラルドの目を見てそう話しかけているアリア、私もジオラルド様とお話ししてみたい。そう思い、急ぎ足でジオラルド様の方へと向かうと、他の皆も同じ様に思っていたのか、ほぼ同時にジオラルド様の元へ向かいました。


「ジオラルド様、ミリィーナです」

「あたしは、カトナだよ。何かして欲しいことある?」


私達が話し掛けるとジオラルド様は分かっているのか、話している私達の方へと視線を向けてくる。でも暫くすると、それにも飽きられてしまったのか、視線を部屋の中へと巡らせ始めてしまう。


「……っぁ」


ジオラルド様の視線を追っていた私は直ぐに分かった。

それは壁に飾られている豪華な装飾が施された鏡、私からみても綺麗で見惚れてしまいそうな鏡だ。


腕を伸ばしながら其方へと行きたそうにしているジオラルド様、皆もそれに気付いたようだ。


「ジオラルド様、何かお望みがあるのですか?」


「お腹すいてるのかな?ジオラルド様、ほら、起きたばかりだし…」


「アリア、私わかるよ!少しだけ私に抱かせて」


アリアからジオラルド様を受け取ると、私は直ぐに鏡の前へと連れて行き、ジオラルド様の全身が鏡に写る様に抱え直す。


「ジオラルド様、これが鏡ですよ。金色の髪は王妃様、瞳の色はジークムント様にそっくりですよ」


「鏡が見たかったんだ。良く分かったね、ミナ」


「あたしも抱かせてよね、ミナ、ジオラルド様、本当に可愛いな」


「すごい綺麗な尻尾だね?」


ジオラルド様へ声を掛けると、私は鏡越しにその紫色の瞳を見つめる。


その瞳に視線を奪われていると、ふとっ、額が温かくなっている事に気付き、何かと思い鏡を見ると、ジオラルド様の尻尾が私の額を撫でていた。


それを見た途端、自分の全身から血の気が引くのが分かった。


「ジオラルド様!??」


「ジオラルド様、ミナを選んだ!?」


「?!うそ、最初の契りはジオラルド様の近衛のクリーク様へする筈でしょ!」


皆も不味いと思ったのか、慌てて部屋から出て行ってしまう。恐らくはクリーク様へ報告しに行ってしまったのだろう。


獣人の王族が尾を使い目下の者を愛でる行為、それは契りの証と言われ、最も信頼を示す者にしかしないとされる。


それはもう誰に教えられた訳でもなく、産まれた時から本能としてあるもの。


自分の絶対の信頼をおける者にしかしない行為。だからこそ王族はそれを自分の直属の武官に最初にするのだ。


クリーク様は小さな頃からその契りを受ける為に、日々を王族に仕える為に己を磨き続けられていた方だと有名だ。


クマ系の獣人の為に、戦闘力は高く、一人で数十人の騎士を無傷で倒せる程だ。そんな方の最初の契りを、こんな何の取り柄もない商家の娘が受けてしまった。


これが他の騎士の方ならまだ、助かる余地はあったジオラルド様が選ばれた方ならしかたがないと…。


ただの世話係の娘に契りを取られたとなれば、クリーク様の一族全てが笑い者にされるだろう。


これは、もう本当に、助からない。


「殺される」


声に出して言うことで実感したのか、身体が震えて立っていられなくなり、床に座りこんでしまう。


自然と目から涙が溢れ出してくる。


目を瞑り泣いていた私の目に柔らかい感触が触れる。

また触られてしまった!慌てて顔を後ろへと反らし、それが何かを確認するとやはりジオラルド様の尻尾であった。


あぁ、もう本当に夢でなく、これは現実なんだと再度認識し、声を荒げて泣き始めてしまう。


「…どうして私なのジオラルド様?!貴方には、貴方にはクリーク様という立派な近衛が!」


バン!

「…契りを最初の契りを貴様が受けたのか?どうやってジオラルド様へ取り入った!!?」


クリーク様は私の膝に居たジオラルド様を抱き上げると、私を睨んだままジオラルド様をベッドへと運び横たえる。


「あの!何も、何もしていないんです!ただ鏡を殿下に見せていただけで!!契りの証でなく、恐らく偶然に?!!」


「偶然にジオラルド様が契りをしたと?殿下を愚弄する気か!!」


「そんなつもりは申し訳ありません!!」


私は只々、クリーク様の赦しを請う為に、その場で何度も何度も頭を下げる。


「貴様がジオラルド様を謀った罪は重い!家族にも非が及ばないと思うな!徹底的に調べてやる。この者を牢へ連れて行けっ」


「…お、お許しください!」


クリーク様の命令で、先程まで部屋の外で待機していた騎士達が私の元へき、懐から出した縄で私の手を縛ろうとする。


目を瞑り、家族のことを思う。父さんには幾分から思う所はあるけど、それにしても私の将来のことを考えてくれた為だと分かっていた。


ないお金を工面して、支度金を持たせてくれたし、母さんだって無理だと思ったら諦めて帰ってこいと言ってくれた。


このまま疑われたまま処刑されてしまえば、そんな優しい両親にも非が及ぶだろう。


まだ幼い殿下にこんな事を思うべきではないのだろうが、思わずにはいられなかった。


「…たすけて、よ」


本当に私に一番最初の契りの証をくれたのなら、こんな弱い私でもいいのなら、どうか助けてください。


っていうか!責任を取れっ!馬鹿ジオラルドっつ!!!


そう内心で叫んだ瞬間、私の身体には縄が巻かれ、少しの浮遊感と共に

、柔らかい場所へと放り出された。


「…ジオ、ジオラルド様のベッド?」


目を開けると、目の前にはベッドに寝転がっているジオラルド様と、そのベッドから離れた…。ううん、私がさっきまで座っていた場所にいるクリーク様と騎士様達が、驚いた表情で此方を見ていた。


「何をして!ジオラルド様?!その女は貴方様を謀った極悪人ですぞ?」


「「「殿下が助けた?!!」」」


「ジオラルド様が私を!!」


クリーク様と騎士様達の言葉からすると、ジオラルド様が私を庇ってくれたみたいだ。


…でもどうやって?ジオラルド様は一人で満足に動けない筈なのに?

そんなことを私が内心で考えていると、再び私を捕らえようと騎士様達が私に向かってくる来るのがわかった。


あぁ、やっぱり駄目なんだ。少しだけ期待しちゃったのに、な。


良く分からないことばかりで、頭がちゃんと働いていないのか、捕まれば終わりだというのに、私はその光景を他人事の様に見ていた。


そう見ていたからこそ、何が起きたのかが今度は分かった。


ズォオン!!!

「「「「ーーーー?!!」」」」


ジオラルド様が視認できる程のオーラを纏った尾を横に一閃し、騎士様達をクリーク様諸共に弾き飛ばしたのが…。


開いた口が塞がらない。生後一ヶ月だ。たった生後一ヶ月の赤ん坊が、ナルニートの選別されたエリートの中のエリートの近衛兵を、ズーランド大陸でも強いと名の知れているクリーク様を、尾の一閃、たったそれだけで吹き飛ばしたのだ。


しかもあれはなに?

騎士が長年修練して始めて到達できるという最上位戦闘技能、オーラバーストを目に視認できる程の量で扱った?


「ちょっ?!あんた!いやっジオラルドさまぁっ!?ええ?!何やってんの!」


思わず地の言葉が出たが、ジオラルド様の手前直ぐに敬語に戻そうとする。しかし、驚きが大き過ぎて、理解が及ばなさ過ぎて、脳の処理が追いつかないのか、自分でも何を喋っているのか分からなくなる。


『何事だっ!!ジオラルド殿下の部屋の方だぞ!?』


騎士様達とクリーク様がジオラルド様に吹き飛ばされ、部屋の外の廊下の壁へめり込んでだ轟音を聞きつけたのか、周囲からはドンドンと人が集まってくる。走ってくる足音が聞こえてくる。


吹き飛ばされて意識を飛ばしているクリーク様を方然と眺めていた私の視界に、アリアとカトナ達が驚いた表情でクリーク様とジオラルド様を見ているのが分かった。


そして私に皆の視線が向き、アリアが何かを話そうとした瞬間、ジオラルド様が尻尾で扉を閉め、内鍵を掛けてしまった。


いやいや、内鍵まで掛けれるとか、こいつどんだけ頭がいいのっ?!私はクリーク様達が吹き飛ばされたことよりも、自分が変なところに驚いている事を自覚しながらも、それをおさめることが出来ずに呆然とした間抜けな顔のままジオラルド様へ視線を向けると、ジオラルド様もまた私を見ていた。


「えっと、ジオラルド様何か?」


「………」


…何か用があるのかと考えて、声を掛けてみるも無視された。


再度、声を掛けても良いのだが、あの尻尾を私に向けられては堪ったものでないので、一先ず誰かが状況を変えてくれるまで、今後の身の振り方について考えてみようと思う。


勿論、このジオラルド様を利用しないと生き残れなさそうなので、存分にその力で私を庇護してもらう所存だ。




「……ジオラルド殿にやられた?」


「本当かそれは?クリークが意識を失う程のオーラだとっ?!」


「中には誰が居るのだ?ジオラルド殿下のみか?……世話係のミリィーナ?商家の子供だとっ?!何故そんな者が殿下の世話係になっておるんだ!」


「クリーク殿、本当に殿下にやられたのかい?」


「…そうだ。ジオラルド様は既に力を有しておられる。だから敢えて契りを中途半端な強さの俺にしなくとも良いと、そう本能で判断されたのだろう」


「…本能ねぇ、命の次っていうと、子孫繁栄?馬鹿らしい、まだ生後一ヶ月だよ、殿下は?」


ジオラルド様が扉を閉めてから数十分、扉の外でザワザワと複数の声が聞こえています。


クリーク様を呼び付けに出来るだけの立場の方が2名、年配の方はサイドルール様だろう、ジオラルド様の教育係として、この城の全権を任されてる方、もう一人がクリーク様と同じジオラルド様の直属の近衛であるハロルド様だろう。


これは本当に大きな問題になっているみたいだ。


「ミリィーナはおるか?」


「は、はい!此方に居ります!す、直ぐに扉をお開けしますのでお待ち「如何ぞ!」えっ?」


扉の向こう側から掛けられた声、それはサイドルール様だろう。


扉を開けた方が良いと思った私は、直ぐにそれを伝えて扉を開けに行こうとするが、それはサイドルール様へ止められる。


…何故だろうか?皆、私がジオラルド様を謀っていると思っているのではないのか?


なら解決の為にも、早くあの扉を開けて、直接話をした方が早いだろうに…。


「…今は殿下を興奮させぬ方がいい。お前から話を聞きたいと思うが、良いか?」


「…はい、もちろんです」


「殿下は今何してるの?それとミリィーナだっけ?君はどこに居るの?」


私がそう答えた直後、今度はハロルド様だろう声が聞こえる。


「…ジオラルド様はベッドで横になっています。私はそのベッドの横で控えさして頂いてます」


「…そうか、ならば殿下を刺激しない様に、お主だけで扉まで来て、鍵を開けてくれぬか?」


「……はい、わかりました。ジオラルド様、私は扉を開けるので此処に居て下さいね?」


私の言葉をジオラルド様が理解できているのかは分からないけど、静かにゆっくりと話しかけて、扉2に向けて攻撃しないでね?という意味を含ませて、扉へと数度指を指してから身体をゆっくりとベッドから離し、部屋の唯一の出口である扉へと向かう。


「ミリィーナよ、何をしておる早く開けぬか?」


サイドルール様め、他人事だと思って、ジオラルド様は私にとっては命綱であると同時に、あの力を持って襲ってこないとは断言できない危険物なのだ。


刺激しない様にと考えたらこの位のスピードが限界だ。それでも爺さんが死ぬ前には余裕で扉に着く。だから待っとけ!そう内心で毒吐きながらも慎重にことを進める私、たぶん、今が生涯で一番輝いてるに違いない。


「はい、直ぐに行きます。ジオラルド様、どぉー!どぉーだよ?」


ジオラルド様にどぉー!どぉー!と馬にかける様に掛け声を掛け…。なんて不敬を私してるのっ?!


と、兎に角、刺激しない様に、要約辿り着いた扉の前に、程良い達成感を感じつつ、再度、ジオラルド様の方へ向き直り、落ち付けよ。どぉー!どぉー!っと内心で言いながら、両手を胸に重ねて軽く叩く。


「では、今から開けますね?」


私の内心を見透かした様に、ジオラルド様は尾を一振りし、次に変なこと考えたらお前もクリーク達と同じにしてやるという意思表示をされている様だった。


全く恐ろしい赤ん坊である。早く鍵を開けてここから開放されよう。

そう思い、手早く内鍵を外し、扉のノブを捻って開けた瞬間、ハロルド様が剣を私に振りかぶったのが見えた。


「殿下っつ!!お助けに参りましたぞ!」

「キャッツ?!」


もうあかん!わたしっ!死んだ!死ぬうぅ!?それと同時にサイドルール様がジオラルド様へ声を掛けてるのが聞こえた。


いや、助けるのなら私を助けてくれっ!!


ガッキン!

「な、なんだと、ジオラルド様っ!?」


私がハロルド様に輪切りに下ろされる間際、ギリギリでジオラルド様の尻尾がハロルド様の剣へと当たり、剣が折れたことにより九死に一生を得る。


「ジオラルド様!」

ジオラルド様、ミナは今、貴方の事が大好きでげぇほぉぅうう?!?!?


助かった喜びを内心で愛の囁きをしている最中に、私の身体はジオラルド様の尻尾に巻きとられ、所定の位置と成りつつあるベッドの上へと搬送された。


「ハロルド様の剣が折られたッ!?」


「……」


ジオラルド様は私をベッドに降ろすと、尻尾を器用に操り自分の身体を持ち上げてその身を起こした。


瞬間、部屋の中を濃密な殺気が埋め尽くす。

やる気かこいつ!?こんなことに成りそうだったから刺激を与えない様にしていたのに!私の努力台無しじゃねぇーの!?


何だよもう!最初見たとき、つい一刻前は何て綺麗な赤ん坊なんだろう感動してたのに、今じゃもう危ねえっ、森の奥に居るモンスターと同レベルだよっ!!


モンスターは、って違うガキ、でもない!ジオラルド様は殺気を振り撒きつつ、最初の獲物を誰にしようかと見定めている様だった。固まって動きを止めている騎士達を一人一人を見ている。


そこ、そこの剣折られて凹んでる男、そいつをやれ!ほらやれ!直ぐやれ!と内心で皆の無事を祈る。


『も、申し訳ありませんジオラルド様!』


私の祈りが通じたのかジオラルド様はハロルド様に目を付けた。

おぉ、やるか!って駄目!私、何か精神的に参ってきてる!落ち着け、落ち着くんだ。


…少しの沈黙の後、サイドルール様がそう声を上げてると、そな他の騎士達もそれに続き一斉に声を上げて姿勢を正すと、その場に膝まづき私に、ではなくてジオラルド様に頭を下げた。


ふふっふ、平伏せよ!サイドルールめ!と思っていたらジオラルド様が私を見ていたので、慌てて私もその場に平伏する。




それが数秒、いや数分だろうか、そろそろ足も痛くなってきたし、いい加減足を崩してぇーと内心考えていた時、またもや私の祈りが通じたのか、ジオラルド様は尾をしならせて床を割るかの勢いで数度叩く。


その音に皆が顔を上げたのを確認すると、ジオラルド様は尾で開いている扉を指して、皆へ外へ出て行く様に促した。


どさぐさに紛れ、私もこの部屋から出て実家に帰ろう。そう考えて部屋の出口に向かう。


「きゃっ?…ジオラルド様、何で私だけっ?まさか食べるつもりじゃ?!」


よしっ!気付かれてない!あと一歩で自由だ!と最後の一歩を踏み出したのだが、その足は部屋の外を踏むことなく、私の腰に巻かれた尾により、最早所定の位置となったベッドへと戻されてしまう。


更にはジオラルド様が自身の身体を私の胸へ抱けと言う様に、その小さな身体を私の小さな胸元に持ってくる。


こいつまさかとは思うけど、私のチッパイにご執心なのか?なら抱いてやるのは癪だなぁ、と思いつつも、痛い思いをするのは嫌なため、両手でしっかり落とさない様に抱える。


「ミリィーナ、お主を殿下の世話係件、第一の近衛として任命する。…命を賭して殿下を守れ、少しでもおかしな真似をすればお前の家族も無事では済まさんから、心得よ」


「……こ、心得ました」


去り際にサイドルールの爺いが、最初は皆に聞こえる様に、誰にも聞こえない様な声で、そして間を置いてから声を潜めて、悍ましい物でも見る様な目で二言目を告げられた。


あとクリーク様とハロルドの馬鹿にも出て行く際に、睨み付けられ、お股から若干の冷汗が迸った。


ジオラルド様は騎士達が全員出て行った事を確認すると、扉の内鍵を再び掛けて、私に何を考えているのか分からない、一件、無垢な瞳を向けてくる。


「ジオラルド様、何か御用ですか?」


なんだ!この野郎、何考えてやがる!絶対なんから思ってることあるだろ?ほら、ほらほら!早く言えよっ!そんな感じで見られたら夜も怖くて寝れやしねぇーよ。と内心で毒吐きながら急かしてみるも無反応であるため。


少しでもジオラルド様に気に入られ様と考えをシフトさせて、私の持ち得る限りのナイススマイルを見せつけてやる。


「……」


そんな私の渾身の笑みを無視して、ジオラルド様は部屋中の物を尻尾で取ってはベッドへ運ぶという奇怪な行動を取り始めた。


「…やってらんない、もういいや、疲れたし寝よ」


尻尾を振り回して遊んでいるジオラルド様を放置して、私は近くにあったソファーへと身を投げるとそのまま眠りに着いたのだった。


その深夜、トイレに起きた私は、何時の間にかベッドで寝かされている事に貞操の危機を感じるも、こんな豆鉄砲じゃ何も出来ないかと思い直し、そのままベッドで寝ることにした。

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