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19話

電気のスイッチをONにした様に突然、何の前触れもなく目が覚めた。


意識の覚醒と共に全身より襲いかかって来る痛みに、ジオラルドは自問自答する。


そして自分がこの状態へと陥った原因を思い出し、その目を開けると同時に言った。


「…人ってさ、マジ切れすると、あんなに怖いんだね。ジオ初めて知った」


ジオラルドが目を開けると、其処には何処かで見たことがある懐かしい天井絵が書いてあった。


いや懐かしくないか、ジオラルド宮殿で過ごしたのも数日だけだったし、な。


「目、開けた瞬間に話ださないでくれます?チビリそうになったじゃないですか、殿下」


ミナは目を見開いて俺の顔を見ると、勘違いなのかもしれないが、瞳に薄っすらと涙を溜めて俺を見て言う。


『殿下!意識がお戻りになったので!?』


ミナのそんな言葉の後を追う様に、他の皆からも驚きと喜びが混じった声色の声が聞こえてきた。


「…身体中がヒリヒリするんだけど、後おしっこしたいよ。ミナ」


この世界に来た当初の様に、自分の身体が動かない事に驚きつつ、今自分の身の中で起きている重大な生理現象について、どうするべきなのかと、目の前に居るミナに問うた。


「私にどうしろと?飲めとでも言う気ですか、馬鹿殿下」


「ミナが何か、いっそう冷たくなってる?!」


何時も通りあっさりとした、だけど心なしか他人行儀な突っ込みに、違和感を覚える。


「….殿下、取り敢えずお水をどうぞ」


ミナの冷たい態度にか、尿意の為か、身体に寒気を感じ身を震わせる。とカトナが水入れとコップを俺に持って来て差し出そうとしてくる。


「いや、カトナ。俺さおしっこ行きたいって言ったよね?」


おしっこ行きたいのに、水なんて飲めるわけない。そんなことをすれば飲んだ瞬間に許容量を超えて下からパージしてしまう。


「…殿下、お記憶は確かでございますか?」


そうカトナに突っ込んでいると、サイドルールが俺を見て気遣わし気な視線を向けてくると、そう聞いて来た。


「あぁ、サイドルールに置き去りにされた結果が、この有様っていうか?」


そうだ、俺はサイドルールに置いてけぼりにされた結果、こんな状態へとなってしまったのではないか!?

そうはっきりと思い出した。


「……やはりお記憶が混乱されてっ!?」


あたかも俺の記憶が間違っているかの様にそう言うサイドルール、こいつ知らぬ存ぜぬで貫き通すつもりじゃないだろうな?と考え、俺はサイドルールを厳しく追求する。


厳しく取り調べてやる!!


「してねぇーわっ!あるわっ!しっかりと!お前が置いて行った性とは言わんが、こうなった一因はお前にもあるぞ!」


「…殿下、申し訳ありませんでした」


しかし、簡単に自分の比を認めて謝罪されたことにより、厳しくなる筈だった取り調べは始まる前に終わってしまった。


「いいよ。………皆ごめん、心配掛けた」


サイドルールが誤ったことにより、場の雰囲気が暗くなってしまった。

皆、直接は俺にどうこうと言ってきはしないが、それぞれ心配してくれていたのだろう。


そう考えたら謝るしか俺に道はなかった。だから素直に心をこめて皆へ謝る。


「…心配なんかしてませんけどね」


そして即座にミナが重苦しい雰囲気をブレイクしてくれた。


でも此処はちょっと感動したいポイントだったとは、当の本人である俺が言えるわけないことだろう。


「そんなこと言ってお前、涙ぐんでるじゃねぇーか!!?」


「ぐんでませんっ!これはおっしこです」


どこからおしっこを絞り出す気だよ、おまえ!?内心でそうミナに突っ込むと同時に、俺の膀胱の決壊ラインがレットへと変わる。


「…どういう身体の構造してれば、其処からおしっこが出んだよ」


「乙女の秘密ですっ!」


俺の質問にミナがそう答える。その瞳はもうおしっこの跡はなかった。

恐らくはおしっこを服で拭き取ったのだろう。


内心で後悔する。ミナにおしっこを出させてしまったこと。


「なんかもうっ!色々と涙がおしっこに変換されて感動もなにもあったもんじゃねぇやっ!!」


そう只々、尿意が増して行くだけであった。


「殿下、この件については、なかった事となっておりますので…」


サイドルールが突然、そう真面目な顔して俺に言う。


「ミナ、おしっこが?ってか俺も漏れそう」


流石に瞳からアンモニア臭漂うもんが流れてりゃ無かった事にもしたいだろう。


そう思った俺は黙って納得することに、出来るかっ!?!一体なんの話だよっ!もうわけわかんねぇな!ただションベンがしてぇーんだ。


「違いますっ!ジオジークの奴に殿下が殺され掛けたことですよっ!?」


っは!と思い出す。意識を失う瞬間に見えた青い空を…。


空には小鳥が舞っていた。

旨そうだなぁー、喰いてぇわな!とか思ったのが敗因だったんだろうな。


「死にかけたんだな、俺。通りで立てない訳だ。…だから誰か尿瓶持って来て」


ミナの言葉を聞けば、俺は意識を失っている間に死にかけていたらしい。あぁ、生きてるって素晴らしい、そう思いながら脚をモジモジさせながら尿意を我慢する俺、膀胱炎になりそうです。


「…メルノーラ様より、金貨を500枚預かっております」


サイドルールより、メルノーラ様から金貨500枚を預かっていると報告が入る。


「…ミナ、俺の命ってグラノドワームより安かったんだな?」


グラノドワームを倒した報奨金より安上がりな俺の命、俺は本当に王族なのだろうか?


そう思いながらミナへと尋ねる。


「ワームは全てが使えますからね」


「なんだその、俺が全く使えないみに聞こえる言い方は…」


普段通りのミナに戻っている事に安心しながら、俺はミナに再度質問する。


「えっ、無駄にピーチクパーチク言ってるだけでしょ、その辺の小鳥の方が癒される分マシじゃないですか?」


酷い物言いをするな!誰が王都をグラノドワームから救ったと思ってるんだ!?俺だ!俺!


それを小鳥なんかと一緒に、まあ確かに食えるし、美味いしなぁ。


「…小鳥、美味いもんなぁ。っあ、ピースケ?」


そう内心でも言ったことと同じく、思いながら目線を空、部屋の天井へと向けると、其処には何時かにカトナにプレゼントした小鳥が舞っていた。


確か、名前はピースケだったかな?


「…駄目ですよっ!殿下!?」


ピースケ、と名前を呼んだ俺の元へ飛んでくる小鳥、空かさず掴み捕る。捕った瞬間、カトナから制止する声が掛かる。


「喰わないよ、ピースケはカトナにやったんだから」


ピースケを手から離しつつ、カトナにそう言っておく。


「…って言うか、此処どこ?あと本当にヤバイからトイレ連れてってくれる?」


ジオラルド宮殿にあった俺の私室に似た作りの部屋、ジオジーク宮殿で借りていた部屋はこんな部屋では無かった筈、そう思いながらサイドルールへと尋ねる。


「…取り敢えず、現状ですが、ここはサファリ領の城となっています」


あぁ、そう言うことか、通りで少し前に見たことのあると思った訳だ。


「…そうか通りで見たことがある訳だ。あれか、王家の人達って部屋の天井に世界地図は必須なの?」


「…寝ていても世界を把握出来る様にですかね?」


「……そうなのか。というか漏れそうなんだけど?何がって?おしっこだよ」


果たして寝ている時に世界を把握したとして、それが何になるというのであろうか?


「…この城の補修はまだ終わっておりませんが、ジオジーク宮殿に居て、また同じ様な事があってはいけないと考え、独断で申し訳ないですが、殿下が意識を失っている間に、移動させて頂きました」


そうだな、次同じことがあるなら、確実に俺も完全獣人化して彼奴をフルぼっこにしてやろう。


「…そうなんだ。じゃあ、この外から聞こえてる音は?偉く騒がしくしてる様だけど、城の改修工事の音って訳か?」


俺が目覚めた原因の一因でもある音について聞く。


城の改修工事にしては、幾ら何でもうるさ過ぎないか?と思うのだ。


「それもありますが、大半の大きな音は、城のある丘の横で、大岩を切り崩している石切り達のものでしょう。それと領内の端の方に現在、仮宿舎の建設も行っている為、森にある木を伐採する音も混じっているかと…」


何時の間にか開発が始まっていた事に驚く。こう言うのって俺が先導して動かして行くものでは無いんだな。


「へぇ、身体が治ったら俺も見に行くかな。ごめんリナ、尿瓶持って来て漏れそうっ!」


傷が治って動ける様になったら、俺も開発工事の様子を見に行こう。そしてそれっぽい感じで現場を回るのだ。


きっと皆が、あの年齢でこれだけの開発を先導して行っている方だっ!そう驚いて見てくるに違いない。楽しみだ!


というか、ヤバイ!いま少し迸った。慌てて俺は部屋の扉の一番近くに居たリナへと、大至急で尿瓶を取って来る様に頼んだ。


「えっ?殿下漏れそうなのっ!どうしてもっと早く言ってくれないの?!」


「…俺、ずっと言ってたんだけどね」


怒りながら部屋を出て尿瓶を取りに行くリナの背中を見送りつつ、言ってみるものの、返事は返ってこなかった。


「サファリ領内の運河の位置について、殿下に確認してもらいたいので、後で建築士ともう一度来て打ち合わせをしましょう」


「…位置とか言われても困る」


シミュレーションゲームみたいにポンポンっと置いたらええやん!的な手軽さで言った俺に、そんな大それた代物の場所決めとか無理を言うな。


「…じゃあ、私が決めちゃって良いですか?」


恐らくその方がちゃんとしたものが出来るぞ。そう思った俺は、この際と思い細々した事はミナに任せてしまうことにした。


「うん、俺の言ったことやってくれるなら、細々したことはミナとサイドルールに任すよ」


「分かりました。殿下もこう言ってるので、サイドルール様、執務室に戻り話を詰めましょう」


「あぁ、分かった。では殿下私達は失礼させて頂きます」


俺のそんな返答を聞くや否や、ミナは視線を俺からサイドルールへと移すと、サイドルールと共に部屋を出て行ってしまった。


「…殿下、私とハロルドも領内の見回りと、城内の警戒に当たらせて頂きます」


「…クリーク、昼からは僕が場内だよね?」


ミナとサイドルールに続いて、クリークとハロルドも警備に戻ると言い出て行ってしまったので、部屋に残ったのは、俺の初恋の人カトナと、俺に惚れているアリアの二人が残った。


三角関係である。微妙に空気がいた堪れない。


「…殿下、お水を飲まれますか?」


そんな雰囲気を感じ取ってか、カトナが再度、水入れとコップを持って俺に差し出してくれる。


ダムが決壊しそうな俺にとって、それは誠に有難迷惑である。


「いやっ!だから要らねぇーって!?それよりおしっこだよ!おしっこ!?」


俺がそう言ってカトナに、少し怒りながら水を断ると、アリアが笑いながら声をかけてくる。


「尿瓶は今、リナが持って来てるから待ってなよ、殿下。漏らしちゃ駄目だよ、あははっ!」


「あははっ!じゃねぇ!」


笑い事じゃないんだ。急を要するんだよ。


ばたん!

「殿下!お待たせっ!!…じゃあ掴むね?」


「うぉい?何を掴む気だこのやろっ!?」


乙女が触れちゃーいけねぇ!危険物がそこにある!決して触れちゃいけないよっ!?


「えっ?でも殿下、両手折れてて使えないでしょ?…大丈夫だよ!ちっさいのは皆知ってるから、ね?」


「ちっさいとか言うな!俺は大器晩成タイプなんだよ!あと、ね?でもねぇ!……っぁ、冷たい」


ベッドから身動きの出来ない俺は、抵抗も虚しく、アリアとカトナ、そしてリナの前で下半身をさらけ出し、瓶へとレーザーを放つことになった。


「はいはい、殿下のチン獣掴まえた!」


レーザーを放った反動の為か、暴れる俺の相棒を掴み取り、リナがいう。


「皆の前でさらけ出す事になるなんて、お嫁にいけないやい!……ってかチン獣言うな。不敬だ!?」


「はいはーい、チンを拭き拭きしましょうね?」


「チン言うな」


チン獣でもチンでも良いから早く相棒を辱めから解放してやってくれ!そう願わずにはいられなかった。




一方、サファリ領の再開発を行う執務室では…。


サイドルールとミナを筆頭に、建築士が数名、会議を行っていた。


「運河の位置ですが、最終目標がクタナ湖ですので、サファリからクタナ湖へ最短で行けるルートとしましょう。運河は基本的に急激に方向を変えたりせずに、曲げる際は長い距離を持って緩やかにすることを考慮してください」


「はい、ミナ様の言うとおり計画させて貰います!」


ミナの指示を聞き、それをメモに取る男、当然ながらミナよりも年上の男であった。


「ミナ様、運河に使用する石切りにて問題がっ!」


また別の男がミナに指示を仰ぐ。どうやら問題が発生した様で、 男は慌てている様だった。


「何ですか、問題って?」


ミナはそんな慌てている男にも冷静に対処して、何が問題がないなのかを確認する。


「はい、何でも手持ちの道具では切り出せない大きさの一枚岩が有ると言っておりまして…」


それだけを言われても、自分は状況を見ていないのだから判断がつかない。そう判断したミナは直ぐにサイドルールへと振り返り確認する。


「…一度、見に行って来ますね。サイドルール様?」


「うむ、此方は引き続き私がやっておこう」


サイドルールから許可を得たミナは、サイドルールから男へと視線を戻して言う。


「はい、お願いしますね。…で、何処ですか?」


「はい、ミナ様!此方になります!」


ミナは男に案内されて、城の丘の横にある石切り場へと下りて行きつつ思う。


「なんかこう名前に様ってつけられると、感慨深いものがあります。こう、昇りつめたな私っ!みたいな」


「何か言われましたか、ミナ様?」


何時の間にか思考が口から吐いて出ていたのか、男にそう尋ねられて、話を聞かれていたと思い、ミナは赤面しつつ、男に返答する。


「…いいえ、何もないです」


現場に到着して直ぐに、ミナが来たことに気付いた男達が走り寄って来た。


『おぉ!ミナ様が来てくれたぞ!皆ぁあ!!?』


「…毎度思うんですけど、この反応、彼等には私って何者に見えるんですかね?」


自分が現場に来ただけで、此処迄一喜一憂する彼等を見て不思議に思いそう呟くも、その声は誰にも届くことはなかった。


「ミナ様っ!この大岩がどうしても持ってる道具が合わなくて切り出せないんだ!だから道具がいる!用意してくんねぇーか!?」


男達の中から一際身体の大きな者が出て来ると、ミナに向って問題を話し出してくれた。


「ふむぅ、その言い方だと、この岩が半分位だと切れるってことですか?」


「ん?あぁ!それならある道具で全然切り出せるぜ!?」


大きさが大きいから切り出せない。ならば半分程度にしてやれば、切り出せるのでは?そう考えミナが男に尋ねると、それは当たっていた様で、男は自信を見せてそう答えた。


「……これくはいならイケそうですね。よしっ!なら皆さん下がってて下さい」


そんな男の返答にミナは、少しばかり岩を眺めてからそう言って、周りにいる人達を下がらせる。


「えっ?何する気なんだミナ様?!」


ミナの言葉に男達は素直に従い、それぞれが仕事を中断して、ミナの後方へと集ってくる。


「俺達に下がれってよ。ミナ様の事だ、何がすげぇアイディアで解決するに決まってるぜ!」


「そうだな!皆で見てようぜ!」


男達が声を潜める訳でもなく言う言葉に、彼等は本当に自分をどう思っているのだろうかと、内心で心配しつつ、再度、周囲に人が居ないことを確認していると、直ぐ横に建築士が居た。


何してんですか、あんた?そう内心で思いながら、男へと視線を向けるとミナに、男は笑顔で言う。


「ミナ様、石切り達は全員下がったようです!」


「…建築士さんも下がってて!行きますよっ!」


いや、分かってる。あんたも下がれ、そう思いながらそれを男に伝えて下がらせる。


そして身体にオーラバーストを漲らせて大岩に向けて拳を一発ふるった。


どがーん!

「うぉおおおお!らあぁぁ!!」


ミナの気迫の入った掛け声と共に半分に砕け散った大岩に、ミナの後方居た男達が湧いた。


『大岩を素手で割りやがったぁあ?!!』


「ミ、ミナ様っ!?今のは一体?素手で岩を割った様に見えましたがっ?どんな仕掛けが!?」


何時の間に近寄って来ていたのか、建築士の男にそう尋ねられる。


「偶に役に立つ殿下ぱぁわあーです。種も仕掛けもないです。…で親方、これで石は切り出せますか?」


それにどう返答しようかと、悩みながら取り敢えず笑って誤魔化そう。そう思ったミナは建築士の男に笑い掛けた後、石切りの親方へと声を掛ける。


「…へ、へいミナ様、ありがとやっす!!」


何故か先程と態度が打って変わり、異様に恐縮していることに驚いた。


「じゃあ、私は執務室に戻るんで、後は任せました」


『へい!ミナ様っ!!』


問題が解決したことで、此処に居てもやれることはないと判断したミナは、皆へとそう声を掛け、来た道を城へと戻る。


「…やっぱり殿下がジオジークに負けるってのは納得いきませんね。私にあんな事が出来る力が与えられてるのに、同じ契りの証持ちのタノールにこんな事は出来ないでしょうし、何か卑怯なことされたに違いないです!」


その帰り道、やはり此処迄の力を自分に与える事の出来るジオラルドの契の証について、どう考えてもジオラルドがジオジークに負ける要素かま分からないと悩むも、答えは出なかった。




「…戻りました」


城の執務室に戻り、サイドルールに声を掛ける。


「……おお、ミナか、丁度良かった。」


すると直ぐにサイドルールに来る様に呼ばれた為、その元へ向かう。


「どうしたんですか、サイドルール様?」


何があったのかを尋ねると、サイドルールが手に持っていた書類一式を手渡して来て言う。


「…うむ、運河の概算が出たぞ」


「あっ、はいはい。見せて貰っていいですか?」


その書類を受け取り、確認の為に見て良いか尋ねると、サイドルールは無言でそれに頷く事て、了解を出してくれた。


「えっーと距離が……45kmと、流石に長いですね、その距離を深さが地上下を5m、地上上を1.5mで計6.5mですか、幅が25mと…」


工法としては、運河の底には岩を置かずに、U字型に5mの深さ迄掘り、両側の斜面のみに石と土で積んで行き、地上上1.5m迄積み上げる。


石を積む際に土で固める時に時間が掛かりそうです。しかも完成後に水より石を固定している土が流される事を考えると定期的なメンテナンスもいりますね。


石切りで切り出している石の大きさが、幅が70cm、長さが100cm、縦が50cmでしたね。


運河を1m当たり作るのに、6.5mの壁を両側になりますから、13m分、積み石の長さは1mなので、長さはそのままで良いとして、単純計算で13個ですね。


13個/1mですからそれの45km、4500m×13個=58500個の石が少なくとも必要になる訳ですか…。


「…あの丘の石だけじゃ足りませんね」


「やはりそうか、してどうするミナよ?」


5万個以上の石となると、もう崩れた丘に有る分だけでは足りない事は明白、無いのなら調達しなければならない。


以前にジオラルドに言われて描いた、このサファリ領内の地図を思い返す、確か領内に岩山もあった筈だったことを思い出す。


「確か東側にある山もサファリ領内のものでしたよね。…あの岩山から切り出す他ないですね。……そうなるともっと人数が欲しいですね」


それをミナがサイドルールに伝えると、彼は直ぐにそれに掛かる人員を考え出してくれる。


「…あの山の岩を削るならば、100人単位で人手がいるか、そうだな、運河の位置はもう領内については決定している。領内の地図はまだ出来て居ないが、今から掘削を開始しても、少し手直しする程度で修正出来る範囲だろう。寄って運河を掘る作業員についても、30人を一区間として3区画に訳て掘削を開始し、更に10人づつを土砂を移動させる者として区画へ割り振る。計120人としよう」


そうしてまたら新たに人手を雇う事が決まった為、取り立ててその了承をジオラルドにもらう為に、現場から帰って来たその足で、ジオラルドの部屋へと向かうことにする。


「新たに追加で石切りが100人、運河を掘る作業員が120人で計220人ですね、殿下に言って許可を貰って来ます」


「あぁ、頼んだぞ」


念の為、人数に相違がないか、再度サイドルールに確認するも、問題なさそうであった為、ミナは執務室の扉を開けてまた外へと出て行った。


ジオラルドの部屋に着いて直ぐに、ミナは状況をつらつらと報告し終えると、ジオラルドに許可を願う。


「220人か、了解任せたよ」


分かったのか分かっていないのか、ジオラルドは人数だけを反復する様に口に出して言うと、ミナに向けて頷き了承した。


「はい、後はあの山の石の切り出しも良いですか?」


了承をもらった後、ジオラルドに岩山の石の切り出しについて確認する。


「ん、あの白い山の右側だろ?良いんじゃないの?〜というかさあの白い山って石灰で出来てんのかな?」


するとジオラルドは、岩山でなくその隣にある白い岩山について尋ねてきた。


「石灰ですか?」


聞きなれない言葉にミナがそう聞き返すとジオラルドは何かを思い出す様な仕草で語り出した。


「あぁ、もしあれが全部石灰なら、それを粉々に砕いた物と1:2の割合だっけ?で土を混ぜて水を入れるとさ、固まるんだよ」


「固まる?粘土みたいにですか?」


それはまた家の壁穴修理などに使えそうな。そう思ったミナは、ジオラルドの話を聞くことにした。


「そうだな、粘土よりもっと硬いかな、岩と岩を接着するのに使うくらいだしなあ?」


岩の様に固まる。それが本当なら運河の石積みの工期削減になる。


「…殿下、早くサイン貰っても良いですか、それちょっと取りに行かせて試してみたいんです」


そうと分かれば、そうそうにこの話をサイドルール様に伝えて、協議しなければ、そう考えたミナはジオラルドに早々にサインをする様にせっつく。


「…いや、俺さ、腕折れてるから、手形でいい?」


このジオラルドのアイディアにより、今後、更にジオラルドの識字能力が低い事に長らく気付かれずに、後に大恥を掻くことになろうとは、この時、ジオラルドもミナも思ってもいなかった。


「あ、そうでしたね。大丈夫ですよ手形で、はい、頂きました」


翌日、ミナの指示により、作業員によって持ち返られた白い石をミナとサイドルールが粉々に砕き、土を混ぜ少量の水を入れると、本当に固まる事が判明し、更には防水性もあることも分かり、運河の石積みに正式に採用されることになった。


更に後日、ミナは山一つ分ある石灰石とそれにより作られる凝固性のある粘土の有用性を商人達に見せ、ラルド粘土というジオラルドの名前をもじった名称で販売すると、国中の商人から注文が入り、爆発的な利益を上げることになった。


ミナはサファリ領の開発とは別にラルド粘土を採掘し、粉々に砕く専用人員を大量雇用し、それに対応した。


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