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15話

ジオジーク宮殿のサイドルールに貸し与えられている部屋で、俺と俺の家臣団達が集まり話し合っている。


議題は、俺が親父に言った城買っていい?発言についてだ。


「…王都から1日で行けることが、条件の城ですか」


「…無いかな?古城とかでも良いんだけど」


「別荘用の城でも良いのでしたら、売出し中の城もあるでしょうが…、殿下、まず基本的に貴族は城を滅多なことでは売りません」


「どうして?」


「噂が立つからですよ、城を売らないと生計が立たない程に金がないのか、とか、城を維持して行くだけの裁量がないのか、とかですね」


「分かった様な解らん様な…」


「そうですな、貴族にとって領地は国から与えられた褒美、その様な背景がある為、土地を売るということは、国から貰った領地を捨てるに等しい行為と考えて頂ければ、分かりやすいかと…」


つまりは、領地の土地を切売りでも売ってしまえば、自分から国から拝領した土地が広過ぎて、自分の裁量では見切れない?管理も出来ない?と思われるってことか…。


何とも貴族らしい理由だことで、要らない土地なら放って置くよりも有効に活用出来る者に渡した方が、国的にも税収増とかが見込めて良い方向だろうにな。


「…そうか、なら城を買うのは難しそうだな」


「そうですね、陛下からの紹介などがあればまた、話は違ったのですが…、ただ理由もなく欲しいから売れでは貴族側も売りたくとも、売らないでしょうな」


大義名分っというものか?なんともまあ、見栄で生きている貴族らしい理由だ。


「…何でも良いんだけどな、取り敢えず住めさえすれば、此処に居るとジオジークが目障りだしさ」


「…殿下とジオジーク殿下は、あまり仲が宜しくない様ですね。話し合いで解決できないものでしょうか?」


「カトナ、相手があの態度じゃ、……確かに最初に挨拶しなくて、兄であるのに対等に話し掛けた俺も悪いがな。でもそれにしたって最近のあいつの態度は鼻につく、思いっきり殴ってやりたいと思ってるぞ」


『それは!やめて下さい!!?』


俺がそうカトナに返答した途端、カトナとカトナ以外の皆から一斉に制止の言葉が掛かった。


何だよ皆のその顔はっ!?まるで俺が本当にジオジークを殴りそうだって目をしてるぞ!流石の俺もジオジークを殴ったりなんかすれば、大問題、それこそどちらを王へ推すとかの、派閥が出来てしまう原因になることくらい解るぞ。


「…しないよ、まあ、仲直りは無理だと思ってくれ。お互いが子供の内はさ」


「殿下、子供の内に仲良くなれなかったら、大人になっても難しいんじゃないかなぁ?」


俺の言葉にアリアがそう首を傾けながら聞いてきた。

確かに積年の恨みとか、恨みが募り募って更に関係悪化ということも考えられるか…。


でも俺から謝るのは癪だしな。


「…そこはほれ、まあなんとかなるだろ」


「私はならないと思うけど、きっと大問題になると思うな」


そんな楽しそうな顔して、不吉なこと言うんじゃねぇよ!?


「今はジオジークじゃなくて、俺の新しい住処、城の話をしよう」


「しかし殿下、サイドルール殿とミナが言う様に貴族が所領を売ることは稀ですので…」


クリークの言うとおりやはり難しいか、先程サイドルールとミナにも言われたしな。


親父からの紹介状一つでそんなに変わるとは思わなかったし、知らなかったとは言え、書いて貰わなかった事は後悔するわ…。


「だね、というか、殿下が陛下から言った時に紹介状を貰わなかったのが、一つ失敗だったかな?」


「クリーク、ハロルド。それはもう言われなくとも後悔してるよ」


今、丁度、心の中で反省してたところなのだからな。


「ミナの実家がそういうの持ってたりしない?」


「…ウチの様な小さな商会じゃ、城なんて大層な代物、扱ってませんよ」


「…カトナ」


「あたしの家は領地を持っていないので、….申し訳ないですが、殿下のお力になれそうにないです」


「アリアの家は?子爵だったろ?城を一つくれ!」


「駄目だよ!殿下に城をあげたら両親の家がなくなっちゃいます!私の家は領地にあるお城一つだけしか持ってないですよ!」


「クリークは?」


「…当家もお力にはなれそうにありません。家督は既に兄が継いでおりますため」


「僕も無理だよ、殿下。カトナと同じ理由でね」


ハロルドも駄目か、なら此処は困った時のサイドルールに!そう思い視線を向けた瞬間に、サイドルールは首を横に数度振ってから言う。


「…私の領地は王都から遠方の為、そもそもが候補から外れます」


あれ、これは結局のところ、ジオラルド宮殿建てて貰わないと、住む所がなくなってしまうのでは…?


「どうしよ、俺親父に言っちゃったよ!?住む城は自分で用意するから、ジオラルド宮殿は建てなくてもいいって!!?」


『っ!?!な、何を?!』


「何を!勝手なこと!そうやって思いつきで言っちゃってるんですか!?」


「…これは本当に見つけねば、ならなくなりましたな」


「あの、殿下。古くて手入れもしてない城でいいなら、リナの領地にあるけど…」


「…え、リナの領地?」


「うん、と言ってもね、領民も全く居なくて、廃村とお城があるだけなんだけどね」




翌日、馬車を手配して朝からリナの持っているという城へと向けて、少数の護衛、それでも何時もの皆とは別に15人の護衛を伴って出発した。


そして昼になる少し前、到着したと聞き馬車から降りてその城を眺める。


山間にある広大な平地に広がる草原、そして田畑と家が数個、ポツポツと混在している村の中を一本の小河が流れている。


その奥の方にある小高い丘、その上にジオラルド宮殿の様に大きくはないが、小さくもない城が一つ建っている。


城が建っている丘の横には、元々は丘があった跡なのか、大きな岩が崩れ落ちて散乱している様だった。


「これがリナのお城で……チターノ領か」


「違うよ、殿下、ここはサファリ領って名前だよ」


「なんだ、家名が領地に付くんじゃないのか?」


そう思っていた俺はそれを直ぐにリナに聞き返す。


「それだと、チターノが10個以上出来ちゃうよ!本家以外の領地は街の名前で呼んでるんだよ」


「何という格差社会、ミナとの差が圧倒的だな」


ミナ、カトナ、クリーク、ハロルドが領地なし。アリア持っているが城一つ、サイドルールはたくさん持ってそうだな。そしてリナ、7歳にして自分の領地持ち。


やはり産まれた場所も運の内なのだろう。


そういう意味では俺の産まれた場所など、母がゴリラだと言うことを除けば恵まれているのだろう。


「商家と貴族を比べるのがそもそも間違ってますからね?」


ミナの呆れを伴ったそんな声が聞こえた。


「…小高い丘の上に建つ城か、悪くないね。僕達も警備が楽そうだよ」


ハロルドが暫しサファリ領を見てからそう言う。


確かに入り口は丘を登る坂一つのみであること、城の背後は丘の崖となっていることを考えれば守り易いと言えるが、囲まれてしまえば逆に逃げれなくなる絶体絶命の城とも言える。


…もしもの時に備えて、ハングライダーでも作って置いておこうか?などと内心考えていると、いつの間にか立ち直ったのか、ミナが俺の側へやって来て、城の外観を見やり言う。


「…少し草臥れて居ますが、取り敢えずは使えそうですし、城の外周の石垣も所々崩れてはいますが、直せない範囲でもないですね」


「…おぉ!ということは此処で決まりかっ!!」


8歳という幼い年齢でありながらも、城の外観を見て、直せる直せないが判断出来ることに、若干驚きながらもミナの言葉を信じるならこの城に住めそうだな。


「良いんじゃないですかね、どうですサイドルール様?」


「うむ、クリークと近衛兵に城内を見回らせて、抜け道や隠し通路、また隠し部屋がないことを確認し、問題なければ良いかと…」


そうか、変に隠し通路とか部屋があった場合は、暗殺者とかがその通路を通って、又は事前に部屋に潜んでて襲ってくるかもしれないもんな。


中古物件の城を買うのって結構大変なんだな。それならそうと早速、クリーク達に見に行って貰うか…。


「分かった。ならクリークとハロルドで近衛兵連れて城内の確認を頼むよ」


「護衛は宜しいのですか、殿下?」


正直、俺より弱いお前がそれを言うのか?と思わないでもないでもない。


「取り敢えずは、良いよ。サイドルールも居るし、それに何かあったら獣人化するしさ」


「分かりました。では行ってまいります」


忠義心があること事態は、嬉しく思うが…。


「…ではクリーク達には悪いですが、我々は此処で昼食を取り、その後に城へ行くという事で宜しいですか、殿下」


「あぁ、それでいいよ」


「じゃあ、ちゃっちゃとスープを作っちゃいますね」


サイドルールの提案でお昼を食べてから城を見に行くことになった。

早速、ミナ達が昼食の準備に取り掛かるのを見てから、サイドルールを見て言う。


「んじゃ、その間に俺は村の方でも見て回るかな」


「…私もお供しましょう」


サイドルールを伴い、サファリ領内の村跡を見つつ、移動して行く。


「こうして見る感じだと、其々の家で土地と畑を持ってやってたのかな?」


「そうですな、何処の領地でもこの様な方法が一般的に行われています」


家がポツポツとある中、家毎に一つ畑があることに気付き、サイドルールに聞くと、この世界ではこれが一般的だった様だ。


「ふーん、ん?此処は水に浸かった跡があるな。大きな雨が降ると浸かるってことか…。城は問題ないにしても、道が大きな雨の度に浸かるのは嫌だな」


そうして村の中を歩いていると、一部の道に水に浸かった様な跡があることに気付いた。


雨が多い日にはこの道が浸かっているということだろう。


「…分かりました。何か対策を考えておきましょう。掛かる費用は殿下から頂けると?」


「…そうだな。俺が金出すんだよな」


そうだった。俺が城を買うのだから、この領地について何かあって資金が必要となれば、俺が出すことになるのだろう。


「そうなります。ただ王家より城の改修工事については、負担すると連絡がありましたので、城の補修費用を考えなくて済む分、安上がりとなりそうですね」


「そうか、俺が金出すならさ、俺の好きにして良いって事だよな?」


城の改修工事については、どうやら王家から専門の技術士が派遣される様で、さらに費用は王家持ちというのなら言うことなしだ。


それ以外については、如何しても俺が金を出さないといけないが、俺が金を出すということは、俺の好きな様にして良いということだろう。


「その通りですが、殿下。何かお考えが?」


「決めた!俺は此処にジオラルドシティを建設する!!」


「建設ですか?」


俺がこのサファリ領を、ナルニート1番の領地にしてみせよう!


目指せ大都市、大都会!ズーランド大陸1番の領地に!!


「あぁ!見た所、広さもある。開拓しなくても土地は平地、近くには小河だけど水場もある。何かを建てるなら、あの城の向かい側にある崩れた丘の石を砕いて使えばいい。結構出来そうなことあるな、これは!?」


しかも王都から近いのだ。開発するのには打ってつけの好物件と言えるだろう。


「…そう簡単に行かぬと考えますが、これも経験か?……我々も協力しますので、殿下のお好きになさって下さい」


「おう!なら早速、ミナにこの領地の大まかな地図を描いて貰おう!」


サイドルールの言葉にそう頷き返してから、少し急ぎめに元いた場所へと戻っていく。


開発を進めるのには、まずイメージを固める必要があるからだ。


「地図ですか?」


「あぁ、地図って言ってもこの領地の中の大まかな建物や畑、川の位置を大体で書いてくれればいい」


ミナ達の元へと戻り、丁度よく昼食の準備が終わった所へ戻って来た様だった。


その用意してくれた昼食を食べながらミナにこの領地の地図を描いてもらう様に頼む。


「…それなら直ぐに描けますけど、何をするつもりですか?」


「…殿下はご自身が主体となり、この領地を改革していかれるそうだ」


そんなミナの問い掛けに俺ではなく、サイドルールが先に答えてくれた。


「また、無謀な。良いんですかサイドルール様?」


そう溜息を吐きながらミナがサイドルールへと向かい言う。

俺が目の前にいる状態で、良くそんな態度が取れるなこいつは…。


「なに、費用は殿下の物だ。国庫を使うなどであればお諌めすることも考えたが、殿下自らの費用であれば問題なかろう」


「1歳にもみたない子供が、簡単に使っていい金額とは私は思わないのですけど…」


言われてみるとそうだ。産まれて生後二ヶ月の俺が金貨1000枚を自分の金として所持しており、更にそれを使おうと言うのだから、前世の感覚とはかけ離れ過ぎている。


「其処は我々がついておるではないか、頼りにしているぞミナよ」


「ちなみに私は8歳です」


サイドルールの言葉に即座にミナがそう返答すると、サイドルールは少し驚いた様な表情を浮かべていた。


「うむ、そうだったか。通りで小さい訳よな」


さも今気付いたという様な表情でサイドルールがそう言った。


「今更そんな、感想?!一体私が何歳と思ってたんですか?」


「よいよい」


「こっちは宜しくねぇーですけど」


ミナがやさぐれてしまった様だった。


その後、一通り城内を見て戻って来たクリークとハロルド達と合流して、二人の案内の元に城内を見て回ってからジオジーク宮殿へと帰ってきた。


そしてリナにサファリ領を買わせて欲しいことを伝えたのだか…。


「要らないって言われても、なぁ?」


それが1番の困るのである。

ミナなら即、金貨の枚数の交渉に入るだろうに、リナは少し欲がなさ過ぎるのではないだろうか?


「リナが持っていても、放って置くだけしか出来なかったので、殿下がキチンとあの領地を国の為に役立ててくれるなら、リナはお金なんて要りません」


そう胸の前で手を振りつつ、リナが言う。


「…持ち主を殿下にせんことには始まりませんからな。取り敢えずとして領地の権利関係をリナから殿下へ無料で貸付してもらうことにしておき、権利だけを殿下に移動させましょう。それで王家の建築家が城の改修工事を開始できますので、一先ずそれで良いかリナよ?」


「殿下が宜しいのならリナはそれで構いませんが…」


サイドルールの提案に渋々ながらそう頷き答えるリナであった。


「俺も取り敢えずはそれで良いよ」


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