10話
「オオオオオオオオオオオオッツツツ!!!!!」
俺ガッ!俺ガッ!!俺ガッ!!!初めて!女の子にあげたプレゼントが喜ばれたァアアアアアアアアア!!!
嬉しいぞっ!嬉しいぞっ!!
「青春じゃねぇーかっ!このやろぉーおおおおお!!!」
「…あ、あの殿下?如何されましたか?体調が優れないのですッツ「うあっ?!!あかん!あかんで!!そりゃあかんでぇ!!見つめんといて!恥ずぃ!恥ずかしいからぁ!!?」…えっ、で、でんか?」
声を掛けられてカトナの方へと振り向くと、視界にカトナの顔が全面で写った。
嫌なんか、カトナに見られてると思うと動悸が更に激しく、身体の全身が震え、震えてくる!!?
「ヤバイ!ヤヴァぃいい!!このままじゃ!このままじゃ!?照れ死ぬっ!?」
「殿、殿下!!?身体がっつ!!!」
だから!だから!!カトナ!俺を!俺を見ないでくれ!冷静でいられなぁーい!!!
「オオオオオオオオオオオオッツツツ!!!!!」
ドン!ドンドン!!ドンドンドン!!!
「俺はぁ!俺はぁ!!?オオオオオオオオオオオオッツツツ!!」
隠れなきゃ!隠れなきゃ!!カトナに見られない様に!身体を隠さないきゃ!穴を!穴を掘って其処に隠れ様!そう穴を!穴を俺は掘る!
穴を俺は掘るんだぁあああ!!!
ゴッゴゴゴゴォオオオオオオオオッツ!!!
俺が穴を掘り続けることにより、直径5m程度の幅で、縦穴で15m程の深さまで掘ったことで、もう身体全体をカトナの視線から隠せたのでは?
そう思い直すと、幾分か心が落ち着きを取り戻した。そんな時だった。
地を割る様な轟音と振動が地中から
響いてくることに気付いたのは…。
「はぁ、はぁはぁ!…これは温泉でも掘り当てたか?」
先ほどまで興奮していたことにより、若干息こそは乱れているが、感覚は以前よりも鋭くなっている気がする。
そして身体が大きく、以前より体毛が濃くなっている気がする。
「…これは無駄毛処理に時間が掛かりそうだ。カトナは毛深い男は嫌いだろうか?」
ドォン!ドォーン!!ドカッ!ドカッーン!
繰り返される衝突音と、何かが崩れる音が地中と地上、そして俺の掘った穴から響き大地を揺らすとともに、俺の掘った穴が崩れた。
「…これが生き埋めというものか、初めての体験だ」
しかし異世界の地震とは複雑な揺れをする。まるで地震じゃなくて、人為的に何者かがこの揺れを起こしているかの様だ。
「悩ましいな。カトナにまた見られると思うと、中から出ずに隠れていたいけど…。生き埋めになったままだとミナやカトナが心配するかもしれない」
そうして俺がこうしている間にも、地鳴りはどんどんと地中から地上へと近付いて来ている。
此処に来て漸く、俺の鋭くなっている感覚が、これは地震ではなく、下から蠢く様に上がってくるナニカが原因だと感知し始めた。
地中から何かが迫ってくる気配、正直、ただ事ではないだろう。
気配からして大きさも、随分と大きい様だし…。
「……出るか」
そう決断した俺は、生き埋めとなっている場所の土を圧倒的な腕力と脚力で、俺の身体の周囲2m程度に空間を作る様に押し固めていく。
そしてある程度の空間ができ、身体を動かせる様になると同時に、足にあらん限りの力を籠めて地を蹴った!
ドッガガガガガガガガガ!!!!!
『グロロォオオオオオオオオロロローンンンンン!!!』
俺が地上に戻ったのと、その化け物が俺の住んでいた城を壊し現れたのはほぼ同時だった。
空中を舞う土埃に紛れて、影しか見えないにも関わらず、その土埃に浮かび上がる影の形だけで、その巨大さがわかる。
「…途轍もない大きさのミミズだな。おい…」
俺がそうミミズに対しての感想を言った直後、城が崩れた際の飛散した石の礫がカトナへと当たった!
「ォオオオオオオオオッツ!!!俺の嫁候補に何してくれてやがんだぁああ!この野郎ッツ!!!」
俺は直ぐにその場から飛び、カトナの元へ向かい、頭を片手で押さえてへたり込んでいるカトナの無事を確認する。
「カトナッ!大丈夫かっ!!?」
「ッツキャァ!!?……しょ、正気ですか?あの今の殿下は…?」
「「殿下ッツ!正気に戻られたのですか!?」」
何なんだこいつらは、揃いも揃って人がさっきまで狂ってたみたいな質問してきて…。
痛い、心が痛い。否定出来ないとこがすごく痛いです。
「…ごめん、でももう大丈夫だ。それでカトナは大丈夫か?」
「っは!はい!あたしは大丈夫です」
「…分かった。ならミナと2人で此処から避難してろ。っあ、クリークはその護衛な」
「っは!ってなら殿下はどうする気ですか!?まさかあのグラノドワームを倒すとか言わないですよね?」
「あぁ、あれってグラノドワームって言うのか、うん俺がぶっ倒してくる!」
「な、なにを言っておいてなのですか!殿下!!ここは安全を見て一度引くべきです!さぁっ、一緒に避難をっ!殿下!?お待ちください!」
『グロロウゥ!!ーキャッパーン!ー』
ドーン!
「へっ?………何だこれ?」
「…一撃で、あの大きさグラノドワームを一撃で?あ、あたし夢でも見てるの?」
「……私達の覚悟は一体なんだったのだ」
「…やっぱり一番怖いのは、殿下なんですね。っあ、マークさん死んでませんかね?」
その後、王城から派遣されてきた討伐隊により、グラノドワームの死亡が確認された。
日を改めてモグラ獣人により王都地下の調査が行われた結果、地中200mの深さにワームホールが出来かけていたとの事だった。
そのワームホールは比較的まだ新しく、小規模であった為、直ぐに埋め固められたとのことだ。
もし俺が倒したグラノドワームの発見が遅れていれば、数年の内にワームホールは完成することになり、地下へと崩れてしまい王都が滅びることになっていた可能性もあったそうだ。
そして、この事は六獣王国に伝えられ、各国毎に今まで調べていなかった地中深くまでが、ワームの捜索域として広げられ、他の国でも同じ様に発見された事から、俺の名前は一躍ズーランド大陸に知れ渡った。
更に俺が倒したグラノドワームの身体はその皮膚自体が上質な鉱石で構成されており、その血肉は大地を喰らい大きくなっていることもあり、田畑に撒けば、その血肉により大地が豊潤になるとのことだ。
その諸々の取引価格は、壊れたジオラルド宮殿を新しい城に3回は建て替えられる金額だそうだ。
その功績に応じて陛下、というか親父から後日、日を改めて報奨金が貰えるということだ。
金を貰っても使える場所が無いのだか…。
「…殿下、此方が第一皇子ジオジーク様のいらっしゃる宮殿となります」
「あぁ、まぁ知ってるけど、来たことあるからなぁ」
サイドルールに言われて改めてその城の外観を見ると、ジオラルド宮殿と同じ位立派な城だ。
特筆すべきところは、俺の住んでいた城は普通の石の色のままだったところが、このジオジーク宮殿は全面が白で塗られている所だろうか…。
「…まあ、本当にあの時の亜人がジオラルドだったのですね。後で陛下からは聞いていて知ってはいたけど、この目で見るまでは信じられませんでしたわ!それにしても随分とまあ、少ないお供なこと、それでも王族としてのプライドがおありなのかしら?あぁ、確か契りの証も、平民程度に授けたそうだから、お供に拘りもなにもないのかしら?それなら貴方にはクリークは勿体無さ過ぎますね?まああたしのジオジークには、タノールが居ますから、クリークは別に欲しくもなんともありませんけどね、でも、もしクリークがジオジークに仕えたいと思うのなら、取り立てましょう。ジオラルド、私は貴方には期待など全くしておりません。此処は第一皇子が住まうジオジーク宮殿です。城が完成するまでの数年間、共に暮らすことになりますが、勘違いしない様に、この宮殿のトップはジオラルド、貴方ではなく、兄であるジオジークなのですからね?」
「…えーと、はい!分かりました」
良くも台詞の様にそこまで長く流暢に話せるもんだな。
そう思いながら以前にこの白に来た際に出会ったことのある白髪の女性を見上げて返事を返す。
「ふんっ!陛下からの頼みでなければ断っていましたのに汚わらしい!何か不満があれば直ぐに仰いなさいっ!」
あまり歓迎はされていない様だ。と思っていたが実際はそうでもないらしく、素直に自分の感情を表に出すのが得意ではない人の様だった。
「…なんだ、ツンデレか」
「ツンデレって何ですか?」
「あぁーいう奴の事だ」
第一王妃は言うだけ言ってから、宮殿の中に入って行ってしまう。
その後ろ姿を見つつ、ミナに聞かれた質問に、王妃が去って行った方へと顔をしゃくることで、それを伝える。
「…しかし困ったね。王妃様が中に入っちゃったから案内の人も付いて行っちゃったよ」
リナが胸元で腕を組みながら、困った表情でそう言いながら、ジオジーク宮殿を見やる。
「…少し待ってみて、誰も出て来ない様でしたらあたしが声を掛けて来ましょうか?」
リナに釣られて俺もその視線を追う様に再び城を見上げていると、カトナが俺の前に来てそう聞いて来た。
「うん、そうだね。王城に戻るのも今からだと時間掛かりそうだし、その時は私も一緒に行くよ」
俺がカトナに答える前にアリアがそれに同調した為、カトナがアリアの方を向いてしまったので、話す機会がなくなってしまった。
バン!
「はぁはぁっ!い、何時までそんな場所でグタグタとお喋りをしてらっしゃるの?早く中にお入りなさい!これだから常識のない物達は!そこの貴方、ジオラルドを部屋に案内してあげなさい!ふんっ!」
「はっ、畏まりました!」
慌てて戻って来たのか、王妃は息も吐かない様子で、再び門の前へと出て来ると、今度はちゃんと執事に俺達を案内する様に言ってから、宮殿の中へと戻って行った。
「ジオラルド陛下、それではお部屋へ案内させて頂きます」
ジオジーク宮殿で働いている執事が、俺に深々と頭を下げて一礼してからそう言ってきた。
「うん!頼むぞ!」
「っえ、…畏まりました!」
執事にそう答えると、一瞬、執事が驚いた様な表情を浮かべたが、直ぐに先程と同じお仕事用の顔に戻った為、敢えてそこに触れることはせずに、執事が先導してくれる後を皆でぞろぞろと付いて行く。
「…では殿下は、アリアとダンスの稽古をしていてください。決して暴れない様に、良いですね?」
「分かってる!もう大丈夫だって!もう落ち着いてるって言ってるだろ?」
執事に各自の部屋へと案内された後、再び俺の部屋へとサイドルールが他の皆を伴って集合し、皆で今後の事についてサイドルールを中心に話し合った結果、取り敢えずはジオラルド宮殿の建設が完了するまでの間は、この宮殿に置かせて貰う事で話がついた。
そして祝賀会までの日数も、グラノドワームの後処理にてゴタゴタしていたこともあり、稽古や勉強に遅れはあるものの、俺であれば何とかなる。という皆の意見により、今まで通りの予定で俺に教育が行われることになった。
サイドルールがその場に立ち上がり、俺にそう言い聞かせて来たが、流石に俺も前回はやり過ぎたと考えていたので、素直に聞いて居ようかとも思っていたが、再々繰り返される注意に嫌気もさしていた為、早々にそれを切上げさせた。
「良いですか殿下、殿下の落ち着いてるという状態はですね、他の人で言う挙動不審ってことです!それを肝に銘じて、何かする場合は私に迷惑を掛けない様に!やってくださいよ!」
「ホント、無礼極まりないなミナは!!」
全くとして俺のことを信じようとしないミナに呆れつつも、感極まってる最中のことを考えると、ミナの言っていることも強ち間違っていなかったため、反論は控えめにしておいた。
「それだけ殿下が、私に迷惑掛けたんですよっ!!解ってんですか!?」
「あぁ、分かってるよ!」
…どうやら反論はしなかった方が良かったみたいだと学習した。
「…では他の者達は、私と一緒に今後の予定について別室で話し合うことにする」
アリアと俺以外の面々は、再びサイドルールにより伴われて部屋から何処かへと移動して行ってしまった。
「さてっと!殿下ワルツの練習しましょ!ささっ、獣人化して大きくなってください」
「おう!分かっ…えっ?何でだよ!?ダンスで獣人化する意味あるのか?」
そしてそれを確認した直後、アリアが早速ダンスの練習をすることを俺へ告げて、獣人化する様に行って来たため、一瞬勢いで変化しそうになるも、すんでの所で踏みとどまって理由を聞く。
「っあ、前みたいに大きくなり過ぎるのはダメです!私と同じ位に調整して下さいね?」
「いや、アリア。獣人化する以前の問題でだな」
いや大きさ云々の問題でなくてだな。俺はどうしてらダンスをする為に態々、獣人化する必要があるのかを聞きたかっただけなのだ。
「だって殿下、ちっこいですし、今の身長差だとアリアと踊れませんよ?」
「…良いんだ、もう。最近のミナを筆頭に皆が俺への当たりが強くなってる何てことは…」
ダイレクトにチビと世話係に罵られる皇子なんて俺くらいなものだろう。もう慣れたからいいんだ。
「そんなこと良いから早く変身しちゃって下さい、殿下」
落ち込む俺を他所に、早く変身しろと俺にせっつくアリアに、前にカトナもダンスを練習した時の事を思い出して、一応ではあるがそれを告げてみる。
「…ちなみにカトナは見本を見せてくれて、それを後で俺が実演する方法だったぞ?」
「やですよっ!1人でダンスするなんて恥ずかしいじゃないですかっ!ほらっ、早く変身!暴走はダメですよ?」
恥ずかしいという理由だけで、お前は主である俺に獣人化をしろというのか?
「…仕方ないか、元々、暴走はしてないよ。………ん、意外に調整が効くもんだな?」
内心でそう愚痴りながらも、これ以上文句を言ったとしても通じなさそうである為、諦めて獣人化する。
確かご要望は大きさが大きくなり過ぎないよに、だったよな。
…出来るのか調整なんて、と思いつつ身体に力を入れたり抜いたりしていると上手い具合に調整が可能であった。
「おぉ!近くで見るとかっこいいですね!殿下強そうです!」
「実際に実感はないけど、クリーク曰く俺って強いらしいぞ?」
ズーランド大陸で既に最強クラスになっているのでは?とクリークは俺の事を評価しているらしい。
「じゃっ、踊りましょうか?」
「そう来るか…ホント皆が個性豊かだな」
話を振るだけ振って、こっちが会話に乗ったのに話を変えるとか、アリアが自由過ぎて困る。
「で、俺はどうすれば良いんだ?」
「私に合わせて下さい!」
無茶を言う女である。
ど素人の俺にダンスを合わせろとか言われても、どんな風に合わせていいのかも分からんと思い聞くと…。
「アリア、合わせろって言ったって知らないことを「楽しめれば良いんですよ。要は上手く見えれば良いんですからっ!」そんなもんか?」
「そんなもんですよっ!」
そうか、ならば存分に楽しませてもらおう。途中でワルツがコサックダンスになったとしても、それは楽しんだ結果であれば良いということだろうか?
「はぁはぁっ…、案外踊れたでしょ殿下?」
「あぁ、本当に音楽に合わせると、踊れるもんだな」
なんだかんだと言って、アリアと踊り出してみると、不思議な事にダンスが普通に踊れた。
まあ、要所でアリアが手の力を強めたりしてリードしてくれたお陰か、何も考えずにこうやって、黙々と踊り続けるのも楽しいもんだな。
そんなことを俺が内心にて思っていると、アリアが息を整えながら聞いてきた。
「私とのダンス楽しかったですか?」
「え?あぁ、楽しかったぞ!」
そう俺の素直な気持ちをアリアへ告げると、アリアは微笑みながら俺を見て言う。
「なら祝賀会で殿下の初めてのダンス、お相手させてもらえませんか?」
「…祝賀会でも獣人化して躍らせる気か?」
国内の貴族が集う中で、完全獣人化をしてダンスなどしていいものなのだろうか?
それこそ、マナー違反だと俺は思うのだが…。
「はい!当然サイドルール様から陛下に許可を貰って頂いて、許可が出ればですけど、どうですか?」
「そうだな、どうせ踊る相手もいないし、親父が良いって言うなら踊るよ」
まあ、この国のトップである国王がそれを許可するのなら、アリアと踊るのも悪くはない。そう思いアリアに了承の返事をしておく。
「わーい!楽しみだなぁ?」
「そんなにか?唯のダンスだろ?」
俺の了承にその場でぴょんぴょんと跳ねて喜び出したアリアに、そこまで喜ぶことなのか?と疑問に思い聞いた。
「ダンスが!じゃなく殿下と踊れる事がですよ。獣人の女は強い者に弱いんです。特に私の様な草食動物がルーツの獣人は…うふふ!」
「おいおい、それじゃアリアが俺に惚れてるみたいだぞ?」
獣人の本能ねぇー、強い者に惹かれるか…。ならばアリアと同じルーツを持つミナとカトナも俺に惹かれているのであろうか?
ミナは…ないな。ではカトナは……なさそうである。
でもアリア本人がそれを俺に言うということは、彼女は俺の事を好いていると取れるな。
「はい、アリアは殿下に惚れてますよ!」
「そうか、そうなんだ。ってそうなのっ?!!」
聞くだけならタダ、そう思って期待せずに聞いてみたら、超速球で答えが返って来たため、驚いてもう一度確認する様に聞いてしまう。
「嘘吐いても意味ないですよ。さっ、もう直ぐお昼ですから、正装に着替えますよ」
「あ、あぁ。分かった」
異世界に来てまもなく2ヶ月、モテ期が到来した。
その後、アリアに正装への着替えを手伝って貰ってから部屋の出口で別れた後、丁度迎えに来てくれたサイドルールに付いて、ジオジーク宮殿の食堂へと向かうと、食堂の中には既に第一王妃と第一皇子が待っていた。
「…随分とゆっくりなのですね、ジオラルド?」
そして開口一番に嫌味を言われるた。
「えーっと、第一王「メルノーラで良いですわ」メルノーラ様も一緒に食べるのですか?」
その嫌味には返答をせずに、第一王妃達と一緒に昼食を食べることになるのか?と思い、それを確認してみると…。
「…当然でしょう、家族なのですから?さあ、そんな事よりジオジークも待っているので早く席に着きなさい。サイドルールも特別にジオラルドの横に席を用意してますので、食べながら、ジオラルドにマナーを教えなさい。祝賀会までは後9ヶ月しかないのだから、特別に私達の事は気にせずに練習なさい」
「はい、ありがとうございます」
そうか、家族か…。
直接な血縁関係はないが、第一王妃の子であるジオジークと俺は血が繋がっているので、言われてみるとそうなんだが…。
というかあの人、メルノーラ様って態度とは裏腹に物凄くいい人だ。
「何かメルノーラ様ってめっちゃ良い人だな?」
「それはそうでしょう、ジークムント様が第一王妃に選ばれた方ですので…」
俺がそう思った事を口にすると、サイドルールが何やら含みを持った言い方でそう答えた。
「何だ、他の王妃は性格が悪いのか?」
その言い方では他の二人の王妃には、何処かしら問題があるというように聞こえたのだが、それを聞いてもサイドルールは答えてはくれなかった。
「私の口からは何とも申し上げれません」
「ま、会ってからのお楽しみってやつか…」
どうせ祝賀会の時に会うことになるのだから、今から考えて居ても仕方がない。
会った時の相手の対応を見て、此方も対応を考えれば良いのだ。
「おい、待てジオラルド」
「ん?お前はジオジーク?「殿下!敬称をお付け下さい」…様、なんですか?」
サイドルールと部屋へ戻る道中、背後から声を掛けられてそちらへと振り向くと、其処には今世の兄であるジオジークが腕組みをして立っていた。
何か用か?そう普通に聞こうとした所で、サイドルールから敬称をつける様にと叱責され、言葉の端に敬称を継ぎ足す。
「…随分といいご身分なのだな、私に呼び止められてなお、兄になんの挨拶もしないつもりか?」
「……ご機嫌如何か?「殿下名乗りです」あぁ、第三皇子ジオラルド・ナルニートです。今後ともどうか宜しくお願いします」
なんた、この構ってちゃんは?と内心で苛つきながらも、ご機嫌はどうですか?と聞いてみようとした所で、再度、横から指示が入り、ジオジークへ名乗りを上げた。
「ふん!初の挨拶で略式とは、舐められたものだな!まあいい、お前は少し賢い様だがまだ生後2ヶ月程度だ。それに免じて許してやる。俺の名はジオジーク・ナルニート、将来この国を背負う男だ」
自分の言いたいことを、言うだけ言って行ってしまうのは親子だからか…。ただ少し違うのは好感が持てるか、持てないかの違いだろう。
「うん、俺あいつ嫌いだ」
「…殿下、そういうことは声をお静めてから言って下さい。聞かれればまた問題となります」
思ったことも素直に口にすることができないとか、何の為の権力だよ?
「王族ってのも、大変なんだなぁ」
「そうですな、ですが、これからもっと大変なことになります。ジオラルド様を中心に、では昼からもアリアとの稽古に励まれます様に…」
「…嫌なこと言って去って行くなよな」
部屋の入り口から此方へと迎えに来てくれているアリアを見たサイドルールは、俺にそんな事を言うと、では此処でと言って去って行ってしまった。
「殿下、お迎えに来ましたよ!」
「あぁ、ありがとうアリア」
アリアにそう答えながらも、この先の事に一抹の不安を覚える俺だった。




