4:希望の光
「――歌手に、なりたいでしょう?」
かなりもったいぶって、魔女は言いました。シーナは意表を突かれ、一瞬自分の耳を疑いました。
シーナは自分のひそかな夢を、ほかの誰かに話したことなんてありません。大人の人に「将来の夢は?」と聞かれても、「早く大きくなって両親にラクをさせてあげることです。」と答えていましたし、それはそれで本心だったのですが、自分のための夢は自分の心の中にずっととどめていました。
「何で知ってるのって顔してるわね。目の奥の奥の奥を見つめていれば、心の中ものぞけるものなの。」
魔女はどうだと言わんばかりの得意顔で話を続けます。
「あなたは歌手になって、自分の歌でみんなを幸せにしたいのよね?」
どうやらこの人は本物の魔女のようです。心の中をのぞけたのも、もしかすると魔法を使ったのかもしれません。
「……それがどうかしたんですか。……そろそろ弟たちが起きてしまいそうなので、帰っていただけますか?」
シーナは動揺をさとられないように、あえて強気で返します。ここで弱みをみせてはいけません。シーナは両親の代わりに弟や妹たちを守るため、強くたくましく成長していました。
「あなた、声はよくても頭はあまりよくないのかしら。一から十まで言わないとわからない?」
魔女ははじめにシーナの前に姿を現したときより目つきが厳しくなっています。口調にも少しトゲが生えてきました。ため息混じりに話す魔女からは気だるさがにじみ出ています。
「このままでは、夢は夢のままで終わるわ。そんなこと、嫌に決まってるわよね?」
突然現れた魔女、シーナを昔から知っているらしい。わざわざシーナを試すようなそぶり、そして誰にも言っていない夢を見破った……。
いやまさか。そんなこと、絵本の中でしかありえない。でもそうじゃないと、こんなことしないと思う。
シーナはたくさんの迷いと少しの期待を込めて、おそるおそる魔女に尋ねました。もしかしたら、星に手が届くかもしれない!
「私の夢……叶うの? まさか、魔法で?」