2:チャンスの女神……?
チャンスの女神というものは誰にでも微笑むもので、11年間ずっと人のために生きてきたシーナにも、転機は訪れました。
その日はシーナの12回目の誕生日。しかしあいにくの雨天で、シーナは朝から憂鬱な気分で、弟や妹たちに服を着せていました。
まだ眠いと泣き喚いたり、部屋中をパンツだけで走り回ったりするのはいつものことですが、久しぶりの雨にはしゃいでうっかり外に出ようものなら、雨に濡れて風邪をひいてしまいます。なだめては着せ、捕まえては穿かせ、全員に服を着せるのにたっぷり2時間はかかりました。
それから食事、掃除、洗濯に遊び相手。一度も体が休まることはありません。早くパパやママが帰ってこないかしらと、両親が働きに出ている町を遠く眺めるばかりでした。
その日の夜、兄弟たちがすやすやと寝息を立て始めたころ、一日の家事を終えたシーナは小さな窓から星を眺めていました。両親は深夜にならないと帰ってきません。
「きらきら光る、お空の星よ。瞬きしては、みんなを見てる♪」
朝から降っていた雨が空気を掃除してくれたようで、夜空には満天の星。ひやりとする湿った風が家の中を静かに吹いていきます。
この独りの夜の時間が、唯一心を休まる時間です。大好きな歌を口ずさみながら、闇を照らす星たちに願いをはせ、そっと手をかざしてみました。
しかし、伸ばした手は光をさえぎるだけで、年に一度の誕生日でさえ祝ってくれる人がいない冷たい現実を噛み締めるしかありませんでした。
「はああ……」
大きなため息をつき、私も寝ようと振り返ると、
「お誕生日、おめでとう。」
真っ黒なマントに身を包んだ女の人が、シーナのすぐ後ろに立っていました。