呪いの元凶
スキル【特殊加工】について設定を変更。
建材アイテムの材質や純度などの加工に特化したスキル。
から、
建材アイテムの性質など形状以外の加工に特化したスキル。
に変更しました。
……あれ、これ何話目?
神殿に着いたら早速神殿解体作業を始める。いつもの作業をして神殿を順調に削り、いつもの時間になったら村に帰る。そんな日々を何日か続けてのある日。俺達は神殿地下の攻略を完了した。喜ぶ俺とリオ。だがしかし、呪いは解かれなかった。何故かとは誰も疑問の声を上げなかった。言わずともこれまでのパターンから理解していた。呪いが解かれない。それはつまり、まだ元凶を打ち倒していない事を意味する。
「まだまだ気は抜けないようだ」
「ええ、残念です」
また地下への階段があるのかと神殿周辺を探索すると、あっさり下に続く階段が見つかった。また迷路かと思い、中を覗いてみれば何やら広間のような場所に繋がっているようだ。恐る恐る潜ってみると、目の前には巨大な門が。とても嫌な気配を門の中から感じる。ここの存在をリオに尋ねてみるもやはり何なのか分からないという。門を開こうと更に近付いてみるが、しかし全長四、五メートルはある門は二人がかりでは動かすことも出来ないだろう。
破壊兵器を作るべきか。と思い、踵を返すと背後で何か重いものが動いているような音を立てて部屋全体が揺れる。不意をつかれて思わず尻餅をついてしまうが、幸いにも揺れはすぐに収まった。慌てて立ち上がり、後ろを振り向けば門が開いている。リオに目配せで入るかどうかを問う。どう見ても罠にしか見えないが、行かなければ呪いをどうこうするのは無理な話だ。リオは頷く。俺も意を決すると頷き返すと門の中に足を踏み入れた。
そこには泉があった。部屋の中央に存在するそれは四方八方に水路が伸びており、流れる水からここが呪いの中心であると理解する。武器を握る手に力が入る。泉の中心には八面体のまるで宝石のような輝きを放つ黄金色の結晶が浮かび、神々しい光を放っているかのようだ。……否、放っているのだろう。この広間に入れば真っ先に目にするであろう、女神を模した華美でありながら神々しさすら纏う見とれてしまうような石像に今ようやく気付いたのだから。
「カイナ様。アレは……」
「ああ。……そうみたいだ」
だが、俺達が女神像に気付くのが遅れてしまった原因は他にもあった。
「あれが呪いの元凶だ」
黄金色の結晶に黒い根が絡みついていた。それを見ているだけで全身の感覚が狂うような、まるで刃が肌を撫でているような感覚に襲われる。黒い根は泉の中にも伸び、水面を黒く染めている。それだけではなく、根はこの空間の床壁天井の全てを支配していた。
……そして、根があるなら茎も、葉も花も存在する。黒い根の上には毒々しい鮮やかな紫色の花弁が咲き誇っていた。しかしそれを花とするには、その姿はあまりにも不快で不気味で不可解に過ぎた。ぎょろり、と。花弁の中心。本来ならめしべとおしべの存在する筈の部分にある無数の目玉が俺達を睨み付けた。
本能が警鐘を鳴らす。アレは俺を殺す存在だと喚き散らす。アレに挑んではならないと脚が重く固く凍りつく。……死が、目の前にいる。気が付けば、俺は重い筈の足を動かして呪いそのもの花へと突撃していた。愚直なまでに真っ直ぐに。
「っぐ」
「カイナ様!」
視界に映る光景が切り替わる。どうやら根で叩き飛ばされたらしい。体もいつの間にか地面に横たわっている。じんわりと下半身が温かくなるが確認している暇はない。一瞬でもあの花から目を逸らすべきではない。……トイレ行っとくんだったなあ。
リオが俺に近付き、横たわる体を抱えて広間から逃げ出す。俺は何もいえず、抱えられるまま地上へと帰還した。意外にもダメージは大きかったのだろう。意識も不確かになっていき、言葉を紡ごうとしても蚊の鳴くような声すら絞り出せない。せめてもの、と黒歴史になりかねない粗相の痕跡を死ぬ気で【浄化】して証拠隠滅し、意識を失った。
目を覚ますとそこは村長宅の一室だった。リオに抱えられたまま意識を失い、ここまで運ばれたのだろう。体を起こしてみると全身に鈍い痛みが走るが、動けないほどではない。そう体の調子を判断し、立ち上がろうとしたところで俺はようやく気付く。ここは一体誰の部屋だ?全く見覚えがない。クローゼット、テーブル、椅子。どれも俺の部屋にはないものだ。元々空き部屋だった俺の部屋には何もなく、俺も必要性を感じなかったので何かを置いた記憶もない。
それはつまり、この部屋は俺がいつも寝ている部屋ではないという事。では誰の部屋か。手っ取り早く疑問の答えを出す為に、俺はクローゼットを開けて確かめてみようと手を伸ばした。
「カイナ様。もう起きても大丈夫なんですか?」
その瞬間、ラミの声を聞いた俺は伸ばそうとした手を引っ込めて彼女のいる方に振り向いた。変な汗をかいたかもしれない。俺は体調に問題はないと身振り手振りで現し、ラミの視線から逃げるように明後日の方角を見つめた。
「父がお呼びです。体調が良いのでしたら一度居間の方へ来てもらえますか?」
「ああ。分かった。何かあったのか?」
「いえ、神殿の事で話があるとしか……」
「そうか。じゃあ今から行こう」
神殿……。リオから話を聞いているだろうから十中八九あの黒い花についてか。それともあの泉の事か。どちらにせよ、話を聞きに行ったほうがいいだろう。 今は少しでも情報が欲しいのだし。
村長の話はあの泉についてだった。……正確には、そこにあった黄金色の結晶について。村長はいつにも増して真剣な表情で語った。アレを壊してはならない、と。黒い花ごとぶっ壊すつもりだった俺にとっては出鼻を挫かれた気分だ。あの黄金色の結晶。その正体は女神の力が結晶化したこの世に二つとない神器との事。そのわりには封鎖して長い間放置していたようだが、しかし本当の事であるらしい。なら大切に保管しとけよ。とも思ったが、あの場所にある事が宗教的に意味があるという。とにかくあの神殿の核でもあるので絶対に壊してはならない等々その後もあの黄金色の結晶を壊すなという説明が長々と続いた。無茶言うなよ糞ジジイ。
村長の話を聞き終えた俺はいつものようにリオと一緒に神殿へと向かう。未だ有効な手立ては何も思いつかないが、要はあの結晶を壊さなければいいわけだ。それ以外ならどんな手だって使っても。それが結晶を壊す行動でさえなければ……。
神殿地下の更に下の広場に繋がる階段前。そこで俺とリオは武器を構え、周囲を警戒しながら中へと入っていく。昨日の門の前まで来ると、門は開いたままになっていた。中を覗いてみれば黒き異形の花は昨日と変わらない姿で結晶に根を張っていた。……アレで結晶を壊さないように。て無理じゃね?とリオに視線を向ければ、同意するかのように小さく頷いた。
「とりあえず石を投げて様子を見てみよう」
「そうですね」
昨日の発作のようなアレはない。今は冷静に状況を判断出来る。大丈夫だ。アイテムボックスから適当に拳大の石を何個か取り出して緩急つけて投げてみる。一発目は軽めに泉目掛けて。根に弾かれる。二発目は目を狙って投げる。根で強く弾かれる。三発目はコントロールを誤り、結晶に向かって飛んでいく。不味いと思った瞬間には凄まじい速さで迫った根に弾かれ、否叩き飛ばされて壁を砕いた。……結晶が大事なのか?この花も同じように?
俺はとりあえずそれで石を投げるのを止め、今日はこのぐらいで終わりにしようと判断した。明日はまた別の手段を講じよう。そう思い、リオを伴って階段を昇る。その最中、偶然リオのもつ鉈の刃に上から漏れた光が反射し、黒い花に当たった。そして、花弁の一つが焼け落ちた。その瞬間、俺は勝機を見いだした。
「これだ」
「……どうしたんですか?」
「あの花を枯らす方法を閃いた」
その日の夜。あの後そのまま村に帰った俺はいざという時に備えて沢山の武器とあの花を枯らすために必要な物を作成していた。武器は槌をはじめ槍や斧など。どれも素材は石だがどちらも威力に申し分はない。明日使う物は【特殊加工】のスキルを使って作成する。これまで一度も使っていなかったスキルだが十二分に扱えた。明日は必ず勝てると核心出来るほどの物を作ってやろう。
そういえばさっき、夕食の場でリオが結婚の話をしていた。この件が無事終われば幼馴染みと結婚するそうだ。その幼馴染みも夕食に呼ばれていて、俺に挨拶をしてきた。一度一緒にお風呂に入った事のある少女だ。見た目リオの二三才は年下だが、実年齢も見た目とそうは変わらないだろう。何故なら発育も見た目相応なのだからして。……眼福でした。ええ。
その後も甘々なのろけ話が続いたが明日に備えると言って速やかに避難した。俺も彼女欲しいと思ったが、今の俺だと彼女ではなく彼氏だろう。想像したら虫酸しか走らない。俺は一生独身で構わないと心に決め、明日に備えて建築家のスキルを乱発した。
昨日は更新出来なくてすみません。色々あって執筆すら殆ど出来ませんでした。
後、今日は設定の変更の他にも少しスキルについて解説をしとこうと思います。
【建材化】は筋力のステータスに依存するスキルであり、また建材化する対象が筋力のステータスを超えると発動しません。だから部分的にだとかは不可能です。何話目かの時に壁を建材化したとありますが、正確には壁を構成するブロックという一つ一つの部品ごとに建材化しただけの事です。また、筋力のステータスに依存するとだけかかれているので、一度に複数の対象であってもステータスを超えなければ問題なく発動出来ます。
あまり面白味のない話ですがこれで終わりです。もしも疑問に思う事があるのでしたら遠慮なくお聞きください。
次回、破壊建築家。