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勘違いDEATHからっ!  作者: 分福茶釜
第一章 居候ではない。神だっ!!
2/2

始まりは……うん、何か微妙。

 ―――御陵高校。


 これと言った特徴があるわけではない、若干田舎の自称進学校。夏の高校野球では地区大会2回戦進出が良いところで、学力の順位も県内では4、5番と言ったところ。

 地元での評価は、まぁ進学校と自称するだけあってなかなか良いのだが、一度県外に出ようものなら名前さえ聞くこともない……そんな学校。


白川(しらかわ)~……白川茜(しらかわあかね)はいるか?」


 丁度今は昼時分。ワイワイと生徒の騒ぎ声のする教室に野太い男性教師の声が響く。―――このクラスの担任教師の声だ。


「はい? ……なんですか?」


 一瞬騒ぎが収まった教室の端から、若干戸惑ったような声が上がった。今まで黙々と自分の昼食を取っていた茜の声である。



「あ~、ちょっと話があるんだが、生活指導室まで来てもらえないか?」


 生活指導室、この単語に周りの生徒の視線が茜へと集まった。こそこそと囁き合う声まで聞こえている。


 溜息を吐きたい衝動をぐっとこらえる。

 茜は担任と共に生活指導室に向かうため、妙な空気の漂う教室を後にした。









「いや、先生もそんなことを本気で信じているわけではないんだが……一応確認のためにな?」


 担任教師の苦し紛れの言い訳が耳に入る。しかしこの憤りは早々に収まりそうもない。


 はじめからおかしいなとは思っていたのだ。

 生活指導室に入るとそこには強面の男性教師陣が3人ほど。何事かと思いながらも、席を勧められて腰を下ろす。

 居心地の悪い空気の中、教室で自分を呼びだした担任がおもむろに口を開いた。


「……どうして呼ばれたか分かるか?」


 この言葉に一瞬茜の頭が【?】で埋め尽くされる。訳が分からない。何もかもがだ。

 昼休みに何の前触れもなく、生活指導室へと教師に呼ばれ、そこには強面教師陣が待機しており…………。

 こんなシチュエーションで思いつくことと言えば、問題起こしの生徒の説教くらいなのだが、あいにく他人に迷惑をかけるようなことは一切した記憶が無い。


 つまり、どうして呼ばれたのかなど茜自身には分かるはずもない。


 だから、茜は首を横に振った。


「そうか、…………実はな先日集めたクラスの教育資料の集金が紛失したんだ」


 【紛失した】の所で何か引っかかるものを感じながら、茜は大変なことだなぁ、などとのんきな考えでいた。確かに大変なことだが、自分に言われても困る。なんだったら、だからどうしたと言ってやっても良い。


「実はな、クラスの数人が犯人はお前ではないかと先生に言いに来てな……」


 気まずそうに言う担任。


 ―――だが、こうして生徒指導室に呼び出したと言うことは、すくなからず彼も自分を疑っていると言うことだろうか。

 とんでもない誤解に、茜は声を荒げた。


「わ……私が盗んだって言うんですか!?」


 「まぁ、落ち着いて……」などと言われたが、落ち着けるわけもない。

 そして、先程の苦し紛れの言い訳が担任の口から出た訳だ。




 ……最悪な一日である。

 結局、証拠も何もないと言うことで、そのまま生活指導室を出ることを許されたが、はい、そうですかと納得できる筈もない。

 モヤモヤとした気持ちのまま、教室へと戻ってきてしまった。


 ガラリ、と妙に耳に付く音を出すドアを開けて教室に入るとそれまでざわざわとうるさかった教室が、しんと静まりかえる。そうしてあちらこちらから、こそこそと陰口が聞こえてくるのだ。


 最悪だ。もう本当に最悪だ。

 

 好奇の目が自分に向けられているのを感じて、チラリと目を向ければあからさまに顔を背けられた。











「いや~、全く……それにしてもどうして集金なんか……今までそんな事は無かったのに」


 茜を呼び出した担任が、生活指導室のテーブルに肘をつきながら溜息を吐いた。


「やはり、彼女が盗んだのでは? クラスの生徒もそう言っているのですよね?」


「……見るからに、ちゃらちゃらとした生徒でしたな」


 空いた席へと座りながら、他の教師達が次々に口を開く。担任はもう一度溜息を吐いた。


「……何でも彼女、家の都合で東京からこの街に来たみたいで…………都会の子は扱いが分からなくてね……自分のクラスの子が盗みなんかするとは思いたくないんだが……」


 そう言いながら乾いた笑い声を上げた茜の担任教師だが、その笑い声には力が無い。


「しかし……本当にどうしますか? どちらにせよ集金が無くては困るでしょう?」


 他の教師からの言葉に担任の口から先ほどよりも長い溜息がこぼれる。

 

 と、同時に昼休み終了を伝える鐘の音が校内に響いた。


「……じゃぁ、授業があるので我々はこれで……」


 未だに落ち込んだままの担任教師にそう声をかけると他の教師は生活指導室を後にするため教室の扉を開ける。

 

「あ、……あれ? どうしたんですか藤村さん?」


 ドアを開けた教師陣の先には、扉をノックしようとしたままで動きを止めてる一人の女性。

 ふくよかな体形が特徴の藤村さん。所謂、事務方のおばさんだ。


「あ、すみません。遠藤先生がこちらにいらっしゃると聞いたのですが」


 そうして、呆気にとられる教師陣を掻きわけるように部屋へと入ってきた藤村は、未だに落ち込んでいた担任教師へと口を開いた。


「遠藤先生! お電話ですよっ……ほら、今度転入するっていう……」


「あ……はい、今行きます」


 藤村に連れられて行く茜の担任教師を見送りながら、三人の教師の一人がポツリとつぶやいた。


「大変だなぁ……彼も」


「……そう言えば転入生も来るんでしたっけ……問題を起こさない生徒だと良いですけど……」


「ああ、それは大丈夫だと思いますよ」


 自信満々に一人の教師が口を開く。そんな彼を残り二人の教師が怪訝な顔で見つめた。


「なんでも……編入試験で受けたテストがパーフェクトだったとか……」


「えぇっー? 本当ですかそれ?」


「ええ、確かにそうでしたよ。生徒数の関係で遠藤先生のクラスになったようですが、出来ればうちのクラスに来てほしいくらいですよ。」


「……先生、テストでクラスの平均点を底上げする気ですね?」


「あ、ばれました? 最近うちクラスの平均点が低くて低くて……」


 小さな笑い声を上げながら、三人の教師は生活指導室を後にした。






 …………タイトル通り微妙だよ。ホントに…………

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